【急雷】 突然鳴り出したかみなり。
【玖】 九。
「──ティターニアがいるのは、黎明の亡都から北東に約7kmの場所だ。そこからさらに半径15kmの範囲で、奴に操られた無数のコクーンメイデン寄生体が犇めいている」
死ぬかと思ったっていう!!!
あとめっちゃおなか空いたっていう!!!
いやはやまぁ、割とホントにマジで死ぬかと思ったっていう。まさか左後脚が千切れるばかりか、このワガママダイナマイトボディまでハチの巣にされるとは。下半身もすーっかりなくなっちゃったし、自分の内臓までぼとぼと落ちちゃうのが見えちゃったし。
あんな状態でなおみんなを守り抜いた私ってマジすごくね? 人間だったらノーベル賞ものじゃね? 私はGE無印プレイヤーだから耐えられたけれども、そうでなかったら耐えられなかったかもわからんね。
……というか、なんかソーマに首をすっ飛ばされた気がしないこともない。まぁ、私はママだからすべてを許してあげることにしよう。
「──事態は極めて深刻な状況だ。フラックメイデンの砲撃の脅威は先ほど説明したとおりだが、それ以上に寄生体が厄介だ。並の神機使いでは時間稼ぎも難しい。そして倒せば倒すほど、ティターニアの情報処理のリソースに余裕ができて……強くなる」
それにしてもまあ、私がスナック感覚で食べているこの黒いの……リンドウさんの羽じゃね? おなかがとっても空いていて何を食べても美味しく感じる……って言われればそれまでだけど、なんだかかつてないほどに美味しいというか、強力なオラクル味(?)を感じるというか。や、羽であるせいで食べ応えは全然ないんだけど、その分味が上質で満足感があるといいますか……。
なんだろうね、これ。美味しくって無限に食べられちゃう。キャビア乗っけたクラッカーみたいっていうの? まぁ、私そんな高級品食べたことないんだけれども。あ、できればもっとたくさんあると嬉しい……んだけど、ここになければこれ以上はもうないんだろうな。
……リンドウさんの部屋に行けばワンチャンあるか? この味を楽しめるならば、専属のハウスアラガミとして雇われてもいい所存。
「──だが、キミの力ならティターニアの脅威に打ち勝つことができる。ジャミング領域を最大限に拡大すれば、砲撃も避けられる。キミの機動力であれば──ティターニアに攻撃される前に、その懐に潜り込むことができるんだ」
んー……さっきはついつい夢中でレイナちゃんの体をいろいろ探ってしまったけれども、やっぱあれ以上に食べるものなんて持ってないだろうな。何気にお菓子の匂いがぷんぷんして堪えきれなかったのよね。あの感じはどう見てもカノンちゃんが作ったお菓子。甘いものってなんだかんだでたまに無性に食べたくなるよね……。
……おん? そういや今更ながら……あらやだ、私ってばちょうプリティボディ。いつものワガママダイナマイトボディもいいけれど、こういう路線も悪くないわね! これならいくらでもチハルちゃんにじゃれつくことが……いや、待て。
私の体はこの際置いておくとして……チハルちゃんはどこにいる? 空腹と復活(?)でテンションがおかしくなっていたけれど、どうしてこの場にチハルちゃんがいない? チハルちゃんどころかキョウヤもいない……そのくせ、ラケルせんせーが九条博士に背負われているという明らかな異常事態。
……九条博士? なんであの人がここにいるの? しかもなんか私が知っている九条博士よりほんのちょっぴりだけ男前になっているように見えないこともないこともないような。
そうだ。
そもそもとして──私を襲ったのはいったいなんだ? 最初の一発目は光芒メイデン……つまりは鬼強化コクーンメイデンあたりだろうけど、そのあとのミサイルてきな攻撃は何だったんだっていう。
あんなアラガミ、少なくともゲームにはいなかった。となると、漫画や小説版か……はたまたスマホのレゾナントオプスか? さすがにモバイルとかソシャゲのやつとかは出されてもわかんないっていう。私がやっていたのはあくまで本編だけだし……でも、なーんか火力が盛り盛りでインフレがおきまくっている気がするし、いくらなんでもやりすぎ感が否めない。
「……わかったかね? ともかくキミは、強力なアラガミ反応に向かっていけばいい。そこには必ず今回の黒幕……ティターニアがいる。そいつさえ倒してしまえば、あとはどうにでもなる」
──ルゥ!
よくわからんけど、とりあえず元気よく吠えていく。とりあえず、ティターニアっていうヤバいアラガミをぶっ殺せばいいらしい。なんかさっきチラッと終末捕喰が云々みたいなことを言っていた気もするし、たぶんそいつがラスボス(?)なんだろう。
うん、ティターニア。あと、フラックメイデン(?)とやら。その名前だけは覚えた。おなかがちょっと落ち着いてきたから思い出してきたけど……チハルちゃんたちがいまそいつの討伐に駆り出されていてちょうピンチ。今すぐ助けに行かないとマジヤバい。
であるならば。
──そりゃあ、助けに行くでしょ。ママてきに考えて。
「……行ってくれるかい?」
──ルゥ!
どう考えても、GE2のシナリオからは外れている。が、終末捕喰がラスボスだってのはGEにおけるお約束だ。ならば、これこそが私が倒すべき相手に違いない。
「……ヒバリくん! 搬入口のゲートを開放してくれ! そのまま北ゲートまでのルートを確保! ルーくんの姿が多少見られてもかまわない! 最短ルートを頼む!」
『了解です! 搬入口から北ゲートまで、各種防壁などロックを解除、開放します! ……ルーさん、聞こえますか? オレンジ色の誘導灯を点けておきますから、それを目印に走ってください!』
──ルゥ!
ん、おっけー。
そこまで至れり尽くせりされたら、こちらとしても頑張らない理由がない。あとで困らないように、なるべくちょっぱやで出撃してあげましょう。
「準備はいいかい、ルーくん?」
ティターニアとフラックメイデン。終末捕喰のカギとなるやばやばアラガミ。
──GEのプレイヤーとして。新規アラガミと戦いたいと思うのは不思議なことじゃない。わたしたちはいつだって、アップデートで配信されるDLCの理不尽アラガミに立ち向かい、そして乗り越えてきたのだから。
「それと……気づいたらでいい。もし、壊れた神機兵を見かけることがあったら……少し、キミの電撃を当ててみてくれ。私の
もちろん、仮にもこの世界で生きるものとして……終末捕喰を止めたいという気持ちはある。なんか自分で言っていてよくわかんなくなったけれども、つまり、今この瞬間を生きる私としても、かつて人間であった頃の私としても、連中を見逃すという選択はない……奴らをぶっ殺す理由しかないということだ。
──……。
ちょうど私のはらごしらえも……そのウォーミングアップは終わった。今ならいくらでも食べられる気分。ここはひとつ、アラガミらしく暴食の限りを尽くしたい所存。それにほら、成長期はいっぱい食べなさいってのはママの間じゃ常識だ。
──ルゥ……。
そして、なにより。
連中は……私の体をこうもボロボロにしたばかりか。
──ルゥゥ……ッ!!
あろうことか──うちの娘を傷つけやがったッ!! マジふざけんじゃねえぞっていう!!
「……頼むぞ、ルーくん!」
──さんざん好き勝手しやがってッ!! けじめつけさせてやるッッ!!
▲▽▲▽▲▽▲▽
──ルゥゥォォォァァァッ!!
食べ放題だぜえええ!!!
オレンジのぴかぴかを目印に建物を脱出して早数分。なんだか薄々そんな気はしていたけれど、私はアナグラの中で治療(?)されていたらしい。正直経緯とかさっぱりわからんけれども、まぁ今はぴんぴんしているからこの際気にしないでおくことにする。
それよりも……防壁の近くなのに、なんだか妙にアラガミが多い。そこまで強い奴はいないけれど、普段だったら見かけない量&質(?)でちょっとびっくり。徒歩にして数分の距離でヴァジュラとか歩いているんだもん、さすがの私も驚いたっていう。
でも、まあ。
──ギャアアアア!?
私ってばマジつよつよ。なんかまだオウガテイルより二回りくらいしかデカくないのに、フィジカルだけでヴァジュラを瞬殺できる。普通に懐に潜り込んですれ違いざまにコアを抉り出すだけの簡単なお仕事。やっぱ大型種のコアは食べ応えがあって美味しいですわァ……!
──ルゥゥ!
冗談はともかくとして、だ。
どうやら割とマジに……私が思っていた以上に、事態は深刻であるらしい。久方ぶりに全力でビリビリパワーのユーバーセンス(仮)を使ってみれば、そりゃもうビンビンにアラガミ反応を感知しまくり。黎明の亡都あたりを中心に、数えるのも馬鹿らしくなるほどのアラガミの気配があって……でもって、そんな大量の気配に紛れるように、ほんのいくつかの神機使いの気配と、あとなんかよくわからん気配も感じられる。
……なんだろね、これ? アラガミっぽいけどアラガミじゃないような。や、このビリビリパワーのユーバーセンス(仮)で感じられている以上、アラガミに近しい何かではあると思うんだけど。でも、神機使いとは明確に違うし……ううむ。
──ルゥ。
あ、コクーンメイデンめっけ。なんかちょっと色が黒っぽいんだけど、亜種か奇形か何かだろうか? 味はなかなか悪くない……久しぶりに食べたせいか、妙に味がしっかりはっきり感じられるというか、いつもより濃いめに感じられるというか。このコクーンメイデンソムリエの私でさえもうならせるほどの美味とか、なかなかやりおる。なんかいつまでもしがんでいたい気分。
──……。
くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ。
あー……近くに普通の一般神機使いさんが戦っている気配を感じるけど、これならまァ大丈夫じゃろ……。できることなら倒しておきたいけれど、いちいち構っていたら明らかに時間が足りない。それに極東の一般神機使いなら、この程度のアラガミは余裕であしらえるはずだ。
──カァァァン!!
うおっ!?
やっべー、ちょっとびっくりしたっていう。なんだよアレ、あんな蒼い雷初めて見たっていう。
……なんかちょっと、私の雷に似てなかった? もしかしておそろ? とうとう地球さんが私のセンスに追いついてきちゃったかんじ?
くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ。
で、今雷が落ちたせいで気づいたんだけど……映し出された私の影、またしてもだいぶデカくなっていた。アラガミを適宜つまみ食いしながら走っているだけなのに、もう以前の大きさの七割くらいには戻れたのではあるまいか。体に違和感とか全然ないし、何より頭から下を物理的に失っていたはずなのに、今更ながらなんで私こんなにぴんぴんしているんだろうね……?
あれかな、榊博士とラケルせんせーがなんかヤバい実験とかでなんとかしてくれたのかな? あの二人が手を組めば、大抵のことは実現してしまいかねないのが恐ろしいところ。いやまあ、今回に限って言えば頼もしいと捉えるべきか。
くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ。
それにしても、割とマジでなんか生まれ変わった気分。体が軽いし、なんか疲れも取れてすっきりしているというか。ぶっ続けで十時間以上寝た時の気分に似ているというか。いったいどれだけ気を失っていた(?)のかわからんけれども、めちゃくちゃ休息できたのは間違いないのだろう。今ならなんだってできる気分ですわァ……!
くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ──ごくん。
……やーっぱり微妙にコクーンメイデンの味が変わってんな。こっちも美味しいことは美味しいけれど、私個人としては前の味のままのほうが好みだったり。別に味を変えることをダメだと言っているんじゃあなくて、勝手に変えて元の味を楽しめなくされるのが困るっていう。せめて、前のもそのまま残しておくという配慮をしてほしいものよな。
──カァァァァン!!
おーおー、マジで雷ヤバいっていう。あと、ピカっとしたときに一瞬だけ見えたけど……なんかあっちのほうにめっちゃデカいコクーンメイデンがいたよね? しかもそいつ、ビリビリパワーのユーバーセンス(仮)にビンビンに感じるアラガミ反応の場所とほぼ同じ場所だったよね?
えっ? ここからでも見えるほどデカいアラガミなんているの? 東京タワーよりかは小さいと思うけど、あんなデカいコクーンメイデンなんて聞いてないっていう。あんなデカいの、どう考えても……。
……どう考えても、食べ放題じゃね? 最高かよ。
──ギャアアアアア!?
アラガミをつまみ食いしつつ、ひたすらに走る。体を動かす感覚はすっかり元通り──というか、たぶん体の大きさも元に戻った。残念ながら(?)元の大きさ以上にはならないっぽいけど、あんまりデカすぎてもチハルちゃんたちと遊べなくなるから、これでいい。こんな短時間で元の大きさに戻れるだなんて、げに恐ろしきはオラクル細胞よな。
……おん?
ちょっと待って、いったんストップ。
……今更ながら、独り言がだいぶ増えた気がする。前までここまで多くはなかったと思うんだけど。なんだかんだで、私も人恋しいのかもしれない。せめてみんなみたいに通信機が使えたらなあ……。
まぁ、それはいいとして。
これ……神機兵じゃね?
さっきさらっと流しちゃったかもだけど、どう見てもこれは神機兵だ。いや、正確には神機兵だったものというべきか。
顔が半分ほどつぶれていて、左腕は完全に千切れていて。あと、右足は見るも無残にぺっちゃんこ……と、まぁひどい状態。どこからどう見てもスクラップ。このまま東京湾に沈められても違和感ない感じ。不法投棄はダメ絶対だけれども。
──……。
んー……よくわからんけど、頭数をそろえるために投入されたのだろうか? 一応無人神機兵っぽいから、犠牲者とかはいないはず。たしかこれでも中型アラガミくらいなら倒せないこともないし、ジュリウスが教導した個体ならば、連携してマルドゥークを倒すほどの能力も持っていたはずだけれども……でも、ここのジュリウスは闇落ちなんてしていないから、神機兵もぽんこつのままなはず?
ともかく。
確か榊博士は、神機兵に私の電撃を当ててくれ……って言ってた。それに何の意味があるかはわからんけれども、まぁ榊博士がやれっていうからには何か意味があるんだろう。あの人が言うことに間違いなんてあんまりないのだから。
どれ、減るものでもないしいっちょやってみますか。この後がけつかっちんだから、ちょっぱやでサクッと済ませましょう……っと。
──ルゥゥ!
電熱でぶっ壊さない程度に、電撃を与えてみる。いつもの蒼い電気が神機兵の体を貫いた。これが人間だったら心臓マッサージてきなアレで蘇生(?)しないこともないだろうけど……さすがに機械に心臓マッサージは無理だろ。壊れた機械にさらに電気を流すとか、それ一番やっちゃいけないことっていう。仮にそれが可能だったとして……物理的に手とか脚とか壊れているんだから、もうどうしようもない。
……これ、いつまで続ければいいんだろ? ……アッ、もしかして中にバッテリーてきな何かが入っていたり? 榊博士はそれを充電するために電気を当てろって言ったのかな?
だとすれば納得できる……けど、大丈夫だろうか? あんまりずっと電気を当てていると、電熱で装甲があっちっちーになりかねないっていう。ほら、今だってせっかくの銀ピカボディがじわじわと蒼く──えっ。
──ル゛ァ゛ァ゛。
待って待って待って怖い怖い怖い!
なんで!? なんで体が蒼くなってんの!?
というかなんで脚とか腕とか生えてんの!?
──ル゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッッ!!
──ギャアアアアア!?
なにこれこっわ……。ええ……。
なんかふつーに顎が外れて(?)叫びだしているんですけど……。四足歩行(?)でカサカサ動いてアラガミを襲い始めてるんですけど……。
というか、これって。
神機兵の体表の色が変化して、機械らしくない動きをしているってことは。
──ル゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッッ!!
暴走じゃねえか! コレ暴走神機兵じゃねえか! どうなってんのよマジでさあ!
……えっ? ちょっと待って、もしかして私、榊博士に神機兵暴走の片棒を担がされた感じ……? ゲームでは九条博士がラケルせんせーにハメられて神機兵を暴走させてたよね……? いや、アレはあくまで神機兵が意図しない動きをしたってだけで、紅く染まったゴリラみたいな暴走神機兵になったのは九条博士は関係ない奴だったっけ……?
待て、落ち着け。
どういう形であれ……【ラケルせんせーが黒幕で、九条博士がハメられた紅い暴走神機兵】が、【榊博士が黒幕で、イケメンママアラガミがハメられた蒼い暴走神機兵】になったってこと? もしかしてこれが歴史の修正力てきなアレって……こと?
いやいやいや……待て待て待て……。榊博士がそんなことするメリットなんてあるか? というか、何をどうしたら榊博士が神機兵を暴走させたりなんてできる? あんなもんはラケルせんせーのアラガミ☆不思議パワーでもない限りはできないはず……まさか、榊博士とラケルせんせーが手を組んでるってこと……?
……おん?
ちょーっと冷静になってみれば……この蒼い暴走神機兵から、アラガミのようでアラガミじゃない、でもちょっぴりアラガミなオラクル反応を感じないこともない。というかコレ、さっき感じたよくわからんアラガミ反応じゃね?
しかも、なんか。
私と同じ蒼い電気をバチバチさせているからか……なーんか微妙に暴走神機兵とつながりを感じるというか。シンパシーを感じているというか、おそろっちで共感性が半端ないというか。
なんか、こう……本能的に、自分の一部みたいな感じがするというか。
こいつぁひょっとすると、もしかして?
──ルゥゥ!
イメージするのはラジコンてきなアレ。同じ蒼い電気を私と神機兵の間につなげて、キモチワルイ動きでカサカサ動く神機兵の制御ができないか念じてみる。
せめて、人間らしく。いや人間は無理でも、元のゴリラみたいな動きになってもらえれば。
そう思って──ダメもとでちょいと頑張ってみれば。
──ル゛ォ゛ォ゛……。
すっげー、神機兵がなんか普通に止まってくれたよ。
なんだろコレ……? アッ、もしかして榊博士たちがなんか新しい機能をつけてくれた感じ? 無人神機兵ってことは外部から命令を受信するアンテナてきな何かがあるはずだし、私の意志というそれを電波か感応波か、ともかく何らかの手段で伝えることで制御できるようにしたとか……?
うん、きっとそうに違いない。たぶん、私の細胞とかを神機兵に埋め込んで、私の電気に反応して操作できるようにしたとかそういうアレだろう。感応波とか意志の力とかならたぶんそーゆーのできると思うし、ラケルせんせーと榊博士と……あと九条博士とレア博士がいれば、そういう機能も付けられるはず。それこそゲーム本編では、ジュリウスの感応波で神機兵を操っていた(?)みたいな描写もあったしね。
……ということは?
私がやるべきことは、もしかしなくとも。
──ルゥゥゥ!!
私のビリビリパワーのユーバーセンス(仮)で感じる、すべてのよくわからんオラクル反応……いいや、ぶっちゃけ私のビリビリパワーのユーバーセンス(仮)の範囲のすべてに、【ティターニアをブッ潰せッ!!】って命令を送る。一応念のため、【カチコミですが、人命第一でお願いします】の命令をつけ足しておくのも忘れない。
──ル゛ァ゛ァ゛ッ!
そして命令を出した瞬間、蒼い神機兵がゴリラみたいな動きで走り出し……アッ、途中でまた四足歩行に戻っちゃった……。もしかして、私の影響を少なからず受けている感じかしらん……?
まぁいい。
ともかくこれで、ティターニアを倒す戦力はそれなりに揃ったことだろう。普通の神機兵よりかは暴走神機兵のほうがはるかに強いし、あんなふうにオラクル細胞を急激に増殖させて失った腕すら生やせるんだから、継戦能力もかなりあるはず。
とりあえず、そっちは神機兵に任せればいい。
私が本当にやるべきは。
──チハルちゃんたちとの、合流だ。
──ルォォォォ!
走る。
走る。
とにかくめっちゃ走る。
目につくアラガミは電撃で撃ち抜いて。倒れている神機兵がいれば、これまたやっぱり電撃で撃ち抜いて暴走(?)させて。
かなり広い範囲で、いろいろドンパチやっていたらしい。戦闘の形跡はそこかしこにあり、地面が抉られたり焼けている個所はもちろん、霧散しかけたオラクル細胞の塊……要は、アラガミの死骸の成れの果てなんかもあちこちに見受けられる。
走って走って、進めば進むほどそういうものが多くなって──アラガミの死骸も妙に生々しいものが多くなったというか、まだできたてほやほやって感じのものも増えてきた。
……あとついでに、進めば進むほど遥か彼方からオラクル砲撃とかもあったけれど。
──ルゥ!
当たらねえんだな、コレが。万全の私に砲撃なんて効くはずないっていう。ビリビリパワーのユーバーセンス(仮)で検知した瞬間に回避行動が取れるんだもん、生半可な遠距離攻撃じゃ私を捉えることなんて出来るわけがない。アラガミの身体能力と反射神経、ナメてもらっちゃ困るっていう。
──オ゛オ゛オ゛オ゛ン!!
飛んできたそいつも、ひょいって避ける。
……うん、びっくりだよね。まさかコクーンメイデンがミサイルみたいに飛んでくるとか、マジでどうなってんのよ……。いやまぁ確かになんか飛ばしやすそうな形状しているし、ジェット噴射で移動するって設定には書いてあったけどさ……! いくらなんでも解釈自由過ぎない……? お前そんなのゲームじゃやってこなかったじゃんかよ……。
まぁ、ともかく。
謎ミサイル改めコクーンメイデンも、今の私なら普通に避けられる。やっぱりあの時は、足が千切れているうえに背中のチハルちゃんたちを守りつつ、撤退しながら……っていうあまりにも悪条件が重なり過ぎていたのがよくなかった。通信保持のためにビリビリパワーのユーバーセンス(仮)もあんま使えなかったしね。
……思い出したらなんか本当にむかっ腹が立ってきたぞ? こいつぁますます、感動の再会のあかつきには頭からぱっくりむしゃむしゃしてイタダキマスしてやらねばなるまいな?
アレ本当にマジで痛かったんだからな……! キョウヤにケツの毛を一気に百万本毟られるくらいに痛かったんだからな……ッ!!
──ルゥゥ!
そして走って、果たしてどれだけ経っただろうか。
もはや時間感覚なんてすっかり無くなったころに──ふと、懐かしい匂いを感じて。
匂いを感じるころにはもう、その気配も感じられるようになって。
ついつい大地を蹴る力も強くなって、風を切り裂く音も強くなって──いた!
いつぞやみたいに、なんかヤバそげなアラガミに囲まれている……チハルちゃん!
「──助けて! 助けてよ……ルーちゃんっ!!」
──ルゥゥゥゥッッ!!
威嚇の意味を込めて、思いっきり雷を落としながら乱入する。パッと見た限り、この場にいるのはどれも接触禁忌種だ。あとなんか不気味なことに全員コクーンメイデンがブッ刺さっていてヤバそうな感じがひしひし。
だけど、これなら──たかが数体程度のアラガミに、この私が負けるはずがない。
──ルゥゥゥ……ッ!!
とりあえず思いっきり雷を落としまくる。これで逃げてくれればこの場に限り見逃さないこともない。だけど、それでなお向かってくるようであるならば。
──絶対に、容赦しない。
「ルーちゃん!」
「ルー!」
──ルゥゥゥッ!!
ウチの娘をここまでボロボロにしやがってッ!! 可哀そうに、涙の痕もあるじゃあないかッ!!
ええおい!? どうやって落とし前つけてくれるんだよコラァ……! 二度と表を歩けない顔にしてやろうかァ……!?
……アッ、あとついでにキョウヤの分もギタギタにしておくか。……ふぅん、こんなんでもこいつ、ちゃんとここまでチハルちゃんを守ったってワケね。こいつのほうが明らかにボロボロで全体的に消耗しているし……まぁ、息も絶え絶えで結構ふらふら。イケメンアラガミママだからわかるけど、かなり無理して頑張って立っているって感じ。
……あらやだ、もしかしてコレが男の子ってこと? 女の子の前で必死にカッコつけちゃうところは……まぁ、認めてやらないこともないこともない。……何気にチハルちゃんとおそろの青いバンダナをつけているのはどういうことだ?
ちょっとママ、その辺詳しく聞きたいんだけど。私ですらチハルちゃんとのバンダナおそろはやったことないんですけど?
まぁ、それよりも。
「ルーちゃんっ!」
──ルゥ!
ママと娘の感動の再会ッ!!
うちの娘ってば、そのまんまるの大きなおめめから涙をぽろぽろと流して、私の顔にひしっと抱き着いてきた。あんまりにもぽろぽろ泣くものだから、涙と一緒にそのおっきなおめめもポロっと流れちゃうんじゃないかとママてきにはちょっと心配。
「ルーちゃん……! よかったぁ……! よかったよぉ……っ!」
……あかん。
あかん、割とマジで私ってばこういうのに弱い。
ちょっと冗談でごまかそうとしたけれど、本当にマジで最近年のせいかこの手のことに弱い。涙腺が弱くなっているというか、油断するとこっちも泣きそう。
「…………っ!?」
うん、ホントにごめんね。できれば心配なんてかけたくなかったけれど、ふがいない私をどうか許してほしい。いろいろもろもろご迷惑をおかけしましたけれども、今度こそちゃんとやりきるから……これからはもう、心配しないでほしい。
だって、ほら。
──最強無敵のスーパー☆イケメンアラガミママが来たのだから。もう、何も怖いことなんてないのだから。
「ったく、お前よぉ……! こっちがどれだけ心配したかも知らないで、けろっとしやがって……!」
まぁそう言うなよ。こっちだって神様じゃあないんだ。これくらいのうっかりくらい、人間だったら普通だっていう。
「……いや、待て! それよりもお前、その後ろに引き連れているのは……チハル?」
何かに気づいたキョウヤが、何かを言いかけて──そして、私の鼻面にひしっと抱き着くチハルちゃんを見た。
「…………」
あーもう、この娘ってば、いつまで抱き着いているのかしらん?
私てきにはいつまでだって抱き着いていてもらって構わないけれども、できればそのお顔をもっとちゃあんと見せてほしいところ。何日ぶりかもわからない再会ですもの、元気な顔はいくらだって見ておきたい。
あと割とマジで、鼻面をふさがれてちょっと息苦しいかも。いや、口でも呼吸はできるんだけど、それだとその……ちょっと絵面が悪いというか。
あとできればその、スキンシップもかねて体のいろんなところを嗅がせてほしいというか、ケガとかしていないか見させてほしいんだけれども。
「…………」
「……おい、チハル?」
……なーんか様子がおかしいような? えっ、割とマジでヤバいケガとかしてるかんじ? それとも……頼れるママとようやく再会できて、緊張の糸が切れちゃったてきな?
「…………チハル?」
まぁ、それならそれで構わない。今まできっといっぱい頑張ってきたんだろうし、年齢を考えたら無理もなかろう。私だって、(おそらく)中学生くらいでこんなにも過酷な環境で、フィジカル的にもメンタル的に追い込まれていたら……まぁ、こんなことになっちゃっていたかもしれないし。
まぁいいや。
とりあえずサクッとアラガミを倒すから、ほら、キョウヤはひとまずチハルちゃんを預かっといてくれ。しょうがないから今回だけは、お前にその役目を譲ってやるっていう。
「おい! チハル!?」
「…………」
……あれ?
「…………ぅ、ん」
「起きたか? ……おい? お前、なんでそんなぼーっとしてるんだ?」
チハルちゃん、なんか割と冗談抜きにどうした?
「…………あはッ♪」
……えっ?
アバターカードのアラガミ討伐数にて記録される(普通の)神機兵の討伐数、ほんの数体の人がほとんどでしたよね。
ちなみに。
極東支部、すなわちアナグラは神奈川県藤沢市にあるというのは公式設定です。で、極東エリアマップを見ると、黎明の亡都はアナグラから1時の方向にだいたい40kmくらいの場所に位置します。つまり、新宿とか池袋とかその辺りです。ティターニア(フラックメイデン)がいるのは『黎明の亡都から北東におよそ7kmの場所』なので、東京都と埼玉県の県境くらい、おおむね赤羽とか川口のあたりに該当するわけなんですね。
藤沢市(アナグラ)から赤羽(ティターニア)までは直線距離で約50kmほど。地上最速のチーターの速さが120km/hくらいなので、チーターよりもずっと速いつよつよアラガミなら30分もかからない距離になります。悪路とか関係ないですし、寄り道で摘み喰いしたとしてもだいぶ余裕がありそうですね。