GOD EATER:救雷の神鳴   作:ひょうたんふくろう

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30 スプリング・フェスティバル:結果報告書

 

【スプリング・フェスティバル:結果報告書】

 

 本報告書は、2074年4月に発行されたミッション(スプリング・フェスティバル/ミッションコード:7404NO003)および当該ミッションにて確認された新種のアラガミについて報告するものである。

 

※支部長命令により、本報告書の閲覧には制限がかかっています! 閲覧権限の申請は別途申請フォームより行ってください。

 

 

◆目次◆

 

【概要】

 ◇対象ミッション

 ◇ミッションコード

 ◇ミッション開始日

 ◇ミッション参加者

 ◇ミッション目的

 ◇ミッション結果

【経緯】

 ◇ミッション発行

 ◇作戦行動中

 ◇カリギュラとの戦闘、および桜田チハルとの合流

 ◇ミッション完了

【桜田チハルの容態について】

【白いアラガミについて】

 ◇名称

 ◇外見的特徴

 ◇身体的能力

 ◇特筆的能力

  ・雷操作

  ・回復オラクル

  ・ジャミング

  ・嗅覚

 ◇耐性

 ◇その他特記事項など

【白いアラガミの今後の処遇について】

【関連書類・関連ミッション等】

 

◆本文◆

 

【概要】

 

◇対象ミッション

 スプリング・フェスティバル

 

◇ミッションコード

 7404NO003

 

◇ミッション開始日

 2074年4月16日

 

◇ミッション参加者

 

・雨宮1番隊

 雨宮リンドウ(少尉/クレイドル)

 ソーマ・シックザール(少尉/クレイドル)

 藤木コウタ(少尉/クレイドルおよび第一部隊/第一部隊隊長)

 

・片桐2番隊

 片桐キョウヤ(上等兵)

 エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ(新兵/第一部隊)

 エミール・フォン・シュトラスブルク(新兵/第一部隊)

 

・真壁3番隊

 真壁ハルオミ(少尉/第四部隊/第四部隊隊長)

 台場カノン(上等兵/第四部隊)

 榎本ケイイチ(新兵)

 松宮レイナ(新兵)

 

◇ミッション目的

 作戦エリア内のアラガミの掃討、および桜田チハルの保護。

 

◇ミッション結果

 成功。40体を超える中型以上のアラガミを討伐。また、新種の白いアラガミの発見(後述)。

 

【経緯】

 

◇ミッション発行

 2074年4月16日の朝、出勤したオペレーターの竹田ヒバリがレーダーマップ上にKIA認定とされた桜田チハル少尉の腕輪のオラクル反応が表示されていることを確認した。腕輪の反応はアナグラから北北西に約150km地点にあり、桜田チハルがロストしたとされる場所からは離れていたが、桜田チハルの反応にほぼ重なるようにして大きなアラガミ反応が確認できたことから通信機器の不良の可能性は限りなく低く、そして腕輪を通したバイタル情報が確認できたことから、桜田チハルが生存している可能性が非常に高いと判断された。

 桜田チハルの反応はアラガミ反応と共に時速30km弱の速度でアナグラに向かっており、同日1400頃にはアナグラに到着する見立てであったが、その進行ルート上(アナグラから北北西に約50kmの地点)に複数の大型以上のアラガミ反応があったため、当該エリアのアラガミの掃討および桜田チハルの保護を目的とした指名制のその他ミッションとして7404NO003が発行。三部隊(合計十名)が現地に派遣された。

 なお、ミッション発行時の段階にて、桜田チハルと動きを共にしているアラガミについては、【ジャミング領域の展開ができる人間に友好的な知能の高い新種のアラガミ】と推定されていた。

 

◇作戦行動中

 1210頃に各部隊が作戦エリアに到着。片桐2番隊が先陣を切り、それに続く形で真壁3番隊が作戦エリアに進行。また、別ルートから雨宮1番隊が作戦エリアに進行した。

 各部隊ともに順調にアラガミの討伐を行っていたが、1240頃に件の新種のアラガミの接近に起因すると思われる通信障害が発生。これにより各部隊間および本部との通信が取れなくなった。

 また、ほぼ同時刻に上空よりカリギュラが当該エリアへ侵入するのを、雨宮1番隊が目視にて確認。これを受け、雨宮1番隊は作戦目標を桜田チハルの保護からカリギュラの討伐へと変更。雨宮1番隊は片桐2番隊と合流すべく移動を開始した(片桐2番隊にはカリギュラとの戦闘資格を有する神機使いがいなかったため)。

 

◇カリギュラとの戦闘、および桜田チハルとの合流

 通信障害が発生したため、片桐2番隊はエミール・フォン・シュトラスブルクを通信中継役として後方に待機させ、片桐キョウヤ上等兵、エリナ・デア=フォーゲルヴァイデの二名が先行してアラガミ討伐を行っていた。アラガミ討伐は順調に進んでいたが、先行していた二名はカリギュラと遭遇。両名ともに接触禁忌種であるカリギュラとの戦闘資格は有していなかったが、そのまま戦闘に突入することとなった。

 片桐キョウヤは雨宮1番隊の応援が来るまでカリギュラをその場に留める方針で戦闘を開始。エリナ・デア=フォーゲルヴァイデを下がらせ、自身が囮になることでカリギュラの足止めを図るも負傷。戦闘継続は絶望的な状態となったが、桜田チハルを背中に乗せた白いアラガミが戦闘に乱入。結果として、カリギュラは白いアラガミによって討伐され、片桐2番隊と桜田チハルの合流は果たされた。

 なお、この際に桜田チハルの呼びかけにより、片桐2番隊の両名に対して白いアラガミが回復オラクルによる治療を行ったことが確認されている。

 

◇ミッション完了

 カリギュラ討伐後、桜田チハル、片桐キョウヤ、エリナ・デア=フォーゲルヴァイデの三名は白いアラガミの背に乗って移動を開始。アラガミと戦闘継続中であった真壁3番隊の応援へと向かった。この時、桜田チハルの呼びかけにより白いアラガミのジャミング領域が解除され、通信障害は解消し、全体の通信が復活した。エミール・フォン・シュトラスブルクと合流していた雨宮1番隊は片桐2番隊からの連絡を受け、目標をカリギュラ討伐から真壁3番隊の応援(合流)へと変更した。

 真壁3番隊と合流した桜田チハルらはそのまま戦闘を開始。残っていたアラガミのほぼすべてを白いアラガミが撃破した。

 その後、作戦エリア内のアラガミの掃討が確認されたため、これを以てミッション完了と判断。派遣された三部隊と保護対象であった桜田チハルは同日の1630にアナグラに帰投した。

 

【桜田チハルの容態について】

 行方不明になってから五日間ほど外部で過ごしていた桜田チハルであったが、ごく軽度の栄養失調および脱水の症状が見られたものの、全体としてケガはなく、意志も明瞭で大きな異常なし。アナグラに帰投後大事を取って点滴を受けた。全治一日と判断。

 なお、白いアラガミによる治療を受けたと本人より申請があったため、念のため定期的なメディカルチェックおよびメンタルケアを受けることを医師より指示されている。

 

【白いアラガミについて】

 新人指導実地訓練(ミッションコード:7404FE043)にて七体のアラガミに襲われた桜田チハルを助けたとされる白いアラガミ。その後、五日間にわたって桜田チハルを守るように行動を共にし、本ミッションにて桜田チハルと共にその姿を現した。

 本ミッション後に桜田チハルに付き添う形でアナグラへとやってきたが、ペイラー・榊支部長の手引きにより一時的にエイジス島へと移送された。なお、実態として拘束などの措置はとっておらず、あくまで桜田チハルの呼びかけおよび本アラガミの意志でエイジス島にいるだけであるため、ただ単にエイジス島に居着いているだけというのが正しい表現となる。

 

 その詳細は現在調査中であるが、人を襲わず、ある程度の意思の疎通ができるらしいことが確認されている。また、上記の本来のアラガミからは考えられない特徴より、単純な新種のアラガミというよりかは、かなり特異な変異種である可能性が高いと推測されている。

 

 以下は現在までの情報を暫定的にまとめたものである。あくまで状況証拠からの推測を羅列しただけに過ぎず、今後の調査結果次第では見解が変わり得ることに注意されたし。

 

◇名称

 未定。今後決定予定。

 

◇外見的特徴

 ガルム神属と思われる骨格。全体としてヴァジュラより二回りほど大きく、全身が非常に保温性の高い手触りの柔らかな白い毛皮で覆われている。両腕にはガルム神属特有のガントレットがあり、背中にはヴァジュラのマントとよく似た青いマントを有する。尾は扇状で横に広く、大きい。

 顔には目元を隠すような仮面があり、額からは青い角が生えている。相貌は非常に凶悪で恐ろしい。

 

◇身体的能力

 非常に優秀。瞬発力・持久力に優れ、その巨体に見合わない俊敏な動きを可能としている。膂力も高いらしく、ガントレットの一撃でカリギュラのブレードを破壊した姿が確認されている。また、大型アラガミが相手であっても飛び掛かり、無理やり押さえつけて行動を不能にする姿がしばしば確認されている。

 カリギュラやランク6相当の七体のアラガミを同時に撃破できること、および後述の能力を考慮すれば、総合的な戦闘能力は接触禁忌種と同等以上の非常に高いものと思われる。

 

◇特筆的能力

 

・雷操作

 雷属性のアラガミと推測され、自在に雷を操る姿が目撃されている。ヴァジュラと同程度、あるいはガルムが操る炎と同程度の操作能力があるらしい。出力は非常に高く、カリギュラの装甲が赤熱し溶融する程度の電圧を操れる。雷を操る際に額の角とマントが青白く発光していることから、この二つが発電に関わる器官だと思われる。

 また、体中に軽い電気を纏うことで毛皮をよりふかふかにし、ほどよく温めることもできるらしい。その肌触りは非常に素晴らしいとの報告も上がっている。

 

・回復オラクル

 神機使いが扱う回復弾と同じ性質を持つらしい緑色の雷を発射できる。詳細な効果検証は未実施だが、凍傷や軽度の擦過傷程度であればほぼ瞬時に回復できることが確認されているほか、雷という形態であることから、瞬時に広域に展開できることがわかっている。

 

・ジャミング

 特殊な偏食場パルスを展開することで、自身を中心とした半径数百メートルの範囲でジャミング領域を展開することができる。継続力は非常に高く、基本的にはずっと展開し続けられるらしい。このジャミング領域には、【ジャミング領域内であっても近距離であれば通信が成立する】という特徴がある。

 範囲、継続力ともに高く、ステルス的な用途としてアラガミがジャミングを用いるのは過去に例のないケースであるが、そもそもとしてこれほど強力なアラガミがなぜジャミング領域を展開する(自身の隠蔽行為をする)のかは不明である。

 

・嗅覚

 非常に高い嗅覚を有するらしく、これにより数km離れた廃棄トレーラーに積載されていた非常食を見つけたとのこと。戦闘時にも嗅覚を用いているらしく、視覚範囲外のアラガミの動きを捉えている節がしばしば見受けられた。

 

◇耐性

 【火】、【雷】、【氷】に耐性があるらしいことがわかっている。特に【氷】属性については、カリギュラの冷凍ブレスが直撃しても平然としているほど高い。

 

◇その他特記事項など

 

・アラガミとしては非常に高い知能があり、人とある程度の意思の疎通ができる。確認されている限り、【進め】、【待て】、【乗せて】、【降ろして】、【水浴び】、【進行方向指示】、【戦え】、【アラガミ解体指示】、【運んで】といった指示を聞き分けることができる。

 

・アラガミとしては異例なことに、人を襲おうとする傾向が無く、逆に人を救おうとする傾向があるらしい。一方でアラガミとしての捕喰本能は備えており、戦闘時には盛大にアラガミを喰い散らかす。特にコアの部分が好きらしい。挑発フェロモンを使用した桜田チハルを前にしても全く襲うそぶりを見せなかったことから、かなり特異な偏食因子(偏食傾向)があると推測される。

 

・非常に人懐こく、穏やかで大人しい性格をしているらしい。桜田チハルによると、顎の下を撫でられるのと人間の体の匂いを嗅ぐことが何よりも好きであるとのこと。彼女の所感として【甘えん坊の男の子みたい】といったコメントがある。また、数時間おきの水浴びを好む姿から、綺麗好きでもあるらしい。

 

・桜田チハルがこのアラガミと行動していた際、夜間は前述の雷操作によって暖かくふわふわになった尻尾をベッド代わりにして眠っていたらしい。このことから、【人間の睡眠の必要性】、【人間の睡眠に適した環境】、【人間に危害を与えないレベルでの雷操作】の理解があると思われる。

 

・桜田チハルの空腹を察し、前述のとおり嗅覚を用いて食料の捜索を行うほどの知能を見せた。今までの所、明確に嗅覚を用いた索敵を行うアラガミは確認されていないため、アラガミとして初の事例と考えられる。

 

・桜田チハルと行動を共にしていた際、神機を失った彼女に代わり、(彼女の指示に従って)アラガミの解体を行った。知能の高さはもちろん、手先の器用さもあると思われる。

 

・人見知り(?)であるらしく、現在の所桜田チハルの「おねがい」を優先して聞き入れる傾向を見せている。また、女性神機使いについては懐いている(?)様子を見せる一方で、男性神機使いについてはそっけないともとれる態度をとることが多い。評価サンプル数が少ないため、今後年齢やその他の要素を考慮して検証を行う予定である。

 

【白いアラガミの今後の処遇について】

 白いアラガミはエイジス島にて事実上の収容状態にある。今後の処遇についてペイラー・榊支部長が決定するまで、以下の体制を以ってあたることとする。

 

1. 常時三名以上の神機使いがエイジス島へ駐在し、白いアラガミの監視をする。なお、特別な理由がない限り、三名中一名は女性とする。

 

2. 白いアラガミがエイジス島から出るそぶりを見せた時は本部へ連絡すること。なお、この行動を止める必要はない(捕喰のための移動であり、そのうち戻ってきます)。戻ってきたら再び本部へ連絡すること。

 

3. エイジス島へアラガミが侵入した場合は指示がなくともこれの討伐にあたること。この時、可能であれば白いアラガミと協力して討伐することが望ましい。

 

4. 余計な混乱を避けるため、本アラガミについては緘口令を敷くものとする。関係者以外には本アラガミに関する一切の情報を漏らさないこと。万が一本アラガミの存在が露呈してしまった場合は【極秘開発中の生物型試作新型神機である】とし、速やかにペイラー・榊まで連絡すること。

 

【関連書類・関連ミッション等】

 

◇関連書類

 ・新人指導実地訓練:死亡事故に関する報告書

 

◇関連ミッション

 ・新人指導実地訓練(ミッションコード:7404FE043)

 ・桜田チハル救出任務(ミッションコード:7404NR001)

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

「……ふぅ」

 

 電子メールで送られてきたその報告書を読んで、プラチナブロンドの髪の彼女は小さく息を吐いた。

 

「人と意志の疎通ができるアラガミ、かぁ……」

 

 脳裏に浮かぶ、無邪気な笑顔。しかしこの報告書を見れば、明らかにそれ(・・)との関連性は無いのだろう。彼女と違ってヒトの姿はしていないし、もしも何かしらの関連があるならば──おそらく、もっとはっきりとした形で連絡を寄越してくれるはずだ。

 

「ついこの前アナグラを離れたばかりのはずなのに……随分と、いろんなことがあったんですね」

 

 とはいえ、非常に興味深い案件であるのもまた事実。ヒトと意志の疎通ができるアラガミというだけでも驚くべきことなのに、それがガルム神属の大型アラガミともなれば、文字通りの前代未聞だ。ほとんど人間とのふれあいが無い中で人を保護している点も興味深いし、その強力なオラクル細胞をちょっと研究するだけで有用な研究成果はいくらでもでることだろう。

 

 なにより、挑発フェロモンの効果があっても人を襲わないという非常に稀有な偏食傾向。これだけでもう、一つの支部が数年分の予算を割いてでも研究するに値するほどの大きな発見だ。

 

「それにしても……ふふ、コウタらしい報告書ですね」

 

 小さくくすりと笑ってから。

 

 彼女は──呆れたように眉間に皺を寄せた。

 

「相変わらず文章が読みにくくてわかりにくい。内容が散らかっていて何を主体として言いたいのかわからない。もっと構成を見直したほうがいいですよコレ。白いアラガミの詳細については別個にまとめて関連書類として記載すべき……そうじゃないと調査進行によるリビジョンアップがこっちにも掛かって手間がかかるし、何よりも検索性があまりにも悪い。このレポート名じゃ後から探せないじゃないですか。余計な修飾や書くべきでない推測も多いし……なんか最後の方、疲れて投げやりになって来てません? 全体として、報告書の体が保たれていないし、そもそも報告書なのに作成者の名前が記載されてないってどういうことですか……」

 

 傍らにあったマグカップを手に取り、彼女は喉を潤す。何度も最初から読み直しては、出来の悪い生徒に指導するかのようにその問題点を虚空に向かって呟いた。

 

「……まぁ、以前に比べれば随分と良くなってますけど」

 

 彼女の記憶にあるコウタは、もっとちゃらんぽらんでいつだって能天気な人間だった。その明るさに救われたことは何度もあるが、それはそれとしてこの手の書類作成作業の能力は壊滅的だったと記憶している。

 

 それなのに……この、短い時間でこれだけの文章量のそこそこ読める(・・・・・・・)報告書を作成したのだ。もし一年前の自分がこれを見ても、絶対信じられなかっただろうと彼女はぼんやりと思った。

 

「それにこうして事前にチェックを頼んでくるあたり、成長してるんですよね……ふふっ、ホントはあんまり良くないんですけど」

 

 隊長としての自覚が出てきたのかな、いやいや、文章チェックという体で誰よりも素早く情報共有してくれたのかも……なんて思いつつ、彼女は指摘点をメールにまとめようとして。

 

「……ん?」

 

 そして、気付いてしまった。 

 

「嘘でしょ……リンドウさんもハルオミさんもこれで承認出してる……。これ、承認済みの正式な報告書じゃないですか」

 

 承認欄。作成者のところはもちろん、合同参加者としての部隊長の欄も既に埋まっている。

 

「どん引きです……絶対ろくに目を通さずに承認しましたね」

 

 パッと見ただけで、両手が必要なくらいには指摘事項があったのだ。自分の倍以上のキャリアを持つ二人が揃ってそれを見落とすとは考えられない──と、彼女は強い確信を抱いた。

 

 実際のところは、ちゃんと二人とも目を通したうえで承認をしている。なんだかんだで隊長である以上、最低限の仕事はきっちりこなしているのだ。ただ、二人ともこの手の作業に関してはいくらかおおらか(・・・・)であることと、彼女が人一倍この手のことに厳しいというだけの話である。

 

「いずれにせよ、一度アナグラに立ち寄って詳しい話を聞いてみたいですね」

 

 もちろん、彼女には今抱えている仕事がある。そちらを放り出すわけにはいかない。が、それを考慮してもこの白いアラガミにはあらゆる可能性がある。上手くいけば、彼女の仕事を大きく進める手がかりも得られるかもしれない。

 

「本格的に検討するのは次の報告書が回って来てからとして……それまでに、なんとか時間を作らなきゃ」

 

 彼女の頭の中で、アナグラへ帰るための算段がつけられていく。偶然にも、今は遠征中であったリンドウとソーマもアナグラにいるらしい。つまり、少し前までずっと一緒だった部隊の仲間の内、一時的に前線を退いているサクヤを含めた四人がアナグラに揃っているわけで。

 

 そこに彼女が加われば──六人中、五人が揃うことになる。

 

「あなたも……戻ってきてくれないかな」

 

 脳裏に浮かぶのは、クレイドルとして遠く離れた場所で活躍するその姿。

 

「……会いたい、なあ」

 

 CCに連なっている、彼の名前をそっと撫でてから。

 

 彼女は、彼から貰った赤いベレー帽を愛おしそうにぎゅっと抱きしめた。




【NORN:データベース更新】

◇桜田チハル
 桜田チハル(15)
 2072年フェンリル極東支部入隊。現在の階級は上等兵。
 出生:3月24日 身長:144cm

 2074年ミッション「新人指導実地訓練(ミッションコード:7404FE043)」にてMIA認定とされ、その後「桜田チハル救出任務(ミッションコード:7404NR001)」にてKIA認定となったが、同年の「スプリング・フェスティバル(ミッションコード:7404NO003)」にて生存が確認され、見事原隊復帰を果たした。生存が確認されたためKIA認定は取り消され、二階級特進も取り消しとなり階級は上等兵に戻った。
 神機が破損したため、現在は神機使いとしては休職中。定期的なメディカルチェックや簡単なメンタルケアを受けながら、新たに発見された新種のアラガミについての聞き取り調査、および研究・検証に協力している。現在の所、件のアラガミに対する知見が最も深いのは彼女であるため、今後しばらくはそちらの方向での活動がメインになると推測される。
 非常に小柄な体格で子供と間違われることが多いため、同行者は常に注意し適宜フォローすること。特に、フェンリルに倫理道徳に反した児童強制労働の疑いをかけられた場合は必ずその場にて確実に訂正を行うこと。
 片桐キョウヤと同期入隊であり、彼とのミッション同行回数が最も多いほか、彼と出撃したミッションの成功率はほぼ100%となっている。
 神機:バスターブレード・ブラスト(第二世代)





【蛇足】
 変則的ではありますが、忘れないうちに報告書だけ挙げておきます。本格的な再開準備はぼちぼち進めているので、毎日投稿は無理ですが完成次第適宜投稿していこうかと思います。
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