GOD EATER:救雷の神鳴   作:ひょうたんふくろう

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3 グボロの舌がおいしい

 

 本日もまた、この空腹感を紛らわすために色々なことを行った。結構な収穫があったので、備忘も兼ねて改めて思い返しておこう。

 

 この周辺のアラガミは食べ尽くしたので、新たな獲物を求めてとりあえず西へ。相も変わらずあたりは荒廃しており、人の住んでいる痕跡などはまるでない。時折見かける人工物は軒並みぶっ壊れていて原形をとどめておらず、なんというか物悲しい気分になったっけ。

 

 そんな物思いに更けながらも、そこらにうじゃうじゃいる小型アラガミをおやつがわりにむしゃむしゃして。なんだかちょっぴり喉が渇いたので適当な水辺でもなかろうか──と辺りを探索していたところで、そいつを見つけた。

 

 厳めしい顔つきをした一頭身の魚……つまりは、グボロ・グボロだ。

 

 初となる中型アラガミとの接触。都合のいいことに、グボロ・グボロは中型の中でも弱い部類で動きもあまり速くない。群れられたら厄介だけれども、そんなのどのアラガミにも言えるわけで。腕試しとしては実に理想的だったと言える。

 

 そんなわけで、真正面から挑みにかかる。こちらに気付いた瞬間、グボロ・グボロはその頭の砲身から圧縮された水球を撃ちだしてきた。

 

 ……が、今の私の目には止まって見える。ぴょんって跳んだら普通に飛び越えられた。

 

 で、そのまま横ビレを爪で切りつけたら、それはもう面白いくらいにスパッと切り落とすことができた。

 

 いやまぁ、確かに鋭い爪だとは思っていたし、グボロ・グボロは元々結構柔らかいアラガミだ。それなり以上のダメージが入ると思ってはいたけれど……結合崩壊ならぬ、ヒレ切断までしてしまうとは。この辺はやっぱりリアル準拠ってところなのだろう。

 

 元々こちらの方が圧倒的にスペック有利だったのに対し、ヒレ切断という不可逆な重傷を負ってしまってはグボロ・グボロに勝ち目はない。そもそもあいつ、懐に潜られた段階で負けは確定しているようなもの。多少無理して連打すればすぐダウンしてハメられちゃうもんな……。

 

 ともあれ、その後は恙なく戦闘終了。見事な三枚おろしこそ無理だったけれども、小型アラガミの時とは違って押しつぶすことなく仕留めることができた。ここはまあ、腐っても中型アラガミの耐久力の成せる業か。

 

 ちょっと失敗だったのは、まさしくグボロの活け造り(?)を食べようとしたその瞬間。ケツをぺしんと誰かにビンタされてマジでビビった。

 

 正確には、どこかに潜んでいた二匹目のグボロ・グボロが私の尻に水球をブチ当てたってだけなんだけれども。よりにもよってあの大きな尻尾を掻い潜って尻にあてるとか、あのグボロさてはけっこう強かったな?

 

 幸い、ダメージ自体はほとんどなし。先ほどの通り、せいぜいがケツを叩かれた程度の痛みでしかない。弱点(?)に対する不意打ちの全力攻撃でさえあの程度なのだから、今の私の防御力は私が想像している以上のものがあるのかもしれない。

 

 さて、ここからの話なのだけれども……いきなりのことに多少なりともビビった私は、視界の向こうにグボロを確認した瞬間、ほとんど反射的に目の前をこのガントレットで薙ぎ払ってしまった。

 

 おそらく、本能的な行動なのだろう。冷静になって考えれば、私とグボロまでは数十メートルの距離がある。いくら図体がデカいとはいえ、目の前を前脚で振り払ったところで空ぶるだけだ。

 

 ただ、実際は……私の腕の動きに合わせて雷の衝撃波(?)が発生して、そのままグボロに直撃したんだよね。

 

 自分で言うのも何だけれども、結構な電気量だったのだろう。その雷の衝撃波に触れた瞬間、悲鳴すら上げずにグボロはぴーんと反り立つようにして体を硬直させた。で、気付けばそのままぐしゃりと崩れ落ちて、もう二度と動くことは無かった。

 

 近づいてよくよく観察してみれば、表面がぶすぶすと焦げて炭化していた。ついでに体全体がどろどろしてきているというか、崩壊し掛けている。オラクル細胞の結合が切れたのだろう。もしかすると、高電圧によって生じた電熱による火傷を、まだギリギリ活性状態にあるオラクル細胞が修復しようとしてケロイドになっていたのかもしれない。

 

 もったいないのですぐさま食べてみた。どうしてなかなか、結構おいしかった。

 

 まず、見た目に反して水っぽさはほとんど感じない。ぷりぷりしていて食べ応え……というか食感が良い。熱を通したってのも大きいだろうけれども、そもそもとして肉質(?)が小型のものと全然違う。

 

 あとやっぱりすっげえ魚っぽい……けど、ほのかに爬虫類っぽい特有の後味というか、ぶっちゃけるとワニっぽい風味がした。なんだろ、半生のおさしみにワニらしさを付け加えた感じっていうの? 人間の食べるもので例えることが上手くできない、そんなグボロらしい不思議な味だったよ。

 

 もう一匹の活け造りにしたほうも流れでそのまま食べる。こちらは魚らしさが強く、ワニらしさはあまり感じず。やっぱり水っぽさはほとんど感じず、真っ当な食べ物みたいでとても嬉しい。胴体の可食部こそ少なかったものの、そもそもがそこそこデカいからボリュームも悪くない。

 

 意外なことに、一番おいしかったのがグボロの舌。弾力が内臓とは段違いで噛み応えが良い。一方で一番美味しくなかったのは頭の角みたいなアレ。味気ないウエハースみたいで食べていて面白くない。まあ、コクーンメイデンよりかは美味しかったけれど。

 

 久しぶりの真っ当な食事ということで、時間をかけて丁寧に食べた。満足感は期待以上。ただ、それなりに食べたと思ったのに空腹感は変わらず。食事中こそよかったものの、食べ終わって幾許もしないうちにはおなかが鳴りそうになった。

 

 私は元来、こんな大食いキャラではない。つまりは、この空腹感はアラガミである以上一生付き合っていかなきゃいけない持病みたいなものなのだろう。

 

 ともあれこれにて、グボロ程度であれば楽勝で倒せることが判明した。ついでに、私には雷を操る力があることもわかった。

 

 このカミナリの力、何気に結構便利というか応用性が高い。発電器官はやはりというか背中の青いマントで、これはヴァジュラのそれと同じ類のものなのだろう。ふん、と軽く気合を入れるだけでビリビリパワーが背中に集まるのがすぐにわかった。

 

 それと同時に、頭の青い一本角にもビリビリパワーが集っていたりも。なんかちょっとカッコイイと思ってしまったのはここだけの秘密だ。

 

 この雷の力は、ほぼ私の思い通りに操ることができた。ヴァジュラのように雷球を展開して発射したり、レーザーのように径を絞って発射してみたり。さっき咄嗟にやったような感じで衝撃波として飛ばすこともできれば、ビリビリパワーをガントレットに込めて直接殴り掛かることもできる。

 

 そしてマルドゥークとしての炎の攻撃を、雷の技として扱うこともできた。こうなるともう、マルドゥークの荷電性堕天種と言ってもいいくらい。

 

 というか、電熱が強すぎて普通にグボロの残骸燃やせたし。これ、ちゃんと練習すれば炎の技としても使えそう。……いや、そもそも電熱で発火点になってしまうほど強力な電撃を与えたら、その段階で勝負着いちゃってるか?

 

 ここまでを総合して考えると、私の能力はマルドゥーク+ヴァジュラって感じ。覚えたてでここまでできるのだから、練習を重ねればもっといろんなことができるようになるだろう。最初は雷属性を弱点にしているアラガミって意外と少ないんだよな……なんて思ったりもしたけれど、こうしてリアル仕様で考えれば、雷のパワーってすっごく凄い。

 

 あと、一番びっくりしたのが電撃を使っている時の私の姿だ。角とマントが青白く発光しているのが凄くカッコイイ……のは当然として、静電気(?)のせいで魅惑のふかふかもふもふ毛皮がぶわっと広がってなんとも誘惑的なフォルムになっている。尻尾なんか普段より四割り増しくらいの大きさのシルエットになっていて、思わず飛びつきたくなっちゃうほど。

 

 あとさりげなく、体全体に青白いラインみたいなのが走っていた。オラクルパワー的な何かだろう。カッコいいから特に気にしないことにする。暗い夜道でも足元を照らせてとっても便利。やったね。

 

 だいたいこんなものだろう。早いところ、この新しい能力を試して見たくてしょうがない。人間の時はとてもじゃないけどここまでスッキリ爽快なことなんてできなかったし、やっぱり力ってのはパワーだ。あって困るものじゃないし、強ければその分自分のワガママを押し通すこともできる。弱肉強食のこの世界であるなら、なおさら。

 

 ──明日もたくさん、美味しいものが食べられますように。

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