憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

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今回、挿絵描いてみました。クオリティは……期待してくれるなよ。
どんどん描いて、上手くなっていきたい……。


24.ヒフミとの出会い(前編)(挿絵あり)

 

 

 

 時は数ヶ月前に遡る。事務所にある自分用のソファに寝転び、『顔無し(ノーネーム)』は溜息を吐いた。ある悩みを抱えていたのだ。

 

 

「絡まれることが増えてきたな……まあ、当然の帰結か」

 

 

 便利屋68と関係を持ち、共に行動をすることが増えたからか。

 依頼を通して弱きを助け、強きを挫いてきたからか。

 

 『あの仮面! 『顔無し』だ!!』と仮面を目印に、自分を狙う者達が現れたのだ。

 

 彼女達は不意打ちといえる戦闘技術を警戒してか、『顔無し』を相手に集団かつ距離を取る戦法を取ってきている。

 

 その分、一回の戦闘にかかる時間が増えた。さらに途中で離脱しなければ、永遠に敵が湧いてきそうでもある。

 

 

 なら仮面を変えればいい。分かってはいることだ。

 しかし。

 

 

「それだけで避けられるとも思えないし、どうしたものかね」

 

 

 自分が敵の立場なら、仮面を変えただけでは気付く。服装を変えたとしてもだ。

 衣類で全身を隠し仮面を付けている者など、そうそういないだろう。だから気付く。『顔無し』はそう考えた。

 

 正に八方塞がり。ここまでくると一種の諦めがつくものだ。

 アクションアドベンチャーゲームよろしく、移動途中エンカウントバトルを目的地に辿り着くまで、繰り返すしかないのだろう。

 

 

「……依頼か」

 

 

 そんな時、事務所の電話が鳴った。心を切り替えて、机に向かい受話器を取る。

 

 

「便利屋『顔無し』。ヤバい仕事も大歓迎だ。その分報酬も貰うけどな」

 

『わ、私はヒフミといいます。ブラックマーケットでの護衛を頼みたいのですが……。危険と聞きますし、初めて入るので……』

 

 

 電話口の少女は緊張しているようだ。『顔無し』の口上か合成音声か、初めて依頼する不安か、その全てか。

 いずれにせよ、こういった素直な者は信頼できる。

 

 名が大きくなるにつれて、便利屋68の時の猫のように、罠に嵌めようとする者も現れた。ヒフミには彼等が持つ、特有の怪しさが存在しない。

 『顔無し』は罠ではないと判断し、話を続ける。

 

 

「分かった。その依頼、受けよう」

 

『本当ですか!? ありがとうございます! それでは、ええと、ブラックマーケットの入り口で会いませんか……?』

 

「ブラックマーケットの入り口ね、分かった」

 

 

 待ち合わせをするには、容姿のことも伝えておかねばならない。

 でないと、ヒフミは誰が『顔無し』か分からないだろう。なので、『顔無し』は集合場所をメモした後、自分の特徴を話した。

 

 

「俺は黒いフード付きレインコートに、白い仮面を付けている。一目見たら分かる筈だから、声をかけてくれ」

 

『分かりました! すぐに向かいますね!』

 

 

 ガチャッと電話が切れた。時間を聞こうと思ったが、その必要はなかったらしい。

 『顔無し』は準備を整え、ヒフミと会うために外に出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ブラックマーケットの入り口で待っていると、『顔無し』は控えめに声を掛けられる。

 そこには、白が目立つ制服に身を包んだ少女が立っていた。

 

 

「あの、『顔無し』さんですか……?」

 

 

 『顔無し』は頷く。

 

 

「そうだ。……ということは、お前が依頼主の」

 

「は、はい。ヒフミです。本日はよろしくお願いします……!」

 

 

 つむじが見える程、深く頭を下げるヒフミ。その動きは、『顔無し』から見ても分かるぐらい、カチコチしていた。

 電話の時から思っていたが、緊張し過ぎだと思う。『顔無し』は溜息を吐いた。

 

 

「取り敢えず移動しよう。固まった身体もほぐれる」

 

「あ、は、はい! お気遣いどうも……」

 

 

 並んで歩く二人。

 『顔無し』がこれからすることは二つ。まずはヒフミの緊張をほぐす、そして護衛の詳細を聞くことだ。

 

 

「ヒフミ、緊張してるか?」

 

「は、はい。それはまあ」

 

「まあ、ここは危険なところだからな。気持ちは分かる。でも、身体の力は抜いておいた方がいい。咄嗟な行動が出来なくなるからな」

 

 

 ヒフミが不安げに顔を上げる。

 守ってくれないのか。そう訴えてるように思えた。

 

 そんなわけない。『顔無し』は続ける。

 

 

「勿論、俺はお前が目的を達成するまで全力でお前を守る。……しかしだからといって、俺も完璧じゃないんだ。手が回らず、お前に危機が迫るかもしれない。そんな時、誰がお前を守る?」

 

「あう……私自身、ですね」

 

「そういうこと」

 

 

 まあ、と『顔無し』は言う。そして、ヒフミを引き寄せた。

 そのすぐ横を、バイクに乗った不良が通り過ぎる。

 

 

「チッ!!」

 

「えっ!?」

 

 

 驚くヒフミを背に隠し、『顔無し』が前に出る。

 

 

「そんな事態、そう簡単に引き起こさせたりはしないけどな」

 

 

 振り返った『顔無し』の顔は仮面で見えない。そして声も合成音声のため、無機質だ。

 だがヒフミは確かに感じ取った。

 

 

「……はいっ!!」

 

 

 その頼もしさを。この人なら信頼できる。ヒフミの身体を縛っていた、未知への恐怖が完全に解かれた。

 『顔無し』は小さく頷き、バイクの不良に目を向ける。

 

 

「で、誰だお前。この子は俺の依頼人様だぞ」

 

「へ、流石はトリニティのお嬢様。『顔無し』を護衛につけるとはな」

 

 

 馬鹿にしたように笑う不良を前に、ヒフミが『顔無し』の横から顔を出した。

 

 

「え……『顔無し』さんの依頼料、高いんですか?」

 

「いや、良心的な価格の筈だ。真っ当な便利屋だっての、こっちは」

 

 

 『顔無し』は靴の中で、足を動かす。

 

 

「で、ですよね。噂通りで安心しましたぁ」

 

「おぉい!! アタシを前に和むんじゃねェや!!」

 

 

 緊張感のない会話をする二人に、指差しして叫ぶ不良。

 それが彼女の敗因だった。

 

 

「油断ありがとう」

 

「いっ……!?」

 

 

 半履き状態にした靴を、足を振り上げて不良の鼻に当てる。

 彼女が鼻を押さえて、仰反る頃には既に『顔無し』はその側にいた。

 そのまま、靴を片手で持ち踵の部分を先端にして、殴りつける。

 

 

「ぎゃん!! おごっ! ぷぷぷぷぷっ!?」

 

 

 間髪入れず、次は爪先を先端にして靴を振り上げてから、三角形を描くようにその顔に叩きつけた。

 

 

「きゅう……」

 

「やっぱり単体の不良は楽でいいな」

 

 

 倒れた不良を見下ろしながら、『顔無し』は呟く。

 完全に気絶しているようだ。彼は振り返り、ヒフミを呼ぶ。

 

 

「ヒフミ。大丈夫か?」

 

「はいっ。ありがとうございます、『顔無し』さん!」

 

「礼はいい。護衛の依頼だからな。……ん?」

 

 

 ヒフミが駆け寄ってくる間に、『顔無し』は不良の側に何か落ちていることに気付く。

 拾ってみると、それは奇怪なマスコットのキーホルダーだった。

 

 

「何だこれ……」

 

「って、あぁーーー!!!」

 

「うわ、どうした」

 

 

 ヒフミの大声に、仮面の中で『顔無し』は顔を顰める。今日聞いた中で一番、大きい声だ。

 興奮しているのか、ヒフミは鼻息を荒げながら『顔無し』にぐいぐい迫る。

 

 

「こ、これ! ペロロ様の限定ストラップですよ! 『舌でさくらんぼの果柄を結ぶペロロ様』です!」

 

「どこに需要があるんだ……」

 

「需要ならここに! 両翼を立てて、汗をかきながら舌をグルグルさせるペロロ様可愛いじゃないですかっ! 分かりませんか!?」

 

 

 目の前に差し出されるが、『顔無し』には分からなかった。

 しかし否定すれば長くなりそうなので、ただ頷く。迫るヒフミの肩を押さえ、これ以上距離を詰められないようにしながら。

 

 

「ああ、分かった。分かったから」

 

 

 ヒフミは満足そうに頷いた後、何か閃いたように顔を上げた。それと同時に彼女の動きが止まり、『顔無し』は腕の力を抜く。

 

 

「そんなことより、これがここにあるということは、噂は本当だったってことなんです……!!」

 

「噂ぁ?」

 

 

 何が何だか分からない。状況が掴めない『顔無し』に、更なるアクシデントが降りかかる。

 

 

「見ろ! 『顔無し』だ!」

 

「本当だ! あの憎き白仮面だ!」

 

「あの白仮面、間違いねぇ! 『顔無し』だ!!」

 

「トリニティの奴もいるぞ!」

 

 

 騒ぎを聞きつけたのか、不良達がこちらに向かってきていた。

 『顔無し』はバイクに跨り、ヒフミに声を掛ける。

 

 

「詳しい話は後だ。取り敢えず乗れ、振り切るぞっ」

 

「はい!!」

 

 

 『顔無し』の胴体に自然に腕を回し、強く抱きしめるヒフミ。彼等は既に打ち解けてきていた。

 

 

「因みにバイクは運転したことがないから、しっかり掴まっとけよ」

 

「はい! ……はい!?」

 

 

 ヒフミが聞き返す前に、『顔無し』はバイクを走らせた。

 

 

「きゃああああああああああ!!!!?」

 

「ははは。悪くないな、この爽快感」

 

 

 乗せている者の身体が頑丈なこと、自分が死ににくいこと。これらのお陰でアクション映画ばりの無茶な運転をでき、『顔無し』は満足するのだった。

 

 

 

 

 

「聞いてますか!? 『顔無し』さん!!」

 

 

 そして今、逃げ込んだ裏路地でヒフミに説教をされている。

 腰に手を当てて怒る姿は可愛らしいものだが、それを言えば火に油だ。

 

 それにヒフミに怪我はなかったものの、護衛をする者として相応しくない行動だった。『顔無し』は素直に謝罪する。

 

 

「聞いている。悪かった、ヒフミ。無茶な運転をして」

 

「それだけじゃないです!!」

 

「え」

 

 

 くわっと口を開くヒフミの迫力は、『顔無し』がつい仰け反ってしまいそうになるものだった。

 

 

「あの人達、殆どが『顔無し』さん目的じゃないですか!」

 

「うぐ」

 

 

 そうなのだ。護衛する者が狙われているのでは、話にならない。必然的に護衛される者も危機に晒されることになるからだ。

 『顔無し』は何も返せなかった。

 

 

「はぁ……しかも聞いた限り、その白仮面が目印ですよね? なのに何でまだ付けてるんですか……」

 

 

 疲れたのか、それとも優しさ故か。

 ヒフミは溜息を吐きながら、落ち着きを取り戻す。

 

 

「……悪い。この仮面は外すわけにはいかない。この服もな。身体と顔を隠さなきゃならない、事情があるんだ」

 

「……他に顔を隠せるものがあれば、いいんですね?」

 

「? まあ、そうだな」

 

「分かりました。『顔無し』さんには危ないところを助けてもらいましたし、今後のためにも、これを譲ります」

 

 

 ヒフミはペロロ様のリュックサックから、ある物を取り出し『顔無し』に手渡した。

 それを受け取った『顔無し』は……仮面の中で目を細めた。

 

 

「何だ、これは」

 

「変装です。取り敢えずまず、これを付けてください。私は後ろ向いてるので」

 

 

 気を利かせたつもりなのだろうが、そうじゃない。

 『顔無し』はそう思いながらも、仮面を外しゆっくりと……『それ』を頭に被った。

 

 

「……終わったぞ」

 

 

 『顔無し』の声には疲れが混じっている。鏡はないし、見ていないが、今の自分は道化そのものだろうと思った。

 

 確かに白い仮面はないが、首から下の服は変わらない。こんなの変装として成り立っていないと思う。

 

 

「わぁ……!!!」

 

 

 だがヒフミは違うようだ。

 瞳を輝かせ、両手を合わせる。

 

 

「これで大丈夫です!!」

 

「本当にそうか?」

 

 

 ヒフミの視線の先にいたのは、目がイッてるマスコット……ペロロ様の被り物をする『顔無し』だった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 固い声を出す彼と違い、ヒフミはご機嫌な様子だ。

 

 

「うへへへ、ペロロ様ぁ……」

 

「お前、頬がだらけてるぞ……」

 

 

 ヒフミを頬を緩めながら、ふらふらと『顔無し』の前に近寄ると、彼の頬も巻き込むように被り物を両手で撫でる。

 

 

(……まあ、ヒフミの緊張は解けたようだし、これで良い……のか?)

 

 

 何か釈然としなかったが、結果オーライと納得することにした。

 

 そして、『噂』とは何か。

 護衛の詳細の話を聞くため、『顔無し』は頬を緩ませるヒフミの頭頂部に、静かに手刀を落とすのだった。




肩ゴツヒフミン爆誕!!!

えー、はい。挿絵の反省を申します。
・肩がゴツい
・身体がゴツい
・ヒフミの可愛さを表せてねぇ!!
・色が違ぇ!!(色がなかったんです……)
・ヒフミは!! もっと可愛い!!!
・ヒフミは!! もっと身体が細い!!!
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