憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

48 / 94
皆様!
感想、お気に入り登録、高評価ありがとうございます!
大変励みになっております! 今後もよろしくお願い致します!
誤字報告も助かっております!!



水着ホシノ復刻きますね。
それに過去ホシノのスク水もよかった。あの表情と汗、そして完全に開けて見せてくれる脇。素晴らしすぎる。舐めたいぐらいだ。

今度はお腹とお尻も見せてほしいな!!!!!(欲を隠さない)


32.不屈

 

 

 

 

 

 アビドス対策委員会の部室には、既にホシノと『顔無し(ノーネーム)』を除いたメンバーが集まっていた。

 そんな穏やかな時間は、アヤネが発した言葉で覆ることとなる。

 

 

「前方、半径10km内にて爆発を検知! 近いです!」

 

「10kmってことは……市街地? まさか襲撃!?」

 

 

 部室の中に緊張が走る。

 シロコの反応に、アヤネは冷や汗を垂らしながら機器の操作を続けた。

 

 

「その可能性もあります……! 衝撃波の形状から、恐らく砲撃! もう少し確認してみます!」

 

「……爆発地点確認。市街地です! 正確な位置は……」

 

 

 アヤネが目を見開く。そこは馴染みの場所だった。

 

 

「柴関ラーメン……!? 柴関ラーメンが跡形もなく消えてしまいました!」

 

 

 その報告に大きな衝撃を受けた者が二人いる。

 

 

「え……」

 

「っ先生……!!」

 

 

 先生とノノミだ。前者は呆然と立ち尽くす。

 後者はそんな彼女に悲痛な表情を向け、駆け寄った。

 

 二人の脳裏に過ったのは、少し前までこの場にいた男が発した言葉。

 

 

 

『俺はさっき言った通りだ。柴関ラーメンにいるから、何かあったら連絡してくれ。先生』

 

 

 

 事態がゆっくりと、脳に浸透していく。

 先生の大きく開かれた瞼は、ふるふると震えていた。健康的な肌色からは血色が失われていく。

 

 

 つまり、『顔無し』は……。

 

 

 冷えていく先生の思考とは対照的に、対策委員会では議論が活発化していた。

 

 

「はあ!? どういうこと!? 何であの店が狙われるのよ!?」

 

「戦略拠点でもなく、重要な交通網でもないのに、一体誰が……」

 

「ま、まさか私を狙って……」

 

 

 思案顔を浮かべるシロコに、セリカは顔を青褪めさせる。

 このままでは、嫌な想像が湧き立つ一方だ。それに時間も限られていた。

 

 

「セリカちゃん! シロコちゃん!」

 

 

 部室にノノミの声が響き渡る。全員が発言を止め、彼女に視線を集める程、それはよく部室に通った。

 

 

「憶測は後でも遅くありません! 急いで向かいましょう!」

 

 

 彼女は呆然と立ち尽くす、先生にも呼び掛ける。

 

 

「先生も! 時間は一刻も無駄に出来ない、そうでしょう!?」

 

 

 その一言に先生は顔を上げ、強く自分の両頬を叩いた。

 反復する痛みに歯を食いしばり、目を開けた先生はいつもの表情に戻っていた。

 

 

「ごめん、ノノミ。ありがとう……!」

 

「な、なに? どうしたのよ二人とも、そんなに血相変えて……」

 

 

 状況は分からないが、先生とノノミが発する空気に呑まれ、セリカとシロコも急いで準備を終わらせる。

 

 先生は端的に述べた。

 意識的にだ。でないと、また心が乱れてしまいそうだった。

 

 

「『顔無し』がいる筈なんだっ……柴関、ラーメンに」

 

 

 そこまで言って、心の中で呟く。

 

 ああ、やはりダメだ。口に出すだけで、胸が締め付けられる。

 身体の内側を襲う苦しさに、先生は強く唇を結んだ。

 

 

「「っ」」

 

 

 セリカ達は一度動きと呼吸を止め、無意識に移動速度を上げた。

 

 

「あいつ、何やって……! 何で、よりによって今なのよ!!」

 

「ん。本当に『顔無し』は、世話が焼けるっ」

 

 

 先生の表情からそれが本当であると気付き、セリカはやり場のない怒りを叫ぶ。

 シロコも銃器を持つ手の力が強まっていた。発言とは裏腹に、その表情は焦燥に駆られている。

 

 

「っ! ホシノ先輩には私から連絡します! 出動を!!」

 

 

 アヤネも血相を変え、機器の操作を始めていた。支援を行うドローンの用意をしているのだろう。

 

 

「大将、『顔無し』……無事でいて……!!」

 

 

 この場にいる、全員の思いを代弁するセリカの言葉は彼女達の足音で、消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 柴関ラーメンでは、一人の男が死へと近付いていた。

 

 

「うっ……ひっく、『顔無し』っ、『顔無し』ぅぅ……!!」

 

(息が出来ねェ)

 

 

 凶器は胸。死因は窒息という形で。

 

 『顔無し』の抉られた傷は既に塞がっている。その証拠に、空いた衣服の先からは、血に染まっていない肌色が見えていた。

 

 すぐに気付きそうではあるが、大将もカヨコも俯いているため、気付けない。

 

 

「……っ……っっ」

 

 

 なので『顔無し』は発声を試みる。

 いきなり動けば、凄い叫び声と共に投げ飛ばされる気がした。だからまずは、声を出すことにしたのだ。

 

 

(くそ、完全に防音されてる)

 

 

 しかしアルの双丘が音を閉じ込める。

 空気を吐き出し、肺の中は空っぽだった。ダメ押しとばかりに、徐々に強くなる後頭部の引き寄せられる力に、頭が真っ白になっていく。

 

 こんな馬鹿な死に方、冗談じゃない。

 『顔無し』は軽くアルの背中を叩く。

 

 

「っ?」

 

 

 アルは涙目で顔を上げる。仲間に叩かれたのかと思った。

 しかし自分以外の全員が俯き、悲しみに暮れている。その両手は溢れる涙を拭っていたり、強く握り締めて床に置かれていた。

 

 

 なら、今のは……?

 

 

 涙は途絶える。アルは青白くなった顔で、ゆっくりと自分の胸元に視線を移す。

 

 

「っはあ……はぁ……俺を、殺す気か?」

 

 

 そこには顔をこちらに向け、呼吸を整えてから、じっとりとした視線を向ける『顔無し』がいた。

 しばらくアルと『顔無し』の視線が交錯する。

 

 

「へ?」

 

「は?」

 

「え?」

 

「お?」

 

 

 『顔無し』の声が今度はしっかりと聞こえた。

 ムツキ・カヨコ・ハルカ・大将が順に反応し、アル達の方へ顔を向ける。

 

 

「……い」

 

 

 消える一歩手前の声が、アルの口から溢れた。

 彼女の顔が紅く染まっていく。その目尻には、涙が溜まっていた。

 

 

「……あー」

 

 

 これからの流れを察する。

 怒り、恐怖、羞恥等が混ざった表情を見て、まあ女子としては正しい反応だなと思いつつ、『顔無し』は静かに受け身の準備をする。

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 強く突き飛ばされ、衝撃により『顔無し』は勢いよく転がる。

 大きく何度か物音を立て、最後は壁に激突した。

 

 『顔無し』は衣服に付いた埃を払いながら立ち上がる。

 相変わらず渋い表情だ。

 

 

「お前……普通なら死んでるぞ」

 

 

 顔を上げた『顔無し』の視界には、二つの小さな影が迫ってきていた。

 

 

「ネムネム!!!!」

 

「『顔無し』さん!!!!!」

 

「がふっ……!」

 

 

 腹部と喉元に強い衝撃が走る。

 

 ハルカが頭突きをするように腹部にしがみ付いたのだ。

 ムツキは跳んで『顔無し』の胸元に抱きついてきた。勢いを付け過ぎたのか、喉元にラリアットをするような形になり、そのまま絞めてくる。

 

 

「よ、よかったですっ。本当に、よかったです……!!!」

 

「ネムネムの馬鹿! アホ! 間抜け! 私達より脆い癖にっ……! 無茶しちゃって……!!!!」

 

 

 万力のように圧迫される首と胴に、『顔無し』は絞り出すように声を出す。

 

 

「分かっ……た。分かったから、一旦離れろお前ら……っ」

 

 

 本当に死ぬ。アル含め、窒息死させる気か。

 ここまで言うことは出来なかった。理由は単純で、完全に気道が塞がれていたからだ。

 

 白目を剥きつつある『顔無し』に気付いた、アルとカヨコと大将の必死の制止によって、事なきを得たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取り敢えず休んどけ。色々疲れたろ」

 

 

 アル達は『顔無し』の言われるがままに、固まって腰を下ろす。その言葉に身体が答えてしまったのだ。

 『顔無し』は大将に視線を向ける。むふっと頬を膨らまし、大将は腕を捲った。

 

 

「オレは大丈夫だぞ、坊主。客商売舐めんな?」

 

「はは。心強いよ、大将……なら、一つ頼み事していいか?」

 

「勿論だ。遠慮せず言ってくれ」

 

 

 気持ちよく答えた大将に、『顔無し』が言う。

 

 

「そこら辺にあると思うんだが、俺の武器を探してくれないか。俺は辺りの様子を見てみるから」

 

「お安い御用よ。任せとけ。だが無茶はするな」

 

「分かってる。これ以上、この場を赤く染めたくないしな」

 

 

 大将は鼻を鳴らしながら、天井が青空と化した店舗の中で移動を始めた。

 

 

(……大人って凄いわ。ちょっと羨ましい……)

 

 

 アルが体育座りしながら、そう心の中で呟く。

 頼りにされてること、落ち着きを取り戻している大将に羨ましさをほんの少し、彼女を含め便利屋68は抱いた。

 

 とはいえ、アル達も戦う意志を見せている。何が起こっても対応できるように手に、それぞれ愛銃を手にしていた。

 

 

 もう二度と、あの黒い渦のような感情を味わいたくないという気持ちからだ。

 

 

「……セリカを奪い返した時見たな、こんな光景」

 

 

 『顔無し』は周囲の様子を伺い、言葉を漏らす。

 もはや建物としての役割を果たしているのか怪しいが、元ラーメン柴関は壁としては使えていた。

 

 ふぅ……と一通り見渡した『顔無し』は、軽く笑った。

 

 

「はっ……囲まれてるよ。見事にな」

 

「……本当に大丈夫? その、貧血とか」

 

「ああ。こんな有様だけど、問題ないんだなこれが」

 

 

 『顔無し』は床や壁に飛び散っている、自分の血肉に目を向けた。

 まだアル達は慣れないようで、なるべく見ないようにしている。少し見てしまえば、その顔を青くさせた。

 

 

「……これで隠し通すのは無理そうだな。いつもみたいに灰にも出来ないし。先生達が来たら、腹を括るしかねぇか」

 

(いつもみたいに、灰に出来ない……)

 

 

 少し離れた場所にいる『顔無し』の呟きを反復し、カヨコは勢いよく口を押さえる。

 アル、ハルカは何も気付いてなさそうだ。

 

 しかしムツキに顔を向けた時、彼女と目が合う。

 

 

「……っ」

 

「……!」

 

 

 同じだ。ムツキも恐らく気付いている。

 彼女もカヨコと同様に、罪悪感と吐き気でその可憐な顔を歪ませていた。

 

 『顔無し』と初めて会った日の翌日、メディアでとある記事を読んだことを思い出す。自分達が彼を待ち伏せしていた屋敷が、火事で焼失したと。

 

 その時は深く考えていなかったが、『顔無し』の呟きで繋がる。

 

 

 『繋がってしまった』。

 

 

 自分達は彼に許されないことをしていたことを。カヨコとムツキは罪人のような面持ちで、『顔無し』の方を向く。

 

 それに気付かず、彼は思考に浸っていた。

 

 

(場所がここじゃなきゃ、今迄みたいに燃やして証拠隠滅したんだけどな……砲撃を待って、全て粉微塵にするのも論外だし。さてさて……)

 

 

 付け加えれば、精神的に疲労したアル達もいる。さらに身体的な負担を強いるのは酷というものだ。

 ……既に二人、多大なダメージを負っている者がいるが。それを『顔無し』が知る由はない。

 

 

(……この血肉と上半身裸の俺。どう説明するかね……)

 

 

 『顔無し』は無難な追及の躱し方を考える。

 

 唯一、彼の体質を知るセリカもいる。心優しい彼女のことだ。

 

 欠損と修復のことを隠せば、ここまでの損傷を与えられてなぜ先生達に打ち明けないのか、と涙ながらに説教してくる姿が想像できた。

 

 出来れば目の前で、そんな顔をさせたくない。

 つまりどう転んだところで、『顔無し』がこの身体について説明するのは確定事項だった。

 

 

(まあ、記憶喪失ってことにしてるし……何とかなるか。『これが原因なのかもしれない。身体を作り替えられた』みたいな)

 

 

 考え付いた説明を纏め、『顔無し』は頷く。

 後は……外を囲う連中だ。あの服には見覚えがある。ゲヘナの風紀委員会だろう。砲撃を行ってきたことから、準備は万全のようだ。

 

 とはいえ、『顔無し』はあまり危機感を抱いてはいなかった。

 

 

(ヒナだっけか? あいつが来てないんだったら問題ないな、カカシが雁首揃えてるも同然だ)

 

「坊主、これでいいのかっ?」

 

「ああ。ありがとう、大将。丁度いいタイミングだ」

 

 

 どうやら見つかったようだ。

 大将から投げ渡された、自身の得物を片手で受け取る。

 そして振り向いた。

 

 

「お前らはここで大将を頼む。アビドスの奴等が来るまでで良い。引き渡したら、あいつらは俺達に任せて、今日は帰ってしっかり休め」

 

 

 アル、ムツキ、ハルカ、カヨコ全員を見渡し、『顔無し』が言う。

 そして後頭部を掻いた。

 

 

「ま、元凶のお前が言うなって話だけどさ。その分、責任を取ってあいつらはここで引き止める」

 

「まっ……!!!」

 

 

 ハルカが顔を青褪めさせて、手を伸ばす。

 あんなに怖い目に遭ったのに。痛い目に遭ったのに。

 

 

 何故、彼は戦えるのか。

 

 

 筋肉が浮き出た、その背中が遠ざかっていくのを見送ることしか、彼女達は出来なかった。

 

 

 

 

 

 




完全週休3日制希望!!!(ズタボロの身体)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。