感想、お気に入り登録、高評価ありがとうございます!
大変励みになっております! 今後もモチベーションとなりますので、よろしくお願い致します!
誤字報告も助かっております!!
今回は日曜日に投稿できた!
素敵だァ……(自画自賛)
総力戦。その一言に、車内は静まり返った。
遂に終わりが近付いている。それを感じているのだ。
ここで、助手席にいる先生がミラー越しに『
「『顔無し』、ちょっといい?」
「どうした先生?」
その顔は少し不安そうだ。
自然に『顔無し』の口調も柔らかくなる。
「……いいぞ。気になることがあれば、言ってくれ」
「うん……あの、さ」
先生はこの中で一番命を落としやすい。それに今の対策委員会を見守る大人でもある。不安に思う気持ちは誰よりもある筈だ。
先生は頷いてから、恐る恐る口を開く。
「……本当に勝てるのかな? 私達だけで」
「?」
「だって応戦できるのは『顔無し』含めて六人しかいないし、弾薬とかも足りるかどうか」
「いや、流石にこの車内にいる全員じゃ無理だろ。アビドスだけじゃ、弾薬も怪しい」
「ええ!!?」
驚きのあまり、先生は振り返って『顔無し』を見た。
それは対策委員会も同様のようで、代表してセリカが詰め寄ってくる。
物凄く黒い笑顔だった。
「どういうこと? じゃあ負け戦じゃない。ん?」
「落ち着けよツインテちゃん。……言ったろ? 俺達が持つ全てのリソースを使うって」
肩を押して、まずセリカを定位置に戻す。
それから周囲を見渡し、確認するように『顔無し』は言った。
「俺達が過ごした時間は、この車内の人間だけで完結していない。そうだろ?」
「! ……成程。そういうことね」
一番初めに動いたのは先生だ。
自分のやるべきことを理解したようで、頷いてシッテムの箱を取り出す。
そのまま手慣れたように、無駄のない動きでスケジュール帳に二つの予定を書き込んだ。
画面から目を外さないまま、先生が言う。
「私がやるべきことは分かった。でも『あの子達』には、『顔無し』が会いに行って、謝ってから、協力をお願いするんだよ? ……心配させたんだから」
「ああ……分かってる」
『顔無し』はそう答えた。
表情は苦いものを口に含んだように歪んでいる。少し気まずいようだ。
ノノミが表情を輝かせる。
「そうでした! 私達にはヒ……いえ、ファウストさんという心強い味方がいますね☆」
「あいつ等かぁ……。いやまあ、腕は確かなんだけど」
「……彼女達、協力してくれるでしょうか」
二人の会話で、対策委員会も彼等が行おうとしていることが分かった。他校に協力を仰ごうとしていると。
ノノミには、共に銀行強盗をした他校の少女が。
セリカには、戦闘だけでなく共闘も行った便利屋が。
アヤネには、その便利屋と共闘した際の相手である、風紀委員会の姿が浮かぶ。
続いて言葉を発するホシノの表情は、今のアヤネのように、少し晴れなかった。
「うーん。それもあるんだけど、そもそもおじさんとしては、他校を頼るのは避けたいんだけどなぁ……」
「安心してホシノ。ここからはシャーレの先生として、彼女達とやり取りするつもり。だから借りを作るのは、シャーレであってアビドスじゃない」
「でも……それじゃ先生が」
「大丈夫。上手くやってみせるよ」
「っ……分かった。ありがとね、せんせー」
先生に笑顔を向けられたホシノが折れる。
これ以上、その決意に水を差すのは憚られた。
それは冒涜だ。先生が自分達に向けている好意と、自分達のために用意した覚悟に対する。
先生の大体の予定は把握した。
対策委員会の面々も、それに続き今後の自分達の行動を話し合う。
「ん。なら私達は、援軍がくるまで徹底抗戦」
「その前に、アビドスに住んでいる人達を避難させないといけません!」
「出来るだけ長く交戦できるように、防壁とかも作らないとですね〜☆」
「いいわ、やってやろうじゃない!」
「うへ……今回ばかりは、おじさんも真面目にやらないとね」
正に一致団結。全員が全員、互いにやるべきことを確認し、その達成に意識を向けていた。
『顔無し』も同様に、自分の行動を確認する。
(アル達と合流して、あいつらを送り出す)
先生達は『顔無し』が便利屋68と合流した後、自分達の下に戻ってくると思っていた。
だが、実際は違う。勿論、手助けはするつもりだがその前に『顔無し』には行くところがあった。
(その後、『黒服が言ってた場所』に向かうか……気にならないと言えば、嘘になるからな)
『顔無し』はカイザーPMCに訪れる前にした、黒服とのやり取りを思い出す。
カイザーPMCに顔無しが乗り込む前、アビドスの砂漠が望めるビルにて。
黒服が『顔無し』の下に歩み寄ってくる。
「準備出来ましたよ、『顔無し』さん。ビデオカメラ3台は業者に預けてきました。条件が整えば、各々の場所に送られる予定です。それとこちらはUSBです、どうぞ」
「何から何まで悪いな。助かる」
録画を終え、ソファで寛ぐ『顔無し』に黒服はそう言った。
『顔無し』は渡されたUSBを片手で弄ぶ。
「因みにこれ、変なウイルスとかないよな?」
「クク。ご安心を。先程も言ったように、理事には私も思うところがある。そんな真似はしません」
「……」
黒服に、嘘を吐いている様子はない。
きっと理事に対するその気持ちは本当なのだろう。その証拠に、声が少しだけ低くなった。
『顔無し』は黒服の言葉を信じることにする。
仮に嘘だったら、探し出して拳をその顔面に叩き込めばいいだけだ。
「ククク。しかし、そのUSBで何をするおつもりです。報道機関を用いて、キヴォトス中に周知しますか? 確かにカイザーPMCは失脚するでしょう。しかし、デメリットもある」
想像の中の自分に拳がめり込んでいるのに気付く筈なく、いつも通りの様子で黒服は口を開く。
『顔無し』は頷いた。実際、デメリットもある。それも結構な大きさの。
「斑目の生活が脅かされる可能性がある……だろ?」
「ええ。その通りです」
このキヴォトスに存在する人間型の男子生徒は一人だ。
そしてその者はカイザーグループの実験体であった。
このような報道が行われれば、確かに同情を得てカイザーPMC理事を失脚させられるかもしれない。それで万事解決。
……になれば良いが、そう簡単にはいかないだろう。
キヴォトスにいるのは何も善人だけではないのだ。
カイザーによる実験体に興味を持つ組織。『顔無し』として活動した際、痛い目に遭わせた悪人達。そしてカイザーの残党。
報道によって、そいつ等に斑目が狙われる可能性は十分に考えられる。それは避けなければならない。
(もうこれ以上、斑目を大人の汚い思惑に巻き込ませない。あいつは、アビドス高等学校で委員長や後輩達と、普通の生活を送るべきなんだ……)
だから。
「報道はしない。見せるとしたら、対策委員会と連邦生徒会だ。前者は先輩を知るために、後者は捕まえる証拠としてな」
「カイザーPMC理事にとってはただの餌だよ。誘き出して、ブチのめすためのな」
先生もきっと、USBの中身を明かしたらそれを報道のネタにしようとは思わない。
誰よりも生徒思いの彼女なら、自分が気付いたデメリットにも気付く筈だ。そこは信用できる。
USBの使い道を聞き、黒服は笑う。
「クク。内容が内容です。データを盗まれたとは、あちらも言えない。その結果、カイザーPMCがアビドス高校を襲撃した。その構図が出来上がると。良い作戦ですね」
「そいつはどうも」
そろそろカイザーPMCに向かおうとしたところで、黒服から声が掛かった。
「『顔無し』さん。最後に良いことを教えておきましょう」
「あん?」
黒服がどこからか地図を取り出し、ソファに座る。
その前にあるテーブルで、地図のある箇所を円で囲った。
「カイザーPMCとの開戦時、ここにいることをお勧めします」
「住宅街からえらく離れた場所だな? PMCが侵攻してきそうなルートとも離れてる。……はっ、なんだお前。やっぱりそっち側か?」
普通に考えれば、侵攻経路から遠ざけるかつ戦力を分散させて、こちらの勝率を下げることが目的だと考えられる。
『顔無し』が揶揄うように言うと、黒服は笑った。
「判断はお任せします。ですが……貴方がここにいれば、負傷者は減る。とだけ言っておきましょうか。クククク」
目の前に映る黒服の顔、そして笑い声。
車の中にいる筈なのに、まるでビルの室内にいるようにはっきりと思い出せた。
「……ム! ねぇ……!」
そこまで記憶に潜っていたからか、『顔無し』は呼ばれていることに気付かない。
その肩を叩かれて、ようやく彼は自分が呼ばれていることに気付いた。
「『顔無し』!!」
「っツインテちゃんか。悪い、聞いてなかった」
「しっかりしなさいよ! そろそろアビドス高校に着くから『顔無し』も準備しなさいって話! 先生も済ませてるんだから!!」
窓を見てみると、ちらほらと割れた道路や建造物が見え始めている。カイザーPMCの基地があった場所のように、辺り一面が砂漠な光景は見えない。
先生も気合いを入れるためか、髪の毛を後ろで纏めていた。
多分、動きやすさを重視しているのだろう。
アビドス高等学校に着いて、先生と『顔無し』を除いた全員が降りた。
運転席に移動し、先生が車から降りた対策委員会に声を掛ける。
「皆、何かあったらすぐに私に繋ぐこと。無茶はしない。いいね?」
「「「「了解!!!!」」」」
そう言うと、対策委員会の面々は校内に戻っていった。
持てる限りの物資を集めるのと、住民の避難に取り掛かるのだろう。
だがそれを見守ってる暇はない。先生はアクセルを踏み、車を走らせた。
その速度は凄まじいもの。時間を無駄にはしないという、彼女の意思が現れている。
赤信号に捕まり、車が止まっている間に『顔無し』は先生にある物を渡した。
「先生。このUSB、預けとく」
「……分かった。大事にするね。一応、データをこっちにも移しとく」
それは斑目に対する実験が記録された、USBだ。
先生がそれを受け取り、収納した後に信号機が青に変わった。再度車が走り出す。
「これ、もしホシノ達が見たいって言ったら……見せちゃダメ?」
「いや、見せてやれ。あいつらには、それを見る権利はある」
正直、見てほしい気持ちの方が強い。
口頭と日記に加え、その動画を見ればきっと……対策委員会の斑目に対する尊敬、感謝の気持ちは強くなる。彼に会いたい欲も強まる筈だ。
それは、『顔無し』にとって望ましい。
例え自分が消えたとしても、その空白を埋めてくれる程になれば万々歳だ。
「分かった。それとこの動画を見せるのは、あの理事の悪事を証明する時だけ……だよね?」
「流石は先生。俺のこと、よく分かってるな」
「ふふん。結構長い間、パートナーしてきたじゃん。当然だよ」
やはり、先生は自分の想像していた通りだった。
彼女が先生で、本当に良かったと思う。この場にいなくて、会ったことのない斑目のことをこんなにも考えてくれているのだから。
「ありがとな、先生」
「もう。なーに、『顔無し』。そんなしみじみ言っちゃって、キャラじゃないよ?」
「はっ。そうだな、自覚してる」
そんなやり取りをしている間に、車が駅に着いた。
ここから先生はゲヘナまで、電車で行くらしい。恐らくその移動中、通話か何かでヒフミにも連絡を取るのだろう。
先生が車を降りた。『顔無し』が運転席に移る。
「こっちは私に任せて。だから」
「分かってる。ちゃんとアル達に会って、謝って、協力を頼んでくるよ」
「よろしい。頑張れよ、少年っ!」
笑って、手を振ってから先生は改札口へと駆けていった。
少年じゃねェよ。と小声で呟く。だが、そのエールは悪いものではなかった。
『顔無し』はアクセルに力を込め、その場から走り去る。
目指すはアル達のいる事務所だ。
ACからエルデンに戻りました。
マレニア強いです。レベル140にして、筋力と体力にものを言わせて殴るバーサーカーになろうと思います。
対よろ