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月曜日になったけどギリギリ、セーフということで……!(2回目)
それと前話の後書きに、挿絵描いて貼ってみましたので良かったら見てください。
上手くはないがね!
久々にファンアートなるものを貰ってみたいぜ……個人的に自分が見たい。モチベにもなるし(これ一番)
寒さは感じず、身体がふわふわした物に包まれ、温かい。
『
どうやら寝かされているのはベッドのようだ。一人で寝るには随分と広い。四人で寝ても大丈夫な大きさだった。
眠りに落ちる前の記憶。そしてベッドの大きさ。
ここが誰の住処か推測するのは簡単だった。答え合わせのように、見知った顔が入ってくる。
「あ……起きたんだ」
「……カヨコか。助かったよ、ありがとう」
「完治した後にまた聞かせてほしいかな」
両手にプレートを持っており、その上には皿に盛られたお粥。カップに入った水。そして錠剤があった。
カヨコは横になる『顔無し』に目を向ける。
「食べさせてあげようか?」
「いや、いい。だいぶ良くなったからな」
「そう」
少し怠さが残るが、身体は十分に動く。自分で出来ることを、わざわざ他人にやらせる必要はなかった。
『顔無し』は身を起こし、お粥を受け取り、口に運び始める。
……小さい頃よく食べた味だ。おかかと醤油を混ぜたものや梅干しを乗せて、飽きないように母親が配慮してくれていたことを思い出す。
「……美味しい?」
「……ああ。懐かしい気持ちになれる程」
「ならよかった……といっても、ご飯と塩とお湯しか使ってないけどね」
『顔無し』の返答にカヨコの頰が少し緩んだ。
彼がお粥を口にした瞬間に黙り込んだので、味を心配したようだ。
食事を続けながら、二人はポツポツと会話を続ける。
「そういえば、アル達は?」
「……初めての男性の裸にやられたみたい。ムツキはそれを弄って楽しんでる」
「……ああ、成程ね」
少し顔を紅潮させ、顔を背けるカヨコに『顔無し』は察する。
『顔無し』の服装は男女共に使えるパジャマに変わっていた。
水に濡れていた身体も完全に拭われている。それは、一度完全に脱衣させなければ難しい。
つまりまあ、そういうことだった。
「それとごめん。下着は用意できなかった。主に周りの目と金銭面から断念した」
「どっちもハードルが高いもんな。仕方ないさ」
「ムツキがせめて女物の下着を穿かせようって提案したけど、止めておいたよ」
「助かる。本当にそれはナイス判断だ」
自分にとっても彼女達にとっても、得はないだろう。
いくら童顔とはいえ、他人の身体とはいえだ。自分の身体が女物の下着を穿いてる姿なぞ、想像したくもない。
会話をしていたら、いつの間にか皿の中が空になっていた。
「ご馳走様。美味しかったよ」
「うん。全部食べてくれてよかった」
カヨコがプレートに、綺麗に平らげられた皿とそこに乗せられたスプーンを置く。
そのまま動かないので、『顔無し』は首を傾げるがまだ手を付けていないものがあることに気付いた。
「……有り難く頂く」
なので、錠剤を水で体内に流し込む。そして小さいゴミと飲み干されたコップを、プレートの上に置いた。
カヨコは小さく頷き、『顔無し』に背を向ける。
「あ、そうだ……恥ずかしがってはいたけど、社長達も心配していたからさ。話してあげてくれる? 無理にとは言わないけど」
「別にそれぐらい構わねェよ。……あと裸見た件については、俺は気にしてないって伝えておいてくれ。寧ろ、ちょっと悪く思ってるくらいだ」
ろくに視線も合わない会話になるのはごめんだ。謝罪だらけの会話になるのも。
カヨコは少しだけ目尻を下げて微笑んだ。
「ふ……分かった、伝えとく。私も聞きたいことがあったしね」
「あー……お手柔らかに?」
カヨコからの質問宣言に、『顔無し』は身構えてしまう。
彼女はそれに反応を示すことなく、部屋を出るのだった。
「ネムネムー。身体の具合はどーおー?」
「快調とは言えないな……だから腹に両肘を置かれると、ちとキツい」
「こらムツキ。病人の負担になるようなことしないの」
『顔無し』の周りには、便利屋68のメンバーが集まっていた。
ベッドに寝そべり、『顔無し』の腹の上に両肘を置いていたムツキはアルによって退けられる。
「ちぇー」
「全くもう」
口を尖らせ、『顔無し』と少し間隔を空けてムツキは仰向けになった。それを見届け、アルは『顔無し』とは逆の端の方に座り直す。
ハルカは相変わらずアルの傍におり、カヨコはベッドの下の方に座った。
しっかり伝言してくれたようだ。多少ぎこちなさを感じるものの、会話がまともに出来そうだった。
『顔無し』は改めて、この場に全員に礼を言う。
「本当に助かった。ありがとう」
「そんな礼なんて……私達、仲間じゃない」
「アルちゃんの言う通りだよ、ネムネム。それにまだまだ問題は残ってるし」
口角を上げて、ムツキは自分の顔を囲うように指で四角形を描く。
『顔無し』は彼女が言いたいことを察し、溜息を吐いた。
「だな。相変わらず、指名手配は継続中か……先生め」
新聞、巨大モニター、SNS。
余すことなくシャーレの権限を行使され、『顔無し』は路地裏に逃げ込んだ。その結果がこれである。
「一体、何をどうしたらそんなことに……」
「とびきり悪いことをした。それだけだよ」
アルの疑問に、『顔無し』は自嘲した。
「仲間、いない筈の同期、先輩のフリをしていたんだ。こうなるのは妥当だよ」
それを聞き、合点がいったかのようにカヨコは言う。
「それじゃああんた……やっぱり斑目じゃないんだ」
え!? と3人分の驚きの声が上がった。
『顔無し』も驚いたようだ。少し見開かれた目をカヨコに向ける。
ホシノのように本人と過ごしたわけでもなく。
ヒナのように過去の写真を見たわけでもないだろう。
なのに何故、それが分かった。
「……斑目と知り合いだったか?」
「いいや、全然。……ラーメン屋で私達を庇った時、あんたの口から出た言葉を聞いちゃったんだ」
……斑、目。お前の意志、継げねェかも。
そう言っていたことをカヨコの口から語られた。『顔無し』は額に手を置く。次いで、大きな溜息を吐いた。
「俺の馬鹿。そりゃ別人だって気付くわ」
「多分、死を覚悟したからこそポロッと出たんだろうね」
「んー。つまりネムネムは、死んじゃった斑目君の身体を奪った悪い幽霊さんなのかな?」
彼自身が発した、言葉の羅列。
いない筈の同期、先輩のフリ。斑目の意思を告げないという旨。
これらの言葉から、便利屋68の全員が斑目ユウが故人であることは推測できた。
『顔無し』はムツキの言葉を肯定しようとする。だが、その前にアルが言った。
「? それはないんじゃない?」
「アル?」
「だって今迄の言動が悪霊とは真逆じゃない。アビドスを守るし、自分が死にそうな時に乗っ取った相手に謝罪なんてしないでしょ?」
あっけらかんと言い放つアル。
それもそっか、とムツキは笑い、カヨコやハルカも頷いた。
でも、とムツキは言う。その目付きは少し鋭い。声もだ。
「先生やアビドスの連中は、そう思えなかったみたいだねー」
「……あいつらは悪くない。俺が意図的に、そうなるよう仕向けた」
「は? 何で。自分から居場所を捨てたってこと?」
ムツキは『顔無し』に身体を向ける。
そのまま彼の顔を掴んだ。目は見開き、その表情は硬い。
本気で怒っているようだ。どうして自ら危険な道を選ぶのかと。
ソレに臆さず、『顔無し』は口を開く。
「あそこにいるべきなのは、斑目の筈だった。にも関わらず俺は……その居場所を奪っていた。それはあいつらにとっても、斑目にとっても望ましくないだろ」
「何それ。斑目君ってもう死んでるんだよね? まるで生き返るように言うけどさ……本当にそうなる確証でもあるの? 仮に斑目君が生き返ったとして……ネムネムはどうなるの?」
その質問に『顔無し』は黙り込む。
「まず確証は……ない」
ただの希望だ。
しかし、どうしても『顔無し』は斑目が死んだとは思えなかった。自分が今生きていることがその証明だ。
死因として現段階で考えられるのは二つ。だがこれらは、斑目の場合死因とされるか怪しかった。
まず出血多量による死。
自分は今、身体を動かしている。超再生があるとはいえ、血が全て抜け切ったら身体を動かせず、死に至るだろう。
だがそうなっていない。故にそれは死因ではないと仮定できる。
次に痛みによるショック死。この身体は痛覚に鈍感だ。それで死ぬとは思えない。
「けど可能性はある。委員長に斑目と呼ばれた時、自分の意思と関係なく身体が勝手に反応したんだ」
それから『顔無し』はこう思うようになった。
今の状態は、自分の魂が斑目の魂に巣食っている状態であり、何かを契機にそれが覆るのではないかと。
感心もあったが、心の中で斑目に呼びかけていたのはそういう理由もあった。
ムツキは首を振る。
「条件反射って知ってる? 身体が勝手に覚えてただけじゃないの?」
「それでも俺は……勝手にこの身体に入っておきながら、そいつが得た筈の青春を奪いたくない。諦めたくないんだよ、斑目が普通の学生生活を送るのを」
話は平行線だった。だが、ムツキに変化が訪れる。
『顔無し』の顔を掴む両手の力は抜け、その行き先はゆっくりとパジャマの襟へと向かった。
そしてその額を、『顔無し』の胸に当てた。
説得を諦めたのだ。彼の意思は、自分の言葉では曲げられないと。
なら、これだけでも伝えておきたかった。
アルとハルカには聞かせられない。この距離にいる今だからこそ、言っておくべきことが。
「……ごめんね。初対面の時、酷いことしちゃって」
『顔無し』は瞳を閉じる。どうやら、ムツキは知ってしまったらしい。
柴関ラーメンで目の前で致命傷を負い、それが治る姿を見せてしまったのだ。無理もないと思った。
「……いいって。今生きてるし、悪いのはあの猫だ。お前らも十分苦しんだろ」
「はぁもう……軽いなぁ」
謝りたかったことを謝れた。
だというのにムツキの心が晴れることはなかった。
数日後、便利屋68は引越しの準備をしていた。
ハルカがトラックに最後の荷物を載せる。もういつでも出発は出来そうだ。
そんな彼女達の背中に、制止の声が降りかかる。
「待って!」
「っ先生」
そこにいたのは先生だった。まさかの人物に、アル達は動きを止める。
彼女達と1メートルぐらいの距離で、先生は大きな胸を揺らしながら両膝に手を置いた。
「はぁー……! はぁ……! ノ、『顔無し』は……ッ!?」
先生はアロナより、キヴォトスの防犯カメラの映像で『顔無し』を見つけたとの報告を受ける。
急いで確認してみると、そこにはアルにお姫様抱っこをされて運ばれる彼の姿があった。
だから急いで、この場に来たのだ。
因みに対策委員会には行き先を伝えていない。
『顔無し』が最後に自分と言葉を交わさなかったのは、不信感を抱かれるのを彼一人に収めるためだと思ったからだ。
先生は顔を上げて、便利屋68の全員を見渡す。
そこに『顔無し』の姿はない。
先生は自然と空き部屋に目を向ける。それを見て、ムツキは静かに言った。
「いないよ」
「え……。いな、い……?」
「もう、出て行っちゃった」
顔を伏せるムツキ。アル達も同様に、晴れた表情ではなかった。
「『顔無し』、風邪をひいてたんだ。完治するまでは、ちゃんと私達といたんだけど……っ」
「完治と同時に出て行っちゃったんです……っ。『そろそろ先生が来る筈だ。その前に出る必要がある』って!!」
間に合わなかったのか。
先生は慌てて、アル達に『顔無し』の行く先を聞いてないか確認する。
「そんな……どこに行くとか、聞いてない!?」
場所の問いかけ。
それに対し、ムツキが発したのはSOSだった。
「お願い先生……ネムネムを助けて」
「! どういうこと……?」
先生は戸惑いながらも、話を聞く。
ムツキ以外の全員も事情を知ってるらしく、その表情は歪んでいた。
「実は私達、『顔無し』には行方不明になったことにしておいてくれって言われてたんだ。でも、あれを聞いたらやっぱり私達には出来ない……!!」
「止められなかった私達が言えることじゃないけど、お願い先生……! 『顔無し』を頼めるのは、貴女しか……!!」
「うう……!!!」
泣き出す4人を抱きしめ、力強く先生は声を掛ける。
「大丈夫! 絶対、絶対私が何とかするから……! 教えて、『顔無し』は何て言ってたのっ?」
便利屋の脳裏に浮かぶのは、『顔無し』が出て行く時に残した言葉だった。
『ここまで面倒見てくれてありがとう。本当に助かったよ、アル、ムツキ、カヨコ、ハルカ。俺は今日でここを出ていく』
何故という声に『顔無し』が答える。
『俺の正体がバレた今、委員長は精神的に疲労している、彼女が万全じゃなければ勝てる戦いも勝てない。そこを突かれる可能性は十分に考えられる』
『となると長期決戦は危うい。だから短期決戦で行く』
『お前ら、しばらく俺が死んだこと……とまではいかないが。行方不明になったことに出来るか?』
一体何をするつもりなのか。
その問いかけに、『顔無し』は端的に答えた。
『カイザーに乗り込む』
おら喰らえ!
捨て身の男は強いぞ!!