GOD EATER:救雷の神鳴   作:ひょうたんふくろう

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 ──ア、ア。

 

 

 それは、異様な光景であった。

 

 頭を潰されたコンゴウが、ぴくぴくと痙攣している。それはおそらく、肉体的な反射によるものなのだろう。そこにはもはや抵抗の意志などはなく、ただ単純に、生理的な現象としてそう動いているだけに過ぎない。

 

 

 ゴッ……! ゴッ……!

 

 

 それ(・・)はただ、何度も何度もコンゴウの頭を地面に叩きつけていた。その後頭部を万力の如き力で掴み上げ、情けも容赦も一切無く、ただ淡々と地面に叩きつけていた。コンゴウが既に事切れていても、そんなのお構いなしに──とても残酷なことを、それが当たり前であるかのように繰り返していた。

 

「な、なんだよコレ……」

 

「じ、神機兵、なの……?」

 

 神機使いである──残虐な光景なんて見慣れているはずのキョウヤやチハルからしてみても、目を背けたくなるような光景。いくらなんでもやりすぎというか、正直かなりドン引きしているというか。忌避感や嫌悪感は当然あるし、なんならあまりに悲惨な光景に吐き気さえも催しているが……それ以上に目の前のそれが異常過ぎて、何もかもが追い付けていない。

 

 どれくらい異常かと言えば。

 

 コンゴウ寄生体までもが、まるで怯えたようにその神機兵だったものから距離を取るほどだ。

 

『映像を映してくれ! い、一体何が起きている!?』

 

『ボディカメラの映像に切り替えます! 偵察ドローンもまもなく到着する見込みです!』

 

 神機兵。

 

 そう、それは神機兵だったはずだ。先ほどまでは確かに、壊れて動けない状態であったはずだ。

 

 そんな神機兵が。壊れて動けないはずの神機兵がいきなり動き出して──そして、敵わなかったはずの相手を圧倒している。自分よりも強力なアラガミと遭遇してしまったためにあんなに無残な姿になっていたのに、まるでそれが嘘であったかと言わんばかりに、その相手を痛めつけている。

 

 というか。

 

『な……なんだ、これは……!?』

 

『じ、神機兵が蒼く変色している……!? え、映像の乱れか何かですか……!?』

 

「いや……肉眼で見ても、普通に蒼いっす」

 

 白か、あるいは銀ともいえる色合いをしていたはずの神機兵が──どういうわけか、蒼く変色している。無骨な金属的な重厚感はそのままに、その蒼はオラクル特有の煌めきをも放っている。蒼くて金属質な見た目と言えば真っ先にカリギュラのそれが思いつくだろうが、しかしこれは、どちらかと言えば。

 

「ルーちゃんの……角みたいな感じの色……」

 

「よく見れば、金属ってよりかはオラクル結晶って感じだ……しかも、なんか微妙にバチバチ電気が迸っているぞ……」

 

 蒼く変色した体躯。体中から時々迸る、蒼い火花──いや、スパーク。加えて言えば、まるで心臓の鼓動か何かのように、その神機兵の体には蒼白く輝くラインが周期的に浮かび上がっている。これもまた、ルーの白い毛皮の下に走るそれと非常によく似ているものであった。

 

 そして。

 

 

 ──ッ!?

 

 

 その蒼く変色した神機兵は、武器も持たずに……離れて様子をうかがっていたコンゴウ寄生体に襲い掛かった。

 

 ──ギャアアアアア!?

 

 体の半分近くが抉られ、見た目はボロボロなのに。そんなことを微塵も感じさせないほど俊敏な動きでそいつに近づいて、残っている左腕でコンゴウ寄生体の顔面を思いっきり殴りつける。言ってみればそれだけの動きでしかないが、たったそれだけの動きにこの場の誰もがついていけていない。

 

「は……?」

 

「え……?」

 

 速さも、パワーも。

 

 先ほどまでとは、明らかに桁が違う。

 

 おまけに。

 

 

 

『え……なにこれ……!?』

 

『な、なんですか!?』

 

『く、九条博士……そ、それが……』

 

「……」

 

 

 

『う、失ったはずの右腕の反応が復活しているんです……!』

 

 

 

『バカな……き、きっと誤表示だ……!』

 

「──いや」

 

 ほかでもない、現場で直接その光景を見ているキョウヤ達には断言が出来た。

 

 

 

「──右腕、生えてきやがった」

 

 

 

 一瞬。そう、ほんの一瞬で──失われていたはずの右腕が、肩の傷口から新しく生えてきた。太くたくましい、金属質のそれが植物の成長の早回しをしているかのように生えてきた。なんだか妙に湿っているというか、オラクル液が滴っているところを見ると、おそらくこれは──オラクル細胞を急激に増殖させて生成したものなのだろう。つまり、規模感や見た目こそ大きく異なるものの、リンドウが自身の腕から神機を生成するのと原理的には同じもののはずだ。

 

 ──もちろん、神機兵にそんな機能は存在しない。

 

『──う、右腕復元! というか、システム再起動!? なんで!?』

 

 生えてきた右腕。よくよく見れば、抉られていた脇腹も元通りに戻っている。ボロボロだったはずのその体は新たに生み出された蒼いオラクル装甲で覆われて、今はもう傷の一つも無い。

 

 残念なことに、手持ちの武器すらも無いが──しかし、そんなものはもう必要も無いのだろう。

 

「ひっ……!?」

 

「うぇっ……!」

 

 ──アアアアッ!?

 

 ダメージが大きく、動けないコンゴウ寄生体をひっつかんで。

 

 その蒼い神機兵は──コンゴウ寄生体の四肢を、ぶちり、ぶちりと引き千切りだした。

 

『お、オラクルの異常励起状態を確認! 失われていたはずの装甲が、急激な勢いで再生していきます!』

 

 右腕を、無理やり引き千切って。ぶちぶちと、筋繊維状のそれが千切れて。ちょっと遅れて耳を覆いたくなるような悲鳴が聞こえて。

 

『げ、ゲイン値異常! これは……許容限界の十六倍以上!? なんでこんなにパワーが出てるの!?』

 

『あ……ありえない! オラクル駆動装置(アクチュエータ)の出力限界も、躯体の強度設計における安全率もとっくに超えている! こ、こんなパワーは物理的に出せるはずがない!』

 

『うそでしょ……!? 数字を信じるなら、臨界点をとっくに超えてオーバーヒートしているはず……! なんでこれで動いているの……!?』

 

 コンゴウの左腕が、ばつんと勢いよく切れた。さすがにアラガミと言えども、生きたまま腕を千切られるのは相当に堪えるらしい。ただでさえアンバランスなそのシルエットが余計に不格好になって、逃げようと必死にもがくも……蒼い神機兵は、その右脚を掴んで離さない。

 

『そうだ……なんで、どうして動いているんだ……!? これだけの異常出力なのに、ソフトインターロックが働いていない……!? プログラムに異常が出ているのか……!?』

 

『は、ハードは!? ハードインターロックで物理的に止められるんじゃないの!? ハードならソフトに異常があっても働くよね!?』

 

『ハードインターロックも当然設けている! 例え無かったとしても、どう考えても回路が焼き切れている! ありえない……絶対にありえない!』

 

 ぶらん、ぶらんと吊りあげられたコンゴウ。もがいていても、もうどうすることもできない。

 

 蒼い神機兵は、渾身の力でそのコンゴウを又裂きにした。

 

『……いけない! 早く、早く停止信号を送るんだ! このままでは超励起状態になった自身のオラクルに耐え切れずに爆発する! 最悪の場合、周囲一帯が吹き飛ぶぞ!』

 

『……ダメです! 停止信号、受け付けません! 強制停止命令も拒否されました! EMS*1もEMO*2も、作動しません!』

 

『……駆動部だ! 駆動部の制御回路を遮断してくれ! それがダメなら、電源系ごと落とせ!』

 

『あ、あらゆる信号を拒絶! どのルートからでも指令を送れません! これは回路が断線し……うそ、反応自体はしている……!?』

 

 二体目のコンゴウに止めを刺し終わったことに気づいたのだろうか。

 

 蒼い神機兵は……怯えたように後ずさる三体目に、手のひらを向けた。

 

 

 ──ドォォォン!!

 

 

『きゃっ!?』

 

『なんだ!? 何が起きたんだ!?』

 

「じ、神機兵が……手から、オラクル砲をぶっ放した……」

 

「こ、コンゴウが……弾を食らったコンゴウが、消し炭になっちゃった……」

 

『はァ!?』

 

『そ、そんな機能は付けてないッ! 私は付けてないぞッ!!』

 

『……落ち着いてください、九条博士。それよりも……神機兵のメインシステムへのアクセスはできますか? 停止命令は無理でも、シークエンスの移行であれば……強襲シークエンスから哨戒シークエンスや護衛シークエンスに変更できませんか? もちろん、できるのであれば待機モードか遠隔操作モードへの移行がベストですが』

 

『そ、そうだ……! いや、これは……!? シークエンスの変更が出来ない……!? モード変更も受け付けない……!』

 

『……そうです、か』

 

『バカな……! モード移行時のAIオフセット処理か……!? 遷移フローのロジックテストは完璧だったは──メインプログラムが破損!? いや、未知の形式に書き換えられている……!?』

 

『……私は専門外だから的外れかもしれないが。そもそも、完全に壊れたはずの神機兵が再起動しているのもおかしいし、モニタリングができるのにコマンドは受け付けないというのもおかしいのでは?』

 

『た、確かに……! 部分的でも状態を読み取ることが出来ている以上、通信が成立しているのは間違いない……! なのにコマンドだけ受け付けないなんておかしい……! 絶対に、何か対処方法があるはず……!』

 

『……そもそも、アレ(・・)は神機兵と呼べる存在なのだろうか? 神機兵なら、どうして……曲がりなりにもシステムが再起動しているのに、神機兵としてレーダーが認識できていないのだろう? なぜ、正体不明のオラクル反応という扱いになっているのだろうか』

 

『……あっ!? じゃあまさか、アレはもはやアラガミになっている……!?』

 

『い、いえ……榊博士も、九条博士も間違ってはいないです! アレは……! 神機兵の反応も、アラガミの反応も! それどころか! 終末捕喰の反応も、わずかばかりとはいえ……ルーの反応も混ざっている(・・・・・・・・・・・・)!』

 

『なん……だと……!?』

 

『──うそ!? あの神機兵を中心に、未知のネットワークの構築を確認! これは……すごい勢いで広がっている!? なんで、どうして認識できるの……!?』

 

 何が何だかよくわからないが、壊れていた神機兵がいきなり動き出し、そして蒼く染まっているのは事実。そして、そんな蒼い神機兵が設計者たちの想定をはるかに超え、想像を超えた動きをしているのもまた事実。

 

 そして、困ったことに……こちらからの指令の一切を受け付けていないのも疑いようのない事実である。

 

 つまり、これは。

 

 

 

『暴走……してるのか……!!』

 

 

 

 どう考えても、暴走している。制御不能状態と言ってもいい。いや、単純な制御不能状態であればまだ理屈や理論の範囲内で稼働してくれるが、現実的にあり得ない挙動を示している今のこの状態は、普通の暴走よりはるかに危険なものであるという見方ができることだろう。

 

『じ、神機兵の躯体の68%が未知のオラクル細胞に侵食されています! しかも……メインシステムにクラッキングの形跡が……!』

 

『まさか……オラクル細胞がプログラムを書き換えたとでもいうのか……!?』

 

『クアドリガやカリギュラ……人工の機械を取り込んでその形質を会得したアラガミはいるけどさ……! 電子制御やネットワークみたいなデジタル的なそれさえも取り込もうとするだなんて……そこまで貪欲に進化を求めるなんて……!』

 

 作戦本部で技術者たちが声を荒げている。あまり学のないキョウヤやチハルでさえも認識できるほどの異常事態。一応は従来の神機兵と同じく、アラガミだけを狙って動いているが……アレが正常であるとはとてもじゃないが言い難く、どう考えても放っておくのはよろしくない。

 

「ど、どうするキョウヤくん……? あれ、そのままにしていい……のかなあ?」

 

「放っておくと爆発するかもって言ってなかったか……? 最悪の場合、俺らでブッ壊すことも視野に……あっ!?」

 

 一体目のコンゴウは不意打ち気味に頭を潰して。

 二体目のコンゴウは力づくで四肢を引き千切ってバラバラにして。

 三体目のコンゴウはオラクル砲で跡形も無く消し飛ばして。

 

 そして──その暴走した蒼い神機兵は、全力でこの場から逃げ出す四体目のコンゴウに狙いを定めた。

 

 

 

 ──ル゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッッ!!

 

 

 

 咆哮。

 

 そう──この戦場に、聞きなれない咆哮が響き渡った。

 

『な、何が起きた!?』

 

「は、はは……」

 

「冗談だろオイ……」

 

 神機兵が。

 

 二足歩行で動くはずの神機兵が。

 

 両脚でしっかり地面を踏みしめて──そして、その両腕をも地面に着けて、飢える獣のように四つん這いの体勢を取っている。

 

 そして。

 

 

 

 ──ル゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッッ!!

 

 

 

 ヒトの姿を模しているはずなのに、ある意味ではとても自然に──自然すぎるがゆえに限りなく不気味なその動きで、神機兵はコンゴウ寄生体に迫る。ヒトの姿をしているものが、カニかクモかを彷彿とさせる、ともかく妙にスムーズでよどみない動きの四足歩行で獲物を追い詰めている。右手で地面を掴み、左手で地面を掴み……それはまさしく、生理的嫌悪感を抱かずにはいられない動きだった。

 

 

 

 ──ギャアアアアア!?

 

 

 

 コンゴウの背中に、猛然と飛び掛かり。

 もがくそいつを、四肢の力で無理矢理に抑えつけ。

 

 そして──蒼い神機兵は、かきむしる様にしてコンゴウ寄生体のコアを暴き、その体から引きずり出した。

 

 

 

 ──ル゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛!!

 

 

 

「ひッ……!?」

 

「うっ……!?」

 

 カメラとセンサが取り付けられているだけの、文字通り機械的で無機質な神機兵の顔。

 

 そのはずなのに、その目が蒼く輝いていて。

 

 そして──頭部の下についていた補強フレームが引き千切られるように開く。

 

 

 

 ──ル゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛!!

 

 

 

 そこには丈夫な顎と、鋭い牙が生えていた。

 

 

 

『こ、この咆哮……ま、まさか……』

 

「じ、神機兵が……吠えてやがる……」

 

「あ、アラガミのコアを引きずり出して……! かぶりついて、食い千切ってる……!」

 

 びりびりと体の芯に響く、重い音。

 

 コアだけでは飽き足らなかったのだろうか。蒼い神機兵は今もなお物言わぬ体となったコンゴウ寄生体に取り付き、まるで獣のようにしてその体を喰い漁っている。その発達した顎と鋭い牙を使って、アラガミと同じようにしてそれを喰い漁っている。

 

 そして、顎が外れんばかりに大きく口を開け、戦場にどこまでも響く大きな咆哮をあげていた。

 

「神機兵って……口が、ついてたのか……」

 

『そんな機能……つけてない……』

 

 キョウヤのつぶやきに応えたのは、憔悴しきった九条の声であった。

 

『そもそも神機兵がヒト型をしているのは……それが最も合理的であったからだ……。確かに二足歩行は車輪に比べて移動速度に劣るが、荒れた道であろうと高低差があろうと問題なく行動ができる……。両腕があれば、剣に銃、その他いろんな道具が扱えるし、戦闘以外の……人命救助や、土木工事の支援にも使える……』

 

 単純に移動速度を求めるだけなら、車のように車輪にすればいい。あるいはそれこそヴァジュラのように、四足歩行にするのも一つの手だろう。少なくとも、それらなら人間の形をしたものよりもはるかに速い速度で移動することができる。

 

 けれど、その場合──車輪であれば、道がある程度整備されているという前提条件が必要となってしまう。このご時世において、ましてや神機兵の活躍が想定される場所がそんな風に整っているはずも無く、そして車輪は高低差に酷く弱い。四足歩行であればある程度その問題にも対応できるが、しかしその場合、移動することしかできずに武器や道具を扱うことが出来ないため、運用が酷く限定的なものになってしまう。

 

『そう……神機使いの代わりの戦力として扱うならば、ヒト型はもはや確定的だった……。そうであれば応用性や拡張性に優れ、今後新たな武器やシステムを開発した際もスムーズに導入ができる……。さらに有人型と部品を共通化できるから、コスト面や量産性にも優れている……』

 

 有人制御の神機兵は、中に搭乗したパイロットが神機兵と神経接続することでそれの操作を可能とする。その性質上、操作対象はパイロットの体と同じ構造である必要がある──そうでないと、体を動かすときの違和感が大きすぎて、まともに操作することなんてとても出来はしない。そういう意味でも、神機兵をヒト型にするのはマストであった──と、九条は語った。

 

『神機兵に頭がついているのはそういう理由のためだ……。だからスペースの都合上、メインカメラやセンサも搭載しているが、ヒトの肉体が持つ機能と言う意味ではそこまで大事なものじゃない。せいぜいが肉体感覚としてのバランス取りのためにあるくらいで、だからこそ頭を吹き飛ばされようと神機兵は動くことができる』

 

 だって、神機兵はロボットなのだから。頭にあるのは脳ミソじゃないのだから。もちろん、カメラやセンサが壊れればまともに戦うのは難しくなるが、しかし機械として死ぬわけではない。頭が吹き飛ばされようと動くことができるし、新しい頭を持ってきてくっつければ、それで直るのである。

 

『だ、だから……! だから、神機兵の頭はあくまでそういう形をしているだけなんだ! 形を真似ることさえできれば何でもよかったから! だから、口なんて器官はつけてない……!』

 

 ──だって、ロボットは物なんて食べないから。

 

 だから、頭はあっても口は無い。口なんてつける必要が無いし、ましてや顎も、牙も付ける必要が無い。そんなのを付けるくらいなら、そのスペースに別のセンサを搭載するか、あるいはその分装甲を増やすかしたほうが良いだろう。少なくとも、必要のない余計なものを付ける余裕なんてあるはずがないのだ。

 

 けれども、実際は。

 

「じゃあ、なんで……」

 

 

 ──ル゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛!!

 

 

「──歯茎むき出しにして、吠えてるんだよ」

 

『私が知りたいくらいだっ!』

 

 ただの機械のはずの神機兵が、獣のような咆哮をあげている。戦闘音を聞きつけてやってきたアラガミたちに飛び掛かり、そのコアを食い千切っている。時折、思い出したかのように電撃やオラクル砲で攻撃を行っているが──その動きはまさしく飢えた野獣のそれにほかならなかった。

 

 

 

『──こ、こちらエリナ! なんか、神機兵が蒼くなって……! アラガミみたいになってるっ!』

 

『──同じく! 私たちの方も、神機兵が異常な挙動を示しています! か、かさかさーって動いて……! アラガミでもあんな動きをするヤツはいませんよ……!』

 

『俺たちの所もだ! どう考えても暴走してるぞ! ……これ本当に味方だよな!?』

 

『……どう見てもアラガミ化しているな。俺たちを襲わないのが不思議なくらいだが……制御は一応できているのか?』

 

『あ、ありえないです……! あんな不可解で非効率的な動きなんて……! アレはもう、機械の動きじゃないですよ……! というか、どうしてコアの捕喰なんてするんですか……!』

 

 

 

 エリナ、アリサ、ギル、ソーマ、そしてシエルからの通信。どうやらチハルたちの所だけでなく、他の場所でも神機兵の暴走現象が起きているらしい。通信の内容をそのまま信じるならば、他の暴走神機兵も蒼く染まり、そして凶暴化してほかのアラガミを貪り喰っているのだろう。

 

 つまり、チハルたちのすぐ近くにいるあの神機兵が特別な個体だったというわけではなく──何か、異常な現象がこの極東全体で発生しているということにほかならなかった。

 

 

 

 ──ル゛ゥ゛ゥ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ッ゛ッ゛!

 

 ──カァァァァァン!!

 

 

 

「きゃっ!?」

 

「うぉっ!?」

 

 アラガミの躯の山の上で、蒼い神機兵が大きく吠える。

 それに呼応するようにして、大きな大きな雷が何発も落ちて。

 

「うわ」

 

「……ど、どうしたの?」

 

「……通信機が、いきなり使えなくなった」

 

「…………」

 

 

 ──ル゛ゥ゛ゥ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ッ゛ッ゛!

 

 ──カァァァァァン!!

 

 

 轟き合う咆哮と雷鳴。あちこちに蒼い雷がひっきりなしに落ちて、そして雷光が無残な姿になったアラガミの遺骸と──遠方に見えるフラックメイデンを照らし出す。

 

「か、雷とか電気のせい? それとも、まさか……」

 

「……さあな。どのみち、もう俺たちの理解を越えているってのだけは間違いないだろうよ」

 

 

 ──ティターニアまで、残り約7km。状況は、混沌を極めつつあった。

*1
Emergency Stop。非常停止のこと。発令されると迅速かつ確実に対象となる危険な動作が停止し、安全な状態になるもの。制御された停止であり、復帰は比較的容易であることが多い。なお、必ずしもシステム全体が停止するわけではない。

*2
Emergency Off。緊急遮断のこと。発令されると動力源の即時遮断が行われ、システム全体が完全に停止する。制御されない停止であり、影響度はEMSよりも大きい。





Q. 神機兵は当初の想定と異なる動きをしましたか?
原作 :はい。人を殺したいという他者の意志で、動くはずの神機兵が止まりました。
こっち:はい。人を助けたいという自らの意志で、動かせないはずの神機兵を動かしました。

Q. 神機兵は暴走しましたか?
原作 :はい。(紅く)変色して制御が効かなくなり、(ヒトを)襲うようになりました。
こっち:はい。(蒼く)変色して制御が効かなくなり、(アラガミを)襲うようになりました。

 ……だいたいあってますね!!


 ちなみに、神機兵の動力源って何なんでしょうね? ゲーム本編では特に稼働時間とかの描写もなかった気がしますが、さすがに動力炉を内蔵しているとは考えにくいので、ここでは【内蔵したオラクルバッテリーが動力源である】としています。そもそもオラクルバッテリーなんてものは本編にでてませんが、まぁあの世界観なら絶対あるかなって……。
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