憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

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だんだん月曜日に投稿するようになってきちゃいましたねェ。
気を付けねば……日曜日に投稿できるように。
それとごめんなさい。本編で今回も女の子出てきません。

次話で今迄の分を巻き返すように、女の子も曇らせ要素も入れますのでお許しください!!!


43.カイザーPMC襲撃

 

 

 

 

 広大な砂漠には、激しい発砲音と爆発音が鳴り響いている。

 大地を弾丸が抉り、激しい砂埃がそこら中から立ち上がっていた。

 

 上空から見るとその動きは不規則だ。

 だが線で繋ぐと、一直線にカイザーPMCに向かっていることが分かる。

 

 そのため、カイザーPMCの兵士達からは焦りの声が見られた。

 

 

 

「くそ! ここで絶対食い止めろ! 理事のところへは行かせるな!」

 

「何で当たらないッ? 何で俺達は止められないッ!? 相手はたった一人だぞ!!!」

 

 

 

 たった一人の襲撃者に追い詰められている。

 その事実は兵士達の冷静さを欠かせるには十分だった。

 

 砂漠に響く轟音のテンポはより早く、大きさはより増していく。狙うより数で攻めるらしい。

 

 

 だがそれは。

 襲撃者……『顔無し(ノーネーム)』に対しての手段としては悪手だ。

 

 

 

(好機だな)

 

 

 

 辺り一面が薄い黄土色に染まる。

 『顔無し』は踵で強く砂を蹴り、加速した。

 

 ここからは彼の独壇場だ。

 

 

 

「ぐわっ!?」

 

「そこか! ぎゃあ!?」」

 

「は、速い……っ!?」

 

 

 

 兵士であろう、黒い人影を捕捉して気付かれる前に仕留める。

 気付かれたとしても、『顔無し』の速度を捉えられない兵士達は、次々と金属棒で殴り倒された。

 

 砂を踏み鳴らす音と揺れる車体の音が、近付いてくる。

 音が鳴る方向を見て、『顔無し』は苦い顔を浮かべた。

 

 

 

「……戦車もあるのか。今のうちに潰した方がよさそうだ」

 

 

 

 大きな黒い影だ。先端に長い筒状のものがあるため、戦車で間違いない。それが発する威圧感に呑まれず、『顔無し』は鋭い視線を向ける。

 

 砲弾を撃たれるのは面倒だ。着弾の範囲も広いし、舌のヘイローが壊される可能性も高くなることが考えられる。

 『顔無し』は再度駆け出し、その勢いを活かして跳躍した。そのまま金属棒を振り上げる。

 

 

「せーの……っ!」

 

 

 刀で斬り伏せる様に、砲筒を金属棒で殴りつけた。鈍い音と共に、『顔無し』の持つ棒でなく、砲筒が折り曲げられる。

 彼の常人離れした力に負けない素材だからこそ出来ることだった。

 

 あれではもう砲弾が飛ばされることはないだろう。

 『顔無し』はそう思い、戦車に背を向けた。

 

 

 ドゴーン!!!!

 

 

「ッ……あーあ。そんな状態で撃つから」

 

 

 爆音と共に背後から熱い空気が吹き込んでくる。顔を顰めながら振り向いた先の光景を見て、『顔無し』は後頭部を掻いた。

 

 そこには炎上する戦車が。

 突然の衝撃で、戦車の中にいる兵士は反射的に反撃を試みたようだ。

 

 だが砲筒が曲げられた状態のため、自爆する形になってしまったのだろう。

 これで障害はなくなった。そう思い、カイザーPMCの建築物に進もうとする『顔無し』を立ち塞ぐようにある物が現れる。

 

 

 バララララ!!!

 

 

「……はは、マジか」

 

 

 周囲の砂埃と同様に飛ばされそうだ。

 腕で目を覆いながら、『顔無し』は上空を見る。

 

 そこには、一機のヘリコプターがこちらを見下ろしていた。

 まさかそんな物まであるとは。初めての相手に、『顔無し』は対策を考える。

 

 

(プロペラの風で目眩しの砂埃が消えたし。さて、どうするか……)

 

 

 ヘリコプターを観察する。

 確認できた武装はミサイルと機関銃。常にこちらの状況を上から見ることができ、面での攻撃も可能。

 

 『顔無し』は砂ごと地面を殴ることで、砂塵を発生させそれをぶつけることを考え付いたが、却下した。

 

 

(ダメだな。多分、プロペラからの風で封殺されるだけだ。落とすことは出来ない……となると)

 

 

「直接殴って落とす」

 

 

 だが肉体が常人離れしているとはいえ、あの高度まで到達できるかは微妙だ。

 

 最初に考え付いたのは、力一杯跳躍し、可能な限り近付いた上、得物を操縦席に向かって投げ飛ばす。

 それでヘリコプターを制御不能にして落とす方法だ。

 

 

 しかしそれは、武器を失った状態かつ身動きできない上空で無防備になるという欠点がある。

 そのうちに操縦席から身を乗り出した兵士に、銃撃される可能性も大いにあり得た。

 

 

 

(……この方法はナシだな。ここはシンプルに、あいつ(ヘリコプター)に連れてってもらうとするか)

 

 

 

 負傷するのは同じ。ただ、こちらの方が被害は最小限に出来る。

 得物を持ったままでいられるという点も大きい。

 

 大事なのはタイミングだ。

 上空から放たれる弾丸やミサイルを避けながら、その時を待つ。

 

 だが待ち続けるのもよくない。弾切れを狙うことも考えたが、その間にも増援がくる可能性もあるからだ。

 

 

 そして、その時は来た。

 

 

(ヘリの位置よし、着弾点よし。ここしかない……っ)

 

 

 やや角度をつけて、こちらに飛来するミサイル。

 そこに、敢えて『顔無し』は飛び込む。着弾点を覆うように空中で仰向けになった。

 

 舌を守るため、後頭部を両腕と金属の棒で覆った。

 直後、『顔無し』の背部で爆発が起こる。

 

 

 激しい熱と痛みが同時に走った。腰から下を失った『顔無し』の身体は、臓器と血液を撒き散らしながら、回転して上空に打ち上げられる。

 その高度はヘリコプター以上に達していた。

 

 

 爆発の力を受ける面積が大きかったからだろう。

 『顔無し』は見た。操縦席にいる兵士が、ガッツポーズをしたのを。襲撃者を仕留めたと喜んでいるのだろう。

 

 

 その感情を抱いていたのは、『顔無し』も同様だった。

 

 

 バリィン! と窓が割れる音する。

 『顔無し』が得物を、ヘリコプターの窓に突き刺したのだ。驚いたように、兵士が彼に視線を向けた。

 

 間髪入れず、ひび割れた窓ごと『顔無し』はその頭を蹴り抜く。既に下半身は修復していた。

 

 太腿から先が窓ガラスによって、ズタズタに切り裂かれて夥しい量の出血が起こるがそれもすぐに塞がった。

 

 

「ちょっと拝借させてもらうぞ。流石に下半身剥き出しじゃ格好つかないんでな」

 

 

 伸びた兵士の服を奪う。折角なので上下共に、兵士の服装に切り替えた。

 動きにくさは感じるが常人離れした筋力には関係ないし、その分耐久力も高まる。

 

 ヘリコプターが墜落する前に飛び降り、『顔無し』はカイザーPMCに向かうのだった。

 

 

 

 その建物内で、『顔無し』の姿を映像越しに見るカイザーPMC理事の姿がある。

 興奮気味な様子で叫ぶ姿は、喜びの度合いを表しているようだ。

 

 

「ク、ククク! 素晴らしい……!! 自身を顧みない手段を躊躇なく行う思考、それを実現させる力!!! 私は最強の兵器を手に入れられるッ!!!」

 

 

 斑目に逃走を許した時、必死にその姿を探した。手に入る目前で逃げ出した彼に対して、強い怒りを感じたこともあった。

 だが今は感謝している。こんなにも価値を身につけ、自分の元に戻ってきたのだから。

 

 

 

「必ずお前を手に入れるぞ……斑目ユウ!!!」

 

 

 

 映像に映る『顔無し』はこの建築物へと足を踏み入れている。

 

 飛んで火に入る夏の虫とはこのことだ、とカイザーPMC理事は『あの時使えなかった装置』を持つ手に力を込めた。

 

 

 一方、屋内に入った『顔無し』は眉を顰め、歩いている。

 

 

 

「……人気が全くない。外の奴らで全部なのか?」

 

 

 

 いや、そんな筈はないだろう。だとしたら、あまりにも警備が手薄だ。

 身を潜めていると考えることにし、曲がり角やダクト、物陰に注意を向けながら進んでいく。

 

 

 すると、通路の壁に工場の屋内図を見つけた。

 奥の方に一番大きい敷地面積を誇る部屋がある。理事室だ。

 

 

「何かあるのは間違いないだろうが……行くしかないな」

 

 

 彼を守るために兵士が結集しているのか、罠が仕掛けられているのか。

 少なくとも空室で、アビドスを救うために必要な代物が都合よく手に入るといったこともないだろう。

 

 『顔無し』が理事室に辿り着くと、扉が自動で開いた。

 その先には、こちらに背を向け立っている人影がある。彼より背が大きく、ガタイも良い。

 

 

 スーツを着ていなければ、戦闘用の兵器だと思ってしまう。そんな機体をした、カイザーPMC理事長だった。

 

 

 その視線の先には、大きなモニターがある。そこに映る光景に『顔無し』は口を閉す。

 

 

『いぎっ!? あ、ぐあぁぁぁぁぁ!!!! ぁあああああ!!!!』

 

 

 そこには斑目ユウがいた。映像ではあるが。

 

 

 身体を欠損させ、痛みで暴れている。恐らく、まだ痛みに慣れていない頃の彼だ。

 

 その様子を見てクク、と喉を鳴らして笑った後、理事は『顔無し』の方を向いた。

 

 

「実に素晴らしい。ただ痛みに泣き叫ぶだけだった子供が、ここまでになったのだから」

 

「気色悪いな。性癖は自由だが、安易に人前で晒すなよ」

 

「そう言うな。自分の成長(実験過程)を君も見たいだろう?」

 

「本気で思ってるなら、一度スクラップになることを提案するよ」

 

 

 モニターには斑目の記録であろう動画が、ズラッと並んでいる。

 見ていて気分が良いものではない。

 

 『だが嬉しいことでもある』。その中には、カイザーPMC理事の後ろ姿が映るものもあった。

 元々この動画の持ち主は黒服なのか、上手く彼だけが映らないように作られている。

 

 

(まあ良いか。こいつさえどうにかすれば、あいつ等は……)

 

 

 先生、そしてアビドス対策委員会の面々の顔が思い浮かぶ。

 が、理事の笑い声が響き彼女達の顔は打ち消された。

 

 『顔無し』は笑いの主に視線を投げる。

 

 

「不調でも起こしたか?」

 

「……口の減らない小僧だが、まあいい。君が私をスクラップに出来ると思っていることがおかしくてね」

 

 

 そう言うと、理事が手に持つ装置を口元に待ってくる。

 

 

「『斑目ユウ』。両膝をつけ」

 

「……?」

 

 

 斑目の名前を強調して、『顔無し』に向けて命令した。

 だが彼には何の問題も起きなかった。

 

 

「? 効きが悪いようだな。もっと強くしてやる。『斑目ユウ』!! その場で両膝をつくんだ!!!」

 

 

 ガクッ

 

 

(……あー、そういうこと)

 

 

 突然、『顔無し』の身体に変化が起こる。

 まるでチカラが入らなくなったように崩れたのだ。そのまま両膝をつく。

 

 装置の正体を察した。

 『顔無し』は心の中で、この場にいない先生達に謝る。

 

 

 

「クク、やった! やったぞ! ハーッハハハハハハーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

(悪い。先生、セリカ、アヤネ、シロコ、ノノミ、委員長……ちょっと、しんどい思いさせそうだ)

 

 

 目の前では、カイザーPMC理事が高らかに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




嘘予告





「君達が探しているのは……彼かな?」


 アビドス対策委員会の前に立つ、カイザーPMC理事長は指を鳴らす。
 上空に一つの影が現れ、先生は声を張り上げた。



「皆! 下がって!!!」



 一斉に後退する対策委員会。
 砂埃が立ち、その中にある人影に全員がデジャヴを感じた。

 まるで、カタカタヘルメット団に襲撃されていた時に見たような……。
 彼との、初対面の記憶。



「……嘘、でしょ?」



 セリカの口から多量な空気を含んだ声が絞り出される。
 声には出さないものの、砂埃が晴れるにつれ対策委員会と先生の目が見開かれた。



『先、輩……?』

「『顔無し』、なの……?」



 そこにいたのは、『顔無し』だ。だが自分達がよく知る姿ではない。

 頭にはバイザーのような謎の装置が付けられており、メカニックなパワードスーツを身に纏っていた。




「先生……」



 呼び掛けるように、『顔無し』が声を発する。




「セリカ、アヤネ、ノノミ、シロコ……ホシノ」




 初めて名前を呼ばれる。
 だがそこに嬉しさはなかった。
 確かに距離は感じていた、いつか名前で呼んでほしいと思っていた、だけど。

 こんな呼ばれ方は、あんまりだ。



「そこにいるのは、お前達なのか……?」



 誰もその問い掛けに答えられない。
 答えた分、後に苦しみが増す気がしたから。実際、その予感は正しかった。

 『顔無し』は言う。




「……俺は、お前達を………消さなければならない」
 
 

『メインシステム 戦闘モード起動』



 無情な合成音声と共に、彼のパワードスーツから兵器が現れた。
 戦いは避けられない。
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