【新人指導実地訓練:死亡事故に関する報告書】
本報告書は、2074年4月に発行されたミッション(新人指導実地訓練/ミッションコード:7404FE043)および当該ミッションにおける死亡事故について報告するものである。
◇対象ミッション
新人指導実地訓練
◇ミッションコード
7404FE043
◇ミッション開始日(事故発生日)
2074年4月11日
◇ミッション参加者
・桜田チハル(上等兵)
・榎本ケイイチ(新兵)
・松宮レイナ(新兵)
◇ミッション目的
グボロ・グボロの単体討伐を通した新人指導(実地訓練)。
◇被害内容
桜田チハル上等兵の殉職。(神機回収済み。遺体および腕輪は未発見)
◇被害原因
・作戦行動想定外の複数の大型アラガミの乱入。
・レーダーおよび通信機器の不良によるアラガミ接近への対処の遅れ。
【経緯】
◇ミッション発行
榎本ケイイチおよび松宮レイナは神機使いとしてのキャリアが半年未満の新兵であった。中型以上のアラガミとの戦闘経験に乏しく、また多人数での討伐経験しかなかったため、個人ないしは少人数での討伐経験を積ませるべく、教育プログラムに則りグボロ・グボロの単体討伐を行うことになった。この時、引率役として選ばれたのが桜田チハル上等兵である。
当時、桜田チハルは第一部隊のエリナ・デア=フォーゲルヴァイデを始めとした新人指導および引率に力を入れており、また火急のミッションも発令されていなかったため、彼女は指導要請を快諾。2074年4月11日の0834にフリーの教育用ミッションとして7404FE043が発行。桜田チハルを臨時部隊のリーダーとし、同日0900に三名を乗せたヘリコプターがアナグラより飛び立った。
なお、このミッションには桜田チハルの同期である片桐キョウヤ上等兵も参加を希望したが、ミッションの目的および片桐キョウヤの戦闘時の行動傾向から、桜田チハルにより参加を拒否されている。
◇作戦行動中
1030にヘリコプターが作戦エリアに到着。神機使い三名はヘリコプターより降下し、討伐対象のいるエリアへ徒歩での移動を開始する。この時、ややノイズ交じりであったものの、通信機器は問題なく作動していたことがわかっている。
1123頃、三名は目的地に到着。討伐対象であるグボロ・グボロのほかにオウガテイルが三体、オウガテイル堕天種が一体確認された。現場の状況より、桜田チハルはオウガテイルを含めたアラガミの殲滅を指示。新兵二人にグボロ・グボロを任せ、自身はオウガテイルと戦闘を開始した。この時既に通信障害が発生しており、本来の約50%程度の時間しか通信は成立していなかったが、戦闘を開始した三人はこのことに気付いていなかった。
◇通信障害の発生
オウガテイルはすべて討伐され、新兵二人は桜田チハルのサポートを受けながらグボロ・グボロと戦闘を行っていた。戦闘は大きなトラブルが起きることなく進んでいたが、通信状況はさらに悪化し、本部からは現場の状況がごく瞬間的にしか把握することができない状態であった。
1159頃、瞬間的に復活したレーダーが大型のアラガミ反応を捕捉。後にランク6相当の個体と判別されるシユウ二体、コンゴウ二体、ヴァジュラ一体、荷電性ボルグ・カムラン二体の合計七体のアラガミが桜田チハルらが戦闘を行っている領域に近づきつつあった。
1205頃、作戦エリアに上述のアラガミが侵入。この段階でレーダーおよび無線通信はほぼ断絶され、現場の状況はほとんど把握できなくなった。
◇アラガミの乱入
グボロ・グボロを討伐寸前まで追い込んだところで、上述の七体のアラガミが戦闘に乱入。この時、僅かにつながった通信およびシユウの発したオラクル弾の威力から、桜田チハルは目の前の個体がランク4以上に相当する個体であると推察したという。
アラガミに囲まれつつある中、桜田チハルは新兵二人を下がらせて自らはアラガミに突撃。七体全てに攻撃を仕掛けて注意を引き付け、捕喰により神機を開放。取得したアラガミバレットを榎本ケイイチおよび松宮レイナに射出し、両名を神機連結開放状態(レベル3)とした。
その後、桜田チハルは榎本ケイイチに撤退を指示。自身はアラガミの群れの中で挑発フェロモンを使用して囮となった。これらの行動により二人の撤退を確実なものとし、今回の事変に関する情報を確実に作戦本部に伝えようとした。
彼女の決死の行動により、榎本ケイイチと松宮レイナは軽傷を負いながらも合流ポイントに到着。移送班が操縦するヘリコプターにより回収された。
なお、この時ヘリコプターの操縦士および榎本ケイイチの両名が未確認のアラガミの雄叫びを耳にしている。
◇救援部隊の派遣
1254頃、榎本ケイイチからの報告を受け、作戦本部が状況の詳細を知ることになる。桜田チハル上等兵との通信は途絶えたままでその状況も確認できなかったことから、彼女はMIA(作戦行動中行方不明)と認定された。彼女の救出任務はランク7相当とされ、その時点で参加資格があり、すぐに出撃できるのは真壁ハルオミ少尉のみであったため、早急なる救援部隊の派遣は叶わなかった。
1413頃、榎本ケイイチおよび松宮レイナがアナグラに帰還。精神的動揺が見られたものの軽傷であったため、聞き取り調査を実施。
1428頃、別任務に出ていた藤木コウタ少尉が帰投。またほぼ同時刻にクレイドルとして別任務中の雨宮リンドウ少尉、ソーマ・シックザール少尉が補給のために帰投。桜田チハル救出任務(ミッションコード:7404NR001)が発令され、雨宮リンドウ、ソーマ・シックザール、藤木コウタ、真壁ハルオミの四名からなる救援部隊が現地に向かった。
◇桜田チハルのKIA認定
1530頃、救援部隊四名が降下ポイントに到着。その後、1601頃に桜田チハルが最後に確認されたポイントに到着。現場は酷く荒れており、問題となった七体のアラガミの姿は既になかった。
現場からは、桜田チハルの物と思われる原形を留めていないほど破損した神機と、彼女が愛用していた赤いバンダナ、および少量の血痕が発見された。その後、周囲を探索するもそれ以上の痕跡は見つからず、彼女のオラクル反応も完全に消失していたことから、救出任務を一時的に打ち切り、同日の2023に救援部隊はアナグラに帰投した。
翌日4月12日の0900にて、現場より回収された神機が桜田チハルの物と断定された。同じく血痕も桜田チハルの物と断定されたことから、同時刻を以て桜田チハルをKIA(作戦行動中死亡)へ更新。桜田チハル上等兵を二階級特進で少尉とし、救出任務は救出対象の死亡という形での終了となった。
なお、現場遺留品である彼女のバンダナは、発見者である藤木コウタより片桐キョウヤに手渡された。
【通信障害について】
今回の死亡事故の直接的な原因は【作戦エリアへのアラガミの乱入】、【ミッション受注者の能力を超えたアラガミとの戦闘】の二点であるが、全体への影響度が大きい間接要因として、通信障害が挙げられる。
当時、現地と作戦本部の双方向通信が不可能となっており、当初はなんらかの設備的要因に起因していると思われたが、その後のチェックでは不具合は確認されていない。また、当日も現地にいた人間同士(榎本ケイイチと松宮レイナ)での通信は成立していたほか、救援部隊が現地に赴いた際は問題なく本部と通信ができていることが確認されている。
通信障害が起きていなければ今回の事故は防げた可能性が高いため、早急な調査および原因究明が急務となっている。
【乱入したアラガミについて】
救援部隊の現地調査において、問題の七体のアラガミの戦闘の痕跡が確認されている。その後の追加調査で各アラガミのオラクル細胞片が現場より確認されたが、その七体がどういう状況にあるのかは今も不明のままである。
なお、現場確認を実施した雨宮リンドウらからは、戦闘の痕跡から七体のうちの大半は既に死んでいる可能性が高いと報告がされている。
【再発防止対策】
◇暫定対策
・任務内容に関わらず、一定数のスタングレネードを持ち込むこと。
・任務内容に関わらず、曹長以上の神機使いをアサインすること。
・調査が完了するまで、作戦行動範囲を一時的に縮小します。
◇恒久対策
以下について、検討中。
・複数の大型アラガミに包囲された場合における対処マニュアルの更新。
・通信障害発生時の行動方針についてのマニュアル化。
その他、原因調査と並行し、その結果を適宜フィードバックさせながら根本的対策を検討します。
【NORN:データベース更新】
◇桜田チハル
桜田チハル(享年15)
故人。2072年フェンリル極東支部入隊。2074年、指導役として参加した新人指導実地訓練にてMIA(作戦行動中行方不明)と認定され、その後KIA(作戦行動中死亡)に更新。最終階級は少尉(上等兵からの二階級特進)。
神機使いとしては負傷率・損害率の低さが特に優れており、周りへのサポートも積極的で特に後輩神機使いたちから慕われていた。明るくて面倒見がよく、積極的に新人指導(実地訓練)に協力するため、教官からの指名で指導役として訓練にアサインされることも多かった。
神機使いだけでなくオペレーターや整備班、その他アナグラに所属する職員とも多くの交流があったため、彼女の死はアナグラに大きな悲しみをもたらした。
神機:バスターブレード・ブラスト(第二世代)