憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

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本当にありがとうございます!!!



今のところ男しか喋ってない小説ですが、次話こそはホシノさんとか出すのでお許しを……!


2.黒服

 

 

「誰、ですか……」

 

 斑目は目の前に立つ男から、一歩後ずさる。

 脳が警鐘を鳴らしている。今すぐその場から離れろ、この男は危険だ。

 しかし、形容し難いプレッシャーで満足に身体を動かせない斑目にとって、その一歩が精一杯の抵抗だった。

 

『初めまして、斑目ユウさん。私は……そうですね。黒服とお呼びください』

 

 不気味だ。

 丁寧な物腰も、声も、見た目も何もかもが。

 本当は逃げ出したいが、まともに足が動いてくれない。そんな自分の弱さに、斑目は強く歯を噛む。

 

「道塞いで、何のつもりですか? 僕、家に帰るので。失礼します」

 

 固い声を振り絞り、今出来る精一杯の敵対心を見せつけた。

 

 だからか、足の重みが消えた。もう後には引けない。

 勢いのまま足早に黒服の隣を抜けようとする。

 

「……?」

 

 何なく通れたことに安心すると同時に、斑目は拍子抜けだった。

 このまま立ち去ろうとすると、『ふむ……』と言った黒服の次の言葉に、その足が止まった。

 

 

『残念ですね。アビドスの借金を減らす、援助をしようと思ったのですが』

 

 

「!?」

 

 黒服の方に振り向いた斑目は、驚愕の表情を浮かべていた。

 何故それを知っている。本当に援助してくれるのか。そんな言葉が、頭の中を巡っていた。

 ふぅ……と息を吐き、斑目は自分を落ち着かせる。そして、黒服を睨んだ。

 

「……信用できない。貴方に、何のメリットがあるんですか」

 

『メリットならあります……貴方です』

 

「僕……?」

 

『キヴォトスで唯一の人間型男子生徒。興味を持つには十分だと思いますが?』

 

 斑目は苦虫を噛んだように、顔を歪めた。

 彼自身、その希少性は理解していた。だから、同級生と先輩には却下されたが自分を客寄せパンダに使おうとした時もあった。

 まさか寄せられた客が、こんなのとは。珍しい、と純粋に興味を持ってくれる生徒に集まってほしかった。

 

「……一体、僕に何をするんです? ただ珍しいから、傍に置いておきたい。そういうわけじゃないですよね?」

 

『理解が早くて助かります。私は知りたい……ユウさんのような人間を、ヘイローを持つ彼女達と同位の存在に出来るのかを』

 

「……実験台に、なれということですか」

 

 その問いに、黒服はゆっくりと頷いた。

 自分の反応を確かめられてるような頷きに、嫌な汗が伝う。

 斑目は自分の身体が、ホシノ達より脆弱であると認めている。彼女達と違い、銃弾が掠っただけでも傷が生じる。

 

 だからこそ。

 

 ホシノ達と同じ身体になるということは、元の身体の構造から変えていくということだ。それに伴う違和感、痛み、変化へのストレスは予想出来ない。

 それに、第一成功が確定しているわけでもない。黒服自身が『知りたい』と述べていることから、彼にとっても初めての試みなのだろう。

 

「受けるメリットは、アビドスの借金を減らせること。小鳥遊さん、ユメ先輩の隣に立てること」

 

『それに仲間外れではなくなりますね。貴方もヘイローを持てますよ』

 

「黙ってください。デメリットは……死ぬ。もしくは廃人に、なること」

 

 斑目はこの二つを天秤にかけた。

 正直に言えば、受ける方に天秤は傾いている。デメリットは自分一人が負うのに対し、メリットに私事もあるが同級生と先輩、もしかしたら今後来るかもしれない未来の後輩の生活も含まれている。

 

 

「でもっ、まだ、3人で過ごしたいっ……!!」

 

 

 アビドス高等学校での情景が浮かび上がる。いつも笑顔で、小さなことでも頭を撫でて褒めてくれる優しい先輩の姿。

 ぶっきらぼうな態度でありながら、常にこちらを気にする素振りを見せる、不器用で優しい同級生。

 そんな生活に別れを告げることを考えると、胸が苦しくて、涙が溢れた。

 

『……すぐには決められないようですね。であるならば、期間を定めましょう』

 

「っ。ずずっ……期間?」

 

『一ヶ月。最低でもこれを過ぎたら、答えを聞かせてもらいます。因みに、同じような話を別の方にもしています。もし彼女が一ヶ月経つより早く先に承諾したら、この話はなかったことになりますので、ご注意を』

 

 それでは、と黒服が立ち去る。その際、連絡先が書かれた紙を渡された。

 斑目は涙を拭い、それをポケットにしまい黒服の背中を見送り、思考に耽る。

 最後のは、きっと自分の回答を早く引き出すためのものだ。嘘か本当か分からないが、冷静さを欠かせることが目的だろう。

 そして『受ける』を引き出すつもりなんだ。

 

「その手には、乗らないからな」

 

 内心とは相反する態度で、そう言った。

 これは重大な選択だ。簡単に決めてはダメなんだ。

 斑目はアビドスの生活と並行して、よく考えることを決意したのだった。

 

 

 

 

 

 条件は僕が、小鳥遊さんやユメ先輩と同位の存在になれるかどうかの実験台になること。

 

 メリットは、①アビドスの借金を減らせること。②もう二人の足を引っ張らないで済むこと。③僕もヘイローを持てる。

 小さなことだけど、内心僕も欲しかったんだよね。二人とも天使みたいで綺麗だし、僕だけ仲間外れみたいで寂しかったし。

 

 デメリットは、僕が死ぬ若しくは廃人になること。

 

 答えを出せなかった僕に残されてる時間は、一ヶ月。その間に必ず答えを出す。

 そして後悔しないように、3人での時間を過ごすんだ!

 黒服の、別の女の子にも同じような話をしているといった話に、惑わされちゃダメだ。僕を焦らせて、『受ける』を選択させるつもりに決まってる!

 もしかしたらその間に、生徒会で改善策が出るかもしれない。だから、焦っちゃ、焦っちゃダメだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は溜息を吐く。

 

「……で、結局受けたってわけね」

 

 俺の存在が答えだ。普通の人間であれば、首を掻き切れば死んでる。

 なのに俺が意識を持って、ここで日記を読んでるということは、つまりそういうわけなのだろう。

 予め結末が分かっている映画を見終わった気分だ。

 

 だがまだ終わってはいない。

 

 青春の異物は見つかった。後は、その後を辿るだけである。

 現在という、斑目ユウが破滅に至るまでの道筋を。

 俺は次のページを捲る。その際、『裏に貼りついた血の跡』がベリベリと剥がれる音がした。

 

 

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