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やっぱり土日はいいですね、筆が進みます。
プロローグはあと3話くらいで終わる予定ですので、よろしくお願いいたします!
アリウス自治区。
そこには他の学区と同様に、生徒が暮らしている。
暮らしてはいるのだが、その街並みはお世辞にも整っているとはいえない。
建築物には所々に亀裂が見受けられ、道も欠けたり、断裂した部分が盛り上がっている。
今挙げたのはほんの一例だ。
しかしこれだけで、アリウスの生徒達が充足した生活を送れる環境ではないことが分かる。
「……」
視界に映るその光景を、歩きながらサオリは諦観に似た感情で眺めていた。
自治区から出て戻ると、毎回外の世界との格差を思い知らされる。
しかし抱くのは諦観だ。
現実を変えようとも、ここから逃げ出そうとも思えない。
vanitas vanitatum et omnia vanitas
全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ。
現実を変えようとしたところで、逃げ出そうとしたところで、待つのは苦しみだけだろう。
「うぅ……お腹が空きましたねぇ。足もパンパンで痛いですぅ」
「やめなよヒヨリ。言ったところで、出てくるのはレーションと冷たいシャワーだけだよ」
「……すまない、お前達」
立ち止まり、サオリはそう言った。
拳を強く握り、歯も軋む。
間平襲撃の失敗後。
戻ったアリウス・スクワッドに対し、ベアトリーチェは労いの言葉もなく言い放つ。
『私の仲間によると、今回の標的は万全の状態ではありませんでした。にも関わらず貴方達は負けたのです、自らの失態を受け止め、反省なさい』
『本来ならこのまま罰を与えるところですが、貴方達は運が良い』
その言葉に、サオリとアツコは首を傾げた。
ヒヨリは喜色が混じった様子で、短い声を上げてから何かを口走ろうとする。
が、ミサキの手で塞がれた。
じゃあ今日はこのまま帰っていいんですか? なんてことを言えば、いつも通りになってしまう。
ベアトリーチェは特に気にした様子もなく話を続けた。
『今から数週間後、今回の標的をこのアリウスに迎え入れます』
なっ……とサオリが声を漏らす。
訳が分からない、正にそんな様子だった。
彼女達はベアトリーチェに、間平を生け捕りで捕縛すること、困難な場合は排除を命じられていたのだ。
だが失敗に終わった。
にも関わらず、その標的がアリウスに自らの足で来る。ベアトリーチェもそれを受け入れる姿勢を見せていた。
なら自分達がした苦労は? 無駄なことだったのか。
その疑問に答えるように、ベアトリーチェは続ける。
『私は敗者に価値があるとは思いません。ですが彼は違うようで、貴方達を評価していました』
『そこで提案を受けたのです。貴方達と定期的に戦い、能力を高めたいと』
『彼は力を取り戻していくことでしょう。しかしそれに比例して、貴方達の能力も高まることが見込まれます。なので私は、彼をアリウスに迎え入れることにしました』
そこまで聞いて、サオリの中にあったもやもやは解消された。
自分達と戦ったことで、標的は自らアリウスに赴くのだ。
であるならば、あの戦いには意味があったと言える。
少しだけ心が晴れたサオリ。
それとは対照的に、ミサキの表情は少しだけ渋い。何となく嫌な予感がした。
そしてそれは、的中することになる。
『これから数週間、貴方達には普段より多くの演習に励んでもらいます。私にも敗者に価値があることを、証明できるといいですね?』
このベアトリーチェの言葉をきっかけに、アリウス・スクワッドはより過酷な演習を受けることになったのだ。
自治区での演習の他、必要最低限の食糧のみで自治区の外を何キロも歩く等してきた。
実際、彼女達は今それを終えて帰ってきたところだ。
食糧はとっくのとうに尽きている。重い身体を引きずるように歩き、自治区まで辿り着いたのだ。
「私がもう少しうまく立ち回っていれば……作戦を完遂できていれば、こんなことにはならなかった。本当に、すまない」
これまでの経緯を思い返したサオリが再び謝罪する。
ミサキは溜息を吐いた。
「あいつを追い詰めるとこまでいったんでしょ? 十分やった方だよ。リーダーが謝るなら、最初の方で脱落した私とヒヨリはどうなるの」
「うぐ。こ、今度はちゃんとあの人を倒せるように、私も頑張ります……。確か、今日でしたよね? あの人が来るの」
「っ……そうだ」
サオリは苦しげに首肯した。
正直、これからあの男と戦えと言われたら前のようにいかない。
疲労も空腹もピークだ。
頼める立場ではないことは分かっているが、せめて自分以外だけでも、ベアトリーチェに休息の時間を与えてもらえないか打診したかった。
とはいえ、それが無駄に終わることは分かっている。
希望を抱かず、ベアトリーチェの元へと向かっていると嗅ぎ慣れない匂いが鼻腔をくすぐった。
「……ん、あれ? 何か凄く美味しそうな香りがしませんか……!?」
「……(本当だ。これはシチューかな?)」
「どうしてそんなものがここに……」
アツコが手話で伝えてくる。
彼女がそう言うのなら、間違いないのだろう。少なくとも自分達よりは、教養がある筈だ。
問題はこのアリウスで、その匂いがするということ。
そんなもの中々お目にかかれない。
何故なら支給される食糧は、殆どが味気のないものだからだ。
「う、うぅ……。お腹が空きましたぁ〜……!!!」
「っこれは結構、きつい」
アリウス・スクワッドは疲労と空腹がピークな状態である。
野菜や肉の旨味を、煮込まれることで引き出したシチューの漂う香りは、そんな彼女達の精神を蝕む毒のようであった。
顔を顰めながら、ここでサオリに一つ疑問が湧く。
(マダムはこれを許可しているのか……?)
アリウス自治区では、半ば人権を無視したような教育がベアトリーチェによって行われていた。
情報の統制もあるため、ここの生徒達は娯楽を知らないし、知っている味覚の幅も狭い。
そう考えると、前提としてこの匂いをアリウスの者が生み出せるとは思えなかった。
となるとだ。
「あいつか……」
サオリの頭に浮かんだのは、間平の姿だった。
彼は自治区の外から来ているし、ベアトリーチェに迎え入れられる立場だ。自分達と違い、優遇されていてもおかしくない。
ベアトリーチェのいる屋敷の近くに着く。そこには大鍋で煮込まれたシチューがあった。
よほど煮込まれたのか、とろみがついた白い液体が沸騰するごとに、柔らかそうな色とりどりの野菜と鶏肉が踊っている。
その周囲を、アリウスの生徒達が囲っていた。いつもより服装が汚れているように見える。
サオリはその内の一人に話し掛けた。
「おい……」
「あ。おかえりなさい」
「これは客人のものだろう。そんな囲ったりしていたらマダムに何を言われるか分からない。早く去るんだ」
今彼はこの場にいない。
この様子を観察でもしているのだろうか。一人で食べれる量でないことから、この光景を作ることが目的であることが考えられる。
外から来た者にとって、今の光景はさぞ滑稽なことだろう。
それを楽しんでいるのだと想像するだけで、間平に対する怒りが沸々と湧いてきた。
だがその感情は勝率を下げるだけだ。
ふぅと息を吐き、考え方を変える。
(お陰で士気を高められた。そう考えることにするさ)
間平に対して、最大限の敵意に満ちたサオリに対し、話し掛けられたアリウスの生徒が首を振る。
外の世界では容易に可能性の一つとして挙げられるが、アリウスで住む者達はそれが出来ない事実を。
「違うんです。これ、私達が食べていいって……同年代くらいの男子が」
「何……?」
同年代くらいの男子。
その言葉に困惑の声を上げたサオリと同様に、間平の姿が浮かんだアリウス・スクワッドは瞠目する。
「……それ、あいつに何の得があるの? 毒でも入ってるんじゃないの?」
「きっと選別ですぅ……。マダムと共同で、私達を見張っていてこの食べ物に手を出したら後で罰を与えられるに決まってます。辛いですね、苦しいですね……」
他者からの施し。
さらに言えば、それがここに来たばかりの人間に為される等、サオリ達は信じられなかった。
訳が分からないとサオリは眉を顰め。
ミサキとヒヨリは、マイナスの方向に考える。
その考えに同意しながらも、アリウスの生徒は否定した。
「普通はそう思いますよね……でも違うんです」
「何? どういうことだ……」
「はっ。経緯を話します」
サオリの問いに、アリウスの生徒はそう言って振り返る。
彼女達はベアトリーチェに命じられ、自治区の入り口まで間平を迎えに行っていた。
しばらく待っていると、生徒の一人に連れられ、外から来た間平がアリウスに降り立つ。
「この時点で私達、マダムからもう一つ指令を下されていたのです。自分の下へ向かうまでの間に、隙を見て襲撃をしろと」
「成程……。今度は数で勝負したわけか」
彼女は諦めていないらしい。
隙さえあれば、その身柄を抑えたいようだ。恐らく洗脳やら何やらを施し、完全な自分の手駒としたいのだろう。
それが出来なければ、排除する。
形式的には和解したようだが、間平に対するベアトリーチェの姿勢は以前と変わらない。
「それで? 結果はどうなった」
実際に戦って味わった、間平の実力。
そしてアリウスの生徒達の汚れた服装を含める、今の状況。
結果は分かりきっているが、念のためサオリは確認してみた。
そして予想通りの勝敗の結果が返ってくる。
「結果は惨敗。傷一つ付けられず、あっという間に圧倒されました」
「ま、そうだろうね」
自分達を倒した男だ。兵の人数が増えたくらいで、簡単にやられるとは思えない。
この数週間、自分達が苦しんだ元凶に対してある種の信頼を置いている自分に気付く。
面白くない、とミサキは鼻を鳴らした。
そんな彼女を気にすることなく。
アリウスの生徒は、当時のことを思い返しながら、現在に至るまでの話を始めた。
間平は周囲を見渡す。
ボロ雑巾のようにアリウスの生徒達が倒れていた。
全員手元から銃器が離れているし、動くのもままならない状況だ。
奇襲される可能性は限りなく低く、されたとしても対応が可能と判断し、地に這う内の一人に近付いた。
戦闘中、違和感を抱いたのだ。
その確認も含めて。
『う、うぐ……強すぎる』
『お前等の主も懲りないな。……ほら、立てるか』
『……変な奴。さっきまで戦ってた相手にさ』
そう言いつつ、アリウスの生徒はその手を拒まない。
差し出された手を掴み、自分の身体を起こす。それにより伝わる彼女の体重に、間平は少しだけ目を細めた。
(やっぱり軽い……こいつ等、ちゃんと飯食べてるのか)
投げ飛ばした時や、体術で吹っ飛ばした時。
彼女達はまるで紙のようだった。つい一瞬、自分の出力がおかしくなったのかと勘違いする程に。
だから確認した。
そして、おかしいのが自分ではなく彼女達であることが判明したのだ。
『うぅ……』
『お腹、空いた……』
『っ甘えるなお前達! 負けたのに弱音を吐いたとなれば、マダムからの罰が増えるだけだ……!』
その言葉に、短い悲鳴が聞こえる。
だが身体は正直だ。空腹を伝える合図がそこら中から聞こえた。
恐怖や恥といった感情が混ざった呻き声が鳴りやまない。
それを無理矢理にでも抑えようとするアリウスの生徒達。
見ていられなかった。
ブラックマーケットでも、ここまでの光景を見たことはない。
間平は踵を返した。
『……行くぞ』
『待てっ。そっちは今来た道だ、マダムがいるのは』
立たせたアリウスの生徒が追いかけてくる。
肩に手を置かれると、ああ、と間平は短く答えた。
『取り敢えず、今はベアトリーチェの所への案内はいらない。まず外に案内してくれ』
『え?』
呆気に取られたかのような声を上げる、立たされたアリウスの生徒。
そんな彼女に対し、振り向いた間平が言う。
何も感じられないような無機質な表情。
だがその瞳には、心なしか熱を帯びているようにアリウスの生徒は感じた。
『お前ら子供だろ。もっと我が儘言っていいんだぞ』
それからはあっという間だ。
驚きの連続だったから、体感時間が短かったのかもしれない。
端的に彼がしたことを言えば、外で大量の食料と食器を調達し、巨大鍋を背負い、ここアリウスで調理を始めたのだ。
「この料理はそういった経緯で出来上がりました」
「……何だそれは。理解できない。襲撃をかけた敵に対して、食事を与える? 純粋な好意でだと? っ馬鹿馬鹿しい。それは偽善だ。裏があって、最終的に虚しさが残る結果になるだけだ!」
「……私は、それでも彼を信じようと思います」
何故、と問いかけようとするサオリ。
それは真横に立ったアツコにより、止められた。
押し黙るサオリに感謝の意味を込めて一度頷く。
彼女に代わりその理由を問うた。
前回の自分達を見逃した行動に加え、今回の行動。
間平という男に、アツコは興味を抱いていた。
「(それは、どうして?)」
「彼が……私達を背に、真っ向からマダムの前に立ち塞がったからです。自分の意見を曲げず、私達に影響が及ばぬようマダムとこの場を離れた。逃げ出したり、マダムの側に付くことは無かった。だから私は、彼を信じたいと思いました」
鮮明にその時の光景が甦る。
煙を見たのか、群がるアリウスの生徒達を見たのか、漂う香りで気が付いたのか。
ベアトリーチェが、間平とアリウスの生徒達の前に現れる。
『私の領地で何をやっているのです。間平悠!』
『……その多い目は飾りなのか? 料理してこいつらに振舞おうとしてるんだよ』
怒声とも取れるベアトリーチェの声。
怯むことなく、寧ろマイペースにおたまで鍋の中身をかき混ぜていた間平がそちらへ顔を向けた。
彼の態度が気に入らなかったのか。ベアトリーチェの怒りは治らない。
『何を勝手なことを……! 貴方達もです、たかが料理に現を抜かし、蟻のように群がるなど……恥を知りなさい』
ぎょろぎょろと複数の目が、アリウスの生徒全員を捉えた。
覆面をしているものの、まるで顔が覚えられたようだ。
だっていつも、味気ないパンやレーションばっかりじゃないか。
日頃の不満の一つを、吐き出したかった。
反論したかった。
でも出来ない。そんなことをして、得になることなんてないんだから。
アリウスの生徒達は制裁を恐れ、謝罪の体勢に移ろうとする。
だがそうはならなかった。
静まったこの場に、声が響いたからだ。
『蟻のように群がる……ね。その原因を作ったのはお前だろ、ベアトリーチェ』
『何……⁉』
その場の全員が声の主……間平に顔を向けた。
アリウスの生徒達は驚きで言葉を失い、彼を凝視している。
ベアトリーチェは声を発せはしたものの怒りで震えていた。
間平がシチューをおたまで掬う。存在を示すかのように。
『外じゃこんなの食べ慣れた味だ。仮に野外で同じことをしようが、こいつらと同年代の奴等はここまで集まらない。当たり前を教えなかった、今迄のお前の扱いが原因だろ』
そこでようやく間平の顔が動く。
ベアトリーチェに向けられた、能面のような表情にほんの少し皺が寄る。
まるで睨んでいるようだった。
『自分が作った原因を他人に……それも子供に被せるな。みっともない』
『黙りなさい! 貴方はアリウスの糧となることをしていればいいのです! 私の領地で、生徒の意思を弱めるこんなもの‼』
ツカツカと足早に近付き、大鍋に近付く。
次の行動が予測できた間平は、おたまを持ち変えた。シチューが鍋の中に戻る。
そして持ち手の根本をつまみ、その先端を彼女の足裏に合わせた。
『ぐっ……』
それだけでベアトリーチェの動きが静止する。
いかに力を加えようが、体重をかけようが微動だにしない。
ただ一点の箇所で自分の全てを受け止めている。相当の技術と筋力を兼ね揃えていないと、為せない業だ。
その事実に、改めてベアトリーチェは目の前の男に対する危機感を募らせた。
(やはり、この男は危険過ぎる……!)
『子供の前で鍋を蹴り返そうとするなんざ、マダムの名も地に落ちるんじゃないか』
『チィ……!』
足の裏を押し返され、よろめきながらもマダムは体勢を持ち直した。
その一連の流れに、アリウスの生徒達は覆面の下で……。
「……凄い」
眼を開き、その光景を目に焼き付けていた。
彼女達は心の中で、驚きと憧れに似た感情が生じていることを自覚する。
アリウスの生徒達はマダムの恐ろしさを知っている。だから逆らえなかった。
抗うのをやめて、ただ諦めて苦痛に耐える日々だ。
しかし間平は違う。
ベアトリーチェを前に、真っ向から自身の主張を貫いている。
手荒な手段を取ろうとした彼女に対して、同様の手を使いこれを打ち消した。
アリウスの生徒には、出来なかったことだ。
(((これが、男子……‼)))
それも動機が、自分達だ。
初めて会ったにも関わらず、まるで自分のことのように目の前の少年は受け止め、代行するようにベアトリーチェに向き合っている。
その事実が、自分の身を守るのは自身であることが当たり前で、誰も手を差し伸べてくれない、守ってくれない環境で生きてきたアリウスの生徒達の心を大きく揺さぶった。
『……まだ不満がありそうだな、ベアトリーチェ』
『当たり前です。こんな屈辱……!』
『分かった、続きは別のところでしよう。子供の前で大人同士の言い争いなんざ、悪影響でしかない』
『何を勝手に……! っ待て! 待ちなさい! 私を置いて、私の領地で勝手な行動を……!』
全ての顛末を思い返したアリウスの生徒は、ふぅと息を吐く。
安心したような、そんな様子だった。
それを聞いたアリウス・スクワッドの反応は様々だった。
「何その光景。ちょっと見てみたかったかも……」
「ふぇぇぇ。駄目ですよぅミサキさん。私、そんなの見たら笑っちゃって、罰を与えられてしまいますぅ」
ミサキとヒヨリは、ベアトリーチェが振り回される姿を想像している。
従ってはいるものの、その扱いのせいだろう。
やはり不満は抱いているようだ。ヒヨリも制止する素振りを見せながらも、笑いを零さないように口を押えていた。
「……む。どうした、姫」
アツコは黙って、サオリに顔を向けている。
それを不思議に思った彼女に問われると、手話で自分の考えていることを伝えた。
「(今の話を聞いて思ったの。何だかあの人、さっちゃんに似ているなって)」
「似ている? ……私とあいつが?」
何の冗談かと、サオリはかぶりを振る。
しかし、ミサキとヒヨリも思い当たることがあったのか。
アツコの考えに頷いた。
昔を懐かしむように、染み入るような声で。
「……そうだね。昔からずっと」
「私達を守ってくれてましたからね……サオリ姉さんは」
「っそんな目を向けるんじゃない。思い出に浸っている場合か」
帽子のツバで目元を隠し、顔を逸らすサオリ。
口調は厳しいものの、照れていることが分かる。
彼女にとって、ミサキ達は大切な存在だ。
守ることは当たり前だった。自分が年長者であるなら尚更である。
そう考えると、間平は異常だ。
出会ったばかりの者達に、大切な存在ではない者達に、何故そこまで肩入れ出来るのか。
サオリの思いを感じ取ったのか、アツコが手を動かす。
「(覗きに行ってみる? マダムとあの人の会話)」
「姫? いや、しかし……」
マダムにバレた場合危険だ。
そう言って断ろうとしたが、アツコが続けた。
「(因みに私はさっちゃんが行かなくても行くよ。あの人のこと、気になってきたから)」
「……私も興味はあるかな」
「ええ? な、なら私も……。バレたとしても、話を聞いた限りあの人が庇ってくれそうですし……」
ミサキとヒヨリもそれに追従する。
アツコは単純に間平に興味を抱いていることに対し、この二人はどちらかと言うと、ベアトリーチェの知らない一面を見たい欲があるのかもしれない。
「……ハァ」
サオリは大きな溜息を吐く。
額を抑え、何度か頭を振った。反対したところで、彼女達は止められないだろう。
なら。
「……分かった。私も行こう」
ここで待つより、一緒に行動した方が安心できる。
それにサオリも、他の三人程ではないにせよ、間平に対して興味を引かれているのは確かだった。
こうして、四人はベアトリーチェと間平の下に向かうのだった。
冬コミ参加します。
勿論、購入者として。行きたいサークルは既に何点かピックアップ済みなんですよ。
今月末が楽しみ〜!!