【天来】 天からこの世に来ること。天から来たかのように素晴らしいこと。
【comrade】 (苦労を共にした)仲間、同僚、戦友
【beyond】 人知の及ばない遥か彼方。遥か向こう。
【character】 地位、身分、性質、役。
【role】 ルール、規則、法則、支配。
「ふぅ……っ! ふぅ……っ!」
大量のアラガミに囲まれたエリナは、神機を支えに荒い息をついていた。
周囲にいるのはアラガミのほとんどはコクーンメイデン寄生体だ。サリエルやボルグ・カムラン、それにガルムまで──よく見かけるものからそうでないものまで、ありとあらゆる種類のアラガミがコクーンメイデンに寄生された状態でそこらをうろついている。
本来であれば迷わず撤退を選ぶべき状況ではあるが、しかし今回は寄生体であるというその事実がエリナの味方をした。コクーンメイデン寄生体はその弱点であるコア──つまりはコクーンメイデンそのものが、かなりアンバランスな形で体表に露出しているケースが非常に多い。間合いを正確につかみ、ロングリーチから一瞬の隙をついて攻撃を行うチャージスピアを扱うエリナにとっては、まさしく絶好のカモといってもよい相手であった。
「騎士道ォォォァァァ──ッ!!」
「……っ!」
ただし。
いくら、相性のいい相手とは言え──さすがに数が多すぎる。ティターニアに近づけば近づくほど敵は強く、多くなるのに、こちらの体力は有限だ。おまけに今回に至っては、頼りになる先輩もいない。
「……ばかエミール! 目立ちすぎ! いったん下がって!」
「ならんッ!! 僕が下がったらこのアラガミどもは無辜の民を襲うことだろう! なにより──エリナ! キミの体力はもう限界のはずだ!」
ぶぉん、とエミールがブーストハンマーを振り回してアラガミの頭をカチ割っている。騎士道というよりかは蛮族のような戦い方ではあるが、しかし今はそれが最適解だ。アラガミに囲まれての乱戦だというのに、エミールは的確に一体一体処理をして……息が上がったエリナにアラガミの注目が向かないように、ほとんど囮になるようにして立ちまわっていた。
「もう……っ!」
ぎり、とエリナは悔しさで顔をゆがませる。エミールが言っていることはどこまでも正しくて、認めたくはないが束の間のこの小休止はすごくありがたい。そしてこれまたやっぱり認めたくはないが──自分と同じか、下手したらそれ以上に動いているというのに、エミールはいまだなおアラガミと戦い続ける体力を保ち続けている。それすなわち、エミールのほうが自分より実力があるという証明といえないこともない。
「安心したまえ! 守るものが後ろにいる限り──僕は決して倒れないッ!!」
「──私、あんたに守られているつもりはないんですけど!」
──なんて、話していたのがいけなかったのだろうか。
「むっ……!?」
「なに!?」
「エリナ──上だッ!!」
ほんの一瞬の油断。
いい加減、守られてばかりじゃいられない──そろそろ戦線に復帰しようと、意識をエミールのほうへと向けてしまったその瞬間に。
いつの間にか背後から忍び寄っていたヴァジュラテイルが──エリナの首を食い千切ろうと、飛び掛かってきていた。
──あ、やば。
目の前が陰で隠されて。
大きな大きな牙が見えて。
喉の奥の、赤いぬめぬめした変なのまでしっかり見えて。
そして──荒い息遣いに、吐きそうになるほど血生臭い匂いが感じられて。
「おりゃあああああ!!」
「どっせええええい!!」
エリナの目の前で、ヴァジュラテイルが吹っ飛んでいった。
「……は?」
しかも、そればかりか。
「ど、どういうこと……!?」
──シュゥゥ……!
「なんで……なんで、シユウが私を守ったの……!?」
エリナの体を抱きしめるようにして──その全身で、覆いかぶさるようにしてヴァジュラテイルの攻撃からエリナをかばったのは。
翼の先にコクーンメイデンが突き刺さった、シユウであった。
「おい! そこの嬢ちゃん、無事か!?」
「ね、ねえっ! 立てる!? このシユウは一応大丈夫っぽいけど……できるなら、速くこっちに!」
「う、うん……?」
何が何だかよくわからない。何が起きったのか、本当によくわからない。
わかっているのは──ヴァジュラテイルの攻撃から自分を守ってくれたシユウ寄生体がいるのと、そして実際にヴァジュラテイルを吹っ飛ばしてくれた──応援に来た、若い神機使いがいるということくらいだろうか。
「おい! そこのシユウ! もし俺たちの言葉が通じてるってんなら……そのままアラガミどもをぶっ飛ばせ!」
──シァァ……!!
神機使いの言葉に反応して、そしてシユウは動き出す。くい、くい──と挑発的に腕を動かして、次の瞬間には特大のオラクル火炎弾をアラガミの群れの中に叩き込んでいた。そしてそのまま──大きく翼を広げて、空をすべるようにしてアラガミの首を刈っていく。
「え……アラガミが、言うことを聞いてる……? ど、どういうこと……?」
「んー? よくわからんけど、人に敵対するアラガミを手当たり次第に倒しているっぽい。ここに来るまでにもチラッと見えたけど、ちょいちょいそういうアラガミが増えているみたいだな」
「そ、そうなの……? ううん、それよりも……あなたたちは?」
自分を助け起こしてくれた、二人の神機使い。若い男と、そして同じくらいの年齢の若い女だ。よくよく見れば、ほかにも数人ほどの神機使いが駆けつけてきていて……いい加減体力の限界に近かったらしいエミールの代わりに敵を引き付けている。
「この作戦って、私たち以外は参加してないんじゃ……」
アナグラだけでなく、外部居住区のほうの守りも固めないといけないから。だから、この【疾風迅雷】に参加できる神機使いは自分を含めた16人しかいないとエリナは確かにほかでもない榊から聞いている。そのためにこうも過酷な戦闘を行うことになったというのに、いったいどうして、自分たち以外の神機使いがこの戦場にいるのか。
そんなエリナの当然の疑問は。
「──あっ! そのベレー帽……もしかしてと思ったけど、やっぱりそうだ! ちょっと見ない間に、随分と大きくなったね!」
「……あーっ! 本当だ! すっげーな、あんなちびっこいのが三年でここまでデカくなるのか!」
「……へ?」
あまりにも予想外な言葉によって、うやむやになった。
「え……誰……?」
「懐かしいなあ……! ねえ、あの子たちは今も元気? ほら……あなたと一緒に男の子を取り合ってたじゃない!」
「な、なんのこと……?」
「ほら! いっつもあのうさん臭いよろず屋のおっさんのまえで三人仲良く話してたじゃないか! 赤い髪留めのツインテールの女の子と、なんだっけ……神喰戦隊バガラリオンのシャツを着た帽子の坊主だよ!」
よろず屋の前。
三人仲良く。
赤い髪留めのツインテール。
神喰戦隊バガラリオンのシャツ。
その言葉を聞いて。エリナの頭の中に……あどけなく笑う女の子の顔と、そして能天気に笑う男の子の顔が浮かび上がった。
「お、男の子ってまさかあいつのこと!? べ、別にあいつとはそんなんじゃないしっ!」
「またまたぁ……! アレはどう見ても恋の三角関係だったじゃん……!」
「違いますからっ!! ……というか、なんでそんなこと知ってるんですか!?」
あの二人との交流が始まったのは、だいたい三年前だ。それも、よろず屋の前で話していたとなると……概ね、あの一年の間くらいだろう。エリナの頭ですぐにぱっと思いつくのはそれくらいで、そして大変不可解なことに、その思い出の中にこの二人は入っていない。
「あー……さすがに覚えていないか。実は私たちも極東上がり……おっと、内緒だった」
「えっ」
「お前ら三人とも、極東の神機使いの間じゃ有名だったんだぜ? どっちがどっちとくっつくのかな……ってな!」
「はあ!? なんですかそれ!? 聞いてないんですけど!?」
「うふふ……! エントランスでの子供のほほえましいやり取りだもん……! 私たちにとっては、それを見ているだけですっごく救われたんだよ……!」
「変に干渉せず、陰でこっそり見守ろう……って暗黙のルールがあったからな。一応、何度もすれ違ってはいるんだぜ?」
「な、なな、なな……!?」
子供の時の、恥ずかしい思い出(?)をこの二人は知っているという。それどころか、極東の神機使いの大半が、自分たちのことを見守っていたという。
そんなことを聞かされて。
冷静でいられる人間がどこにいるんだ──と、頭が沸騰しそうになりながらもエリナはそんなことを考えた。
「──なんだとッ!? そんな話、僕は聞いてないぞ!? どういうことだ、エリナ!?」
「ああん、もうっ! 話をややこしくしないで、ばかエミールっ!」
「いいや! キミの兄代わりとして──こればっかりはうやむやにはできん!」
「い・い・か・ら! ……それで! なんで、この任務にあなたたちが参加しているんですか!? そもそもあなたたち、いったいどこの所属ですか!? アナグラの神機使いはほぼ全員防衛任務に就いているはずですよね!?」
アナグラの神機使いであれば、防衛任務に就いているはず──つまり、ここにはいない。そうでなかったとしても、アナグラの神機使いの大半とエリナは知己だ。少なくとも顔を見れば相手のことは絶対にわかる。そのエリナでもわからない相手ということは、つまり。
「……言っていいのか、アキ?」
「ばっ……言っちゃダメじゃん! ……今の私たちは、誰でもない所属不明の神機使いだからね?」
「……元極東支部所属の、別支部の人?」
二人の視線が、明後日の方向へ向いた。
「…………内緒で、命令無視で助けに来てくれたってこと?」
「あーあー、聞こえなーい」
「な、内緒のデートも命令無視も、ここじゃ日常茶飯事だから……その、有給が残ってなかっただけだから……」
困ったように笑った彼女は──安心させるように、エリナの頭を優しく撫でた。
「私たちみんな、リンドウさんたちにはお世話になったからね……」
ここではないどこか遠くを見ながら、彼らは懐かしそうに語った。
「何度も辛い目にあって、何度も死にかけたけれど」
「クソッタレな職場だと、何度思ったことかわかんねえけど」
彼らが語る言葉は。
まさしく、この場に駆け付けた全員の気持ちであった。
「それでも──それに負けないくらい、楽しいことがたくさんあった」
「ここは私たちの青春──思い出の場所なの。大好きな、大切な場所なんだよ」
そして彼らは、神機を掲げて──安心させるように、高らかに宣言した。
「何年経っても、どんなに離れていても! ここのみんなが助けを求めているのなら!」
「大好きな
「たとえ世界の果てからだろうと、駆けつけて見せる!」
──カァァァン!!
蒼い雷が、戦場を明るく照らす。
「
「邪魔する奴は──閻魔だろうと叩き斬る!」
・【…ようこそ クソッタレな職場へ…】
エリックの死亡直後に呟かれたソーマのセリフ。GEの世界観をあまりにも的確に表しているためか、なぜかめちゃくちゃ有名になった。普通こういうのって、「任務が終わって気が抜けたところを襲われる」だと思うんですけど、「任務開始前の顔合わせの時にいきなり何の前触れもなく喰い殺される」っていうのがまたなんとも……。そのあと普通に任務に入っちゃうし……。
【ソーマが声をかけるまで主人公もアラガミに気づいていなかった】ので、場合によってはあの場面で物語が終わっていた可能性もあったり。ほかにも【三人が一緒に現場に向かう】、【主人公の到着時間がもう少しだけズレる】、【エリックがやってきた主人公に駆け寄らない(ソーマの傍から離れない)】、【『上だ!』ではなく『避けろ!』と叫ぶ(上を見たせいで反応が遅れていた)】……などなど、ほんの少しだけ歯車がズレていれば、エリックはあの場では死ななかった可能性があったという……。
・裕福そうな少女
GE、GEBにおけるエリナちゃんのこと。専用グラフィックこそあったものの、吹き出しに個人名は表示されず、実質的なモブ扱いであった。静養のために極東へやってきたこと、エリックの妹であること、そしてエリックは寂しがる彼女を追って極東に転属してきたことなどが語られる。例のイベントのせいで最初はかなり気落ちしているが、やがて少しずつ立ち直り、後述の少年、少女とともにほのぼのとした三角関係(?)を見せてくれるようになる。
そんな彼女が三年後に神機使いになってしまったのは、果たして本当に良いことだったのかと思わないこともない。エリックが生きていたら、止めていたのか、それとも応援していたのか……。
・少年
外部居住区に住んでいる少年。はっきり言って身なりは結構ボロボロ。ただし元気はいっぱいで、子供らしい物怖じのなさからエリナちゃんとも割とすぐに打ち解けていた。ゲーム本編ではあまりはっきりと見えないが、彼の着ているボロボロのシャツは【神喰戦隊バガラリオン】のものである。
・少女
外部居住区に住んでいる少女。はっきり言って身なりは結構ボロボロ。サイズのあっていないぶかぶかのセーターを着ているため、肩は出ているし指は隠れている。あと両足がすごく寒そう。「菜の花をおひたしにして食べる」というカルチャーショックをエリナちゃんに与えた。エリナちゃんとは少年をめぐって三角関係(?)にある。
何気にこの三人の関係性が好きなのですが、どこまでいってもモブ同士のやり取りだからか、調べてもあんまり出てこないんですよね……。
・よろず屋
アナグラのエントランスに居座っている怪しいグラサンの商人。各種回復アイテムなどを売ってくれるため、ある意味では最もプレイヤーがお世話になる人間かもしれない。仕入れルートは一切不明で、あまり入手できないはずのものや意外なものを破格の値段で取り扱っていたりする。スタングレネードやアラガミ素材、果てには神機まで売っているので、もしかしたらマジにヤバい人かもしれない。うさん臭さや怪しさはゲーム本編中でも言及されており、「いかがわしく、値段設定がありえない店」とアリサは評している。
なお、三年ほど前の一時期に、彼と大量の【感覚体】等を売買する神機使いが続出した。今から思えば、あれは資金洗浄ってやつだったのかもしれない。
・霊代アキ
GEの女主人公のデフォルトネーム。男主人公のデフォルトネームである神薙ユウに対し、若干知名度が低いと思わないこともない。
・アルファ1
【プレイヤー】である【あなた】だけに割り当てられるコードネーム。