憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

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やっぱブルアカのアニメはいいっすね〜!
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46.『顔無し』の目的

 

 

 

 

 

 

 

 カイザーPMCの建造物を離れ、先生と『顔無し(ノーネーム)』、アビドス対策委員会が乗った車は広大な砂漠を走っていた。

 何度目か分からない車体の揺れを体験した後、『顔無し』は口を開く。

 

 

 

「さて……俺の目的、洗脳されたフリをした理由。だったか」

 

 

 

 どこから話したものかと、腕を組んだ。

 セリカはそれを見て、すぐに『顔無し』は話し始めないだろうと思い、背を伸ばすようにして助手席の先生を見る。

 

 

 

「因みに先生も知らないの? 『顔無し』の目的とか」

 

「うん……私も初めて聞く。身体のこととか、聞きたいことばかりだよ」

 

「安心しろ。この身体に関しては、嫌でも話に出てくるから」

 

 

 

 この身体と『顔無し』の目的は、切っても切れない関係だ。どちらかが欠ければ、話としてちぐはぐとなる。

 大方、話す道筋は作れた。『顔無し』はフーと息を吐き、話し始める。

 

 まず目的からだ。

 

 

 

「俺の目的は一つ。『アビドスを救う』。これだけだ」

 

「救う……ですか?」

 

「えーと……もう少し詳しく教えて頂けますか?」

 

 

 

 あまりピンとこないのだろう。アヤネとノノミが首を傾げた。

 先生含め、他の対策委員会も同じようだ。

 

 

 

「……そうだな。これは大雑把過ぎる。悪かった」

 

 

 

 『顔無し』は一つ咳をし、仕切り直す。

 

 

 

「まあなんだ」

 

「お前達を狙う大人を潰して、学校が背負ってる借金も無くして、お前達が弾薬も心も消耗しない学生生活を送れるようにして」

 

 

 

 んでもって、と『顔無し』は続ける。

 自分の衣服の胸辺りを、強く掴んだ。

  

 

 

「その中に、この斑目を入れてやりたい。それだけだ」

 

「ちょ、ちょっと待って」

 

 

 

 ホシノが声を上げる。

 

 彼女はちぐはぐな表情だった。

 困惑しているが、『顔無し』の発言に希望を抱き始めているような、そんな顔だ。

 

 確認するように、恐る恐る問いかける。

 

 

 

「斑目と、また会えるの……? 死んだんじゃ、無かったの?」

 

「正直……何とも言えない。だが可能性はある」

 

「ん。斑目先輩って、ホシノ先輩が好きな人だよね?」

 

 

 

 ずばん、とシロコが切り込んだ。

 ブラックマーケットにいた先生と対策委員会の面々は吹き出しそうになる。そして慌てて、ホシノと『顔無し』に顔を向けた。

 

 

 

「ふぇ……」

 

「……お前、この状況で凄いな」

 

 

 

 ホシノは完全に動きを止め、『顔無し』はシロコに目を向ける。

 だが、これは良い傾向だ。その証拠に、重苦しい雰囲気がなくなってきた。

 

 その証拠に、ホシノが見たことない表情で勢いよくシロコに顔を向ける。恥ずかしさからか、目尻に少しだけ涙が浮かんでいた。

 

 

 

「シロコちゃん!?」

 

「慌てなくていい。『顔無し』と斑目先輩は別人だから」

 

「まあ、そうだな。見た目も多少はあるだろうが、委員長が好きになったのは中身だろ? 俺は何とも思わないから安心しな」

 

「う……別人だと分かってはいるけど、斑目の顔で言われると心にくるかな……」

 

 

 

 なので、『顔無し』もその波に乗る。

 

 彼の目的に、自身のことは含まれていない。

 ここで終わってもいいと考えていた。もし、斑目が戻れる手段を見つければ、迷うことなく実行するつもりだ。

 

 

 

(委員長は良いとして……それを聞いたツインテちゃんや先生が、素直に首を縦に振ってくれるとは思えない)

 

 

 

 だから、重苦しい雰囲気は駄目だ。マイナスな面ばかりに目を向け、その目的の欠陥に気付かれる可能性が高まる。

 

 だが、いつもの対策委員会の雰囲気でなら、そんなことは起こりにくい。例え起こったとしても、話題を変えたり、シロコやノノミを会話に混ぜれば話を流せるだろう。

 

 

 

「えっと、話を戻していいかな。『顔無し』」

 

「うん?」

 

「斑目君は結局どうなっているの? 今迄、記憶喪失、悪霊による乗っ取り、過去に自殺してる……色んな情報が錯綜してるから、そろそろはっきりさせておきたいんだ」

 

 

 

 ……流石は先生。大事な場面では、そう簡単に流されてくれないか。

 彼女の空気に車内が呑まれていくのを感じ、溜息を吐く。

 

 厄介な状況だな……と思いながらも、『顔無し』は素直に答えた。

 

 

 

「分かった。まず斑目が過去に自殺していること……これは本当だ」

 

「……ッ」

 

 

 

 ホシノの顔が歪む。

 これから何度聞いても、きっと彼女は同じ反応をする筈だ。

 

 過去の過ちを思い返し、一度彼を死なせた発端となった罪悪感に苛まれる。そんな終わりのない苦しみを味わい続けるのだ。

 

 

 

(確かに委員長は過ちを犯したが……その積もる心の痛みは相当なものの筈。今迄だって苦しんできた。だからこそ……委員長は幸せになってもいい筈だ)

 

 

 

 そんなホシノの様子を見て、『顔無し』はそう思った。

 横からセリカが恐る恐るといった感じで聞いてくる。

 

 

 

「確認だけど、それってホシノ先輩にその……肩を撃たれて追い出されたからじゃ、ないのよね?」

 

「ああ。それで絶望して自殺したわけじゃない。大体の流れはカイザーPMC理事が言ってたままだ。あいつが話してないこともあるがな」

 

 

 

 『顔無し』は自分が知る限りの情報を話す。

 斑目が交わした契約のこと。何を目的とした実験なのか、そしてそれを受けることで、斑目は何を受け取ったのか。

 

 ホシノは日記を通し、それについては粗方知っている。なのでただ黙って、罪を噛み締めるように『顔無し』の話を聞いた。

 

 彼の話を聞き終え、各々が反応を示す。

 

 

 

「つまり、斑目くんは人体実験を受けてたんだね。私みたいに普通の人間から、キヴォトスの子達のようになる……」

 

 

 

 先生は『顔無し』の話を咀嚼し、冷静を取り繕っていた。

 その身の内には、溢れんばかりの激情が押し込められている。大人として、そして一番関わりの低い者としてだろう。

 

 

 

「まさか、今以上に借金があったなんて……それを半分も。そして、私達に害をなさないために、自ら……」

 

「私達はずっと、斑目先輩に助けられていたんですね……」

 

「ん……」

 

 

 

 アヤネ、ノノミ、シロコは話したこともない先輩に思いを馳せた。彼の行動原理は、常にアビドスに対するものだ。

 

 尊敬、感謝、そしてそんな彼を自殺へと追いやったカイザーPMC理事に、改めて怒りを覚える。

 

 全てを終わらせて、先輩と話したい。感謝の気持ちを伝えたい。

 今迄辛い思いをさせてしまった分、それ以上の楽しい思い出を共に作りたい。

 

 

 

 そう彼女達は思った。

 

 

 

「……その結果、今みたいな身体になったわけね」

 

「ああ。結論から言えば、お前らみたいな頑丈な身体は得られなかった。当時の斑目が得られたのは、人間離れした再生能力と筋力。そしてこの鉄面皮だ」

 

「それと、痛みに対する耐性でしょ? ……許せないわ。その実験をした黒服ってやつも、洗脳しようとして斑目先輩を自殺に追いやったカイザー理事も」

 

 

 

 一度俯き、顔を上げたセリカの紅い瞳が鋭くなる。その眼光も強まり、彼女の怒り具合を表していた。

 

 斑目がアビドス高等学校から去り、自殺に至るまでの過程を知る。

 あとは悪霊による乗っ取り。そして記憶喪失の真実についてだ。

 

 

 

「で、悪霊による乗っ取り。これは傍から見れば、そう言えなくもない」

 

「え?」

 

「斑目は確かに自殺した。でも桁違いの再生能力で、結果的に生き返ったんだ。……斑目の意識が、沈んだままの状態でな。だから植物人間が出来上がる筈だったんだが……」

 

 

 

 そう。筈だった。

 全員が『顔無し』に顔を向ける。

 まるで身体という外側ではなく、魂という内側を見るように、じっくりと。

 

 『顔無し』は静かに頷いた。

 

 

 

「そうだ。俺が入ったことで、今こうなっている。同期・先輩の身体を使って、何食わぬ顔で溶け込んでいたんだ……悪霊と言われるのも無理ない」

 

「あ……っ」

 

 

 

 自嘲する『顔無し』に、ホシノの声が引き攣る。

 顔は青褪め、その視線は定まらなかった。

 

 カイザーPMC理事とのやり取りから、『顔無し』が悪霊ではないことは分かっている。

 だからこそ、自分の今迄の言動や考えが鮮明に思い返された。

 

 ホシノは不快な胸の音を呼吸で落ち着かせ、声を出そうとする。

 それは違うと。

 

 

 

「それは違います!!!!」

 

「うわっ! アヤネッ?」

 

 

 

 先生が驚いたように、運転席にいるアヤネを見た。

 それは車内の全員が同じだった。ホシノが出そうとした否定の声も完全に掻き消される。

 

 

 

「先輩は、悪霊なんかじゃありません。斑目先輩の代わりに、私達を守ってくれた、もう一人の先輩です……!!!」

 

「っそれに、斑目先輩の身体を使っていることに罪悪感を抱いているようですが……私は、感謝しています」

 

「? 感謝……?」

 

 

 

 その発言に、『顔無し』は目を見開く。

 感謝している。そんなことを言われるなど、思ってもみなかった。

 

 『顔無し』の心情を読み取ったのか、彼が顔を上げると後部ミラーに映るアヤネと視線が絡み合う。

 

 

 

「だって、先輩が来てくれなければ斑目先輩の身体は、カイザーに回収されていた可能性もありますよね……? そうなれば、私達は斑目先輩のことを知ってさえあげられなかった。助けられてきた事実を知ることすら出来なかった……!」

 

「でも、貴方が……! 先輩がいたから、今私達は斑目先輩を知れた! 本来交えなかった、斑目先輩と私達を繋いでくれたんです!!」

 

「それに今迄、散々助けてきてくれたじゃないですか! 私達のために戦って、一緒にご飯を食べて、お話したじゃないですか!!」

 

 

 

 今に至るまで、共に駆け抜けてきた思い出が蘇る。

 カタカタヘルメット団の拠点を襲撃したこと、ラーメン柴関で食事をしたこと、学校内で雑談や掃除など学生らしいこともした。

 

 

 

「先輩が自身を悪霊だと言うのなら、その何倍も大きな声と量で、今までの思い出を武器に私はそれを否定します!! 貴方は紛れもなく、私達の先輩です!!!」

 

「だから、そんなに自分を……っ! 卑下しないでくださいっ」

 

 

 

 そこまで言い切り、アヤネは乱れた息を整えた。

 車内に沈黙が訪れる。何秒かその状態が続いた後、溜息が吐かれる。

 

 

 

「ここまでアヤネちゃんに言わせたこと、反省しなさいよね。『顔無し』。あんたに後ろ向きな発言は似合わないっての」

 

「ん。この思いから目を逸らしたら、これからはチキンって呼ぶ」

 

「これから悪霊って自称したら、アヤネちゃんだけじゃなく私達もそれを否定しますからね〜☆」

 

 

 

 笑って、セリカとシロコとノノミがアヤネに追従する。

 『顔無し』に向ける視線に、懐疑心などはない。そこには確かな信頼があった。

 

 それはホシノも同様だ。

 

 

 

「うん……やっぱり若いっていいね。これが、本来の見え方なんだよね。私は色々ごちゃごちゃ考えて……その結果、君を敵対視しちゃった」

 

「そんなおじさんが言えることじゃないけどさ……『顔無し』君は悪霊なんかじゃない。今ならはっきり言えるよ」

 

 

 

 『顔無し』は口を開く。俯いたまま、言い聞かせるようにゆっくりと。

 

 

 

「記憶喪失は、俺の嘘だったんだぞ。都合の良い未来を委員長に見せるために、お前の同期の振りをした」

 

「なーに? 『顔無し』君。おじさんに怒ってほしいのかな? ……怒らないよ。それも、私のためを思ってのことだったんでしょ? アビドスを守ろうとしてくれたその意思を、今の私は否定しない」

 

 

 

 真っ直ぐな目を向けられ、『顔無し』は後頭部を掻く。

 何というか……こしょばゆい。こんな感情を向けられるなんて、思ってもみなかった。

 

 

 

「『顔無し』」

 

「今度は先生かよ……何だ」

 

「私達が初めて会った時、私が『顔無し』の無茶な戦い方を咎めたことに対する返答、覚えてる?」

 

「……ああ」

 

 

 

 よく、覚えてる。それはお互い様だった。

 当時、言って、言われた言葉が思い返される。

 

 

 

『そのやり方じゃ君を恨む人達が沢山出てくる。もしかしたら、君の周りにも被害が及ぶかもしれないんだよ?』

 

『ん? ああ。それなら問題ない。そんな人間いないから』

 

『友人も先輩も後輩もいないし、被害を被るとするなら俺だけだ。関係を持つ奴等もいるが……まあ、あいつ等なら大丈夫だろ』

 

 

 

 『顔無し』の返答を聞いて、それはとても寂しいことだと思った。何ともないように言う彼を、周りの目がなければきっと抱きしめていただろう。

 

 だが、今の彼は昔とは違う。

 

 

 

「あのセリフ……今でも言える?」

 

「言えるさ。……カイザーPMCに単独で乗り込んだ時の俺ならな」

 

 

 

 だが、今は違う。

 先生がいる。アヤネがいる。セリカがいる。シロコがいる。ノノミがいる。

 

 ホシノがいる。全員が『顔無し』に対し、信頼を向けてくれている。

 であるのなら、それに応えないわけにはいかない。

 

 

 

「協力してくれ。これで全てを終わらせる」

 

 

 

 『顔無し』が掲げたのは、USBメモリだ。黒服から貰った、真っ黒の。

 突然出されたそれに、彼以外の全員が首を傾げる。

 

 『顔無し』は続けた。

 

 

 

「俺が洗脳されたフリをしたのは、この中に入ってるデータを盗むためだ。内容は……斑目ユウの人体実験の記録。そして嬉々としてそれを見る、えぐい性癖を持つどこぞの理事の姿」

 

「……!!!」

 

 

 

 車内に緊張が走る。

 その場の全員が、『顔無し』がやろうとしていることが分かったのだ。

 

 だが恐れはなかった。

 積年の恨み。斑目が味わった苦痛の日々。それを返せる絶好の機会だ。

 

 

 

「こんなもん世に出たら、社会的にあいつは死ぬ。当然、必死になってこのデータを取り戻そうとする筈だ……俺達を殺してでもな」

 

「ん。前置きは要らない。私達のやるべきことを、端的に言ってほしい」

 

「はは。血気盛んだな……頼もしいよ」

 

 

 

 銃の整備を始めるシロコに『顔無し』は苦笑し、静かに、されど車内に響く声で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「総力戦だ。このデータ含む、俺達が持つ全てのリソースを使って、あいつらを叩くぞ」

 

 

 




今の私「曇らせドコ……ココ……?」

未来の私「終盤まで待て。すぐに分かる」
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