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ホシノ(臨戦)……来ましたねェ。
絶対に欲しい……!!!! 早速明日引きます。
石の貯蔵は十分だッ!
「ごめんなさい」
『
そんな彼の鼓膜を、誰かの声が揺らす。
泣いていたのだろうか、その声は少し掠れていた。
声量も小さく、今にも消えてしまいそうな印象を『顔無し』は抱く。
声の高さから少年だ。
放ってはおけず、声を掛けようとした。
そこで『顔無し』は、ふと疑問に思う。
(……ん? 何で、声を聞けてる?)
声を聞けること。自分の意識が残っていること。
今のように、思考出来ていること。
それはおかしかった。
何故なら自分は……死んだ筈だ。
先生を押して、彼女が地べたに尻餅を着くまでの記憶。
その数秒後、後頭部に走った激痛も覚えている。
光線に貫かれたと考えていい。紛れもなく致命傷の筈だ。
にも関わらず、こうやって思考ができている。
(……ハッ。成、程ね……)
それが意味することは、一つしかない。
思わず笑ってしまった。それは非現実的ではある。
しかし『顔無し』……いや、間平悠は最近まで非現実を体験してきた。だから今の状況を有り得ないと否定するのは、今更だ。
聴覚が戻っているということは、五感も戻っていると見ていい。
暗闇だと思ってたそれは、ただ瞳を閉じていただけなのだろう。
だから間平は目を開いた。
暗闇が消え、一人の人物の背中と白い部屋が目の前に広がる。
「……隣、座るぞ」
「っ……どうぞ」
こちらに背を向けて座る少年の肩が、少し揺れた。
間平達が座っている場所は台だ。その上には銃器やら刃物やら、人体を傷付けるためのものがある。
間平は溜息を吐いた。この場所がどこか、何となく察したのだ。
敢えて話題にすることじゃない。間平は口を開く。
「……さっき、ごめんなさいって言ってたな」
そのまま隣に座る人物を見た。
「斑目」
少年……斑目ユウは顔を伏せる。
「……はい。あれで、全て見てました。黒服さんとのやり取りも、あの怪物との戦いも……!」
斑目は一度どこかへ視線を向け、そして視線を逸らした。
間平が斑目の視線を追う。
そこに映っていたのは、今にも落ちてきそうな青い空と、こちらを囲って見下ろす仲間達の姿だった。
恐らく、舌にあるヘイローが媒体なのだろう。斑目はずっと、このように自分のいない外の世界を見ていたようだ。
『……どうしたの? ネムネム。起きてよ……いつもみたいに、何ともないように……』
『ッあいつ!!!!』
『社長!!!! ……もう、遅い。あいつは、力尽きてるよ』
『ッどうして、何でよ……!!!』
『ぁ……! せん、ぱい……ぜんぱいっっ……!!!! ゔぁああ……!!!!』
見知った彼女達は自分の知らない顔をしている。
呆然とする者、鬼気迫った表情の者とそれを堪えるように止める者、大きく顔を歪め泣いている者等、様々だった。
「謝るのは俺だよ、斑目」
間平は呟く。
親しかった彼女達が、自分の死体を前に泣いていた。
それを見て何も思わないわけがない。
間平の声は低く重かった。
この結果は、満足できるものではない。悔しさの方が勝る。
「……お前の意志を継ぐなんて意気込んでおいて、中途半端な結果に終わっちまった」
第一目標である、アビドスを救う件にしてもそうだ。
『顔無し』としての目標だったこれは、完全に達成できたとは言えない。
悪い大人による脅威は阻止できた。
一先ずはだ。今後この先、同じような者が現れないとは言い切れない。
肝心の借金も消えておらず、死んだことでその手助けをすることも、返済を見届けることも出来なくなってしまった。
「何より……お前とあいつらを、会わせることができなかった……ごめんな」
「どうして、そんなっ……。僕は間平さんを、殺したんですよ!? 殺人者である僕に、小鳥遊さん達に会う資格も間平さんに謝られる資格もない……!!」
「殺意を持ったわけじゃないだろ。お前はただ純粋に、アビドスを助けたいって思っただけだ」
自殺したのは、改造された自分がアビドスに敵対し、大切な同期や後輩達を傷付けるのを防ぐため。
間平を呼び寄せたのは無意識であり、その理由もアビドスを助けてくれる者を望んだからだ。
そんな子供の尊い思いを、間平は責める気はない。
後頭部を掻きながら、彼は言う。
「黒服にも言ったけどよ。お前は被害者で、俺が怒りを向ける対象はカイザーだ。だから斑目……俺はお前を、責める気はない」
「っ……!!」
「おい大丈夫かよ……ほら、泣きやめ泣きやめー」
耐えきれず、斑目は俯いて泣き出した。
安心させるように、優しくその背中を間平は叩いて摩る。
それが余計に、斑目の涙腺を刺激した。
「何でそんな、優しくしてくれるんですか……! 頭を貫かれて、痛かったでしょう……!? その要因は、僕なのにっ」
間平は首を振る。
「選択したのは俺だ。お前が強制したんじゃなくてな」
「逃げる選択をしないでその道を選んだなら、最終的な要因は俺だっつの」
間平は逃げることも出来たが、自ら斑目の意志を継ぐことを選んだ。
その末に何が起ころうが、それは選んだ間平の自己責任だ。
背中を撫でられる感覚に、斑目は瞳を閉じて意識を向ける。
(ああ、暖かいなぁ……)
背中を摩るのは自分と同じ大きさの手だった。でも、違う。
大人に撫でられてるような安心感がある。
斑目は瞳を閉じて、それが発する暖かさに身を委ねた。
(久しぶりだな。誰かに触られるなんて……)
自然に彼の脳内では、ここに来てから現在に至るまでの記憶が流される。
最初ここに来た時は、死んだのに意識があることに困惑した。
それからしばらくして抱いたのは、孤独感だ。
白い部屋でただ孤独に時間を貪るだけ。
黒服も誰もいない中、斑目にできたのは睡眠を取ることだけだった。
『ユウ、くん……っ!」
『! ユメ、先輩……?』
『ぐすっ……あまり、強く言えないけどさ……来るのが早いよ、もうっ』
『ユメ先輩……っ! ユメ先輩!!!!』
同じ部屋の中で、突然目の前にユメ先輩が現れる。
人に飢えていた斑目は大好きな先輩に、迷いなく飛びついた。
身体がすり抜けるなんてことはなく、豊満な身体に受け止められる。
すっぽり収まるように抱き締められ、久しぶりの彼女の甘い匂いと柔らかい身体と温かさに、斑目の目尻に涙が溜まった。
『よく頑張ったね。寂しい思いをさせてごめんね。もう、一人にしないよ……!』
『はい……! 僕も、二度と離しませんっ離れたくありません!!!』
何故後に死んだ自分が先なのか、斑目は分からない。
でももう一人ぼっちではないという安心から、ユメ先輩を感じるため一番強く抱き締め、その顔を見ようと顔を上げる。
そこで目が覚めた。
ユメ先輩はおらず、感じた体温や匂いは自分が作った偽りのものだと理解する。
それ以降も、似たような都合の良い夢を見ることに自己嫌悪する毎日だった。
それが嫌で、自分と自身が生む偽物以外の誰かの声が聞きたいと願い続ける。
その願いは叶うことになった。好ましくない形で。
『行かないで! 『斑目』!!!』
……は?
ホシノの声が聞こえ、それに斑目の息が一度止まった。
彼女は、誰に向かってその名前を言ったのだろう。
自分はここにいる。ずっとここにいる。なのに、何で。
気付けば、声を張り上げていた。
追い出されたことは忘れ、ただ彼女に気付いて欲しくて。
『僕はここにいる!!!!!!』
『気付いて小鳥遊さん!!!! 僕は、ここにいる!!!!!!』
それに対する反応は、結局返ってこなかった。
代わりにこの部屋に変化が生じる。
あのスクリーンが現れたのだ。
常に見れるわけではないが。それは一人称視点の誰かの生活で、偽物ではない、本物のホシノ達が見れた。
その媒体となっていたのが、『顔無し』の舌にあるヘイローである。
あれは斑目の魂であると同時に、目でもあった。
(いいな……)
斑目は満たされるどころか、嫉妬が募る。
きっと今の自分は彼なのだろう。ドロドロとした黒いものが芽生えそうになり、首を振った。
(僕がこの場にいたとしても、足を引っ張るだけだ……。それに僕は自殺した。もう、戻れない……)
彼が自分に身体を譲る意志を見せていることに目を逸らしながら、ただ斑目は彼等の日常を見守った。
そんな時、抱いていた嫉妬が罪悪感に切り替わる事件が起こった。
『ユウさんは貴方を殺したも同然だ。なのに何故、彼の味方で居続けられるのです?』
(え……)
黒服と『顔無し』の邂逅だ。
最初はわけが分からなかったが、会話が進むにすれ斑目の顔は血の気を失っていく。
最終的には、自分の髪を掴み顔を歪ませ俯いた。
(そんな……! 僕は、なんてことを……ッ!! 自殺する筈だったのに、救いを求めてっ!!!!)
(それで見ず知らずの人を殺してっ、なのに自分は死ねなくて……!!!!)
斑目は知った。
今見ている視点は、やはり自分の身体であると。
その中身は、間接的とはいえ自分が殺してしまった人であると。
以降はずっと固唾を飲んで見守っていた。間平とアビドスの生徒達がピンチになるたび、強く手を握り無事を祈る。
(あぁ……)
その願いが届かず、間平の頭が貫かれた光景を目にした。
彼が感じたであろう痛みと、親交を持っていた彼女達の喪失感を想像し、罪悪感から涙を流し、謝罪を繰り返した。
「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「痛い思いをさせてしまってごめんなさい。悲しませてごめんなさい……!!!」
そして間平が訪れ、今に至る。
精神的に不安定だった斑目だったが、間平と話したこと。その優しさと体温に触れたことにより、安定傾向に迎えつつある。
それは話していた間平も感じていた。
落ち着いてきたのを確認し、その手を離す。
「ん……?」
そして、スクリーンを見て動きを止めた。
瞬きをしてから、斑目を見る。
スクリーンには、親しかった仲間の姿が変わらず映っていた。
死んでから、結構時間が経っているというのに。
(……角度的に媒体となってるのは、舌のヘイローで間違いない。頭部は殆ど消えた筈だしな)
彼女達を映す角度から、間平は媒体がどこなのか予測できている。
実際、それは正しい。
(それが残ってるってことは……!)
「うわっ!?」
強く斑目の肩を組む。
驚いたようにこちらを見る斑目と額を突き合わせて、間平は言った。
「喜べ。お前の身体、まだ終わってないようだぞ?」
「え……」
斑目が目を丸くする。間平が何を言っているのか分からなかった。
その答えは彼ではなく、スクリーンの向こう側から聞こえてくる。
『! 皆さん!!! 『顔無し』さん!! 『顔無し』さんの頭が!!!』
『っ再生、していってる。彼はまだ、死んでいない!!!!』
ノノミとヒナの声が響く。
室内であるからか、もう生き返れないと思っていたからか。
間平と斑目の両者とも、この時だけ聴覚が発達したかと思うほど、その声のみを拾った。
「凄まじいな……まさか脳を破壊されても死なんとは。完全に殺すには、ヘイローを壊すしかないってことか」
「! 間平さん! 扉が……!!」
斑目が後ろを指す。
振り向いてみると、実験室の扉が開いていた。
自由。
この部屋の意図もあり、扉の先はそのような意味を内包しているようにも思えた。
斑目が間平に顔を向ける。悲しそうに笑って。
「……行ってください、間平さん」
「……」
間平は返答しない。
ただ、斑目に視線だけを向ける。発言の意味を問うように。
意図を察し、斑目は口を開く。
「僕が行ったところで、彼女達の足を引っ張るだけですよ……実際、今回僕は、何もしていないじゃないですか……」
「それは違うな」
即座に間平は否定した。
「常人には耐えられない実験に耐えて、人間離れした身体を得た」
「カイザーの手駒になるのを防ぐために逃げて、俺を呼び出した」
そのまま死んでいたら。
そのまま操られていたら。
現在と同じような結末にはなっていなかったかもしれない。もしかしたら、対策委員会の中の誰かが欠ける事態になっていた可能性もある。
何より。
『顔無し』という大きな戦力が手に入ることがなかった。
この結末に至るのに、その存在は大きい。
世界は無数にある。
彼がいなくても、アビドスが同じように勝利する世界はあるだろう。それと同じくらいの負ける世界も。
けれど、二人が知っているのはこの世界のことだけだ。
この世界において、『顔無し』という便利屋がアビドスに貢献したのは確かだった。
そして彼を呼び出したのは、間違いなく斑目である。
「お前は繋いだんだよ。あいつらに。お前の決断と、思いが。アビドスが勝つための道筋を作っていたんだ」
「その強い心に加えて、あの化け物じみた身体だぞ? 足を引っ張るもんか。自信を持て」
そう言うやいなや、間平は斑目を担ぐ。
間平の狙いを察した斑目は、その拘束から抜け出そうと抵抗した。
だが振り解けない。
当然だ。元来の肉体に加え、鍛えることを欠かさなかった『顔無し』の身体に、何も加えていない身体が勝てるわけがなかった。
「待って! 待ってください!! 僕は何も、間平さんに返せてっ……!!!」
「何言ってやがる。お前は俺に自由をくれただろ? 世間やら何やらに縛られた俺に、ドンパチやれる機会をくれた」
間平は笑う。
「ありがとな。久々に生きてるって感じがした……本当に、楽しかったよ」
その歩みは止まらない。
言葉に詰まる斑目だが、恩を返せてないという私的な理由から、彼自身の気持ちに働きかけることにした。
「ッなら、せめて一緒に……! 貴方を待つ人がいるんです! それは間平さんも分かっているはずです!!! なのに僕だけ戻って……彼女達に、どんな顔を向ければいいんですか!?」
僅かの間、間平の呼吸が止まる。
が、息を吐き出し平常心を保った彼は、ゆっくりと口を開いた。
「っ……いや、もう俺から謝罪は済ませてある。といっても、あいつらがそれを受け取るのは数日後、画面越しでだろうがな」
「っまさか、黒服さんと話してたビデオの話は……!」
「ああ。……最初から一つの肉体に、都合よく二つの魂が入れるなんて思っちゃいねェよ」
死者という面では、間平と斑目は同じだ。
だが大きな違いがある。
間平は大人で、斑目は子供だ。
……間平は23年と数ヶ月の人生だった。
人によっては、まだまだ死ぬには早いと言うだろう。
だが彼に悔いはない。
十代の、人生これからの子供の居場所と時間を再び奪う方が、ずっと後悔する。
(だから、この先を行くのは斑目で良い。俺は、見届ける側だ)
扉の前に立つ。後は斑目を向こう側に投げ飛ばせば終わりだ。
生者と死者は本来交えない。別れの時である。
「まだっ、まだ償えてない……!! 間平さんを殺したのに、僕はのうのうと生きられない……!!!!」
「……斑目」
斑目はアルマジロのように、間平の首元にしがみつく。
薄々と感じていた。もう結末は変わらないと。
それを認めたくなくて、年相応に泣きじゃくる。
(ごめんな)
間平は斑目の背中を摩りながら、心の中で謝った。
この子を送り出すため、自分はこれから酷いことをする。
「これが、お前の償いだ」
「っ……!?」
償い。
その一言にびくり、と斑目の動きが止まる。
「あっ……!?」
その隙をついて、間平はしがみついている斑目を一気に身体から離した。
そのまま両脇に両手を差し込み、持ち上げる。
斑目は間平を見ようとするも、首の可動域のせいでその表情は見ることはできなかった。
「俺を死なせたんだ。その償いとして、お前も死ね」
「ゆっくり……ゆっくり死ねよ? 斑目」
とん、と背中を押される。
意地で振り向き、斑目の身体は背中から扉の向こうへ吸い込まれた。
「ッッ間平さん!!!!!!」
ゆっくり死ね。そう言った間平は穏やかな表情を向けていた。
その意味を理解した斑目は泣きながら叫んだ。
「泣くな、斑目。俺の考えが正しければここであった出来事を……きっと戻ったお前は忘れている」
でも、それでいい。
そう間平は続けた。
「ここも苦しい思い出の方が多いからな。……俺の予想通りであることを、祈ってる」
「嫌だ……!! 間平さん!!! 間平さん!!!!!!」
嫌だ。嫌だ。嫌だ!!!!
忘れたくない!!!
自分の罪を、その贖罪を、優しい彼の存在を忘れたくない!!!
自然と子供の手が伸ばされた。
その手は……大人の腕を。
目を開ける。
まず目に入ったのは、白い蛍光灯だった。
微かに消毒液の匂いがする。だが、不快ではない。
寧ろ窓から差し込む日光と、丁度良い硬さのベッド、自分を包んでくれる温かい布団が心地よい。
病院の病室で寝ているようだ。
起き上がり、ぼうっと自分の身体を見る。水色の患者衣を豊満な胸部が押し上げていた。
そこで彼女……先生は疑問に思う。
なぜ、自分は病院にいるのだろう。
「っ! そうだ! 皆は、カイザーは……!?」
そうだ。私達は、カイザーPMCと戦っていた。
他の学園に協力を頼んで、彼女達が承諾してくれて……、それで。
「ゔっ……!?」
一面に広がる赤。
それは液体だった。その出所は。
「違う……!!!!」
咄嗟に頭を振る。
違う。違う。そんな筈はない。
いつも彼とは一緒だった。相棒のように付き添っていた。
だから今も、近くに……。
周囲を見渡す先生。そして隣のベッドに眠る人物を見て、動きを止める。
「あ……」
……いた。
そこには、『顔無し』が眠っている。規則正しく胸が上下していることから、生きていることが分かった。
よろよろと、歩み寄ってから押し潰すように抱き締める。
溢れる鼻水と涙を、彼の身体が受け止めてくれた。
「よかった……! よがっだよぉ……!!!」
掠れる声で泣き続ける先生。
その時、もぞもぞと布団が揺れた。
「ゔ、うぅ……っ」
「! 『顔無し』……!?」
顔を上げると、苦しげに『顔無し』が顔を起こすところだった。
流石に寝苦しかったのだろう。自分の感情を優先したことを反省し、申し訳なさそうに先生は俯いた。
きっと溜息を吐かれ、やんわりと叱られるのだろう。
薄らと『顔無し』の目が開かれ、先生の視線と絡んだ。
そしてその表情は、困惑に染まる。
「お、とな……。誰……ですか?」
「……え」
先生の顔から感情が抜け落ちた。
顔は同じだ。身体も。
だが、目の前の人物が『顔無し』ではないことは一目瞭然だった。
口調も、雰囲気も全く違う。
舌にあったヘイローは消え、頭上にそれが浮かび上がった。
斑目ユウ。そこにいたのは、彼だった。
子供の手は……大人の腕に届かなかったのだ。
これからの数話は間平君がいなくなった後の世界の話です。
それでアビドスの物語は終わりになります。
もう少々、お付き合いくださいますと幸いです。