憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

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セイアさん実装されましたね。
ガチャに挑みましたが、4000あった石が600になりました。
一面の青天井でした。対戦ありがとうございました。



7.アリウスでの日々②

 

 

 

 

 

 

 

 こめかみの辺りに青筋を浮かばせていたミサキが、間平に視線だけを向けた。

 気配で気付いたようだ。彼女の青筋が消え、気だるげな動きで片方の服の袖が動いた。

 

 

 

「はい。責任者あそこ。許可取るならあいつにして」

 

 

 

 これ以上、関わりたくないのだろう。

 

 顔を鍋に向けたまま、かき混ぜている手と逆の人差し指を彼に向けた。

 間平に対処を丸投げしたのだ。

 

 

 

「責任者?」

 

 

 

 きょとん、とした顔をした少女が間平を捉える。

 ミサキの策略は成功し、彼女は鍋から離れて興味深そうに間平に歩み寄った。

 

 

 

「へー! 君、かっこいいね? まさかアリウスにも男の子がいたなんて」

 

「......そりゃどうも。その口振りじゃ、他にもいるのか?」

 

「確か、アビドス? ってところにいたっけ。あはは、その子のことはよく知らないや!」

 

 

 

 間平は静かに息を吐く。安心したのだ。

 正直、先程までは内心穏やかではなかった。

 

 キヴォトスに住んでいる者なら、男子生徒がアビドスにいることを知っていてもおかしくはない。

 

 問題は、目の前の少女がどこまで知っているかだった。

 だがこの様子なら、斑目の名前も顔も知らないと見ていいだろう。

 

 

 

「あ、でも一つだけはっきり覚えてることがあった。きっと君も驚くよ?」

 

「......?」

 

 

 

 安心、した筈だ。

 しかし、微かに眉間に皺が寄るのを自覚する。間平は何となく、嫌な予感がした。

 

 そしてそれは、確定的なものになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でもその子、自分より何倍も大きい機械と殴り合って勝ったらしいの! それに、どんな大怪我もすぐに治るなんて凄いと思わない⁉」

 

 

 

 

 

 

 

 悪意のない笑顔を向けてくる少女。

 ......きっと揺さぶり等、そういったことは考えてない。

 

 それでも間平は、彼女が恐ろしく思えた。

 目の前の少女に対して、疑問が次々と湧いてくる。

 

 どこまで知っているのか。先生と関係を持っているのか。所属は。

 斑目達の、敵なのか。

 

 

 

(......知る、必要があるな)

 

 

 

 もう自分は、あの場所に戻るべきじゃない。

 それが間平の考えだ。

 

 先生が亡くなる可能性を下げるための契約が無駄になるのに加え、アビドスには斑目がいる。

 折角、本来あるべき形に収まったものを歪ませるわけにはいかない。

 

 

 

 今、その現状を崩す可能性のある存在が目の前にいる。

 しかもあちらに対し、こちらは掴んでいる情報が皆無に等しいときた。

 

 

 このまま、尻込みするわけにはいかない。

 何とかして2人きりで話し、情報を引き出さなくては。

 

 

 

「ってこんなことを話したいんじゃなくて!」

 

「あのカレーだろ?」

 

 

 

 焦燥を隠しつつ、間平は鍋に視線を向ける。

 ミサキとヒヨリは、こちらをじっと見ていた。まさか......といった目だ。

 

 

 

「あいつ等を優先していいなら、食べてもいいぞ。それに、お前の話には興味がある」

 

「本当⁉ 話が分かる人は好きだな~!」

 

 

 

 ミサキは溜息を、ヒヨリは安心した表情を浮かべた。

 前者は恐らく、うるさい人間と食事をすることに対してだ。後者は自分達が先に食べれることが確定し、嬉しいようだった。

 

 

 

「ほら、やっぱりもう準備されてる!」

 

「シチューの色違い⁉」

 

「食べよう食べようっ」

 

「うわ、凄く集まってきた」

 

 

 

 3人に配膳を終えた頃になると、カレーの匂いに気付いたらしい他のアリウス生も集まってくる。

 大人数で一気にだ。ここまで人数が集まるのを見たことがないのか、ミカは少しだけ驚いた。

 

  

 

「多分、この付近にいた奴らが匂いに気付いて、遠くにいる奴らを連れて来たんだろう」

 

「......未だに信じられないよ。戦闘のためじゃなく、ただの生活でもここまで繋がりが出来るなんて」

 

 

 

 ぽつりとミサキが言った。

 

 戦闘中は連携がなければ失敗する。その結果、酷いことをされるからアリウス生はそうしてきた。

 

 だが普段の生活は違う。

 幼い頃から一緒に育ってきたスクワッドは例外として、他のアリウス生がこうした結束を見せることはあまり見られなかった。

 

 

 

「良い傾向なんじゃないか? 俺自身、子供はああやって、わいわいしてる方が好きだし」

 

「ちょっと元気すぎる気がするけど......まあ、死体のように黙ってるよりかはマシかもね」

 

 

 

 ミサキも今のアリウスを嫌いではないらしい。

 そんな中、ミカは困り顔で言った。

 

 

 

「うーん。元気なのは良いけど、あの子達ここで食べるんでしょ?」

 

「まあ、そうだろうな」

 

「なら私、ちょっと離れた位置で食べていい?」

 

「あー......居心地が悪いのか?」

 

 

 

 間平からしたら願ってもない言葉だ。

 

 外部から来た人間として、既に集団と化した輪の中にいるのは居心地が悪いのかもしれない。

 間平は何度かここに来ているのに加え、男であることから大して気にしないが、女子はそういうわけにもいかないのであろう。

 

 ミカは首を振った。

 

 

 

「ううん。あの子達、自分の服を洗濯してなさそうだし、集団で来られたら臭いかなーと思って!」

 

 

 

 それじゃ! と言って、ミカは皿に盛られたカレーを持って、立ち上がる。

 歩いていくその背中を見て、ミサキがぽつりと言った。

 

 

 

「私があいつにする扱いの理由、何となく分かった?」

 

「良い意味でも悪い意味でも、純粋な性格なんだろうな......」

 

 

 

 対処を丸投げしたミサキの気持ちが、何となく分かったかもしれない。

 あの少女は思ったことをそのまま口にしてしまうようだ。ミサキの表情から、何度か失礼なことを言われた経験があるように感じる。

 

 だが彼女が席を外したのは、自分にとって都合が良い。間平も同じように立ち上がった。

 

 

 

「注意でもしに行くの?」

 

「効果は期待するなよ」

 

 

 

 ミサキの問いに、そう返す。

 間平の主たる目的は少女のことを知ることだ。

 

 その過程で斑目の話をされるかもしれない。

 男子で、再生能力を持つ者が他にいると知られるのは面倒だった。恐らくそれは、斑目にとってもプラスにならないだろう。

 

 特異な体質を得てしまった斑目の存在を知る者は、少ないに越したことはない。

 

 

 

「あれ? 何か用?」

 

 

 

 少女を追いかけると、彼女は段差のある場所に座っていた。

 間平は歩み寄っていく。

 

 

 

「ちょっとした親切心でな。あと、お前の話に興味があるって言ったろ」

 

「ああ! 言ってたねそういえば」

 

「そんなわけで、隣いいか?」

 

「勿論っ。話し相手がいると退屈しないしね」

 

 

 

 間平は少女と、小さな間隔を空けて座った。

 そして、スーツのジャケットを脱いで手渡す。

 

 

 

「万が一もある。純白にカレーはまずいだろ?」

 

「わーお。そのためにわざわざ来てくれたのっ? ......それじゃあ、有り難く使わせて貰おうかなっ☆」

 

 

 

 カレーを一度置き、少女は間平から手渡されたそれを重ね着する。

 悪くないようで、間平に向けて笑顔を見せた。

 

 

 

「ありがとうね。えーと」

 

「間平だ。間平悠」

 

「悠ね! 私は聖園ミカ。ミカでいいよっ」

 

 

 

 ミカと名乗った少女は、再度カレーを手に取り口に運ぶ。

 そして満足げに頷いた。

 

 

 

「うんっ、美味しい。まさかアリウスでこんなまともな食事が出来るなんて、思わなかったな」

 

「そう言ってくれると嬉しいね」

 

「でもこれ、ジャガイモ一回取り除いてないでしょ? そのせいでカレーに溶けて、ちょっと口当たり悪いかな~」

 

「上げて落とすなよ......俺の好みと、あいつらがすぐ食べれるためにだ。悪かったな」

 

 

 

 ここまでズバッと言われると、怒る気にもなれない。

 だが、これを不快に思う人間もいる。実際、ミサキもそちら側だった。把握してないだけで、もっといるかもしれない。

 

 だから間平は言った。

 

 

 

「正直なのは良いが、時と場合を考慮しないと、その内痛い目に遭うんじゃないか?」

 

「痛い目? 私が? あはは、ないない!」

 

「ほー。腕に自信が?」

 

「まあね~。私、こう見えて結構強いんだよ? それに一応、ティーパーティーだからさ!」

 

 

 

 ティーパーティー。

 

 間平はその単語に聞き覚えがあった。

 シャーレにいた時、アビドスにいた時、そしてヒフミと関わる中で何度か耳にしたことを思い出す。

 

 

 

(マジか......トリニティの生徒会、だよな?)

 

 

 

 驚きより、困惑の方が勝った。

 分からなかったからだ。何故そんな人物が、ここにいるかを。

 

 言っては悪いが、最もこの地に立つには似合わない立場の人間のように思えた。

 話の脈が不自然にならぬよう、注意しながら会話を続ける。

 

 

 

「トリニティの生徒会か。なら、余計に気を付けるべきじゃないか? 発言には」

 

「そこは大丈夫。やらかしそうになったら、同じティーパーティーのナギちゃんとセイアちゃんが止めてくれるし」

 

「人頼みかよ」

 

 

 

 溜息を一つ吐く間平。

 この様子だと、思ったことをそのまま発言してしまうことに関する注意は意味をなさない。

 

 まあ、会ってすぐの人間の忠告などそんなものだ。それに主たる目的はこれじゃない。情報を集めることだ。

 間平は再度、口を開いた。

 

 

 

「そのストッパー2人は反対しなかったのか? お前がここに来ること。せめて護衛をつけるとか、それくらいのことはするだろ普通」

 

 

 

 トリニティはキヴォトスの中でも、規模の大きい学園だ。三大学園に数えられる、一大勢力である。

 その運営に携わる生徒会の1人が、この孤立した地に向かうと聞いたら心配ではないのか。

 

 間平の言いたいことを理解したのだろう。ミカは言った。

 

 

 

「反対しないよ。そもそも言ってないし」

 

「......まさか無断で?」

 

「そうだよ? だってアリウスと和解したいって言ったら、2人とも呆れた顔するんだもん。ここに来ること、言うわけないじゃんね」 

 

 

 

 ミカの説明を要約するとだ。

 

 大昔アリウスはトリニティに自治区を有する、分派の一つだったらしい。

 しかし方向性の違いから弾圧され、この未開の地へと逃げ込み今に至ったとのこと。

 

 それを知った彼女は仲直りがしたいと思い、このアリウスに在籍する1人を編入生として、トリニティに招き入れた。トリニティとアリウスの架け橋となることを祈って。

 

 以降、彼女自身も定期的にアリウスに訪れているらしい。

 

 

 

「でもさでもさ。はぐっ。私、セイアちゃんはともかく。むぐ。ナギちゃんに呆れられる筋合いはないと思うんだっ」

 

「おい。そんな勢いで食べて、噴き出しても知らないぞ」

 

「大丈夫だもんっ。食べなきゃやってらんないの!」

 

 

 

 ミカのカレーを食べる速度が上がっていく。間平はこれから彼女の愚痴が始まる予感がした。

 まあ、上の立場に立つ者なら愚痴を吐き出したくもなるだろう。

 

 その対象者が部外者である俺でいいのかとは思いつつ、聞いてやることにした。

 もしかしたら彼女がどれ程、斑目に関して知っているかを話してくれるかもしれない。

 

 ミカは溜息を吐きつつ、話し始めた。

 

 

 

「悠はさ、もし自分達が一大イベントを開く直前に、少し離れたところで危険因子が生まれたって分かったら......どうする?」

 

「......そうだな」

 

 

 

 間平は顎に手を置く。

 無表情な彼にしては珍しい、深刻な様子だった。

 

 

 

 ここで......繋がるのか。

 

 

 

 危険因子が誰か......それを察してしまい、顔を顰めたくなるが堪える。

 

 

 

「前提条件をいくつか確認したい。そいつは必ず、こっちに進行してくるのか。害意を向けてくるのか」

 

「うーん。最初の問いは、把握できないっていうのが近いかな。次の問いは分からない」

 

(......まあ、外部の人間からしたらそうだろうな)

 

 

 

 ミカの返答に、間平は心の中でそう吐き捨てる。

 そんなこと、するわけがないだろう。彼が。

 

 

 

「俺は『観察し続ける』。位置が離れているなら尚更。そいつのことがよく分からない以上、下手に手を出すのは悪手だ」

 

「だよね⁉ 普通そうだよね! セイアちゃんと私も同じ!」

 

「......その反応じゃ、件のナギちゃんは違う回答を出したのか」

 

「うん。『管理するのも手』だってさ! わざわざ危険因子をこっちに引き込む必要がある? 危ないと思わない?」

 

 

 

 次にミカが零した言葉は、間平にとって最後通牒のようなものだった。

 

 

 

 

 

「相手は自分の何倍もの大きさの機械と殴り合いで勝つし、大怪我もすぐに治るんだよ? 万が一のことがあったら、こっちの被害も計り知れないじゃんね」

 

 

 

 

 

 ......本当に、最悪だ。

 間平は内心で舌を打つ。表情はあまり動いていない筈だが、もし正常な状態なら歯を嚙み締めていたかもしれない。

 

 こちらから聞くまでもなく、斑目について話された。

 しかもそれは、最悪な形でだ。

 

 

 

「......それ、さっきのアビドスの生徒か」

 

「うん。ナギちゃんにしては、思い切った考え方だよ。本当に」

 

 

 

 ミカは言う。きっかけは、トリニティの生徒が榴弾の演習に出た時のことだ。

 偶然、そこで彼女達はその男子生徒の戦闘を目撃した。

 

 凄まじいスピードで砂漠を駆け、自分より何倍も大きい蛇のような機械と殴り合い、身体を欠損し血しぶきを上げながらも。

 

 

 

 好戦的な笑みを浮かべて、その少年は戦っていた。

 

 

 

 勝ったのは彼だ。だが敗者でもある。

 何故なら、その場にいた全員が頭を撃ち抜かれて倒れる少年を見たからだ。

 

 そこで本来、終わる筈だった。

 数日後、普通に高校に通う彼の姿が目撃されるまでは......。

 

 

 

(......くそ)

 

 

 

 複雑な心境だった。

 カイザーPMCとの戦いは、ヒフミの協力によって為されたトリニティの援護射撃。それがなければ、自分達は負けていたかもしれない。

 

 だがそのせいで、今、斑目に手が伸びようとしている。

 彼自身は何も知らない、無力な男子生徒に過ぎないと言うのに。

 

 

 

 

 

 

 他ならぬ、自分自身(間平 悠)のせいで。

 拳を強く握っていることに気付き、ゆっくり息を吐く。悪いことばかり考えないように。

 

 

 

 

(......唯一救いがあるとしたら、ミカが斑目をあまり知らなそうってところか)

 

 

 

 ミカの話を聞いた限り、彼女は斑目のことを最低限しか知らない様子だ。

 恐らく、写真とかも見ていない。きっと用意はされているが、興味が湧かず目を向けていないのだろう。

 

 こちらとしては、その方が有難いのだが。

 

 だがナギサは違う。斑目を警戒している様子だし、恐らく顔写真等の情報も得ている筈だ。

 それをミカが見て、間平と斑目との関連性を問うのも時間の問題だろう。

 

 

 

(そうなったら仕方ない。名残惜しいが、アリウスから姿を消すさ。対人戦を積めなくなるのは残念だけどな)

 

 

 

 はぐらかせば、彼女は直接斑目のもとに向かうかもしれない。

 そこからアビドスを経由し、先生に伝わる可能性もあった。それだけは避けたい。

 

 だからミカに関連性を問われた時点で、間平は姿を消すつもりだ。

 

 そうすれば先生達がアリウスに来ることもないだろう。

 いることが分かっているならともかく、もういない男を探しに孤立した地まで来る程、彼女も暇ではない筈だ。

 

 

 

(もう俺はお前達に関われない。背負わせて悪いが......斑目を頼むぞ、先生)

 

 

 

 既に彼女達にとって、死人と間平は認識されている。

 何食わぬ顔で戻れる筈もない。変に期待もさせるべきではない。

 

 だから今の彼に出来ることは、ただ彼等の無事を、祈ることのみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 




不定期と言いつつ、大体2週間の間を空けて投稿している気がする......。
癖になっているのかもしれませんねェ。反応貰えるのも嬉しいし、自分の『好き』を表現できるので。うへへ。
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