憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

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次回は投稿がいつもより、遅くなるかもです。
ちょっと挿絵を準備したいので。なお上手くなるかは分からない。

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23.ブラックマーケットへ!

 

 

 

 『顔無し(ノーネーム)』はホテルの自室の、浴室にいた。

 先生は既にアビドス高等学校に向かっている。考えたいことがある、と言う『顔無し』を気遣っての対応だった。

 

 このことをアビドスの面々に伝えないでほしい、という『顔無し』の頼みに不満げな顔をしながらも、『余計な心配を掛けさせたくない』との言葉に渋々と頷いた彼女は、やはり人格者と言える。

 

 

「さて、どうしたものか」

 

 

 先生がいなくなったところで、『顔無し』は思考に耽た。

 『顔無し』の舌に突然現れたヘイロー。彼が把握するところ、それは他の生徒達と3点異なる特徴があった。

 

 

 1.物理的干渉が可能である

 2.発現場所が舌先である

 3.他の生徒達と比べ、ヘイローが小さい

 

 

 まず1。最初、天使の輪と勘違いしたこともあり、『顔無し』はヘイローに興味を抱いていた。

 なので便利屋稼業を始めてすぐ、彼は襲ってくる生徒のヘイローを触ろうとしている。

 

 ヘイローが物理的にそこに存在しないとこの時点で知ったため、自分のヘイローが異質であることは理解出来た。

 2と3も同様、これまでの経験と擦り合わせ、自覚したものだ。

 

 

「まあ、これが出たってことは肉体の強度が増したんだろ? 不快感ぐらい、我慢してやるさ」

 

 

 『顔無し』の手には、部屋に置いてあった先端が丸い鉛筆がある。

 検証として、これから自傷行為を行うつもりだった。

 

 先生と『顔無し』。アビドス対策委員会含める、生徒達。

 両者には圧倒的な差が存在する。それは打たれ強さだ。では、何がそうさせているのか。

 

 それがヘイロー。『顔無し』はそう考えている。

 単純な思考だが、自分になかったもので、彼女達が待ち合わせているものだからだ。

 

 鉛筆の先端の形は弾丸に近い形状のため、検証にはもってこいだった。

 

 

「……」

 

 

 『顔無し』は躊躇う様子なく、上に向けた掌にそれを突き刺す。

 穿つような穴と共に、上下から血が溢れた。

 

 

「……くそ。普通に穴が空くのかよ」

 

 

 つまり、ヘイローを得たからといって、『顔無し』はホシノ達と同様に頑丈な身体を得たわけではない。そんな結果を得られた。

 鉛筆を引き抜くと、血が吹き出した後すぐに再生が始まる。『顔無し』はその様子を観察した。

 

 

(再生速度と、傷付いてから再生するまでのタイムラグが体感的に少し早まったか? ……でも耐久度は変わらない、ね)

 

 

 ヘイローを得たメリットが少な過ぎる。この異変を、『顔無し』はそのように締め括った。

 一度睡眠中に鼻血が止まらなかったことから、再生しない条件もあるようだが、それも明らかに出来ていない。

 

 

「……まず、後者を何とかしないとな」

 

 

 ヘイローの件は仕方ない。しかし再生しない条件は、放置しておくのはマズいだろう。

 『顔無し』はそれを明らかにすることを決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 アビドス高等学校に着いた『顔無し』は、対策委員会の部室に向かう。その引き戸を開けて入ると、全員がこちらに目を向けた。 

 

 

「先輩おはようございます! 先生からトラブルで遅れるとの話をされましたが、解決しましたか?」

 

「ああ、もう大丈夫。心配掛けて悪かったな」

 

 

 嘘だ。現在進行形でまだトラブルは続いている。

 しかし、ちゃんと約束を守ってくれた先生には感謝だ。顔を向けると、先生は可愛らしいウィンクを飛ばした。

 

 アヤネはそれに気付かず、安心したように笑う。

 

 

「ならよかったです! ええと、それでは全員揃ったようなので始めます。まずは、2つの事案についてお話したいと思います」

 

 

 アヤネの顔が引き締まり、部室の中が緊張感に包まれる。

 

 

「最初に、昨晩の襲撃の件です。私達を襲ったのは『便利屋68』と呼ばれる部活です。ゲヘナではかなり危険で素行の悪い生徒達として知られているようです」

 

 

(あいつらが……ねぇ)

 

 

 彼女達を知ってる身としては、首を傾げたいところであった。

 しかしそう見られても仕方ないことはしているな、と納得する。

 

 

「便利屋とは頼まれた事は何でもこなすサービス業者で、部長は陸八魔アルさん、自らを社長と称しているようです。彼女の下に3人の部員がいて、それぞれ室長、課長、平社員の肩書を持っています。そうですよね? 先輩」

 

 

 そこから先は分かる。

 アヤネの言葉に頷き、先を引き継ぐ。

 

 

「ああ。室長はムツキ、課長がカヨコ、平社員はハルカだ」

 

「いやー、本格的だね~」

 

「社長さんだったんですね☆ すごいです!」

 

「いえ、あくまでも『自称』なので……現在はアビドス内のどこかに入り込んでいるようです。今朝も会いましたし」

 

「嵐みたいだったよね……お疲れ様、アヤネ」

 

 

 疲れた様子でそう呟くアヤネ。精神的に疲れているようで、先生は苦笑して労った。

 

 

(ムツキだな……)

 

 

 多分、ちょっかいを掛けられたのだろう。アヤネは確かに反応が良いし、いじり甲斐がありそうだ。

 頭に浮かんだムツキが、「いぇーい。面白ーい」とピースしていて、『顔無し』は溜め息を吐いた。

 

 

「ゲヘナ学園では起業が許可されているの?」

 

「それはないと思います……勝手に起業したのではないでしょうか」

 

「あら……校則違反って事ですね。悪い子達には見えませんでしたが……」

 

「いえ、それが今までかなり非行を積み重ねてきたようでして、ゲヘナでも問題児扱いされているようです。そんな危険な組織が私たちの学校を狙っているんです! もっと気を引き締めないといけません!」

 

「そうなの? 『顔無し』くん」

 

「あっ……ご、ごめんなさい。先輩」

 

 

 ホシノの言葉に、アヤネが『顔無し』に謝った。

 彼と便利屋68の関係は良好である。そんな彼の前で彼女達を『危険な組織』だの『問題児扱いされている』と言ってしまったのだ。

 

 『顔無し』は手を振る。

 

 

「気にすんな書記ちゃん。実際、あいつらが敵に回れば危険だしな……説明は間違ってないよ、委員長」

 

「そっか……。それじゃ、気を引き締めなきゃね」

 

 

 ニヤリと笑うホシノ。

 そこには確かに、実力者の覇気が感じられた。それに呼応して、他の対策委員会の顔付きも変わる。

 

 そのカリスマに『顔無し』は、流石だな、と心の中で称賛した。

 ホシノの影響を受けてか、アヤネは先程よりはっきりとした声量で言う。

 

 

「続きましてセリカちゃんを襲ったヘルメット団の黒幕についてです! 先日の戦闘で手に入れた戦略兵器の破片を分析した結果……現在は取引されていない型番だということが判明しました」

 

「もう生産してないってこと?」

 

「そんなのどうやって手に入れたのかしら?」

 

 

 『顔無し』には心当たりがあった。住んでいた場所だったから。

 生産が終了したモノ、中々出回らないモノ。それらを一番手っ取り早く入手する手段であり場所が、キヴォトスには一つだけある。

 

 

「ブラックマーケットか」

 

 

 アヤネが頷いた。

 

 

「はい、先輩。生産が中止された型番を手に入れる方法は……それしかありません」

 

「『顔無し』が住んでいたところだね」

 

 

 先生の言葉に反応したのはシロコだ。

 それは他の皆も同様だった。

 

 

「ん。ガイド発見」

 

 

 彼女達はアビドスから外に出る機会は殆どない。

 そのため、ブラックマーケットは未知であった。それを知っているのであれば、心強い。

 

 彼を先頭に案内してもらおうと思った。

 

 

「そして家が燃やされた場所でもあるな。集団に」

 

「違った。要護衛者だった」

 

 

 『顔無し』以外の全員が彼を先頭から外す。

 ブラックマーケットが危険であること、外れ者達が集団を作っていることは知っていた。

 

 そこで一度被害に遭ったのなら『顔無し』は再度狙われる可能性がある。声には出さずとも、それぞれ考えは一緒だった。

 

 問題は彼をどこの位置に置くかだ。それを決めたのはホシノだった。

 

 

「んー。取り敢えずブラックマーケットを調べてみよう。『顔無し』くんは私の後ろ。これ命令ね」

 

「……あー。分かった、分かったよ」

 

 

 自分以外の全員が、『異議なし』といった顔をしている。

 『顔無し』は大人しく指示に従うことにした。

 

 

 

 

 

「此処が、ブラックマーケット……」

 

「わぁ☆ すっごい賑わっていますね?」

 

「本当に。小さな市場を想像していたけど、街ひとつぐらいの規模だなんて。連邦生徒会の手が及ばないエリアが、ここまで巨大化しているとは思わなかった」

 

 

 対策委員会の面々は、興味深そうに辺りを見回している。

 『顔無し』とホシノは、警戒の意味も含めて同様に視線を動かしていた。

 

 

「うへ~、普段私達はアビドスばっかりいるからねー。学区外は結構変な場所が多いんだよー」

 

「ホシノ先輩、ここに来たことがあるの?」

 

「いんやー、私も初めてだねー。でも他の学区には、へんちくりんなものが沢山あるんだってさー。ちょーデカい水族館もあるんだって、アクアリウムっていうの! 今度行ってみたいなー。うへ、お魚……お刺身……」

 

 

 涎を垂らすホシノに、セリカと『顔無し』が白い目を向ける。

 

 

「よくわかんないけど、アクアリウムってそういうのじゃないような……」

 

「結構な鬼畜の所業だぞ、それ」

 

 

 会話が盛り上がっていくことに危機感を抱いたのか、アヤネは通信機越しに声を上げる。

 

 

『皆さん、油断しないでください。そこは違法な武器や兵器が取引される場所です。何が起こるか分からないんですよ』

 

「待て書紀ちゃん。そんなこと言ったら……」

 

 

 何が起こるか分からない。

 そういった説明があった後は、大体何かが起こる。物語で見たような流れに、『顔無し』が待ったをかけるが遅かった。

 

 

『何かあったら私が……きゃあ!?』

 

 タタタタタタタッ!!!

 

 

「銃声だ」

 

 

 シロコが呟く。その距離は近い。

 皆、何が起こっても対処できるよう構えた。

 

 足音がこちらに近付いてくる。結構な人数がいそうだ。

 

 

「くるぞ……何かが」

 

「『顔無し』くん。ちゃんと後ろに隠れて」

 

 

 近付いてくる者達を見ようとする『顔無し』の腕を掴み、引き寄せて無理矢理自分の背後に立たせるホシノ。

 普段の力ではビクともしなかった。仕方なく、聴覚に神経を張り巡らせる。

 

 

「待て!」

 

「う、うわあああ! まずっ、まずいですー! つ、ついて来ないで下さいー!」

 

「そうはいくか!」

 

 

 先頭から聞こえてくる声に、『顔無し』は聞き覚えがあった。

 状況から追われているのだろう。

 

 

「あいつ、また性懲りも無くっ」

 

「あっ……!?」

 

「悪い委員長。説教は後で聞くっ」

 

 

 『顔無し』に拘束を解かれ、ホシノは悲鳴のような声を上げる。

 謝りながらも、彼は迫り来る集団へ駆けた。

 

 

「ヒフミ。肩借りるぞ」

 

「えっ、『顔無し』さん!? きゃっ!」

 

 

 ヒフミと呼ばれた少女の肩に手を置き、地を蹴り、宙を舞う。

 そのまま両足を開き、彼女を追いかけていたチンピラ達二人を蹴り抜いた。

 

 

「何だテメェ! アタシ達はそこのトリニティの生徒に用があるんだぁ!」

 

「あ、あうう……私の方は特に用はないのですけど……」

 

 

 そう言って、『顔無し』の背中に隠れるヒフミ。

 チンピラの発言で、ヒフミの制服に既視感を抱いていたアヤネが声を上げた。

 

 

『思い出しました。その制服……キヴォトスいちのマンモス校の一つ。トリニティ総合学園です!』

 

 

 チンピラ達はニヤリと笑う。

 

 

「そう、そしてキヴォトスで一番金を持っている学校でもある! だから拉致って身代金をたんまり頂こうってわけさ!」

 

「拉致って交渉! なかなかの財テクだろう? くくくくっ」

 

「どうだ、お前らも興味があるなら計画に乗るか? 身代金の分け前は……」

 

 

 『顔無し』はチンピラ達の背後を見て、溜息を吐く。

 

 

「……結構だ。高揚で周囲の警戒を怠るお前らと組んでも、成功するビジョンが見当たらないんでね」

 

 

 は? とチンピラ達が首を傾げる。

 

 バスッ! バスッ!!

 

 その背後から、忍び寄っていたノノミとシロコが容赦のない銃器での殴打を喰らわせた。

 

 

「「うぎゃあ!!」」

 

「悪人は懲らしめないとです☆」

 

「うん」

 

 

 チンピラ達は気絶している。もうしばらくは、起き上がらないだろう。

 

 

「あ……えっ? えっ?」

 

 

 早過ぎる決着に、ヒフミは戸惑うようにその光景を見ることしか出来ない。

 その頭にゆっくり手刀を落とす『顔無し』。

 

 

「あうっ」

 

「お前な……この間、満足するまでペロログッズ手に入れたろ。それでここにはもう来ない。そういう話じゃなかったっけか?」

 

「うう……ごめんなさいぃ」

 

 

 二人のやり取りに、先生は首を傾げる。親密であることが伺えた。

 

 

「知り合い?」

 

「ああ。何ヶ月か前、ここでの護衛を頼んできた依頼主だ。それ以来会ってなかったけどな」

 

「あの時は本当に、お世話になりました……」

 

 

 今回で会ったのは二度目らしい。しかしそれにしては、関係が深いように思う。

 それを追求したのはホシノだった。

 

 

「その割には親密過ぎじゃないかな〜? おじさんの声を無視して飛び出したり、迷わず『顔無し』くんの背中に隠れたりさぁ……」

 

 

 ゆらゆらと歩いてくるホシノ。にへら、という笑みが今では恐怖でしかなかった。

 

 今、ホシノが抱いているのは嫉妬だ。それと恐怖でもある。

 

 斑目ユウの姿をした『顔無し』が、便利屋68もそうだが容姿の整った少女とやり取りをしている。

 そしてそのまま深い関係となり、自分達から離れてしまうのではないか。アビドスから心が離れたことで、二度と斑目ユウが帰ってこないのではないかと。

 

 

 ……そんなのは、絶対に嫌だ。まだ伝えたいことが山程あるのに。

 作り笑いが消え、ホシノの眼光が鋭くなる。

 

 

「あ、あわわ……どうしましょう、『顔無し』さん!? 私、初対面ですけど敵視されてるような……!!」

 

「ようなじゃない。されてるだな」

 

「えぇぇぇぇ!?」

 

 

 一方、迫り来るホシノに慌てて『顔無し』の服を握っているヒフミと、冷静な『顔無し』。

 ヒフミが『顔無し』の服を強く掴むたび、愛銃を握るホシノの手に似合わない血管が浮き上がっていく。

 

 

(言動から察するに、委員長は俺とヒフミを特別な仲だと思っているのか……? それで嫉妬している……?)

 

 

 可能性はある。『顔無し』はホシノの立場で考えてみた。

 

 共に困難に立ち向かっていた同期の身体をした者が、自分が知らない女子と親密そうに話している。

 

 

(……これはキレられても仕方ないな)

 

 

 『顔無し』は納得した。だとすれば、まずはその誤解を解かねばならない。

 別にやましいことはない。

 

 

「弁解をさせてくれ。俺とヒフミは、委員長が思っているような関係じゃない」

 

「……いいよ。続けて」

 

 

 ホシノの足が止まる。しかし、その眼光は消えていない。何も隠さずに話せ。そう言っているようだ。

 

 『顔無し』はそれに頷き、ヒフミとの出会いを話し始めるのだった。

 




浮気(語弊がある)の弁解をするために過去回想を使用する男。
それが『顔無し』!!!

というわけで、次回はヒフミとの出会いです。
最高でも2話くらいで終わらせたい……!
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