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今後もよろしくお願いいたします!!
いやあ、ごめんなさい。
凄く遅れての投稿になってしまいました……。
基本土日で書き上げてるのですが、前の週の土曜日は休日出勤で潰れ、日曜日はコミケで生を謳歌し、月曜日はその休息に充て、火・水は家族と福岡旅行で執筆できず、木曜日は仕事〜〜と予定が重なり、このようになりました。
申し訳ない!
それと今回、後書きにお知らせがあります。
お見通し頂ければ幸いです。
それでは、どうぞ。
ホシノと斑目が再会を果たして、数日後のことである。
先生はアヤネに呼ばれ、アビドス高等学校に訪れていた。報告したい事柄が何点かあるようだ。
先生として、彼女達の変化は知りたいところである。
アビドス対策委員会の部室の扉を開くと、アヤネが笑顔で迎えてくれた。
「こんにちは、先生」
「こんにちは、アヤネ。近況を聞きに来たよ」
先生がそう言うと、アヤネは頷く。
ありがとうございます、と丁寧な礼をしてから報告を始めた。
「あの後、対策委員会は先生の公的な認証によって、アビドス高等学校の正式な委員会として承認されました」
「非公認だったせいで酷い目に遭ったという部分も大きいので、一安心です」
今回の一連の件を振り返る。
アビドス対策委員会は正式な組織ではない。アビドスの正式な組織に所属していたのは、生徒会副会長であったホシノだけだった。
そのホシノがカイザー達と契約してしまった以上、契約は成立してしまう。
故にアビドス対策委員会である彼女達が残っていたとしても、カイザーはアビドスの土地に攻め込めた。
しかしアビドス対策委員会が正式な委員会となった今。
恐らくだが……今回のようなことはもう起きないだろう。
胸を撫で下ろす先生に、アヤネは笑いかける。
それには感謝の気持ちが滲み出ていた。受ける側の先生も温かい気持ちになる。
「お陰様で対策委員会は、正式にアビドス生徒会としての役割も担うことになりました」
「個人的には、ホシノ先輩に生徒会長になっていただきたかったのですが、断固として拒否されまして……新しい生徒会長は、まだ決まっていません」
そこまで話すと、アヤネは窓の方を向いた。
「柴関ラーメンは、屋台の形で再開しました」
「お客さんも結構来てくれているようでして、セリカちゃんもまたバイトとして復帰することになりました」
風紀委員会によって崩壊してしまった柴関ラーメンだが、街の通路に屋台としての形で再開した。
アヤネが向く方角にそれはある。とはいえ、遥か先に位置しているため目視できないのだが。
その屋台に、一人の客が訪れた。
「いらっしゃいませ! 柴関ラーメンです!」
セリカの元気な挨拶が響く。
それと共に向けられる笑顔に、表情が緩まないものはいない。元気を与えてくれる印象だ。
バイトのユニフォームを身に纏い、忙しくはあるが、楽しそうに彼女は働いている。
「お客様、こちらのお席へどうぞ!」
「紙エプロンはいかがですか? ……はいっ、勿論です! どうぞ!」
「大将! 味噌ラーメン1、炙り叉焼リャンをお願い!」
「よしきた!!!」
セリカに負けないくらいの声量で、大将は力強く腕捲りをして答えた。
屋台として再開してから、一度この場に訪れたのだろう。
「大将も、以前にも増して元気にお仕事されてますので……引退はまだまだ先の話になりそうです」
対策委員会の部室にいるアヤネが、柴関ラーメンに関してはそう締め括った。そして静かに目を伏せる。
「それと、先生と……先輩のお陰でホシノ先輩の件は解決しましたが、アビドスの借金は変わりません。まあこれは、最初と変わりませんね……」
「じゃあ、『
「……はい。使っていません。ホシノ先輩を除いて全員が、一個ずつアタッシュケースを自分の部屋に保管しています」
アヤネはそう、悲しげに微笑んだ。
寂しい時は『顔無し』の遺品であるアタッシュケースの持ち手を、ゆっくりと握るらしい。
そうすると残っていない筈の彼の体温を感じることが出来て、安心出来るそうだ。
聞いてみれば、セリカも同じことをしているらしい。気が合うね、と二人は静かに笑い合った。
その話を聞き、先生は静かに頷く。自分にも身に覚えがあったのだ。
「……うん、私も同じ。『顔無し』の武器を、そうやって掴んでる」
というのも先生も同様に、自宅に『顔無し』の武器を保管していた。勿論、シャーレに置いておくことはしない。
彼とは契約が切れたため、もうシャーレに所属していない。
先生が定めた、今後のための設定である。
自分と同じように、彼の死を知らないユウカといった生徒達の心に傷を作らないための考えだった。
シャーレに武器を置いておき、指摘されてそれを見てしまえば、冷静を装える気がしない。その結果、勘付かれる可能性は高まるだろう。
故に自室に置いておくことにした。
子供に、簡単に人の死を背負わせたくなかった。
気遣わせてしまうのが、申し訳なかった。
そして彼の形見を見る……きっと酷い顔の自分を見せたくなかったのだ。
「ホシノは……やっぱり強いね。もう、前を向けているんだ」
「そういうわけでは、ないと思います。えっと……ホシノ先輩は何というか、仕方ないと言いますか……」
「?」
唯一、ホシノは『顔無し』に囚われていない。
そう思ったが、どうやら違うらしい。彼の遺品を持ち帰ってないのに、他に理由があるようだ。
アヤネは何度か悩んだ素振りを見せた後、ひっそりと教えてくれた。
「実はユウ先輩とホシノ先輩……同居してるんです。ホシノ先輩の部屋で」
「え!!!?」
「因みにユウ先輩は単位が足りないようで、留年して二年生になっています」
「そうなの!!!?」
先生は目を見開く。
最初に話された内容が衝撃的で、ついデカい声が飛び出てしまった。
留年についてはそこまで驚くべき事柄ではなかったものの、先のリアクションが引きずり、結果的に大袈裟な反応をしてしまう。
その声量にアヤネは目を瞑って、両耳を押さえた。
先生は謝りながら、最初の事柄について追及した。
「アヤネごめんっ! ……それであの、同居って?」
「は、はい。言い出しっぺはホシノ先輩なんですけど……」
アヤネは語り始めた。
言い出しっぺはホシノである。
今の斑目の精神は不安定だ。その年齢も、肉体の年齢より幼い。
そんな斑目が、果たしてあの部屋にまた住めるだろうか。
血塗れの浴室を見たら勿論、アウトだろう。
仮に痕跡がなくなるほど落としたとして、やはり一度自殺した部屋としてトラウマが蘇る。そうホシノは考えたそうだ。
だから彼が退院する際、彼女は確認した。
ベッドに横たわる彼の掌に、自分の小さな手を重ねて。
『ね、斑目はさ……また、あの部屋で暮らせる?』
『……』
斑目の瞳が揺れる。
望んではいないことが、一目瞭然だった。
だからホシノは優しく、震える斑目の手に置かれた自分の掌を丸める。
『……無理そうなら、私の部屋に来る?」
『えっ……。でも……!』
斑目は葛藤した。
一緒に暮らすことへの気恥ずかしさもある。
罪悪感もあった。これ以上、迷惑を掛けるのかと。
でも。
果たして、自分はかつての住まいで暮らせるのか。
自殺したあの部屋で、過去の記憶に縛られずに生きていけるのか。
『あっ……』
そこまで考えて、無理であることが分かった。
両目から溢れる涙がその証明だ。痛みはなかったが、血液が失われていく気持ち悪さ。地下で過ごした際の孤独。
それを今、記憶で追体験して耐えられる自信がなかった。
斑目はこちらを覗き込むように窺うホシノを見る。
『……』
ただ彼女は待ってくれていた。目を背けずに、いつでも見守ってると言わんばかりに。
それは斑目に、かつてない安心を与えてくれる。だから彼は、ゆっくりと首を縦に振った。
『僕、小鳥遊さんと、一緒に暮らしたいです……っ』
『うん。一緒に暮らそう……私達』
一連の流れを聞き、先生は納得したように頷く。
「成程ね。それは確かに、お金を持ち帰るのは無理だ」
「はい。どうしても、先輩の形見がユウ先輩に見られてしまう可能性が上がってしまいますから」
即ちそれは、『顔無し』の存在を斑目が知ってしまう可能性も高まるということだ。
何故その大金を使わないのかという小さな疑問。
そして『顔無し』と斑目を重ねないという断固たる自信がない対策委員会が、斑目を通して『顔無し』を見てしまう可能性も十分にある。
それらが混ざり合うことで、斑目がネットや過去のメディアを通して、『顔無し』という便利屋に辿り着く可能性もあった。
キヴォトスで男子は一人しかいない。
その者が活動している中自分は眠り、目覚めたらその便利屋が活動している記録は見られなくなった。そうなれば、自ずと答えは見えてくる。
『顔無し』は彼がそれを知ることを望んでいない。
ホシノもその願いを理解している。だから、唯一彼女は彼の形見を持ち帰らなかった。
と、先生はあることが気になり、ヒソヒソとアヤネに話し掛ける。
その顔は少し赤い。
「でも、その……大丈夫なのかな? 健全な男女が、二人同じ屋根の下って……間違いとか、ほら」
「ふぇっ……!?」
先生の言いたいことを理解したのだろう。
アヤネの顔も、一気に赤くなった。二人がそういうことをしている光景を想像してしまい、先生に向かって叫ぶ。
「も、もう! そんなの知りませんよ!! あの距離感ですから、しばらくはないんじゃないですか!? 一緒に寝ることも!!!」
「ご、ごめんアヤネ! 先生として! 先生として心配しただけだから! もう余計な詮索しないからーーー!!!」
アヤネはそっぽを向いてしまい、先生は必死に謝る。
確かに今の二人の距離感なら、そういうことはおろか、一緒に寝ることも出来なさそうだ。
そう、二人は考えている。
しかし現実は違った。
「くしゅっ!!!」
ホシノの部屋に、小さなくしゃみが響く。
斑目のものだ。咄嗟に顎を引き、自分の肩で飛沫を押さえる。
どうやら自分を抱き締めてくれている、同居人の胸元に飛沫が飛ぶことは防げたようだ。
誰かに噂されているのだろうか。
寝起きだからか、そんな馬鹿な想像が過った。
「ユウ、大丈夫? ……寒い?」
「っううん。寒くないよ、ホシノさん」
頭上から掛けられる声に、斑目のぼやけた視界が正常になる。
後頭部にある小さな手を下敷きにしないよう、もぞもぞと顔を動かした。
斑目が視線だけを動かすと、こちらに目を向けるホシノと目が合う。
その雰囲気は学校の緩い昼行灯な雰囲気ではなく、彼がよく知る雰囲気だった。
「凄く温かい……」
「私の子供体温が役に立ったようで何より」
「そ、そういうわけで言ったわけじゃ……」
二人は共同生活を送るにあたり、ルールを設けている。
家事は交代制だの、寝る時は一緒だの、門限だのもあるがそれとは別に、特殊な2つのルールがあった。
一つはお互いに下の名前で呼ぶこと。共に暮らす以上、いつまでも名字で呼ぶのは他人行儀じゃないかということだった。
発起人はホシノだ。
「冗談。それにしても、ユウも物好きだね」
「?」
「この部屋では素でいてほしいなんて……私は楽でいいけどさ、男の子は優しい子が好きなんじゃないの?」
対して、斑目が発起人のルールはこれだ。
ルールというより、ホシノに対してのお願いであった。
この部屋では、自分を作らないこと。
斑目は過去の記憶を持っているため、学校でのホシノの態度がユメをモデルとしていることを見抜いていた。
思うことはある。
だがそれも小鳥遊ホシノの一つだ。考え抜いた末に彼女は辿り着き、既に周囲にも浸透している。
それを今更、寂しいからという自分の都合でやめてほしいというのは違う。斑目はそう思った。
だから、せめて二人きりの時は自分がよく知る彼女でいてほしい。
『……いいよ。ユウがそう言うなら』
そんな思いを伝えられ、ホシノは照れ臭そうにそっぽを向き、小さな声で了承した。
斑目はホシノの問いに首を傾げる。
「何言ってるのさ。ホシノさんは優しいよ。態度を変えなくても」
「……また、簡単にそういうこと言う」
「ホシノさん? ちょっと力が、うぷっ」
「今こっち見るなっ。……あと、私だからいいけど他の子にあまりそういうこと、言わないで」
「む、むぅ……」
今の自分の顔を見られないよう、強めにホシノは斑目の頭を抱える。
頷きながら、ぺしぺしと肩を叩かれるが解放しない。まだ頰に熱があるから。
それに息は出来るように手加減しているので、窒息することはなかった。彼の息遣いを感じ、ホシノは目を瞑る。
斑目が生きていること。それをよく実感できた。
嬉しさと同時に湧き上がる後悔で、瞼にシワが出来る。
(ありがとう、『顔無し』くん。助けてくれて)
(ごめんね、『顔無し』くん。助けられなくて)
(ユウは私が守るよ。取り返してくれた、君の分まで。本当に……ありがとう。ごめん)
ホシノの異変を感じ取ったのか、斑目は不安げな様子で声を出した。
「ホシノさん……?」
「っごめん。何でもない」
ホシノはかぶりを振るう。そして自分を責めた。
斑目の精神はまだ不安定だ。寝ている時だって、時折うなされて、まるで甘えるように抱きしめてくる。
彼は今そんな状態だ。
なのに不安を抱かせてどうする。斑目の前では、しっかりとしていないといけないだろう。
「よいしょ」
「っわわ」
切り替えるように、ホシノは布団から起き上がった。
睡眠で着崩れたパジャマから見える肌に、斑目は慌てて顔を逸らす。
「そろそろ学校に行こう。ユウは特に、単位を取らないといけないでしょ?」
「うぐっ。あ、あはは……耳が痛いなぁ」
ホシノの一言に、斑目も起き上がる。
単純な学力不足で留年するのは勘弁だった。
斑目は寝室から出る。流石に同じ部屋に着替える度胸はなく、ホシノは部屋、斑目は廊下が着替えの定位置だった。
やがて着替え終わった二人は、共に外へ出る。
ホシノの片手は、斑目の腕をしっかりと掴んでいた。もう二度と手放さないように。
「……カイザーローンはブラックマーケットでの不法な金融取引がバレて、連邦生徒会の捜査が入るとのことでした」
「ヒフミさんの報告を受けて、トリニティが手を打ってくれたのでしょうか……? 正直、連邦生徒会がきちんと捜査してくれるのかどうかは疑わしいですが……それでも、少しは状況が変わると思います」
場所は対策委員会の部室に戻る。
つーんとした表情で、アヤネが近況の報告を続けており、先生が弱々しく話しかけた。
「アヤネぇ……ごめんってば〜。反省してるから、怒らないでよ〜!」
「全くもうっ。2度はないですからね!」
そう言って、ズレた眼鏡の位置を戻すアヤネ。
一度咳をした後、再び口を開いた。
「カイザーコーポレーションの理事はあの後、生徒誘拐事件の主な容疑者として指名手配されているそうです。指名手配以前に、五体満足か怪しいのですが……」
アヤネの脳裏に、ビナーと『顔無し』の戦闘に巻き込まれたカイザー理事の姿が浮かび上がる。
あの後どうなったのか。それは知る由もなかった。
捕まっているということはないだろう。
連邦生徒会は今、機能しているとは言えないためだ。
「カイザーコーポレーションは、自分達とは関係ないと主張するために、即座に解雇を行ったとか。大人って怖いですね……」
「トカゲの尻尾切り……ってやつだね」
先生の顔が険しくなる。
今回の件がカイザー理事の独断なら、まだ良い。
だが解雇を行った者達が首謀者で、また違った手段でアビドスや生徒達に危害を加えようと企んでいるとしたら。
(そんなの、絶対に許さない)
考えるだけで、はらわたが煮えくり返りそうだ。
怒りによって鋭くなる先生の目を見て、アヤネは慌てて言葉を紡ぐ。
「あっ、それからあの無理に上げられた利子についても問題として挙がって、最終的には以前より遥かに少ない利子の支払いで済む形になったので、助かりました!!」
「……土地の方は、どうなりそう?」
先生からの問いかけに、アヤネの表情が苦笑に変わる。
「アビドス自治区の大半は相変わらず、カイザーコーポレーションが所有したままです……アビドスとカイザーコーポレーションの取引自体は違法ではなかったので、ひとまずは仕方ないみたいです」
「宝探し……カイザー理事はそう言ってたけど、本当にそんなものがあるのかな? 宝って、一体何を表してるんだろう」
「結局、分かりませんでしたね……」
アヤネと先生はしばらく思考を巡らせ、諦めたように溜息を吐いた。
考えるだけ無駄だ。推理をできる材料も何もかもが足りなすぎる。
その後、便利屋68がどこかでまた事務所を開いたこと。
黒服の正体が掴めなかったこと。これに関しては、シャーレに任せることになりそうだと、アヤネは伝える。
これにて近況の報告は終わりだ。
その頃には、ボチボチと対策委員会の面々が登校し、部室に集まっていた。
近況を聞き終えた先生だが、まだ帰るつもりはない。
重要なイベントが残っているからだ。
「皆ー。こっちに注目して〜」
最後に入ってきたホシノが、そう手を振って呼び掛ける。
隣には斑目ユウが、緊張した面持ちで立っていた。
一応、ホシノと同じく生徒の中で彼は最年長である。
だがその精神年齢と幼い顔立ち、かつて斑目の身体の中にいた者との差異で、一番年下のように思えた。
ホシノが優しく、その背中に手を置く。
「大丈夫」
その一言と、呼応するように頷いて見せた対策委員会と先生の姿を見て、斑目は声を張り上げる。
「っはじめまして! アビドス高等学校2年、斑目ユウです!」
「少しでも早く、皆さんの力になりたいと思っています! これからよろしくお願いします!!!!」
部室内に拍手が響き渡る。
斑目は嬉しそうに表情を輝かせた。
その素直さは好感が持てるものだ。嫌われることはないだろう。
彼ならきっと、アビドスに溶け込むことが出来るはずだ。
先生は目を瞑り、この場にいない『顔無し』に思いを馳せた。
『顔無し』の望みは今、確かに叶ったよ。
ありがとう。後は、私に任せて。
その部屋は薄暗かった。
光は人工的なものしかなく、そのため不気味な印象だ。温かさなど感じない。
中央には巨大な水槽が一つある。
その内容物はクローンであった。性別は男で、幼い顔立ちをしている。
細い身体ではあるものの、外側からも筋肉が常人より発達していることは一目瞭然であった。
「クックック……」
目の前に立っているのは、黒服だ。
笑みをこぼした後、呟く。
『間平悠』
前提として、斑目が彼を呼び出した要素は三つある。
並行世界への干渉に対する通貨となる「血液」。
異なる世界とこちらを繋げる媒体となる「水」。
そして、近い性質を持つ彼自身の意思。
「っ……っっ!」
水槽の中にいるクローンの口から、酸素が漏れ出す。
血液は必要ない。この世界で死んだ以上、その魂はこちらにある。
入れ物さえあれば、通貨はいらない。
水は必要だ。
異世界を繋げるのに必要不可欠であるためである。その異世界とは並行世界の他に、死後の世界も適用される。
古来より水は、そのように言い伝えられている側面もあった。
だが、意思。これは用意できなかった。
何故なら所詮、クローンは容器でしかないのだから。
意思や感情などは備えられていない。
故に黒服は考えた。そして正解を導き出したのだ。
「そこで名前です。生きていく上で、自己を表す名前。一時も離れないそれは、その者の人生。魂とも言えます」
「真名を知る=相手を支配するという呪術的な考えがあるように、名前は特別な意味を持っているのですよ……間平さん」
「死を覚悟した故に、知られても関係ないと思ったようですが、早計でしたね」
私としてはもう一度話をできる機会を得れて、喜ばしい限りですが。
そう黒服は続けた。
不思議だ。
水中であると言うのに、黒服の声は的確に間平の耳に届いていた。
ゆっくりと目が開かれる。そこに光はない。
「……ごぼっ(くそ)」
丁寧な説明に対して間平は、能面の様な顔で悪態をつくのだった。
はい。
というわけで続きを書こうと思います。エデン条約編ですね。
エタらない限り突っ走ります!
しかし、重大な問題があります。
私、まだエデン条約編読み終わってないんですよね……。
そのまま書くのは凄く申し訳ないので、読破してから続きを書かせて頂くつもりです。
その間は不定期で、イフの話だの掲示板回だの小話を書けたらなと思います。
最後に質問なのですが、エデン条約編書くとしたらこのまま章を作って続けてしまっていいですか? それとも新たに小説を作った方がよいでしょうか? 話数が多くて大変だったりしませんか?
ご意見頂ければ幸いです。