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待たせたな(キリッ)
そしてごめんなさい。多分、今後も待たせることになると思われます。
目標、週1投稿で頑張りたい……!!
それとタイトルですが……安心してください。
『顔無し』の真実じゃありませんよ!!!
『
部室の空気は時間が経つにつれ、重くなる一方だ。書類を読み進める『顔無し』は、その理由が理解できた。
激情に耐えきれなくなったのか、強く机を叩く音が部室内に響く。
「なっ、何これ!? 一体どういうことなのっ!?」
「……!!」
出所はセリカだった。彼女程ではないが、ノノミも驚きを隠せない様子だ。
「現金輸送車の集金記録にはアビドスで788万円集金したと記されている。私達の学校に来たあのトラックで間違いない」
「でも、その後すぐにカタカタヘルメット団に対して『任務補助金500万円提供』って記録がある……」
シロコが持つ書類は先程の集金記録だった。そしてアビドスの面々や先生、『顔無し』が持つのは過去の集金記録だ。
そこに書かれているのは、自分達が返したお金がそのまま、この学校の襲撃犯達の支援に使われていたという事実だった。
セリカのように怒りを露わにするのも、当然である。
「随分と長い期間、使われていたみたいだな」
『顔無し』がそう呟いた。
しかし、仕方ないかと思う。誰も借金が犯罪資金として使われるなど予想出来ない。
寧ろ、今回気付けただけでも褒められるべきことだろうと思うことにした。
「任務だなんて……カタカタヘルメット団に……?」
「ヘルメット団の背後にいるのは、まさか……カイザーローン?」
アヤネがそう呟く。恐らくそれで正解だ。
『顔無し』は納得したように息を吐いた。セリカを救出した後に抱いた疑問の答えが出たが、彼に喜びはない。
(そりゃ重火器も大軍も用意できるだろうよ。『企業そのもの』が資金源なんだからな)
しかもその規模はデカい。返済者から集金し、その者を害する費用として拠出するという無茶を罷り通せる程に。
よって『顔無し』は推測する。恐らく、カイザーローンだけではない。
全体……つまりカイザーコーポレーション本社の息もかかっているだろうと。
「こんなの、子供にしていい仕打ちじゃない……!!!」
先生が目尻を吊り上げ、白く綺麗な歯を見せる。まるで牙のようだ。
大人として、そして先生としての彼女の怒りが部室内に広がる。
「「「先生……」」」
表情には出さないが、アビドスの面々は等身大もしくはそれ以上に怒りを抱いてくれる先生に、息が苦しくなった。
単純に嬉しかったのだ。自分達のために、本気で怒ってくれる大人の存在が。
「で、でも、どういうことでしょう!? 理解できません! 学校が破産したら、貸し付けたお金も回収できないでしょうに……どうしてそのようなことを?」
「ふーむ……」
ノノミが抱いた疑問に、ホシノも考える素振りを見せた。だが彼女は発言せず、そのまま黙っている。
代わりに、思ったことをそのままシロコが言った。それは『顔無し』の推測と一致している。
「この件、銀行単独の仕事じゃなさそうだね。カイザーコーポレーション本社の息がかかってるとしか思えない」
「……はい。そう見るのが妥当ですね」
ヒフミも同じ意見のようだ。そんな二人を遠目に、先生と『顔無し』は話し合う。
「どうする先生。敵は想像以上に強大なようだぞ」
「……関係ないよ。私は生徒を守るために、出来ることをするだけ」
「流石。先生ならそう言うと思ってたよ……勿論、俺も同じ考えさ」
『顔無し』は自身の得物に目を向けた。それを握る力が強くなるのを自覚する。
でも、と先生は顎に手を置いた。
「ノノミも言ってたけど、何のために奴等はこんなことを……。『顔無し』は、どう思う?」
「うーん」
『顔無し』は少し考えて、口を開いた。
「まず思い浮かんだのが、この学校を手に入れて自分達の好きなように再活用することだ。お金より、この土地もしくは建物が欲しかった。用途としては……あ〜、その」
……例えばだぞ? と前置きする。
「宿泊施設、とか。校舎で泊まるのがワクワクする的なあれだ。……まあ、そんな平和な使い方はされないと思うけどな」
「え、何その男の子全開の思考」
無機質な仮面をした者の発言とは思えず、先生は『顔無し』を二度見した。大人びているがやはり子供なのだと、愛おしさを覚える。
そしてその頭を撫でた。
「……よしよし」
「何でそんな生温かい目を向けるんだよ。違うって」
『顔無し』は面倒臭いのか、腕を組んでされるがままだ。仮面の中の表情は微妙に渋い。
「俺の願望じゃねェよ。ニュースで見ただけだ。使わなくなった校舎を宿泊施設として再活用して、話題を集めてるって」
「へぇ〜。そんなニュース聞いたことない。『顔無し』は物知りだね、偉い偉い」
『顔無し』本人でも分かった。今の自分は、照れ隠しに嘘を吐き続ける生徒にしか見えない。
その証拠に、『顔無し』が言葉を紡ぐたびに先生の顔が緩んできている。
(別の例を挙げるんだった……軍事施設とか。周り砂漠だし、地図も更新されてないし、守りに優れているとかいう理由で)
そう『顔無し』は溜息を吐き、されるがままの状態で後悔する。
結局、その日はヒフミも含め対策委員会の面々は解散する流れとなるのだった。
翌朝。便利屋事務所にて。
「おはよー!」
「おはよう……」
元気に声を上げながら便利屋の事務所に入ってきたのはムツキだ。
対し、アルは自分の椅子に座り、やつれた声で答える。肘だけでなく、額も机に付きそうだった。
「うわ、アルちゃんどうしたの? 徹夜でもした?」
「いえ、ちゃんと寝たわ……」
「社長、何か悩みでもあるの?」
いつもと違う様子のアルに、二人は心配そうだ。
アビドスの件を不安に思っているのかと思い、少しでも安心させようと彼女達は口を開く。
「計画はしっかり立てたじゃん? 人は二倍雇って、地の利を生かせる戦場にアビドスを誘い出す」
「ハルカは爆弾を設置しに出掛けてる。爆弾を数十か所埋設した場所でアビドスをコテンパンにする計画だよね」
「ううん……」
しかしアルの顔色は優れないままだ。
そしてポツリと、呟いた。
「でも、『顔無し』が……」
「「……ああ」」
ムツキとカヨコの表情が、アルと同様の翳りを生じさせた。
そんな時、便利屋68のドアが開かれる。ハルカだ。
「ただいま戻りました」
「お帰り。お疲れ様、ハルカ」
「主要ポイントに爆弾を設置してきました。あとはこのボタン一つで……」
「よしよし、頑張ったねー。場所だけ忘れないでねー」
ムツキがハルカの頭を撫でる。
一仕事終えた仲間を迎えるのに、暗いのは良くない。
そう思い、ムツキとカヨコは普段の様子で振る舞うことにした。ハルカは照れ笑いをしながら妖しげな笑みを浮かべる。
「いつでも言ってください。私がこの手で全部吹っ飛ばしますから……そう、全部この手で……」
「……はぁ」
アルが再度溜息を溢し、ムツキは両手を腰に当てる。
「なぁに死にそうな顔しているの? それなら最初からクライアントからの手付金をもらって、それを資金に充てればよかったじゃん」
「……手付金はもらわない。それがうちの鉄則よ」
「手付金をもらうと、クライアントの命令に従わざるを得なくなるから……って理由だっけ?」
「その通り。華麗に仕事を終えてから依頼料を受け取る。この順番が崩れたら私たちのビジョンは達成できないの」
アルは決め顔でそう宣言するが、未だ本調子ではないようだ。ヒクヒクと目尻と口の端が動いている。
ムツキは首を傾げた。
「ビジョン? そんなのあったっけ?」
「あるわよ! 法律と規律に縛られないハードボイルドなアウトロー! それが便利屋68のビジョンでしょう!」
「あ、元気になった」
カヨコがそう言って、ムツキの方を向く。
それに対し、ピースして笑うムツキ。幼馴染だけあって、アルの扱い方はこの中で誰よりも心得ているようだ。
「さっき言ったように、クライアントの依頼も同じ。それが、私たちを縛り付ける足かせになることもあるわ。だから依頼料は絶対に成功報酬として受け取るの」
「……」
カヨコは微妙な表情を浮かべてから、ぴしゃりと言い放つ。
「もう全部投げ捨ててゲヘナに帰るのもありだよ、社長」
「はぁ!? そ、そんなのアウトローじゃないでしょ! 駄目よ駄目!」
「うーん、ゲヘナに帰るのは無理じゃない? 風紀委員の奴らが黙っちゃないよ?」
「風紀委員会……か」
出来れば遭遇したくない相手だ。前回は『顔無し』という強力な助っ人がいたが、今回はいない。
しかしだ。
「確かに風紀委員会の連中は手強いけど……今の私たちは奴等から逃げてきたわけじゃない」
「それと、そもそもうちの風紀委員会が時にキヴォトス最強とも言われている理由は……風紀委員長、ヒナの存在があるから。風紀委員会の戦力の大半は、殆ど彼女が担っていると言っても過言じゃない」
「百人力という言葉を体現しているような人。言い換えるなら、ヒナ以外の風紀委員会はどうにでもできる。計画をキチンと練れば、勝算はある」
つまり、ヒナさえ何とかすれば良い。内容を纏めるとそんなところだろう。
カヨコの説明を聞き終え、ムツキはしばらく黙り込み。
「あはっ♡」
面白いことを閃いたかのように笑った。
「ムツキちゃん、いいこと考えちゃった〜。くふふっ、これでアルちゃんの悩みと風紀委員会の問題、解決できるかもよ?」
「「「?」」」
アルとカヨコは訝しげに。ハルカは途中から会話を聞いたため、アルの悩みが分からず、それぞれ首を傾げた。
それを見て、ムツキは笑みを深める。
「もうさ。ネムネムを籠絡しちゃおうよ♡」
「はいッッ!?」
まさかの提案にアルは大声を上げた。冗談ではないようで、ムツキは言葉を紡ぎ続ける。
「ほらほら。そうすれば私達はネムネムと敵対しないで済むし、風紀委員長に対する抑止力も得られる。一石二鳥ってやつじゃん!」
「た、確かにそうかも……い、いえ! やっぱり無理! 籠絡ってことは、その……ぃ、いやらしいことをするんでしょう?」
アルは自分の肩を抱き、左右に身体を動かした。その頬は紅く、蒸気でも出そうな雰囲気だ。
「そんなことしないから大丈夫、大丈夫。ちょ〜っと、身体を寄せておねだりしたり買収を試みるだけだから。私は膝に乗って、カヨコちゃんは後ろから耳ね。アルちゃんとハルカちゃんは左右から。どう? 完璧でしょ」
(ひ、膝ァ!? むむむむ、ムツキ。何て大胆なの……!!)
何てことないように言う幼馴染に、アルは白目になっている。口も驚きであんぐり開いていた。
「丁度お腹すいたしさ。ラーメン食べに柴関行こ! アビドスだし、ネムネムも呼び出せばすぐ来てくれるよ。モモトークもこの前、交換したし♡」
「また?」
「いいの、いいの。バイトちゃんは午後から入るし。鉢合わなきゃ問題ないじゃん」
(カヨコも反応薄くない!!?)
ムツキの案に特に異を唱える様子を見せないカヨコに、アルは驚く。
そして冷静を装いながら、話しかけた。
「か、カヨコ? 余裕そうだけど、本当に大丈夫なの……?」
「別に後ろから耳に顔を寄せて囁いたり、交渉するだけでしょ? 身体を寄せるって言っても、私に色気があるわけでもないし、減るものじゃないでしょ」
「そ、そうなの……」
アルはそう言って、顔を伏せる。その表情は驚愕に彩られていた。
(えーーーーっっ!!!? 何か皆の方が大人じゃない! い、いけないわ……!! これじゃあ社長としての面子が丸潰れよ!!)
「ふへへ……『顔無し』さんの隣に座るのなんて久しぶりです。楽しみですね、アル様」
(ハルカも大丈夫そうだし。なら私も、腹を括るしかないわね……!!)
アルは机を強く叩き、立ち上がる。
「やってやろうじゃない!!!!」
もうヤケだ。誰から見てもそれは分かる。
それでもアルは、震える指でゆっくり文字を打ちながら、ノーネームに柴関に来る旨を伝えるのであった。
く〜もらせはゆく〜よ。
ど〜こま〜で〜も〜。