憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

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最近リアルの方が忙しくなってきまして……。
今後のことですが、誠に申し訳ありません。一週間に一回を目安としてきましたが、不定期更新となる可能性が高いです。
遅筆になりそうではありますが、よろしくお願いいたします。


もし子供の手が大人の腕に届いていたら(後編)

 

 

 

 

 

 

 階段を降りる音が響く。

 コツコツコツ、と硬い靴の音が止まったのは、階段の踊り場だ。

 

 

 

「……やはり、貴女には気付かれてしまいますか」

 

 

 

 溜息を吐きつつ、踊り場で立ち止まった黒服が振り返る。

 懐から物が擦れる音がしたので、今度は物音を鳴らさぬよう、自分が下ってきたところをゆっくり見上げた。

 

 

 

「小鳥遊ホシノさん」

 

「……」

 

 

 

 ホシノは黙って黒服を見下ろす。何か思案しているような顔だ。

 黒服はその時間を与えないよう、口を開いた。

 

 

 

「ただ追いかけてきただけですか? 何もないなら、私はこれで失礼させて頂きます」

 

 

 

 この場所には黒服とホシノの姿しかない。

 ここが病院で、いつ人の通りがあるか分からないためか、ホシノは銃を構えていなかった。

 

 しかし、手に伸ばせる位置にはある。ホシノが愛銃に手を添えた。

 

 黒服が逃げたり、怪しい行動を取った瞬間に彼女の銃口から火が吹いてもおかしくない状況だ。

 

 

 

「正直に答えて。何の用でここにきた」

 

「クク。簡単なことです。『顔無し(ノーネーム)』さんに頼まれたのですよ」

 

「『顔無し』くんに……?」

 

 

 

 ホシノの意識がこちらに向いたことを確認し、黒服は素直に応じる。

 彼女はもう、小さな物音のことなど忘れているはずだ。

 

 それはそれとして、今優位に立っているのは間違いなくホシノである。彼からの頼みも果たせるよう務めるが、一番に優先するのは自分の身なことに変わりはなかった。

 

 

 

「ええ。彼とはカイザーPMCとの最終決戦の直前に、お話をする機会がありましてね。その際、戦いが終わったら自分の生死を確認しに来て欲しいと」

 

「何でそんなことを……」

 

「さて。私には分かりかねます。ともあれ、確認は済ませました」

 

 

 

 それでは、と踵を返し黒服は立ち去ろうとした。

 呼び止められぬよう、機敏な動作で。

 

 

 自分の目的を話したこと。それに変わりはない。

 だが理由までは話さなかった。

 明確にホシノに問われたわけではないからである。

 

 自分の身が第一優先であることに変わりはない。

 しかし、『顔無し』からの頼みも可能なら果たせるよう務めるつもりだった。

 

 そんな黒服に、声が掛かる。

 

 

 

「……止まって黒服」

 

「おや、どうしましたか。ホシノさん」

 

 

 

 踊り場から下の階層に向かおうとした彼の動きが止まった。

 彼を呼び止めたホシノの鼓膜を、微かな物音が揺らしたのだ。

 

 出所は……黒服の懐。固いものが擦れるような、そんな音だった。

 

 階段で黒服と遭遇した時にも聞こえ、気のせいかと思っていたがそうではなかったようだ。

 

 となるとホシノが取るべき行動は、追及である。

 

 

 

「懐に何か隠してるようだけど、それは何? 答えてもらえるかな」

 

「……」

 

 

 

 今度は明確に問われ、黒服は煙に巻くのを諦める。

 ビデオカメラを取り出した。ホシノは眉を顰める。

 

 

 

「ビデオカメラ……?」

 

「ええ。もし貴女達が戦いに勝利し、全員が生還していて、斑目さんが戻り『顔無し』さんが消えていた場合に、お渡しするよう頼まれていたものです」

 

「!」

 

 

 

 ホシノが反応を示した。そしてその目を吊り上げる。

 次に彼女が言うことを察した黒服は、ビデオカメラを足元に置いた。

 

 戸惑うように黒服とビデオカメラを交互に見るホシノ。

 何を考えているかは、分かりやすかった。黒服が言う。

 

 

 

「何故簡単に手放すのか、ですか」

 

「……うん。少し意外だった」

 

「貴女が本気でこれを欲しがれば、私は守り通すことが出来ませんからね。身もただでは済まないでしょう。『顔無し』さんには悪いですが、時にはこういった往生際の良さも持つべきです」

 

 

 

 それに、と黒服は言った。

 

 

 

「『顔無し』さんは危うい。そのビデオカメラには、彼の死に対する危機感の薄さが現れています。一度会話をした私は、『顔無し』さんとは敵対関係ではありますが……彼のような人間を失うのは惜しいと思っています、正直ね」

 

 

 

 ホシノが目を見開く。黒服の発言が予想外だったのだろう。

 黒服は表情を見られないように、顔を逸らすと、階下へと足を進めていった。

 

 

 

「その在り方を変えられるとしたら、仲間である貴女達だけでしょう……それとビデオを見るつもりなら、消火器を用意することをお勧めしますよ」

 

「っ黒服!」

 

 

 

 踊り場まで降り、階下に身を乗り出すがそこに黒服の姿はなく。

 彼がいたことを証明するように、ビデオカメラが3台置いてあるだけだった。

 

 

 

「……これに関しては、礼を言っとく。ありがとう……任せて」

 

 

 

 ぬいぐるみを抱くように、両手で優しくビデオカメラを抱える。

 ホシノが病室に戻ると、彼女の腕の中にあるビデオカメラに首を傾げる者が多数の中。

 

 

「げ」

 

 

 

 『顔無し』だけは違った。微かに目尻と頰を痙攣させている。

 まるで隠したものが見つかってしまった悪童のようだ。

 

 ホシノと目が合い、笑い掛けられる。言外に話があると伝えられているようだった。

 黒服はどうやら失敗したらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間、『顔無し』はベッドから逃走を図った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アビドス自治区内の道路に人影が一人。

 『顔無し』だ。

 

 斑目のマンションに向かっている彼の髪の毛は乱れ、顔の中央からは赤い線が左右に伸びている。

 病室での騒動は既に終わり、帰路に着いていた。

 

 未だに痛みは引いておらず、『顔無し』は疲れたように言った。

 

 

 

「酷い目にあった」

 

 

 

 独り言のように吐き出されたそれに、身体の同居人である斑目が応える。

 何と言うべきか迷ったのか、躊躇いがちに。

 

 

 

(えっと……お疲れ様です?)

 

「ありがとよ……逃げられると思ったんだけどなぁ」

 

(砂狼さんとムツキさんに秒で制圧されてましたね)

 

「言うな」

 

 

 

 『顔無し』から溜息が零れた。

 二人の脳内に、先程のことが蘇る。

 

 『顔無し』はベッドから飛び出そうとした。

 

 だがホシノと『顔無し』の間の空気で、何かを読み取ったのか。

 それとも『顔無し』が、寝起きから時間が経っていないのに加え、柔らかいベッドの上のため想定していた力が発揮できなかったからか。

 

 

 

『ん。逃がさない』

 

『ぐはっ』

 

『シロコちゃん、ナイスぅ〜』

 

 

 

 シロコのタックルにより、『顔無し』はベッドに戻された。抵抗する間もなく、そのまま流れるようにうつ伏せにされ、足の関節を決められる。

 それだけでは終わらない。

 

 

 

『ムツキちゃんがドーン!』

 

『っ』

 

 

 

 ダメ押しとばかりに、『顔無し』の背中にムツキが乗った。

 そのまま、彼の顎の下に腕を通し、抱き起こす。

 

 見事なヘッドロックだった。

 

 シロコとムツキにより、ベッドの上に一つの鯱鉾が出来上がる。

 

 

 

『そ・れ・で〜? あのビデオカメラは、な〜に? ネムネム』

 

『……黙秘は駄目か?』

 

『それならホシノ先輩に聞く。何か知ってる?』

 

 

 

 真横から顔を向けてくるムツキに対し、答える気のない『顔無し』。

 判断の早いシロコは、代わりにホシノに答えを求めた。

 

 ホシノが頬を指で弄りながら言う。

 

 

 

『残された私達のために、『顔無し』くんが用意してくれてた物、かなぁ』

 

 

 

 そこで勘の良い者は気付いた。

 

 残された私達。用意してくれてた物。

 前者はそのまま。後者は過去形なことから、既に意味をなくしたものだと分かる。

 

 つまり。

 

 

 

『ふぅん? つまり、ネムネム。あの化け物と戦う前に、自分がいなくなることを想定して、あれを残したわけ? 無茶しないみたいな態度を取ってたのに??』

 

『……』

 

 

 

 そういうことである。

 『顔無し』の無言がこれを肯定していた。

 

 ムツキの白く細い指が、『顔無し』の顔に伸びる。

 そのまま力強く、鷲掴んだ。

 

 

 

『返事しないんだ?』

 

『待てムツキ、それは洒落にならな』

 

 

 

 ガリリ、という猫に引っかかれたような音が響く。叫びはしないものの、悶絶する『顔無し』に周囲はその痛みを理解できた。

 

 

 

(あの時、皆、間平さんに同情の目を向けていましたよ)

 

 

 

 それは身体の中にいた斑目も同様である。

 

 身体の主導権が『顔無し』こと間平にあったため、その時の斑目は痛覚を持ち合わせていない。

 

 しかし視覚と聴覚は共有しているため、引っ掻く音と目の前に迫る小さな手には、背筋が冷えた。

 間平は後頭部を掻く。

 

 

 

「その数分後には、ちらほらと別の目が見られたけどな」

 

 

 

 呆れ。悲しみ。怒り。

 

 

 今思い出すだけでも、これ程の感情が込められた目を向けられたことを思い出す。

 

 きっかけはムツキだ。

 

 

 

『それじゃ、見よっか』

 

『は?』

 

『あのビデオ』

 

 

 

 頭上から僅かに見えるムツキの目尻は痙攣していた。

 その瞬間、『顔無し』は謝罪で彼女が止まることがないのだと理解させられる。

  

 彼女の機嫌を直す方法はただ一つ。

 

 『顔無し』からしたら公開処刑である、自分の死後を想定した仲間達へのメッセージを、その仲間達と一緒に見ることであった。

 

 

 同情の目を向けられるものの、『顔無し』に対し思うところがある者が半数を占めたらしい。

 

 病室の出入り口は固く閉められ、情報が漏れることも、『顔無し』が逃げ出すこともできなくなった。

 そもそも鯱となっている彼が、この拘束を抜けられるかも怪しいのだが。

 

 

 かくして、ビデオが再生される。消火されたビデオカメラが一つ生まれた後、『顔無し』の周りに人だかりが出来た。

 

 

 

『23歳なんて、まだまだ人生これからだよぉ……! 私より年下の癖に恰好つけてっ、ばかぁ……!!』

 

『ぜんぜぇ、この体勢で前から抱き締められるのはきづいぞ……っ』

 

 

 

 身体を反っている『顔無し』を真正面から抱き締める先生。

 胸板に重く柔らかい感触が押し付けられるが、彼に嬉しさはない。

 

 寧ろその質量に身体の反りの角度が小さくなり、苦しさが勝っている。

 

 

 

『あのお金、『顔無し』君がしてくれてたんだね……君には色々助けられていたのに、気付くことが出来なかったこと……本当に申し訳なく思ってる』

 

『あんた、色々気にし過ぎなのよ……本当に馬鹿。一方的に聞かされて、消えられる私達の気持ち考えたっ?』

 

『でもっ、でもそうならなくてよかったです……! 先輩っ』

 

『セリカちゃん、アヤネちゃん。大丈夫ですよ~。『顔無し』さんは今、ここで生きてますから』

 

 

 

 先生の後ろにはアビドスの4人が並んでいる。

 

 ホシノはその小さな手を握り締め、ノノミは涙を流し始めたセリカとアヤネの一年生組を抱き締め、落ち着かせていた。

 

 

 シロコは動画での『顔無し』の発言に、「ん。よく分かってる」と拘束を解かない。公開処刑を終えるつもりはないようだ。

 

 

 その間にも、ビデオの鑑賞は続けられていて、2個目の消火済ビデオカメラが出来上がる。

 宛先であったヒフミが、無言でズンズンと歩み寄ってきた。

 

 そして勢いよく、顔を上げる。溜められていた涙が宙を舞った。

 

 

 

『『顔無し』さん。私は決めました、一緒に映画を観に行きましょう。ハッピーエンドが何たるか、しっかり教えてあげます……! 『顔無し』さんの言うあれは、ハッピーエンドじゃありませんっ。いいところビターエンドですっ!! 分かりましたか⁉』

 

『わ、分かった……』

 

 

 

 ヒフミにとって、『顔無し』のハッピーエンドは解釈違いを起こすものだったらしい。

 普段の笑顔を絶やさないヒフミからは考えられない程の声量と気迫だった。

 

 これには『顔無し』も、戸惑いながらも頷くことしか出来ない。

 

 その反応は許容範囲だったのか、頬を膨らませながらも「なら、許してあげますっ」とヒフミは言った。

 

 

 そして、最後の消火済みビデオカメラが出来上がる。

 

 時々顎の下で強まる力から意識を保っていた『顔無し』。そんな彼に影が差す。

 

 

 

『ふ、フフフ……!』

 

 

 

 見上げると、アルが仁王立ちして身体を震わせていた。

 よく見ると額には青筋が浮かんでいる。そのまま彼女は、くわっと口を開く。

 

 

 

『貴方ね! 斑目君の世話を任せたり、叱ってくれと言ったり、私のことをお母さんか何かだと思っているでしょ⁉ 私、ビターでダークな便利屋なのだけど⁉』

 

『そもそも、最初から消えるなって話』

 

『くふふっ。いいよカヨコちゃん♪ もっと言っちゃえー!』

 

 

 

 煽るムツキに対して、ハルカは右往左往するものの、終始彼女達を止めずただ謝るだけだった。

 

 ゲヘナの風紀委員会も呆れた様子だ。

 

 最終的には、彼の自業自得だと結論付けをしたようで、「業務に戻るわ。お疲れ様」という言葉を残し、ヒナを先頭に風紀委員会は病室から去っていった。

 

 

 

「ああ……思い出しただけで腰と足の関節が痛む……」

 

(あ、あはは。それだけ皆、間平さんを大事に思ってるんですよ。これからはもう少し、自分を大切にした方がよいかと……)

 

「母校を守るために自殺した奴が言うかね。それを」

 

(うぐっ)

 

 

 

 斑目が呻き声に近い声を出す。

 

 ぐうの音も出ないし、そもそも『顔無し』が無茶をした要因は斑目にある。

 さらに言えば、意図的ではないにせよ間平を『顔無し』にしたのも斑目であった。

 

 鼓膜を揺らさない、沈んだ声が間平に届く。

 

 

 

(あの、本当にごめんなさい……)

 

「んな声出すなよ。この世界に呼んだことは最初から怒ってないって言ってるだろ。ったく」

 

 

 

 そんなやり取りをしている間にも、斑目の部屋に着く。

 

 入った瞬間漂う異臭にも、慣れたとばかりに間平は進んだ。浴室に辿り着き、躊躇なくその湯船の栓を抜く。

 

 そして浴室全体を見渡した。

 

 

 

「こりゃ、元通りにするのに時間がかかりそうだな」

 

(間平さん……本当にまたここで暮らすつもりですか? ……その、気味悪くないです?)

 

「全然。俺とお前生きてるし、何ならお互い一度死んでるだろ。赤の他人が死んでたら話は変わってきたけどな」

 

 

 

 間平はここで再び暮らすつもりだ。

 

 浴槽が血に塗れている事故物件に引けを取らない部屋だが、生憎その主は自分達である。さらに生きている。

 

 気味悪がる必要も、心霊を恐れる必要もなかった。

 

 学生が住む部屋にしては広いし、一から物件を探すより浴室を綺麗にした方が手っ取り早い。

 そういった理由で、ここにまた住むことにしたのだ。

 

 

 

(それは、そうですね……)

 

 

 

 斑目も納得したのか、そう言った。

 

 自殺してから孤独に間平の行動を見続けたものの、彼と出会い、温もりを与えられた斑目にとって、この部屋に恐怖を感じることはないのだ。

 

 でも、まだ斑目は浮かない顔だった。

 

 

 

(でも……せっかく小鳥遊さんが住まわせてくれるって言ってくれたのに、断ったのは勿体なかったような気がして……)

 

「何だ。委員長と暮らしたかったのか? ムッツリスケベめ」

 

(ち、違いますよ! 決して下心はありませんっ)

 

 

 

 実は病室で、ホシノから一緒に暮らす提案をされていた。

 恐らく罪悪感からくるものなのだろう。こちらの負担を少しでも背負おうとしているようにも思えた。

 

 それを間平は次のように断ったのだ。

 

 

 

『……異性と同棲するにはまだ早いんじゃないか』

 

『うへ⁉ そ、そうだね……あはは』

 

 

 

 ホシノは自身の発言を思い返したのか、頬を紅く染めて、それから話は何やかんや流れる。

 

 斑目の勉強机の椅子に体重を乗せて寛ぐ間平は、自身の発言を思い返し後頭部を掻いた。

 

 

 

「委員長にはああ言ったが、ぶっちゃけ同棲なんて自由にやったらいい」

 

(ええ⁉ じゃあ、何で断ったんですか?)

 

「委員長はお前に甘いと思ってな……十分にお前を鍛えられないだろ」

 

 

 

 ぴしゃりと言い放つ。

 斑目は意味が分からないのか、黙ったままだった。

 

 間平は溜息を吐いてから、補足する。

 

 

 

「斑目。今後の人生はお前が中心だ。勿論ピンチになったら助ける気だが、だからといって俺に頼りっきりはいけない。お前も、ある程度戦える力は持っておくべきだ」

 

 

 

 身体を斑目と間平は共有している状態だ。普通なら二人の人間が一つの身体を巡り、どちらの生活を主軸とするか争いが起こりそうではある。

 

 しかし、斑目と間平の場合はそれが起こらない。何故なら、最初から間平が斑目に、学生生活を始めとする今後の人生を譲る姿勢を見せているからだ。

 

 その間、斑目に危機が迫れば助けるつもりもある。

 

 だがそれに依存し過ぎるのは良くない。だから斑目だけでも戦える力を持つべき。そういう考えだった。

 

 

 

(……でも、僕に出来るでしょうか)

 

「んじゃ。試してみるか」

 

 

 

 間平の考えに否定は示さないものの、どこか斑目は後ろ向きだ。

 そんな彼に対し、間平は立ち上がり外に出る。

 

 

 

 

 

 向かった先はアビドス自治区だ。

 殆どが砂漠化しているためか、まだ治安が良いとは言えない。

 

 

 つまり。

 

 

 

「おいそこのお前! 金目のもの、置いてけやオラァ!!」

 

(トレーニング相手ゲットだ。戦ってみろ斑目)

 

「え!? え!? 間平さん、ちょっと!!?」

 

 

 

 無法者という名の、戦いに慣れてない斑目向けの練習台はごまんといる。

 いつの間にか身体の主導権を握っていて、目の前の無法者に銃口を向けられ慌てる斑目。

 

 その反応で容易いと思ったのか、威嚇の意味も含めて引き金に無法者の指が掛かる。

 

 

 

 ガシッ

 

 

 

「っえぇ!?」

 

「っ!」

 

 

 

 無法者がのけ反って驚いた。

 

 いつの間にか、数メートル離れていた男がその銃口を掴んで、照準からずらしていたからだ。

 

 

 中身は違う。

 だが確かに、その身体は覚えている。

 

 何度も修羅場を潜ることで得た、危機への対処を。

 

 斑目は驚き慌てて、その銃口を離して距離を取ろうとする。動揺からか、足を滑らせてしまった。

 

 

 

「お前、只者じゃないな!!!」

 

 

 

 活動を再開した無法者が銃口を、倒れそうになっている斑目に向ける。引き金には指を掛けていて、次の瞬間には何発もの弾丸が飛び出す筈だ。

 

 斑目は目を瞑った。せめてもの抵抗で、両腕で頭部を守ろうとする。

 

 

 

 

 発砲音と薬莢が砂に落ちる音が連続した。

 

 

 

「ま、マジかよ……」

 

「斑目。あそこはちゃんと決めとけ」

 

 

 

 それで出来たのは、頰の傷だけだ。

 間平が地面に手をつき、宙を舞って殆どの弾丸を避けたのだ。

 

 

 

「さっきみたいに、危機に対する反応を身体は覚えている。あとはお前が、保守的な行動を変えればいいだけだ。積極的に攻めろ」

 

「しばらくは危なくなったら俺が守ってやる、痛みも引き受ける。だからゆっくり、強くなっていけ斑目。いつか俺の助けが必要にならなくなるぐらいにな」

 

 

 

 そう言って、間平は再び身体の主導権を手放す。

 身体を取り戻した斑目は、目を開く。その視線はまっすぐ、目の前の敵に向いていた。

 

 仕切り直しだ。

 

 

 

 

(返事は?)

 

「はい!!!!!」

 

 

 

 

 そう言って斑目は、最初の敵を倒すため、構えるのだった。

 

 




間平・斑目「「俺(僕)達の戦いは、これからだ!!!!」

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