憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

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いやぁ、遂にここまで来れました……。
あと少しでお別れですね。寂しくはありますが、このまま書き切っていきたいと思います。

彼女達と彼の行く末を見守って頂ければ幸いでございます。
くふふ。


49.乱入

 

 

 

 

 

 アビドスの居住区画より少し離れた砂漠。

 そこで、カイザーPMCとアビドス対策委員会は交戦していた。

 

 

 

「皆さん! 住人の方達の避難、完了しました!!」

 

「ナイス! アヤネちゃん!」

 

 

 

 後方からドローンを用いて支援するアヤネ。

 その微かに聞こえる肉声と、無線機越しに聞こえる二つの声にセリカが反応した。

 

 既にアヤネにより、アビドスの住人達は安全な場所に避難している。

 そのため砂漠化していない、アビドスの街はゴーストタウンに近い様相だ。

 

 シロコとノノミが頷く。

 

 

 

「なら、後はここでカイザーを止めるだけ」

 

「住人の人達が避難したとはいえ、街を傷付けるわけにはいきませんからね☆」

 

 

 

 にも関わらず、アビドス対策委員会はそこから離れた砂漠で迎え撃つ。遮蔽物も何もない、広大な大地で。

 後退して、遮蔽物や物に溢れた街で戦う選択をせずに。

 

 

 アビドスを傷付けたくない。

 

 

 勿論、その思いも大きいだろう。だがそれだけじゃない。

 街を戦いの場にしたら、自分達と同様にカイザーも街を利用できてしまう。

 

 遮蔽物や入り組んだ街路を、あの大勢の兵士に使われるのは厄介だ。

 こちらの戦意を削ぐために、街の破壊に乗り出す可能性もある。

 

 

 

「止める、だけじゃないよシロコちゃん」

 

 

 

 アビドス対策委員会の先頭にて。

 散弾銃の音と共に、カイザーPMCの兵士達の悲鳴が響く。

 

 砂の上に倒れ伏せる数十人の兵士達の中心で、ホシノは弾を入れ替えた。

 

 

 

「確実に倒す。あいつら全員」

 

 

 

 そう言って、前方に群がるカイザーPMCの兵士達に向ける。

 彼女が放つプレッシャーを感じ取ったのか、群れにブレが見えた。

 

 一歩引く者や、両腕に力を入れる者が現れその光景を作り出している。

 

 

 

「ええい! 貴様ら、何をしている! 相手はたった5人だぞ!!!」

 

「り、理事!」

 

「それに、その兵器達は……!!」

 

 

 砂漠に怒声が響き渡った。

 そこにはカイザーPMC理事が、巨大な機体に乗ってこちらを見下ろしている。

 

 巨大な機体は一体だけではない。

 理事を中心に、横一列に十体程並んでいる。

 

 

 

「ありゃりゃ……これまた、面倒臭そうなの引き連れてきたねぇ」

 

「! ホシノ先輩。まだくるみたい」

 

 

 

 シロコの言う通りだった。

 空には無数のドローンが飛び、地上には兵士に加え、銃器を積んだマシーンが走行してきた。

 

 カイザーPMC一色。そんな感じだ。

 全ての兵器を集め、圧倒的物量で叩き潰すという意思を感じられる。

 

 その光景を見て、緊張からかアヤネが少し固い声を出した。

 

 

 

「カイザーPMCはきっと、ここで総力戦に持ち込むつもりです……!」

 

「う……これ、弾足りるかしら」

 

「考えても仕方ありませんよ、セリカちゃん。撃って、撃って、撃ち続けるしかありませんっ」

 

 

 

 その量に流石のセリカも頰を引き攣らせた。しばらくこの光景が夢で出てきて、魘されそうだ。

 

 ノノミはそう力強く励ますが、それでも少し不安を感じているのか冷や汗が流れる。

 その様子を見て、満足そうに喉を鳴らすカイザー理事。

 

 

 

「クックック。いつまでその態度を貫けるかな?」

 

 

 

 そう言って、しばらく笑う。

 だが急に黙り込み……ぽつぽつと言葉を紡いでいった。

 

 

 

「対策委員会……ずっとお前達が目障りだった。これまで、ありとあらゆる手段を講じてきた」

 

「それでもお前達は、滅びかけの学校に最後まで残り、しつこく粘って、どうにか借金を返済しようとして!」

 

「あれほど懲らしめたのに、徹底的に苦しめたのに、毎日毎日楽しそうに!!」

 

 

 

 それは大人というより、子供の駄々のようだ。

 自分の思い通りにいかないからと、目の前の年下に当たり散らす。

 

 その不満は、この場にいない男子生徒にも向けられた。

 

 

 

「斑目ユウもそうだ……あいつが脱走しなければ、こんなことにはならなかった。大人しく私の兵器になっていれば、簡単に貴様らを潰せたのに……! 化け物の分際で、私に歯向かった!!!」

 

 

 

 ホシノが小さく舌打ちをする。

 

 歯向かったと理事は言った。

 つまり、それは『顔無し(ノーネーム)』の行動がバレているということだ。

 

 

 

(あのUSBはまだ『顔無し』君が持っているか、先生が持っている。二人の性格からして多分、私達の所に来てくれるだろうけど……この状況ではマズいかな)

 

 

 

 先生のことだから、きっとデータをいつも持っている端末に移しているだろう。

 だがカイザー理事もその可能性を考慮している筈だ。

 

 それ故、先生がこの場に現れた場合、自分達を無視して彼女に総攻撃を仕掛ける可能性がある。

 

 

 

(『顔無し』君も同じ。本人が現物を持っている可能性、そして歯向かったことに対する腹いせ。あいつが集中して狙うには、十分すぎる理由だよね)

 

 

 自分達と違って、彼女達の身体は脆い。

 出来れば少しでも兵力を減らし、相手の攻撃力を落としておきたいところだ。

 

 斑目と『顔無し』への怒りを吐き出し、フルフルと震えていた理事が一際大きな声で叫ぶ。

 

 

 

「お前達のせいで、計画がっ! 私の計画がぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 怯むことなく、対策委員会も吼える。

 

 

 

「ふん、あんたみたいな下劣で浅はかなやつが何をしようと、私達の心は折れないわ!!!!」

 

「あなたみたいな情けない大人に、私達は負けません!!!!」

 

「ぐ……!」

 

 

 

 圧倒的な兵力差の前にも関わらず、彼女達は希望を捨てない。

 真っ直ぐに、強い意志を感じさせる瞳でこちらを見ている。

 

 カイザーPMC理事が逆に怯んだ。

 

 彼女達の姿が重なる。始まりのアビドス生徒に。

 

 自身の命を使って、カイザーPMCの意思に歯向かった、斑目ユウの姿と。

 

 

 

「だ、黙れェェェェェェェェ!!!!!」

 

 

 

 振り払うように強く頭を振り、自身が乗る機体からミサイルを放とうとする理事。

 次の瞬間、ドゴォォォン!!!! と轟音が響く。

 

 

 

「ぬぅぅぅぅ!? な、何だ!!?」

 

 

 

 攻撃を受けたのは、カイザーPMCだった。

 

 理事が乗る機体だけでなく、左右に広がる他の機体も攻撃を受けたようで、ドミノ倒しのように巨大な音と共に倒れていく。

 その光景を見て、シロコの耳が歓喜を表すように動いた。

 

 

 

「支援射撃……!」

 

 

 

 脳裏に先生の姿が浮かぶ。

 自分達のために、彼女はやるべきことを成してくれたのだ。

 

 アヤネも首を縦に振るった。その表情は輝いている。

 

 

 

「……はい! L118、トリニティの牽引式榴弾砲です!!」

 

「ということは!」

 

 

 

 そう言うセリカに、号令をした者が無線にて応えた。

 この戦場に似合わない、おずおずとした様子で。

 

 

 

『あ、あぅ……はい。私です……』

 

「やっぱり! ヒフ」

 

『ち、違います! 私はヒフミではなく、ファウストです!!』

 

 

 

 ブンブンと風を切る音が聞こえる程、首を振ってからヒフミは続ける。

 

 

 

『その、このL118はトリニティの牽引式榴弾砲ですが……。ト、トリニティ総合学園とは一切関係ありません! 射撃を担当している皆さんにも、そう伝えておきましたので……』

 

『す、すみません。これくらいしかお役に立てず……』

 

 

 

 徐々に声が小さくなっていくヒフミ。

 彼女は今、トリニティの生徒達と共にいるため、対策委員会から姿は見えない。

 

 だがそれでも、肩を落としてる姿は容易に想像できた。なので、ノノミは笑顔で明るく言う。

 

 

 

「いえいえ! 十分ですよ、ファウストちゃん⭐︎ ありがとうございます!」

 

「ノノミ先輩の言う通りです! 敵は、砲撃により混乱状態に陥ってます。今のうちに制圧しましょう!!」

 

 

 

 対策委員会の面々は頷いた。

 各々が踵に力を込め、混乱するカイザーPMCの下に攻め込もうとする。

 

 その時、無線に連絡が入った。ついそこで足が止まってしまう。

 耳に入ったのは、先生の必死な声だったから。

 

 

 

『大変な時にごめん、皆!!!』

 

 

 

「先生……?」

 

 

 

 それはヒフミにも届いていた。

 只事では無い雰囲気に、その表情が不安に染まる。

 

 

 

「くふふ〜! 早速何か問題発生みたいだよ? アルちゃん」

 

「ええ!? まだ合流出来ていないのに!?」

 

「笑い事じゃないよムツキ……全く」

 

「な、何が起こったんでしょうか……。私達、間に合えますかね……」

 

 

 

 まだ戦闘には関わっていないものの、それが行われてる場所に向かう便利屋68も、先生の声を聞いていた。

 

 

 

「あんなに声を張るなんて……増援ですかね? まあヒナ委員長にかかれば、大したことないでしょうが」

 

「私達に取っては、大したことあるんですが……」

 

「いい加減しつこいって思うよ、アコちゃん……」

 

 

 

 既にカイザーPMCの一個大隊を制圧し、座って銃の整備をしているヒナに尊敬の目を向けるアコ。

 そんな彼女に、チナツとイオリはうんざりとした顔でそう言う。

 

 先生から協力を依頼され、ヒナはイオリ達と共に、対策委員会の下へ向かおうとするカイザーPMCの兵士を止めていた。

 

 その兵力は決して少なくない。イオリ達のような顔になるのも仕方がなかった。

 そんな彼女達に、ニコリと微笑みを浮かべるアコ。

 

 

 

「せっかく委員長が反省文の代わりに、ということにしてくれたんですから、愚痴はそこまでにしましょうね?」

 

「アコうるさい。……先生落ち着いて、どうしたの?」

 

『何かあったんですか?』

 

 

 

 先生の話を聞きたいヒナは、アコに視線を向けて静かにさせた。

 

 その後に問うと、それにヒフミも続く。

 この無線は先生の権限で、彼女達全員に通じているようだ。

 

 そのためゲヘナ風紀委員会、アビドス対策委員会、ヒフミ、便利屋68が会話をすることができる。

 

 

 

『突然、本当にごめん……この中で、余裕がある子はいるかな……?』

 

『ん。私達はカイザーPMCに攻撃を仕掛けている。そこには理事もいるから、余裕はないかな』

 

『ヒ……いえ、ファウストさんは私達を砲弾で支援してくれています。この支援がなくなるのは、少し辛いかもしれません……』

 

『そっか……』

 

 

 シロコとアヤネの発言で、アビドス対策委員会とヒフミの力は借りられないことが分かった。

 確かに今も、彼女達の近くで戦闘の音が奏でられている。

 

 先生の声が沈んだ。そんな彼女の力になりたいと思いながらも、ヒナは小さな声で発言した。

 

 

 

『私は今は大丈夫……といっても、いつカイザーの援軍が来るか分からないけど……』

 

『ヒ、ヒナ……!? あ、えっと……ふふ。先生。私達はまだ戦闘に参加してないから、何かあるのなら引き受けるわよ』

 

『っ本当!? ありがとう、助かるよアル!!!』

 

『……』

 

『え、ええ。大丈夫。私達に任せなさいな』

 

 

 

 アルの声は震えている。

 

 ヒナがゆっくりと息を出した音が聞こえた。嫉妬か具体的な感情は分からないが、何か引っかかってしまったようだ。

 

 それに具体的な内容を聞かずに呑んでしまったため、今更ながら不安が湧いてくる、いつものパターンだった。

 だが次の先生の一言で、その意識が変わる。

 

 

 

 

『お願い、『顔無し』を助けてッ!!! あの子、私達に被害を出さないように、一人で巨大な蛇のロボットを相手してるの!!!』

 

『っ! 分かったわ。場所は分かるかしら、先生』

 

 

 

 息を呑んだ後、アルの声が少し低くなる。それはまるでアウトローそのもので、決意を固めたようであった。

 その時だ。

 

 

 

『わわっ! 何よあれ!?』

 

『あ、あわわ……!』

 

『皆下がって!!!! 早く!!!!』

 

『ぬ、ぬわぁぁぁぁぁぁぁ!!?』

 

 

 

 慌てるセリカとヒフミ、そして鋭いホシノの声が無線で交わされる。

 その後、鉄の固まりが何度もぶつかり合うような音がした。悲鳴も聞こえる。その中には、理事の声も含まれていた。

 

 

 

『っ……!』

 

 

 

 先生の喉から引き攣った音が出る。

 

 彼女は今、シッテムの箱を用いてリアルタイムの映像と共に、全員の現在地を把握した。

 そこでまず、ヒナに指示を出す。

 

 

 

『ヒナお願い! 座標を送るから、すぐにそこへ向かって!! カイザーの侵攻の兆しは見えないっ。だから早く!!!』

 

『……分かった。でも先生、一体何が』

 

 

 

 すぐに走り出すヒナ。

 先生の代わりにヒフミとシロコがその問いに答えた。

 

 

 

『先生が仰ってた、蛇のロボットが突然現れたんです!』

 

『お陰でカイザーPMCの兵器達が巻き込まれて、目の前で廃材になった』

 

 

 

 一瞬の出来事だ。

 

 交戦中のカイザーPMCと対策委員会を分つように、真横から巨大な物体が物凄い速度で、砂の上を滑走してきた。

 

 対策委員会は後退が間に合う。

 しかし、遅れたカイザーPMCはもろにその衝突に巻き込まれた。

 

 その結果、出来上がったのは鉄の廃材の山だ。

 理事は逃げられたのか、山の一部になったのか判断できなかった。

 

 

 一つ言えることは予想だにしない展開で、カイザーPMCとの決着がついたことだ。

 しかし、問題はまだ残っている。

 

 アヤネがその問題を言った。

 

 

 

『先輩が、一人で戦っています。砂漠を駆けながら、あの蛇と……』

 

 

 

 その後ろ姿はどんどんと遠くなっていく。

 巨大な蛇の機体……ビナーは彼を獲物と認識したようだ。並走する彼に、ミサイルやら体当たりやら、一人に向けるには度が過ぎた攻撃をしている。

 

 

 

 ──勝てっこない。ヘイローもない、男が一人で。

 

 

 

 その嵐を見た、誰しもがそう思った。

 

 

 だが比較的近場にいる、アビドス。トリニティ。

 

 後に合流する、ゲヘナ。便利屋68。

 

 

 

 

 彼女達は目撃することになる。

 

 呼び出された魂。

 作られた、剥き出しの肉体。

 

 不規則な二つが織りなす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その躍動を。




最近、評価とは言えない低評価をくらってちょっと悔しく感じます……。

それ二次創作全部に言えることじゃない? とか!
ただ『つまらない』の一言だったり! 

改善したいので、せめて具体例を挙げてどのように改善したら良いのか例とか出して欲しいなァ!


はい。ちょっと愚痴出しちゃいました、ごめんなさい。
楽しんでくれる皆さんのためにも、完結までは頑張ろうと思います。
それでも俺、やっぱり悔しいよ……ッ!
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