GOD EATER:救雷の神鳴   作:ひょうたんふくろう

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【生来】 生まれつき。生まれて以来。生まれたときからの性質や能力。

【Deo Volente】 神の御心のままに。神の意志のままに。神意にかなえば。


121 生雷:Deo Volente

 

 ──時は少し、遡る。

 

▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 ──カァァァァァン!!

 

 

「ひゃっ!?」

 

 作戦本部に響く雷鳴。ずん、と体の芯に響く衝撃。室内までこれほどの音が聞こえたということは、よほど近くに……それも、かなり大きな雷が落ちたのだろう。リッカも含め、何人かが思わず声を漏らしてしまうほどといえば、その規模が伝わるかもしれない。

 

 加えて言えば。

 

 

 ──ばん!

 

 

 特徴的な音とともに、室内がいきなり暗くなる。明かりに慣れた目ではあっという間に何も見えなくなり、その場にいた誰もの頭が一瞬にして混乱の境地に陥った。唯一見えるものといえば──電源系が完全に独立している、非常灯の明かりくらいだろう。

 

「が、画面が真っ暗になっちゃった……!」

 

「──落ち着いてください! ただの停電です! 少しすればすぐに復旧します!」

 

 うろたえるフランと、あえて大きめの声で話すことで状況を共有するヒバリ。そしてその言葉の通り、時間にして十数秒ほどで電気が復旧して、作戦本部に明かりが戻る。

 

「か、雷がここにも落ちたのか……」

 

「そのようだね……しかし、一時的とはいえこの極東支部が停電するほどの雷だとは。外部居住区で問題が起きてないといいが」

 

 電気が戻るにつれて、ディスプレイや各種通信機器などが再起動していく。機械が立ち上がる時の特有の音が作戦本部に静かに響いて、やや遅れてからオラクル砲撃を知らせる警告音──さっきからずっと鳴り続けているせいでもう誰も気にしていない──が鳴り響き始めた。

 

「び、びっくりした……」

 

「そういえば……停電なんて、初めての経験ですね」

 

 抱きしめるようにして、レアがラケルの両肩に手を添えている。こんな時だというのに、やっぱりこの人おねえちゃんなんだな──なんて、リッカはぼんやりとそんなことを思った。

 

「……!? 通信、復旧しません! システムは再起動しましたが、キョウヤさんたちとは……いいえ! ほかの皆さんとも! 神機兵との通信も、すべて!」

 

「そんな……!」

 

 通信がつながらない。この極東ではそこまで珍しい話ではないが、しかし今は状況が状況だ。これではオラクル砲撃をされた際の警告を送ることもできなくなってしまうし、近くにどれだけのアラガミがいて、あとどれだけ進めばティターニアに到達できるのかを教えることもできなくなってしまう。

 

 おまけに、暴走している蒼い神機兵の状況すらわからなくなってしまった。もとより、命令を受け付けず制御不能な状態ではあったのだが、それでも状態のモニタリングくらいはなんとかできていたのだ。それをとっかかりにすれば何とか解決する方法を考えられたかもしれないのに……もう、何のアプローチもできなくなってしまった。

 

「フランさん! システムの再起動を!」

 

「いえ! システム自体は生きています! 蒼氷の峡谷のほうのアラガミ反応は捉えられているので! この挙動は……まるで、ルーのジャミングのような……!」

 

「ヒバリくん! レーダーだ! このアナグラ内部(・・・・・・)にアラガミ反応は!?」

 

「……あっ!? 非常に大きなアラガミ反応を確認! 場所は……訓練室!? しかもこのパターンは……!」

 

 榊の言葉でレーダーを確認しなおしたヒバリが、信じられないといった様子で声を上げる。アナグラ内部──より正確に言えば防壁内部にアラガミ反応なんて、本来であれば存在するはずがない。それはすなわちアラガミが防壁を食い破って人々を脅かしていることに他ならないし、ましてやアナグラ内部にいきなりアラガミ反応なんて現れたら、所属する神機使いを総動員しなければならないほどの非常事態だ。

 

 けれども。

 

 今この瞬間に限って言えば。

 

「──行こう! ケイイチくん、レイナくんはついてきてくれ! フランくんは引き続き通信の復旧を試みるように! ヒバリくんはこの場にて訓練室のモニタリングを!」

 

 何かを確信したかのように榊は立ち上がり、そして走り出す。行先なんて、もはや語るまでもない。

 

「ま、待ってよ博士! ……ああもう! レイナちゃん、ダッシュで博士を止めて! 念のため、神機をもっていかないと! 私、先に保管庫に行ってるから!」

 

「は、はいっ!」

 

「お、俺も……ん?」

 

 リッカに続こうとしたケイイチを止めたのは──その服の裾をしっかりと握ったラケルであった。

 

「ど、どうされました?」

 

 おっかなびっくり、おどおどとケイイチはラケルに話しかける。正直なところ、ケイイチとラケルはほとんど接点がない。そうでなくとも、偉い人にこんな風に止められて冷静でいられる新兵なんてそう多くはないだろう。

 

「……抱っこ」

 

「えっ」

 

「私も、訓練室に……ルーに会いに行きたいです。でも、ほら」

 

 車椅子では、移動に時間がかかる。というか、訓練室にバリアフリーなんて適用されているはずがない。だから、ラケルがみんなから遅れずに訓練室に行くには……誰かが、ラケルを手助けしないとならない。

 

「いや……いやいや! ついてきてくれって言われたの、俺とレイナだけですし! 万が一があるかもしれないんですよ!? なにかあったらどうするんですか!」

 

「ついてくるなとも、言われていないので」

 

 ああ、この人絶対についてくる気だ──と、ケイイチはジュリウスの苦労が少しだけわかった気がした。

 

「普段であれば、ジュリウスに頼むんですけれど……頼りにできるのは、今はあなたしかいないんです」

 

「わ、私は……? その、私でもあ、あなたを運ぶくらいは……!」

 

 聞き捨てられなかったというか、それともなりふり構っていられないと思ったのか。今までであればそのまま引っ込んでいたはずの九条が、勇気を振り絞って声を上げる。

 

 一方で、ラケルは。

 

「──九条博士」

 

「は、はいっ!」

 

「──私、これでも結構……その、重いんです。失礼ですが……成人女性を抱えて、あなたは走ることができますか? それにおそらく、三十分は抱えることになりますよ?」

 

「……う」

 

「それに……私は見ての通りの虚弱体質です。揺れはなるべく少なくしてもらわないといけないですし、万が一にも転んだりなんかしたら……どうなってしまうか、わからないかも」

 

「……」

 

「……ね?」

 

 くすくすとおかしそうに笑うラケル。

 なんだかとっても青ざめているケイイチ。

 そして九条は──とても悔しそうに下唇をかみながら、ケイイチに懇願した。

 

「──ケイイチくん」

 

「は、はいっ!」

 

 ──あの時のカオ、グレム局長に啖呵切ったときよりもすごかったな。

 

 のちにケイイチは、そう語ったと言う。

 

 

「──神機保管庫までは、ラケル博士を頼みます。キミも神機を持つでしょうから……そこからは、私が代わります。……私だって、これでも男だ。キミを除けば、一番の適任だ」

 

 

「あら、カッコいい」

 

 冗談か本気か、ラケルはそんなことをつぶやいて。

 

 そして、ぱっと腕を開いてケイイチにささやきかけた。

 

 

 

「──抱っこでも、おんぶでも。お好きなほうで、お願いいたします」

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

「ふぅ……ッ! ふぅ……ッ!」

 

「ふふ……快適、快適」

 

 そして、訓練室前。神機を持ったケイイチとレイナに、榊、九条、レア、ラケルの四人の博士。そして成り行きで同行しているリッカ……と、あの作戦本部にいたオペレーター以外の人間がそろっている。

 

 この時点で既に九条はかなりグロッキーな状態だが、幸か不幸か、そのことを指摘する人間はどこにもいない。もしいたとしても……きっと九条は、意地でもラケルを背負い続けたことだろう。

 

「……俺が先頭に立ちます。みなさんは、絶対に俺より前には出ないでくださいね」

 

「うむ……頼んだよ、ケイイチくん」

 

 神機を片手に油断なく構えたケイイチが、ぴ、ぴ、ぴ……と、訓練室の認証キーを打ち込む。ぶしゅう、という気の抜ける音と同時に、その分厚い扉は開かれた。

 

「うわ……」

 

「む……」

 

 まず最初に感じたのは──少し、焦げ臭い匂いだった。ちょっとわかりづらいが、微妙に室内にモヤがかかっているようにも見える。

 

「機械の一部が、壊れてる……? なんか、微妙にバチバチやってて煙も出てます」

 

「落雷の影響で壊れたのかもしれないね。一応、雷サージ対策は行っているはずだが」

 

 室内に薄く充満している煙は、落雷によって壊れた機械から発生したものなのだろう。よくよく見れば、今もほんの少しとはいえ一部の機械から薄い煙が立ち上っている。危ないから絶対に近づかないようにね──なんて榊は周りに呼び掛けた。

 

「それよりも……ルーくんは」

 

「うーん……?」

 

 頭だけになった、ルーの蛹。

 

 なんだか微妙に、輝いているような気がする。

 

 それに、よくよく耳をすませば──電気がほとばしるような、パチパチという音も聞こえる気がする。

 

 ただし。

 

「なんか様子はおかしいけど……」

 

 おそらく例の蒼い雷が、どういうわけかルーの蛹に当たったのだろう。だからそれにつながれていた機械の一部が壊れてしまって、そして蛹がこんな風に光ったりしているのだろう。電気の音が聞こえるということはつまり、この蛹が帯電している可能性も高いというわけで──何らかの変化が起きているのは間違いない。

 

 ただ、それだけだ。

 

「中で何か動いてるって感じはしないですね……」

 

「そうなの? ……ちょっと触ってみる? 私たちだったら、少しくらいの電気でも大丈夫だし」

 

 レイナがルーの蛹に触れようとした、まさにその瞬間。

 

 

 ──ぴしっ。

 

 

 その場にいた全員の動きが、確かに止まった。

 

「……なあ、レイナ」

 

「うん……聞こえた!」

 

 

 ──ぴし、ぴし。

 

 

 蛹から聞こえてくる、そんな小さな音。乾いた硬質の、どこか小気味の良い音。最初は気のせいと思えるほど小さくか弱いものだったそれは、今ではもう、確かにはっきりと……耳を澄まさずとも聞こえるほど大きくなっている。

 

「これは……!」

 

「ヒビだ……! 蛹にヒビが入ってる……!」

 

 小さな亀裂が、どんどん大きくなっていく。ちょっと突けばぽろぽろと崩れてしまいそうになるほど、蛹にヒビが入っている。今こうしている瞬間にもそのヒビはどんどん広がっていって……そして、ひときわ大きくヒビが入ったと思ったら。

 

 

 ──ルゥゥ……ゥゥゥ……!

 

 

「ルー!」

 

「ルーくん……!」

 

 蛹の中で唸り声をあげるルー。体はぬれそぼっていて、その自慢の毛並みもぺたんとなってしまっている。どうやら目もよく見えていないらしく、何かを探るようにしてふるふると頭を揺らしていた。

 

「孵ったのね……!」

 

「少なくとも、見た目は同じようですが……」

 

 毛皮が濡れているせいで随分と印象が異なるが、姿そのものは今までと同じであるらしい。蒼いマントに蒼い角、そして顔を覆う仮面──と、外見的な特徴は一致している。大きく違うところといえば、その体格くらいだろう。今は文字通り、中型犬か大型犬か……ともかく、それくらいの大きさであるように見えた。

 

 ──ルゥ……?

 

 となれば。

 

 残る懸念は。

 

「……記憶が残っているか。いいや……アラガミとしての本性に目覚めているかどうか」

 

 生まれたばかり(?)の、小さな小さなアラガミ。今この瞬間であれば、新人であるケイイチやレイナでも十分に対処(・・)ができるはず。もし今目の前にいるこの白いアラガミが、かつてのルーではない存在であるならば──かつての力を取り戻す前にどうにかしないと、それこそ人類が滅びかねないほどの脅威となる。

 

「二人とも……頼めるかい?」

 

「は、はい……」

 

 榊の言葉を背中に受けて。

 

 ケイイチとレイナは、蛹の中であたりの様子をうかがっているルーにそっと近づいた。

 

「お、おーい……? ルー、わかるか? 俺だよ、ケイイチだよ」

 

「お、おはよー? ……匂い、嗅ぐ?」

 

 いつもの通り、腕を開いて。不安にさせないよう、優しく声をかけて。

 

 いつも通りのルーであれば、ご機嫌な様子で近づいてきて、体の匂いを嗅ぐはずだ。すんすん、すんすんとその鼻面を押し当ててきて──満足したところで、そのふわふわの白い体を押し当ててきて、そしてその尻尾で優しく包んでくれるはずだ。

 

 でも、もしそうじゃなかったとしたら。

 

「だ、大丈夫だよな……?」

 

「た、たぶん……?」

 

 ──……。

 

 ケイイチとレイナは。

 

 強力で凶悪なアラガミの前で、無防備な姿を晒しているということになる。その結果としてどんな未来が待ち受けるかだなんて──あまり、想像したいことではない。

 

「ほら、こっち来いよ。顎の下もかいてやるし、頭だって撫でてやるぞ」

 

「いくらでも匂い、嗅いでいいから……ね?」

 

 ──……。

 

 じり、じりとケイイチとレイナは少しずつルーとの距離を詰める。頼むから今まで通りのルーであってくれ、お願いだから悲しい決断なんてさせないでくれ──と、心の中で必死に懇願して、念のため榊やラケルを確実にかばえるように意識を分割していく。

 

 そして、とうとう。

 

 ──ルゥ!

 

「ひゃあっ!?」

 

 彼我の距離、およそ三メートル。

 

 そこまで近づいた時点で──ルーが、レイナにとびかかった。

 

「レイナ!?」

 

「やん……っ!」

 

 ──ハッハッハッハッ……!

 

 ルーに飛びつかれ、押し倒されたレイナ。前足で両腕を封じられ、神機をふるうことが……抵抗することができていない。ルーの体でよく見えないが、ケイイチの位置からだと……そう、ルーはレイナの胸元や腹をむさぼり食らおうとしているように見えた。

 

「ダメだったか……!? レイナ、今すぐ助け──!」

 

「ま、待ってぇ……!」

 

 神機を構えなおしたケイイチを止めたのは──レイナであった。

 

「ちょ、もぉ……きゃんっ!」

 

「……レイナ?」

 

「ぁん……っ! もぉ! こら! ダメって言ってるでしょ!」

 

 ──ルゥ!

 

 満足そうに吠えたルーが、ぱっとレイナから離れる。

 

 ──その口には、Oアンプルが咥えられていた。

 

「ルー……お前……」

 

 バキバキ、ボキボキと音を立てながら、ルーはとてもうれしそうにそのOアンプルを食べている。中身だけでなく、そのアンプル……つまりはガラス容器そのものごと嚙み砕いて飲み干している。というかよく見れば、その口の端には可愛らしい包み紙もひっついていて、なんだか甘い匂いも漂っている。

 

「うー……べしょべしょ……」

 

「……レイナ? だ、だいじょうぶか?」

 

 むくりと起き上がったレイナ。

 

 胸元を中心に、服装はかなり乱れている。なんだかまるで無理やり上着を脱がされかけたかのようで、そして全体的に濡れている──というか、涎でべしょべしょになっていた。

 

「ルーってば……飛びつくなり服を剥ごうとしてきて……」

 

「……」

 

「……上着の中、というか体中舌でまさぐられちゃった。もう、インナーの中までべとべと……」

 

「……あー、うん。そうだろうな」

 

 なんだかちょっと、イケナイところを見ているみたいだ──と、ケイイチはレイナの姿を心のカメラに収めてから、自らの上着を差し出した。

 

「でも! 私を食べようとしたんじゃなくて! Oアンプルとか、なんか食べられるものを探していたみたい! ……カノンさんからもらったお菓子も、食べられちゃったけど」

 

「だろうな」

 

 Oアンプル程度じゃ足りなかったのだろう。何かほかに食べるものはないかと、ルーはあたりをきょろきょろと見渡している。試しにケイイチが自分のOアンプルを放ってみれば──ルーは、とてもとてもうれしそうにそれに飛びついた。

 

 ──ルゥ!

 

「……いつも通り、食い意地張ってるなあ」

 

「でも、人間(わたしたち)を食べようとはしていない……ですよね、榊博士!」

 

「──うむ。それは間違いないだろうね。アンプルやお菓子よりもよっぽど食べ応えがあるものが目の前にあるのにそうしないのは……それを食べていいものと思っていないからだ」

 

 今のルーの力でも、榊やラケルを襲うくらいなら楽勝でできる。そうであるはずなのにそうしないのは……紛れもなく、ルーが今までのルーであるからにほかならない。

 

「リッカくん。集めてもらっていたアレ……出してもらえるかい?」

 

「あー……この時のためのだったのか」

 

 榊からの合図を受けたリッカが、訓練室のすぐ隣……備品保管庫へと向かう。ややあってから、戻ってきたリッカが手にしていたのは。

 

「ほら、ルー! こっちにご飯がいっぱいあるよ! とりあえずこれ食べな!」

 

 ──ルゥ!

 

 段ボールにして三箱分の、黒っぽい色をした何か。リッカが持ち込んできたそれを、ルーはとてもうれしそうに食べていた。

 

「リッカさん……あれは?」

 

「んー? リンドウさんの抜け毛?」

 

「え」

 

「あ、いや……抜け毛であってるのかなあ? 毛って言うよりかは抜け羽……?」

 

 仄暗い色合いをした、どことなく光沢感のある羽。ルーが貪り食っているのはそういうもので、そしてそれはリンドウのアラガミ化した腕から採れた(?)ものである。

 

「え……それ、わざわざこのために毟ってきたんですか……?」

 

「んーん。普通にリンドウさんの部屋にいっぱい落ちてるよ。何度掃除してもすぐに抜け毛でいっぱいになるってサクヤさんが……リンドウさんの奥さんが嘆いてるんだ。一応貴重なアラガミ素材だから、掃除を手伝ってくれたら持っていってもいいよって言われてるの。……まぁ、あまりにも採れ過ぎるから、正直もうあんまり要らないんだけど」

 

 ちなみに、リンドウ自身には知らされていない話であった。

 

「最近はストレス感じているのか、以前よりも抜け毛が多くて……あんな部屋そのままにしていたらサクヤさんが可哀そうだからってそれだけは掃除していたんだけど、榊博士が取っておけって言ってきたんだよね」

 

「そんな……その言い方じゃ、本当にただのゴミみたいな……」

 

「……有効活用、だよ」

 

 経緯はともあれ、れっきとしたアラガミ素材であることには違いない。それも、ハンニバル浸喰種に由来する強力で高品質なアラガミ素材だ。さすがに羽では食べ応えは少ないだろうが、それでも段ボール三箱分ともなればそれなりの量である。ちょっとした栄養補給としては十分以上で、ちょっと小腹を満たすのにはこれ以上ないほどのものだ。

 

 そして、それを証明するように。

 

 ──ルゥゥ……!

 

「なんか……体、大きくなってない?」

 

「ホントだ……オウガテイルよりは小さいけど、さっきより明らかに大きくなっている……!」

 

 いつのまにやら、ルーの体が明らかに大きくなっている。なんだかんだで、オウガテイルを二回り小さくしたくらいだろうか。先ほどまでは抱きかかえることもできるくらいの大きさだったのに、今はむしろ、成人一人くらいなら背中に乗せられるほどの大きさにまで成長している。

 

「……ねえ、榊博士」

 

「……うむ」

 

 その場のみんなの意見を、榊が取りまとめた。

 

「──ルーくんは、無事に復活した。記憶も以前のまま残っているし、その偏食傾向も変わっていない。今はこの大きさだが……これもそのうち、元の大きさに戻るだろう」

 

「じゃあ……!」

 

「うむ──ルーくんを応援として戦場に向かわせる。……ルーくん、食べながらでいいから聞いてくれ」

 

 一心不乱に羽をむさぼるルーの頭をぽん、と優しく撫でて。

 

 そして榊は、ルーに語り掛けた。

 

 

 

「──終末捕喰を引き起こすアラガミが出現した。だからどうか……チハルくんたちを、助けてほしい」

 

 

 ──ルゥ!

 

 

 その白い小さなアラガミは。

 

 榊の言葉を受けて、元気に吠えた。





・仄暗い羽
・漆黒の翼
・闇色の大翼
 三つともすべて素材としては使用できない、いわゆる換金アイテム。その正体はお察しの通り、リンドウさんの抜け毛(?)。浸喰リンドウさんの腕に羽が生えているようには見えないし(どちらかというと鱗とか角質?)、ハンニバル浸喰種にも羽要素はないのにアイテムとしては羽や翼であるのが永遠の謎。リンドウさんの部屋にいっぱい落ちてるのは公式設定。

 GEにはほかにも砂金や年代物の木像、高純度銀など様々な換金アイテムが登場する。アイテム売買でお世話になるよろず屋からも『仄暗い羽や漆黒の翼を持っていたら高値で買い取る(意訳)』と語られ、実際に結構なお値段で売却することができる。

 換金アイテムは売るのが使い道ですし、ここまで進めるといろんな装備を造るために常に金欠になりがちなので、取っておかずにバンバン売ったほうがいいです。残すにしても、コレクション用に1個あれば十分だと思います……なんて、今回もそういうパターンだと思ってほとんど売り払い、後になって複数個必要であることが判明して集めなおす神機使いが続出しました。全部ミッションの固定報酬でしか獲得できないので、「アレどこで取ったやつだっけ!?」……って探すところから始め、「また何回かクリアしないと集めきれないじゃん……」と絶望するところまでがワンセット。換金アイテムなのに売る以外の使い道があるなんて思わないじゃん……
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