GOD EATER:救雷の神鳴   作:ひょうたんふくろう

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【遠雷】 遠くで鳴る雷。

【reminiscence】 追憶。過去を偲ぶこと。過ぎ去ったことに思いを馳せること。


126 援雷:Reminiscence

 

「ど、どうしよ……!?」

 

 ──ガアアア!?

 

 迫りくるアラガミをブーストハンマーで叩きのめしながら、香月ナナは焦りの声を上げた。

 

「ギルとはぐれちゃったよう……!」

 

 ついさっきまでは、ギルと一緒に戦っていたはずだった。この酷い乱戦だから、必然的にそうやって背中を預けあって……お互いがお互いの死角を埋めつつ、フォローやサポートをし合っていた。それだけやってようやくなんとかギリギリ拮抗できていたというのに……いつの間にやら、すぐ近くで戦っていたはずのギルがいなくなっている。

 

「なんで、なんでぇ……?」

 

 たぶん、というかおそらく。

 

 ほんの少し前から──アラガミから感じる圧力が、はっきりと減っている。それぞれの強さは相変わらずであるものの、その勢いが弱くなったというか。暴走する蒼い神機兵が出てきた時も同じように少し楽になった感じはしたが、今はそれよりもはっきりと……それこそ、ペアがいなくなっても問題なく戦えてしまっていた程度には、弱くなっているのだ。

 

「は、速く合流しないと……!」

 

 ──ジャァァァァ!!

 

「……もお! しつこい!」

 

 とはいえ。

 

 いくら向こうの勢いが削がれているとはいえ、それでも驚異的な相手であることに変わりはないというのもまた事実。一人でもなんとか戦えているものの、だからといってそうほいほいとギルと合流する──逃げに徹して仲間を探すというのは難しい。うかつに背中なんて見せようものなら、これ幸いと追撃を食らってしまうことだろう。

 

「あああ、もお……! なんでこんなにアラガミがいるのさ……!」

 

 神機のグリップを握り直し、そしてナナはアラガミと対峙する。ブーストハンマーの機能をフルに使って速攻で頭を叩き潰すべきか、それともいっそ──なりふり構わずブーストに点火して、破れかぶれで離脱をしてみるか。案外、そっちのほうが上手くいくかもしれない──なんて、考えたところで。

 

 

 ──カァァァァン!

 

「しつこい奴は、女の子に嫌われるよ!」

 

 

 蒼い雷光が輝くと同時に、叩き込まれた剣撃。

 

 気づけば──ナナの前に、見知らぬ若い女の神機使いが立っていた。

 

「ほら……あなた、大丈夫?」

 

「は、はい……」

 

 ──カッコいい、人だな。

 

 それが、ナナがその人に抱いた第一印象であった。

 

「まったく……極東のアラガミは手強いって聞いていたけど。まさかここまでしつこいとは……」

 

 綺麗な……腰まで届くほどの長髪の神機使い。おそらく自分よりも随分と年上で、もしかしたらギルよりも上かもしれない。優しそうで、それでいてなんとも頼りになりそうというか……なんとなく、甘えたくなるお姉さんみたいな雰囲気がするというか。ともかくそんな印象を、ナナはその神機使いに抱いた。

 

「……あれ?」

 

「うん? どうしたの?」

 

 楕円形の赤い眼鏡。肩をさらけ出した、ニットのセーター。その上から着込んだ、皮のビスチェ。そして……胸元に提げられているロケット。

 

「そのロケット……どこかで、見たような?」

 

 そのロケットに、ナナは見おぼえがあった。

 

「ああ……まぁ、おそろいの奴だからね」

 

「おそろい? いったい誰と──」

 

「──それよりも!」

 

 明らかに自分よりも経験がありそうなその女神機使いは、不敵に笑ってアラガミと対峙している。そして、空いているほうの手で……す、とナナの背後を指した。

 

「ギルはあっちにいる。ここは私が受け持つから、あなたは早く合流しちゃいなさい」

 

「え……!? で、でも……! お姉さん一人じゃ危ないよ……!?」

 

「だいじょぶ。私、こう見えてもグラスゴー(じもと)じゃ隊長だったから。これくらい楽勝よ」

 

「そ、そうなの……?」

 

「──早く! これは命令! どうしても心配だって言うなら、ギルを連れてこっちに来なさい!」

 

「……はいっ!」

 

 最後にぺこりとおじぎをして、ナナは走り去っていく。

 

 その様子を横目でしっかり見届けてから──油断なく神機を構えたその女神機使いは、小さく笑ってつぶやいた。

 

 

 

「まったく……こんな可愛い娘をほったらかしにするなんて。私もハルも、そんなの教えてないんだけど」

 

 

 

 ──カァァァン!!

 

 

 蒼い雷が、戦場を明るく照らす。

 

 

「──ギルのやつ、あとでお仕置きだからね」

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

「チッ……!」

 

 ナナがいない。

 

 そのことに気づいてしまって──ギルは、自分でも気づかないうちに舌打ちをした。

 

「いったいいつからだ……!?」

 

 さっきまでは、確かに自分と一緒に戦っていた。お互いの攻撃の隙を埋めるように銃撃をしたり、背中合わせで死角を埋めあったりしていた。時には携行品の回復錠を融通しあったり、神機連結開放だってやっていたのに……いつの間にか、ナナの姿が見えなくなっている。

 

 ──オオオオオオ!

 

「邪魔だ!」

 

 襲い掛かってきたサリエルの胸を強力な一突きで撃退し、そしてギルは考える。

 

 ナナと合流するのは必至。それも、できる限り最速であるのが望ましい。これだけのアラガミの群れに対して一人で挑むなんて、自分にとってもナナにとっても自殺行為に等しいことなのだから。さすがにお互いそう簡単にやられることはないだろうが、しかしだからといって、悠長に構えていられるほどの余裕もない。

 

 唯一の救いがあるとすれば──先ほどから少しずつ、敵の勢いが弱くなっていることだろうか。

 

 ──そういえば、増援が来ているとか言ってたか?

 

 戦闘中であったために……そして、ノイズ交じりであったためにあまり聞こえなかったが、そんなことが通信機越しに聞こえていたような気がしないこともない。蒼い暴走神機兵がちゃんと動き出しただとか、寄生体同士が共食いしあっているとか、そんな話も聞こえたような気がする。

 

 いずれにせよ。

 

「グダグダ考えていてもしょうがねえ……!」

 

 自分がナナの元に向かうか。

 それともナナに自分の元へ来てもらうか。

 

 どちらにしても、なんとかして位置を共有する必要がある。言い方を変えると──位置さえわかれば、あとはどうにでもなるのだ。

 

「あんまり気は進まないが……!」

 

 神機を構えたギルは──その銃口を空へと向ける。もちろん、その先にアラガミなんているはずがない。単純に、真上に狼煙代わりの銃撃を行うという、本当にそれだけのことだ。

 

 ただし──それをした場合、ほかのアラガミまで引き寄せてしまうことだろう。どこにいるかもわからないナナに気づいてもらえるということは、同じくこちらが把握していない個所にいるアラガミもそれに気づくということに他ならない。ただでさえ乱戦であるこの状況下では、それはあんまりやりたくないことではある。

 

 が、背に腹は代えられない。むしろ、少しでも余裕のある今を除いて、チャンスなんてないのだ。

 

「頼むから、気づいてくれ──ん?」

 

 引き金を引こうとしたギルの動きが、止まった。

 

 その目線の先では──黒髪の、まるで猫の耳のように髪がぴょこんと盛り上がっている神機使いが、グボロ・グボロと戦っている。

 

「──おい、ナナ!」

 

 真上に向けていた銃口を、水平に戻して。グボロ・グボロのコア──寄生していたコクーンメイデンを撃ちぬいたギルは、慌てて彼女の元へと走り寄った。

 

「ナナ! 危ないからあんまり離れんじゃ──」

 

「……ごめんね? 私はあなたの探している人ではない、かも?」

 

「あ……」

 

 振り返ったその姿。

 

 よくよく見れば……彼女は、ナナではない。

 

「あんた……」

 

 顔立ちは、ナナとよく似ている。それこそ、遠目で見たらナナと間違えてしまうのもうなずけるほどだ。ただ、ナナに比べていくらか大人びた顔立ちであり──それでも、随分と童顔ではある──年齢としては、ナナより少し上か、あるいはギルと同じくらいだろう。

 

 何より、彼女の右腕にある腕輪の色は赤だ。ブラッドの黒い腕輪ではない。おまけにその得物がバスターブレードであるうえに、今ではちょっと珍しいことに第一世代の神機使いである。

 

 そんな彼女が、ナナであるはずがなかった。

 

「すまん……仲間とすごく似ていたもんだから」

 

「ふふ……あなたのその仲間って、私よりずっと若い子でしょ? 若い子に間違われるだなんて、ちょっと嬉しいかも」

 

「……あんただって十分若いだろ?」

 

 妙な違和感。目の前にいる女神機使いは、ころころと可愛らしく微笑んでいる──のに、言葉にできない奇妙な違和感が拭えない。

 

「そうだ、ちょっと聞きたいんだが……俺の仲間を知らないか? 髪型はあんたとちょっと似ていて、ブーストハンマーを使う神機使いなんだが」

 

「……ナナなら、あっちのほうで戦ってるよ。まだ全然大丈夫だと思うけど……助けに行ってくれる? ここは私が受け持つから……お願い、できるかな?」

 

「そりゃ願ってもないが……一人で戦うのはヤバくないか? それよりも、二人で行動したほうが」

 

 ギルのそんな申し出を、彼女は優しく微笑みながらやんわりと断った。

 

「ふふっ……! 優しいんだね、あなた。……大丈夫! これでもあなたより、キャリアは上のはずだから!」

 

「……わかった、頼む!」

 

「あ、ちょっと待って!」

 

 走り出そうとしたギルの背中を、その神機使いは呼び止めた。

 

「ちょっとだけ……伝言もお願い!」

 

「伝言?」

 

「うん──体冷やすから、あんまりおなかを出さないようにって……それだけ!」

 

「は……?」

 

「──行って!」

 

 何が何だかわからない──が、ギルはその神機使いに軽く会釈をして、示された方向へと走り出す。その様子を横目でしっかり見届けてから、その神機使いは静かにつぶやいた。

 

 

「ブーストハンマーに、銃も使える神機か……。神機使いも随分と変わっているのに……アラガミは相変わらずなんだね。でも──」

 

 

 

 ──カァァァン!!

 

 蒼い雷が、戦場を明るく照らす。

 

 

「ナナの周りに、こんなに素敵な仲間がいるのなら……お母さんも、安心かな!」

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

「おーい、ソーマぁ?」

 

「……」

 

「そろそろ休んでいい?」

 

「寝言は寝て言え」

 

 果たしてどれだけ、アラガミを倒したことだろうか。もはや数えるのも馬鹿らしくなるほどアラガミを切り捨てて──それでもなお視界を埋め尽くすアラガミの群れに、ソーマは心の中で思いつく限りの罵倒の言葉を吐いた。

 

「どこからこんなに沸いてくるのかねえ……絶対こんなにいなかったと思うんだが」

 

「さぁな」

 

 切っても切っても、どこからともなくアラガミは沸いてくる。すでに自分たち──自分とリンドウの周囲にはアラガミの死骸でいっぱいだというのに、それでもまだアラガミがそこらをうろついている。視界の端では、自分たちが切り捨てたアラガミの死骸を別のアラガミが貪っているというのだから、なんというか始末に負えない状況であった。

 

「……あと何kmだ?」

 

「5kmは切ってる……はずだが。あんまり近づいている気がしねえなァ」

 

 向こうのほうにそびえるティターニア。その影はどんどん濃くなって、今はこんなにもはっきり目視で確認できるというのに、ある時からさっぱり変わらなくなったというか、まるで近づけている気がしない。

 

 5kmなんて、歩いても一時間かかるかどうかの距離だ。ましてや神機使いの身体能力であれば、十五分もあれば到着できるほどの短い距離だ。それなのに未だなおティターニアの元へたどり着けていないというのは、自分たちがこの場にて足止めされているということに他ならなかった。

 

「アラガミの量だけなら、お前の初陣の時よりもヤバいかもな」

 

「……」

 

 ──ギャアアアア!?

 

 突っ込んできたザイゴートを、ソーマはろくに見もせずに切り捨てる。びちゃびちゃとその体液があたりに飛び散って、ソーマの白いコートの端に少しだけかかった。

 

「──ほかの連中が、ティターニアにたどり着けると思うか?」

 

「……難しいだろうな」

 

 ソーマの問いに、リンドウが眉間に皺を寄せながら答えた。

 

「どういうわけか、フラックメイデンの砲撃はめっきり減った。あのヤバい蒼い暴走神機兵もいるわけだし、追いつめているのは間違いない……だろうが」

 

「……最後の決め手に欠けている」

 

(やっこ)さんも、それだけ本気だってことだろうよ」

 

 自分たちは確かにティターニアに近づいている。そして、蒼い暴走神機兵という予想外の戦力も得ることができた。

 

 それなのに、ティターニアへの最後の一歩が届かないのは──それだけ、ティターニアが必死に抵抗しているということなのだろう。最後の砦だけは崩されまいと、全力で抗っているということなのだろう。

 

 それ自体は、理解できる。

 

 理解はできる、のだが──。

 

「……このままじゃ、俺たちが不利だな」

 

「こっちの体力は有限で、向こうの体力は限りないからなあ」

 

 人間である以上、いつかは必ず体力の限界が来る。一方で、アラガミである相手にスタミナ切れの概念はほぼ存在しない。仮にあったとしても、それを上回るほどの数の優位が向こうにはある。

 

 ゆえに。

 

「なんとかして……一組でいいから、奴に直接攻撃を与えないといけない。そうすりゃ、なし崩し的に押し切れると思うんだが」

 

「……」

 

「それができたら、苦労はしないんだよな」

 

 現状、8組の中で最も有望視されているであろう自分たちでさえ、こうして足止めされている。そうなると、自分たち以外でティターニアに近づける可能性のある人間はかなり少なくなってくる。言い換えると──自分たちがどうにかしなきゃ、この戦いは負けてしまう可能性がそれなりに高い。

 

 

 ──ギャアアア!?

 ──ガァァァァ!!

 

 

 迫りくるアラガミどもを、ソーマもリンドウも無言で切り捨てて。

 

 そして……ソーマは、ぽつりとつぶやいた。

 

「……あと一人。あと一人、応援が欲しい。それも、遠距離支援のできるヤツが」

 

「それな」

 

 ソーマは第一世代の剣型神機使いだ。必然的に、前に出てアラガミと切り結ぶことになる。その神機の仕様上、どう頑張っても遠距離攻撃は不可能だ。

 

 一方でリンドウは、かなり特殊とはいえ一応は第二世代の神機使いだ。個人の傾向として剣での攻撃を好むが、銃を使っての攻撃もできる。

 

 できる、のではあるが。

 

「…………お前がちゃんと銃を撃てればな。どうしてサクヤに習わなかったんだよ」

 

「難しいんだよ、これ! 何年もずっと剣一本でやってたのに、いきなり銃とか無理だって!」

 

 リンドウの銃の腕は、壊滅的であった。そのため、二人とも近距離戦闘をせざるを得ないわけで──普通の部隊であればまず間違いなくいるはずの、遠距離から銃撃で支援する役割の人間がここにはいない。

 

 普段であれば、それでも問題なかったのだろう。けれども、こうもギリギリの戦いにおいては、支援役が不在であることの影響はあまりに大きすぎたのだ。

 

「……三年は経ってるだろ、銃を使えるようになってから」

 

「だって……戦うときはほとんどお前らと一緒だろ? そうなると必然的に……今まで通りの戦い方になるだろ? あと……」

 

「なんだよ」

 

 ちら、とソーマのことを見て。リンドウは、恐る恐るつぶやいた。

 

「お前ら、俺に銃を撃つなって言うじゃねえか……」

 

「銃を撃つな、じゃなくて誤射するな、だ」

 

 とはいえ。

 

 嘆いていても、状況がよくなるわけではない。

 

 ひとしきり軽口をたたきあって、ほんの少しばかり息を整えた二人は──改めて、神機を構えなおした。

 

「──全力で突っ込むぞ。目の前にいるアラガミ以外は無視しよう。倒すことよりも、近づくことを優先だ」

 

「了解」

 

 結局のところ、やれることはそれしかない。今までだって同じように戦ってきたのだから、それを続けるだけ。下手に策を弄して自分の首を絞めるよりも、確実な今まで通りのやり方を貫き通したほうが、こういうのは案外うまくいくのだ。

 

「行くぞッ!」

 

「おう!」

 

 白い神機を持ったソーマと、黒い神機を持ったリンドウが走り出す。

 

 ──オオオオオ!!

 ──アアア……ッ!!

 ──…………!!

 

 目の前に迫るのは──テスカトリポカ、デミウルゴス、そしてアマテラス。なんとも運が悪いことに、そのどれもがかなりの巨躯を誇る、今この瞬間においてはあまり相手にしたくないアラガミたちであった。

 

「チッ……!」

 

 テスカトリポカのミサイルポッドが、不気味にうごめく。おまけにどういうわけか、前面の装甲まで開きだした。

 

 これはどう見ても、間違いなく。

 

「気をつけろソーマ! 砲撃が来るぞ!」

 

「わかってる!」

 

 テスカトリポカの十八番である、ミサイル攻撃。すべてを灰燼に帰すといわれるほどの圧倒的な火力による遠距離攻撃。

 

 避けるか、それともガードするか。

 

 刹那の間に、ソーマの頭にそんな考えが浮かんで。

 

 

 ──カァァァァン!

 

 ──ドォォォン!!

 

 ──ギャアアア!?

 

 

 雷鳴。そして、砲撃音──と、少し遅れて響いたアラガミの悲鳴。

 

 よくよく見れば──テスカトリポカのミサイルポッドから、ぶすぶすと黒い煙があがっている。

 

「これ、は──」

 

 

 

「──行けぇッ!!」

 

 

 

 ブラストによる強力な砲撃が、テスカトリポカの前面装甲に炸裂する。

 

 その光景に。

 

 その声に。

 

 ソーマもリンドウも、ほんの一瞬だけ固まった。

 

 

 

「振り向くな! そのまま走り抜けろ!」

 

 

 

「う、嘘だろ……?」

 

「まさか……! まさか、まさか……!」

 

 喉から手が出るほど欲しかった、後方支援ができる神機使い。後ろにいるのはきっと、銃を──ブラストを携えた神機使いなのだろう。

 

 けれど。

 

 いや、それ以上に。

 

 リンドウもソーマも、その声には聞き覚えがあった。

 

 

 

「役割を果たせ、ソーマ! 今のキミにしかできないことをやれっ!」

 

 

 

「……っ!」

 

 振り返りそうになる気持ちを、泣きそうになりながらもぐっと堪えて。

 

 そしてソーマは……速度を一切緩めず、テスカトリポカの脇を走り抜けた。

 

 

「……ありがとう!」

 

「そうだ……それでいい。それでこそ、僕が認めた親友だ」

 

 

 ──ドォォォォン!

 ──ギャアアア!?

 

 

 さらなる援護射撃。強力なオラクル弾が、デミウルゴスの顔面に直撃する。

 

 

「僕は今の僕にしかできないことをやる……だから、今の僕にできないことは。妹のことは──頼みます」

 

「……任せろ!」

 

 

 砲撃音に隠れるようにして、かすかに聞こえてきた声。

 

 絶対に、絶対にこの言葉だけは伝えようと──デミウルゴスの脇を走り抜けながら、リンドウは喉をつぶさんばかりに叫んだ。

 

「さて……」

 

 全身にタトゥーを入れたサングラスの若い神機使いは。

 

「光栄に思いたまえよ。この僕と戦えるという、その栄誉を」

 

 自分に向かって威嚇しているアマテラスに銃口を向けて、不敵にほほ笑んだ。

 

 

 ──カァァァン!!

 

 蒼い雷が、戦場を明るく照らす。

 

 

「極東の神機使いの華麗なる戦いを──見せてあげよう!」




・ケイト・ロウリー
 グラスゴー支部所属。享年25歳。生きていれば2074年現在で28歳。
 ハルさんの奥さん。GE2ではイベントムービーや回想だけの登場でNPCとして同行させることはできなかったが、GE2RBにて【追憶のケイト】として同行させることが可能となった。PSPでは彼女のロングヘアを自然に動かすことができなかったため、実装がVitaまたはPS4であるGE2RBになったらしい。追憶キャラなのになぜかブラッドアーツも扱える。
 あのハルさんの奥さんであるというだけで、器の大きさがわかる姉御肌(?)な人物。ちなみにゲーム本編ではほとんどわからないが、ハルさんとケイトはおそろいのロケットを首に提げている。中に入っているのはお互いの写真であることが公式設定資料集で語られている。
 神機使いを引退したら教師になりたかったことが後に語られた。実は何気に中の人はシエルと同じ。もしかしたら、彼女が教壇でとんでもないガチガチの戦術理論やバレット構築について語る未来もあったのかもしれませんね。

・香月ヨシノ
 極東支部所属。享年29歳。生きていれば2074年現在で36歳。
 ナナのお母さん。ゴッドイーターの登用が始まった2056年にフェンリルに入隊した、何気に神機使いとしては最古参の人。彼女もGE2RBにて【追憶のヨシノ】として同行させることが可能となった。追憶キャラなのになぜかブラッドアーツを使えるのも同じ。
 ソーマやツバキさんよりも早く神機使いになった人であり、おでんパンの開祖でもある。2063年にMIA、2067年に雪山で腕輪が発見されたため、KIAに更新された……が、NORNには『2063年にMIAと認定されていたが実際には腕輪に細工を施してゴッドイーターチルドレンである娘の香月ナナを連れて4年余りの逃亡生活を送っていたことがラケル博士の証言により判明した』とある。なので、実際は2067年に例の事故で死亡したところを発見された、というのが正しいと思われる。
 【腕輪に細工をしてフェンリルから四年近くも逃れ続ける】、【フェンリルからの供給がないにもかかわらず、逃亡生活の間も偏食因子投与問題をクリアしていた】など、何気にすごい技術者である可能性がある。実は何気に中の人はレア博士と同じ。
 逃亡生活に入るまで6年も待っていたのは、やはり娘がある程度大きくならないうちは現実的に厳しいと思っていたのだろうか。2060年にヨハネスが極東支部長に就任しているので、生まれながらのゴッドイーターの子を持つ親同士、相談すれば逃亡生活なんてしなくて済んだかもしれないですね……。
 なお、狙撃兵の制服を着用しているものの、娘に劣らず露出がすごいことになっている。よく見るとGE2のアリサと大差ない格好。ジッパー(?)の留まっている位置がちょっと違うくらい。

2038年 ヨシノ出生。
2056年 ヨシノ入隊。(ヨシノ18歳)
2057年 ナナ出生。(ヨシノ19歳)
2063年 ヨシノMIA。(ヨシノ25歳、ナナ6歳)
2067年 ヨシノKIA。ナナがマグノリア=コンパスに入所。(ヨシノ29歳、ナナ10歳)
2074年 ナナがフェンリル極致化技術開発局に入隊。(ナナ17歳)

・エリック・デア=フォーゲルヴァイデ
 極東支部所属。享年17歳。生きていれば2074年現在で20歳。
 エリナちゃんのお兄ちゃん。フォーゲルヴァイデ財閥の御曹司でありながらも、妹のために自ら志願して激戦区の極東で華麗に戦う神機使い。デレる前のソーマと親友とも呼べる間柄であったり、若手神機使いの間ではそこそこ有望視されていたりと割とマジですごい人。ただしトイレの扱いが下手でよく詰まらせるため、清掃のおばちゃんの悩みの種でもあった。また、御曹司であるはずなのに、素肌に前を開けたジャケット、グラサンに全身のタトゥー……と、チンピラみたいな格好をしている。同じ貴族のエミールや妹のエリナちゃんはちゃんとした格好をしているのにね。
 GE無印では序盤のイベントにてすぐに退場してしまったが、GEBにて【追憶のエリック】としてNPCとして同行できるようになった。彼がいなければ追憶キャラという存在そのものが生まれなかったかもしれない。また、マスク・ド・オウガを同行させるとなぜかエリックの同行回数が増えるバグはあまりにも有名である。
 ネタキャラ扱いされがちですが、エリナちゃんやエミールにあれだけ慕われていたり、デレる前のソーマと親友だったり……と、癖こそ強いものの人柄はよかったのだと思っています。テレビアニメ版での最期は、そのあたりが強調されていたのかな……って思うのですが、一度期待させておいてのあの結末は、あまりにも残酷すぎませんか……?
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