憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

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投稿が不定期らしくなってきましたねェ。
一ヵ月間隔が空いたの初めてかも……? 
悲しいんだァ……!



10.真夜中の散歩

 

 

 

 

 

 

「というわけで、今からトリニティの商店街に遊びに行くのですが斑目君もいかがですか?」

「ええ……」

 

 

 

 夜のことだ。

 自室の扉をノックされ、廊下に足を踏み出した斑目の前にはハナコが笑顔で立っていた。

 予想すらしていなかった提案に、斑目の口から戸惑いの声が出る。

 

 雨が止み、水着パーティーを終えた斑目達は洗濯を終わらせた。

 後の残り時間は休息をとる。それが今日の予定だった筈だ。

 

 斑目が抱いた疑問に答えるように、ハナコが言った。

 

 

 

「何だかそのまま寝てしまうのは勿体ない気がしまして♡ 夜遅くのお散歩、ワクワクしませんか?」

「まあ……確かに」

 

 

 

 今日は突然の悪天候によるトラブルもあり、斑目自身、消化不良な感じはしている。

 彼の服装が寝間着姿でないのがその証拠だ。

 

 寝てもいい時間に着替えないのは、このまま今日を終わらすつもりはないという無意識による意思表示だろう。

 

 斑目は休息を自習時間に費やしてもいた。

 気分転換も兼ねて、散歩するのは良いかもしれない。

 

 

 

「分かりました。僕も行きます。準備してきますね」

 

 

 

 斑目は部屋の奥に進み、防弾チョッキとヘルメットを身に着ける。

 そして廊下にいるハナコと、並んで合宿所の入り口まで向かった。

 

 移動中、斑目は彼女に尋ねる。

 

 

 

「ハナコさん以外の皆も?」

「はい。体操服から外に出れる恰好に着替えてます。私は最初から散歩するつもりだったので、このままでしたが」

 

 

 

 体操服からとなると、着替えていないハナコや重ね着しただけの自分より、着替えるのに時間がかかるだろう。

 つまり待ち時間が生じる。なら、と斑目はハナコに顔を向けた。

 

 

 

「一度先生のところに行きませんか?」

「? 何故ですか?」

「……流石に、先生から許可取った方がいいですよ。僕達がごっそりいなくなったら心配します」

 

 

 

 とはいえ、彼女達は補習授業部。補習を受けている身である。

 夜遅くの外出に対し、先生がすんなり許可を出してくれない可能性はあるのだが。

 

 だからといって無言で外出するわけにもいかない。

 姿を消した自分達を心配する先生の姿を想像すると、そうする気にはなれなかった。

  

 

 

「まあまあ♡」

 

 

 

 先生の部屋へ向かおうとする斑目の手を突然ハナコが握る。そのまま歩き出した。

 そのまま玄関に向かうつもりだ。斑目はそのことに気付き、抗議の声を上げる。

 

 

 

「ちょっとっ、あのっ、ハナコさん⁉」

 

 

 

 抗おうとするが、ハナコの手を振りほどけない。

 彼女の手は柔らかかった。それに痛く感じる程、強い力で握られているわけでもない。

 

 しかし、その手から抜け出すことはできなかった。

 立ち止まることもできず、斑目はされるがままだ。

 

 

 

「うふふ♡ 大丈夫ですユウさん」

「何が、ですかっ」

「答えはすぐ分かりますから♡」

 

 

 

 ハナコは楽しそうだ。一生懸命抵抗する斑目に、ほんの少し嗜虐心が湧いている。

 本人には言えないが、可愛らしいとも思っていた。

 

 そのまま二人が玄関に向かうと、そこには先生が立っていた。

 班目はハナコが自分を止めた理由を理解し、溜息を吐く。

 

 

 

「許可を得てたんですね……」

「はい♡ 楽しそうだから行こうって、すんなり許可してくれましたよ」

「勉強漬けは良くないしね。息抜きも大事!」

「うぅん……」

 

 

 

 教育者としてそれでいいのか、という思い。

 一方で、その緩さに有難みを覚える。斑目は複雑な心境だった。 

 

 

 

「楽しみですね、お出かけ♡ うふふ」

 

 

 

 ハナコはそう言って、鼻歌を歌う。

 それは着替えてきたヒフミ達と合流し、トリニティの商店街に着くまで続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 トリニティの商店街にあるスイーツ屋。

 ヒフミ曰く、ここの限定パフェは凄く美味しいとのことだった。

  

 24時間営業していることや丁度歩いてお腹が空いていたこともあり、斑目達はそのスイーツ屋の中に足を踏み入れる。カウンターの前に立つと、店員である人型ロボットの顔面が笑顔の表示になった。

 

 

 

「6名様でしょうか? ご注文をどうぞ」

「あはは、真夜中にスイーツ屋さんだなんて……緊張もありますが、何だか凄くワクワクしますね」

「確かに」

 

 

 

 目配せするヒフミにアズサが頷く。二人は笑い合った。

 邪魔するのは無粋だと思い、斑目はヒフミに代わり注文を試みる。

 

 

 

「あの、限定パフェってまだありますか?」

「申し訳ございません……限定パフェはちょうど先程、別のお客様が三つ注文されたのが最後でして……」

「え……一人で三つ、てことですか?」

「はい……。個数の上限を設けていないとはいえ心配になりましたよ。体じゅ、ううん。失礼」

 

 

 

 咳き込む店員。斑目は後ろを見ないようにした。

 背中からひしひしと圧を感じる。女子陣の様子は伺わないほうが良さそうだ。

 

 恐らく彼女達の姿が見えているであろう店員に斑目は同情した。

 ……とはいえ、これからスイーツを食べる彼女達の前で触れたくないワードを出しかけた店員の自業自得な部分もあるとは思うが。

 

 

 

「ええと、その方の顔があまりにも鬼気迫っていましたから」

 

 

 

 店員の声は少し震えていた。

 今の状況のせいもあるだろうが、その時恐れを抱いたのかもしれない。

 

 パフェを三つ買ったその客はドが付くほどの甘党なのかな。

 話を聞いた斑目はそう思った。

 

 

 

「……仕方ありません。それじゃあ、別のものを頼みましょうか」

「そうですね。え~と、どれにしましょう……」

「コハル、これはどういうスイーツなんだ」

「ああ、それはね……」

 

 

 

 ないものは仕方ない。

 残念そうな顔をするが、女子陣はすぐに切り替えた。

 カウンター上に開かれたメニュー表を見て、各々食べたいものを選んでいく。

 

 斑目は既にチーズケーキを選択していた。

 そこで先生が後方に移動していることに気付く。

 

 

 

「あれ、先生は?」

「私は……コーヒーでいいかなぁ」

「スイーツ、食べないんですか?」

 

 

 

 先生が斑目を見下ろした。

 小さく、温度の感じない声で言う。

 

 

 

「斑目君……女の子は太りやすいんだよ」

「え」

「加えて、年齢を重ねるにつれて太りやすくなるんだよ。覚えておいて」

「……何か、すいません」

 

 

 

 大人にしか分からない悩みもあるらしい。

 深くは追及せず、斑目はただ謝ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 カウンターで受け取った、スイーツが乗ったプレートを持って斑目達は歩く。

 

 真夜中でもそこそこの客が入っていた。

 昼だったらもっと大勢の客がいて、座ることは難しかったかもしれない。

 

 空いた席を見つけ、斑目は安心して息を吐いた。

 向かおうとする際、その隣の席にいる客の姿を捉え、息を呑む。

 

 

 

「はむ、はむ。んん……!」

 

 

 

 そこにはセーラー服のような黒い制服に身を包む生徒がいた。

 スプーンで何かを口に運んでいるらしい。テーブルの上には、完食されたパフェの器が2つある。

 

 彼女の手にはまだパフェが入った容器が1つ掴まれていた。

 恐らく、この人物が店員が話していた客だろう。

 

 

 

(凄い食べっぷりだ……)

 

 

 

 食べる動きと連動して、彼女の長い黒髪と大きな黒い翼が揺れていた。

 

 驚くと同時に納得する。

 座ってはいるが、その生徒の背丈はこの店内で一番大きいことは一目瞭然だ。

 制服を着ていなければ、生徒と分からなかったかもしれない。

 

 あれだけ食べれるなら、普段も同じくらい食べていることだろう。身体が大きいのも納得というものだ。

 斑目の視線に気付いたのか、その生徒がこちらに顔を向ける。

 

 

 

「……あら?」

「あれ?」

 

 

 

 彼女は驚いたように声を上げた。自分を見てではなく。

 その視線の先を斑目が追うと、先生も同じような顔でその生徒を見ていた。

 

 冷や汗を流しながら、パフェを食べている生徒が言う。

 

 

 

「せ、先生……?」

「ハスミ⁉」 

「ハ、ハスミ先輩⁉」

 

 

 

 パフェを3つ食べていた客。

 それは正義実現委員会の副委員長であるハスミだった。

 

 

 

 

 

 いつまでも立ってるわけにもいかず、斑目達は空いていた席に座る。

 その隣の席には、黙るハスミが座っていた。

 

 パフェを大食いしている姿を見られ、どんな顔をすればいいのか分からないのだろう。

 それはヒフミ達も同じだ。

 

 その姿を目撃してしまったこと。

 さらに補習中であるにも関わらず、こうして真夜中に散歩しているのを見られてしまったのだ。

 両者間で、ただ気まずい空気だけが漂っていた。

 

 静寂を終わらせたのはハスミだ。

 最後のパフェを平らげ、顔を向けてくる。

 

 

 

「先生……それに補習授業部の皆さん」

「あ、あぁぁぁぁ……!」

 

 

 

 怒られると思ったのか、コハルが慄いた。

 しかしハナコは笑顔でそれに応じる。

 

 

 

「ハスミさん、奇遇ですね♡ 真夜中にパフェを3個も……確か、ダイエット中だと伺いましたが?」

「こ、これはですね。その……」

「はい。心中お察しいたします。真夜中に襲ってきた悪しき欲望に導かれて、ここまで来てしまったのですよね?」

「え……⁉ い、いえその……」

 

 

 

 おや、と斑目は思った。

 

 変だな。

 こちらの方が悪いことをしている筈なのに、何故かハナコさんが優位に立っている感じがする。

 

 

 

「そうして欲望のまま滅茶苦茶にしてしまった後、理性を取り戻したころにはもう取り返しがつかない程に乱れて……」

「夜中ってお腹がすくよね」

「せ、先生……こほん。その、自分のことを棚上げするようですが、補習授業部の皆さんはそもそも、合宿中の外出が禁じられていた筈では……?」

 

 

 

 その一言にコハルが身を震わせた。

 当然、ハスミもそれは見えている。彼女は静かに目を伏せ言った。

 

 

 

「……ここはお互いに、見なかったことにするとしましょうか」

「ハスミ先輩……」

 

 

 

 目に涙を浮かべるコハル。

 そんな顔をする必要はないとばかりに首を振ってから、ハスミは慈愛に満ちた笑顔で問いかけた。

 

 

 

「コハル……お勉強、頑張っていますか?」

 

 

 

 補習授業部が無断外出した話はここでおしまい。

 そう言っているようだった。

 

 実際その通りになる。話題がコハルの成績について変わった。

 ヒフミや先生によりコハルの成績が上がっていることを聞き、ハスミは嬉しそうだ。

 

 数分前の気まずい空気が嘘だったように、穏やかな雰囲気に包まれる。

 そこに場違いな通知を知らせる音が響いた。その端末の持ち主はハスミだ。

  

 

 

「こんな時間に連絡……? はい……イチカ? どうかしましたか」

 

 

 

 ハスミが話し始める。

 冷静に話していたかと思えば急に感情を昂らせたり、数秒後には落ち着きを取り戻したりと忙しい。

 

 何となく先生達は、トラブルが起こっているのだと理解出来た。

 その予感は間違いではなかったようで、溜息の後ハスミは先生達に顔を向ける。

 

 

 

「突然のことですみませんが、みなさんの力が必要です。お願いできますでしょうか」

 

 

 

 

 

 

 ハスミが言うには、トラブルの元はゲヘナの美食研究会だ。

 名前だけ聞くとまともな部活なように思えるがそうではない。実態はほとんどテロ組織だった。

 

 というのも彼女達は『究極の味』を求めている。

 そのためにゲヘナに留まらず、キヴォトス中の料理店に出没しマズイ料理を出されればその店を爆破するのだ。

 

 話を聞いた斑目は渋い表情を浮かべる。

 

 

 

「それは傍迷惑な人達ですね……。え、待ってください。ということはゲヘナの生徒がトリニティの飲食店を爆破したってことですか。それって不味くないです?」

 

 

 

 トリニティとゲヘナの仲が険悪だというのは聞いたことがあった。

 美食委員会の行為はより一層、両者の関係を悪化させるのではないか。

 

 不可侵条約であるエデン条約が締結直前である今は尚更だ。

 斑目の内心を読み取ったのか、ハスミは静かに首を振る。

 

 

 

「不幸中の幸いというやつですね、爆破はされていません。今回は水族館から『ゴールドマグロ』という珍しい魚が盗まれただけに留まってます」

 

 

 

 悪事ではあるが、飲食店を爆破したのと窃盗だと後者の方がマシに思えた。

 実態は分からないが聞いただけだと、前者は明確な破壊行動があるのに対し、後者はただ物を奪って逃げているだけ。まだ可愛げがある。

 

 その時、外から爆発音が聞こえた。アズサが店の入り口に顔を向ける。

 

 

 

「近いな。爆発音からして、ここから1km以内のところか」

「え、えぇ……っ⁉」

「……改めて、皆さんの力を貸してくれますでしょうか。今はエデン条約を目前に控えて、色々と過敏な時期です。この問題が傍から見て、『トリニティの正義実現委員会とゲヘナ間の衝突』と捉えられてしまうと、状況が不利になることは想像に難くありません」

「つまり、補習授業部と私達シャーレが一緒に解決する。そういう構図が望ましいってことだね」

 

 

 

 先生の確認にハスミは頷いた。

 大人として、断る理由はない。先生は力強く頷く。

 

 

 

「よし。補習授業部一同、出発!」

 

 

 

 そんなわけで、美食委員会を止めるため一同は席を立つ。

 このままスイーツ店から出ようと入り口に足を進めようとした丁度その時だった。

 

 明るい声と共に、入り口の扉が開く。

 

 

 

「うーん! 入ると目の前のショーケースには、色とりどりのスイーツが並んでいます! 甘い匂いも漂ってきて、これにはダイエットを決めた我々女子も敗北してしまいそうです! まあこんな時間で、こんな生放送を見ている時点で皆さん、最初から負ける気なんでしょうけど‼」

「クロノススクール……‼」

 

 

 

 カメラを手に、店内に入ってきたのはクロノススクールの生徒だった。

 テレビ中継や雑誌の作成等、報道を活発に行っている学園だ。今は丁度中継を行っているらしい。

 

 

 

「くっ……! どうしてこんな時に限って……‼」

 

 

 

 ハスミは奥噛んだ。その視線の先には、空になったパフェの容器が3つある。

 女子として、正義実現委員会の副委員長として、今の自分を記録されたくなかった。

 

 今ここにいるのを見られたくないのは、彼女だけではない。

 禁じられた外出を行っている補習授業部もだ。

 

 

 

「ま、まずいです、まずいですっ。このままじゃ外出したことがバレてしまいます……‼」

「どうするの⁉ 折角、ハスミ先輩に守ってもらったのにこれじゃあ……‼」

「仕方ありません……ここは私が脱ぐしか」

「ハナコ。それだと余計に注目されるんじゃないか?」

「相打ち覚悟でBANです♡」

「駄目ですよ⁉」

 

 

 

 そうこうしている間に、カウンターを経由してクロノススクールの生徒が近付いてきた。

 注文を終え自分は席に着き、店員に運んでこられるスイーツの画を撮影しようとしているのだろう。

 

 

 

「僕が行きます。その内に」

「斑目君⁉」

 

 

 

 そう言うと同時に、斑目が動いた。

 静かに歩きだし、着実にクロノススクールの生徒に近付いていく。

 

 如何にもスイーツを食べ終え、出て行く客のように。

 周囲をレポートしながら歩いていたクロノススクールの生徒が、斑目を視界に捉えた。

 

 

 

「あーーーーー‼」

 

 

 

 大声を上げるや否や、斑目の進行方向を防ぐように立ち塞がる。

 

 

 

「人間型男子生徒……‼ あの、もしかして貴方、キヴォトスに一人とされる男子生徒の方ではないですか⁉ 確か所属はアビドスの⁉」

「え、ええと。はい。多分、僕のことかと」

「凄い、何気にお会いしたの初めてですよ私‼ こんなひょっこり会えるんですね! ツチノコですか⁉」

「人間ですが⁉」

「見事な反応速度! これは私達、息の合うパートナーってことじゃないでしょうか⁉ どうです、お茶がてらインタビューでも……!」

 

 

 

 鼻息を荒げ、徐々に迫ってくるクロノススクールの生徒。

 生暖かい息が顔に当たる。見開かれた彼女の目はまるで獲物を見つけた肉食獣のようだった。

 

 だが、良い。これで良い。

 今の彼女に周囲は見えてなく、斑目だけを見ている。

 

 斑目はゆっくりと移動し、先生達の位置をクロノススクールの生徒の背面とすることに成功した。

 そのチャンスを逃すわけにはいかない。先生達は急いで、スイーツ店から出る。

 

 トリニティの商店街を駆けている中、ハスミは隣を走る先生に言った。

 

 

 

「便利屋『顔無し(ノーネーム)』。味方になるとここまで頼もしいとは。私のイメージする姿ではありませんでしたが、人は見かけに寄りませんね、先生」

「や、やだなあハスミ。彼は斑目君だよ。『顔無し』とは別人だって」

「そうなのですか? キヴォトスに男子は一人だけじゃなかったとは……驚きました」

 

 

 

 そう。『顔無し』と斑目は別人だ。

 

 だが先生はここで危機感を抱いた。自分の発言を思い返し、冷や汗が流れる。

 男=便利屋『顔無し』の構図は既に知れ渡りつつある。

 

 

 

 

 

 恐らく報道部もそれを知っている筈だ。

 つまり今スイーツ店では……斑目に『顔無し』の存在が知らされているのではないか。

 

 

 

 

 

 

 

(大丈夫……だよね?)

 

 

 

 先生はそう強く拳を握り、ただ斑目が『顔無し』について知らされることがないことを祈るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それで今夜はどうしてトリニティに?』

『ここの限定パフェが美味しいって聞いて。有難いことに、24時間営業してくれているのでもしかしたら食べれるかなって……残念ながら食べられませんでしたけどね』

『成程。男子も甘いものは好きと。それでこの細さは羨ましいですね~! このこの、ちゃんと食べてるんですか~⁉』

『ちょ、ちょっと、くすぐったいですよ』

 

 

 

 真夜中の暗い部屋に映るテレビには、距離の近いクロノススクールの生徒と斑目の姿が映っている。

 

 部屋の主はテレビから目を背け、懸命にスマホを操作していた。

 対策委員会の皆に、メッセージをしきりに飛ばしている。

 

 

 

「皆っ、皆さん……! 早く気付いてください……!」

 

 

 

 まさかこんなことになるなんて。

 トリニティのスイーツの特集というのに惹かれて、テレビを見ていたら先生と出張に行っていると聞いている先輩の姿を見たときは息を呑んだ。

 

 どうしてそこにいるのか。

 貴方にとって、そこは今危ないところだとホシノ先輩から聞いていたのに……!

 

 その時、スマホが震えた。

 ホシノからの電話だった。きっと通知の数を見て、連絡してきたのだろう。

 

 

 

『どうしたのノノミちゃ~ん。こんな夜遅くに、モーニングコールにしては早過ぎるよ~!』

 

 

 

 あくび混じりのいつもの緩い声。

 ノノミは叫んだ。どうすればよいか分からず、助けを求めるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホシノ先輩、大変です! ユウ先輩が、トリニティにいます‼」

『……は?』

 

 

 

 

 

 眠たげな声は消え去り、重く響くホシノの声がノノミの鼓膜を揺らすのだった。




四月と五月も仕事の都合上、投稿できないと思われます……。
六月にまた会いましょう。(親指立てる)
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