GOD EATER:救雷の神鳴   作:ひょうたんふくろう

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42 彼の推測

 

「……ルーちゃん、私のこと子供だと思ってるってホント?」

 

 なぜバレた?

 

 いつも通り、顎の下をわしわしとしながら呟かれた衝撃の一言。ほんのちょっぴり思いつめた(?)表情のチハルちゃんが、なんとも複雑そうな声音を隠そうともしないで私に問いかけてきている。

 

「アリサさんがねえ、ルーちゃんと感応現象をやった時に……ルーちゃんの母性に触れたんだって。今までのことぜーんぶ、ルーちゃんが私のことを守るべき子供だと思っているからこその行動だって」

 

 そんなことないよね──なんてチハルちゃんは言うけれど、悲しいことにだいたいあたりだ。母性云々はともかくとして、小さな子供を庇護対象として見るのは真っ当な人間としては当然な感性だし、アラガミになってもそれは変わらない。さすがにそこまで人間性捨ててないっていう。

 

 というか……やっぱアレ、マジに感応現象してたんだ。正直な所、なんかビリッと来たけど私自身には特に何もなかったから、失敗したんじゃねって思っていたんだけど。

 

 ……感応現象って互いに記憶を共有するアレじゃないの? アリサのほうにだけ私の記憶が流れたって言うの? いやん、なんかプライベートを丸裸にされたみたいでちょっと恥ずかしいんだけど。

 

 ──ルゥゥ。

 

「……だよね? ルーちゃんは母親って感じじゃなくて、甘えん坊の男の子だよね?」

 

 ごめんねえ。割とマジにその辺は答えられないのよ。ママ、自称ママだしイケメンでもあるから……。甘えたい時も甘やかしたい時もあるし、少なくともついてない(・・・・・)のは走るときにぶらぶらしてないからわかるんだけど、かといって文字通り穴も無いからね……。

 

 アラガミ七不思議のひとつ。生き物として持つべき排泄腔がない。食べるだけ食べて出すってことをしない。食べたもん全部エネルギー。ある意味じゃ究極にエコな生物ではなかろうか。

 

「……感応現象、かあ」

 

 わしわしと顎をかいていた手を止めて──あ、できればもうちょっと続けてほしいんだけど、ともかくチハルちゃんはゆっくりと目を閉じて、その額を私の眉間に押し当ててきた。

 

 ぐりぐり、ぐりぐり

 

「……わからん」

 

 ──ルゥゥ?

 

「なんで私、ルーちゃんと感応現象できないんだろ……? 私が一番、ルーちゃんと仲が良いと思うんだけどなあ」

 

 まぁね、感応現象自体そんなに頻繁に起きる現象じゃないっぽいからね。神薙ユウさんとアリサがポンポンやっているから忘れがちだけど、第二世代が台頭してきたGE2の時代であっても、接触による感応現象なんて全然見られなかったし。ましてやアラガミと感応現象だなんて無理だろっていう。

 

 ……でも、アリサは確かに私と感応現象して見せたわけだし、そもそもアラガミと感応現象が出来ると考えたのは榊博士か? アリサが何を見たのか知らんけど、いったいどうしてそれから母性云々の話に繋がるのやら。

 

「……あとね、ルーちゃん?」

 

 はいはい、なんでしょう?

 

「……ルーちゃんのぶわーってやつ、ユーバーセンスってホント?」

 

 なぜバレた?

 

「榊博士がねえ、今までの報告からその可能性が非常に高いんだって言ってた。あと、その力があるからルーちゃんはアラガミなのに私たち人間の気持ちを理解してくれるんだって」

 

 ええ……なんでそれだけでわかんのよ……。びっくりを通り越してあの人マジで怖いわあ……。

 

「……ルーちゃん、私が今何を考えているかわかる?」

 

 うーん、なんだろ? 思春期の娘が何を考えているかだなんて、ママ、ママ歴短いからちょっとわかんないわぁ……。

 

 ……マジな話、文脈から考えて「私と感応現象したい」ってところかしらん? 出来得ることなら私も感応現象をやってみたい──それも、ちゃんとあの不思議空間で記憶の共有体験をしてみたいところだけれども、アレってやろうと思ってできるものなのかね?

 

 とりあえず、自慢のワガママダイナマイトボディをゆっさゆっさとすりつけてみる。ママのふかふかおなかですよう……っと。

 

「ふふ……正解はね」

 

 おん?

 

「あれ以来、ずっとアリサさんが甘やかしてきてちょっとクセになっちゃうかも……って考えてたの」

 

 えっ。

 

「なんかねえ、配給のカレーに入っていたお肉のおっきい塊を『ほら、ちゃんと食べないとダメでしょう?』って分けてくれたり。シャワーも一緒で頭を洗ってくれたり。髪を乾かしてくれるのもそうだし、昨日なんて……『メンタルケアには人との触れ合いが一番ですから』って、ぎゅっ! ってしてくれながら同じベッドで寝たんだよね」

 

 ……えっ?

 

「すっげーあったかくて良い匂いしたんだあ……!」

 

 あれ以来、アリサとは会っていなかったけれどまさかそんなことになっていようとは。感応現象でいったいどんな光景をみたのかはわからないけれど、それ相応の心境の変化があった……ってことでいいのか? あの娘、どっちかっていうと後輩に慕われたいタイプの娘だと思っていたけど、ここまで過保護な感じじゃなかったような……?

 

 感応現象か? 感応現象のせいなのか? でもアレ、単純に記憶の共有をするだけだよな……? いや、アリサはどちらかというと精神的には不安定な方だし、感化されやすいタイプだと考えれば不思議はない……のか?

 

「ルーちゃんはきっと……うん、おなかいっぱいアラガミを食べたいなあって思ってるんだろうなあ」

 

 あらやだ、この娘ったらママに対する理解力がカンストしてますわ。この体になってこの方、この空腹感だけは紛れたことはない。どんなに食べてもおなかがぺこちゃんで、寝ても覚めても気にかかる。私だから耐えられているけど、私じゃなかったら耐えられていなかったかもわからんね。

 

 ──ルゥゥ。

 

「ふふ、わかるよ。だって私が一番ルーちゃんのことを見てきているんだもん」

 

 それはそう。なんだかんだ言って人間の中ではチハルちゃんが一番付き合いが長いし、一緒に過ごした時間も長い。畏れ多くて原作キャラにこちらのほうから絡みに行くのが憚られる……ってところを抜きにしても、私が一番気兼ねなく過ごせるのはチハルちゃんを除いて他にいない。

 

「……うん、やっぱりルーちゃんは甘えん坊だよ」

 

 絶対そうに決まっているもん──と、チハルちゃんはちょっぴり悔しそうに私の顎を撫であげる。

 

「……私の方が」

 

 うん?

 

「私の方が、お姉ちゃんだよね……?」

 

 えっ。

 

「ルーちゃんが生まれたのって、どう考えてもこの数か月の話のはずだし。こんなに甘えてくるんだもん、絶対ママじゃなくて弟のはずでしょ……?」

 

 もしかして、もしかすると。

 

 私ってば、ウチの娘のことを理解しきれていなかったのかもしれない。こんな気持ちを抱いていただなんて、ママってば初めて知りましたわよ……?

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

「俺も小さい男の子説を推すことにした」

 

 さて。

 

 ここは嘆きの平原にほど近い合流ポイント。シスターソウルに目覚めつつある(?)チハルちゃんを背に乗せた私を迎えたのは、先んじてこのポイントで待機していたチャラチャラした神機使い──キョウヤだ。

 

 ちなみにそのすぐ後ろには白いジャケットを羽織った二人──ママ化したと噂のアリサと、なんだか妙に訝しそうな顔でこちらを見てくるソーマがいる。どうやら、今日はこの神機使い四人とイケメンアラガミママ一匹がミッションのメンバーであるらしい。

 

「ど、どうしたのキョウヤくん……? 何でそんな、急に……?」

 

「お前が来るまで、アリサさんたちといろいろ意見交換していたんだが」

 

 目的地へとたどり着くまでの雑談。てくてくとゆっくり歩を進めながら、キョウヤは確かめるようにつぶやいた。

 

「正直な所、俺がこいつに抱いた第一印象は……女好きのおっさんだった」

 

 こいつ失礼過ぎじゃね? 男であったとしても、イケメンフェイスにしなやかボディ……どう考えてもぴっちぴちのハンサムさんに決まってるでしょ?

 

「ただ、おっさんと形容するにはどうにもこいつは素直で無邪気すぎるように思える。だけど、マセガキだとすれば男に妙にそっけないのも、女に妙に懐いているのも腑に落ちるんだよな」

 

「ぬ……?」

 

「アレだ、『大好きなお姉ちゃんを取っちゃヤだ!』ってワガママ言っている感じ」

 

「……ああ! 確かにルーちゃん、私とキョウヤくんが喋ってるとちょっと不満そうというか……明らかに拗ねて不機嫌になるよね!」

 

 ねえちょっとまって、なんでそんなにすっきりしたって顔するの……? わたし、そんなに顔に出ていたかしら……?

 

「えへへ……! でも、嬉しいなあ……! キョウヤくんがルーちゃんのこと、そこまで理解してくれるだなんて!」

 

「……ま、中身がただのマセガキだと思える方が俺も気が楽だしな。ガキのやることにいちいち腹なんて立てるはずがない……っていうか、改めて考えると腑に落ちないことがでてきてな」

 

「腑に落ちないこと……?」

 

 ぽんぽん、とわざとらしくキョウヤは私の腕(?)のあたりを叩いて──もちろん、感応現象なんて起きない──そして、確かめるようにして呟いた。

 

「アリサさんに聞いたんだが、感応現象ってのはお互いが記憶の共有とかをしたりする現象なんだろ? 事実として、あの時アリサさんはこいつ──ルーが見た光景を感応現象で共有したわけだが」

 

「ふむふむ?」

 

「──こいつ、全然反応してなかったよな?」

 

「あ」

 

 それはそう。だって私てきにはマジで何もなかったんだもの。なんかちょっとビリッとしたとはいえ、マジでそれだけ。それでもってそのすぐ後にアリサがあんな風に豹変したものだから、理解が追い付かなかったというべきか。

 

「アラガミだろうと何だろうと、目の前の光景がいきなり変わったら何かしら反応するもんだろ? たとえ感応現象を知っていたとしても、全く動じないってことはないはずだ」

 

「た、たしかに……」

 

「そのあたりがどうも気になってたんだが……実はソーマさん、そもそもとしてこいつが感応現象で意志を汲み取っているという説そのものを疑っているって話でな」

 

「えっ!?」

 

 今更だけれども、どうやら彼らは私が感応現象で人間の意志を汲み取っていると思っているっぽい。なんとなーくそんな気はしていたけれども、少なくともこのメンバーのなかではそういう共通認識があるようで、今までの実験なんかもきっとそのあたりを確かめるために行っていたのだろう。

 

「な、なんでですか……? だって榊博士が、ルーちゃんは感応現象で私たちの気持ちを読み取っているって……」

 

「……この前の、知能確認訓練で俺がこいつに乗った時」

 

 チハルちゃんの不安そうな問いかけに対して、ソーマはまっすぐ前を見ながら呟いた。

 

「なぜだかこいつは──フランス語での指示を聞かなかった。感応現象ならどんな言語であっても関係ないはずなのに、だ」

 

「ああ、コウタにこっぴどく笑われたって言うアレですか」

 

 突如挟まれたアリサのつぶやき。予想外の不意打ちに、珍しくソーマが若干狼狽えたような顔をした。

 

「……何で知ってる?」

 

「何でって……普通に言いふらしていましたよ?」

 

「あの野郎……!」

 

 もちろん、関係者以外には言ってないでしょうけれども──とアリサが続けるも、まぁ逆に言えば関係者には周知の事実というわけで。

 

 ……というかこの前のアレ、やっぱ英語じゃなかったのね。知らねえ言葉だとは思ったけど、まさかフランス語だったとは。日本語で言ってくれなきゃわかるもんもわからないし、しかも結局未だに何て言ったのかさっぱりわかんねえっていう。

 

「……ともかく、それを聞いて俺も思ったんだよ。さっきも言った通り、俺はこいつの中身がおっさんみたいに思えてならなかった。だから、アラガミを信用できないって所を抜きにしたとしても、それ相応の嫌悪感みたいなものが少なからずあったと思う」

 

「嫌悪感? なんだかんだで、そこまで嫌っているようには見えなかったけど……」

 

「あー……例えるなら、近所の昔から知っているおっさんが、ベタベタ触ってくるような感じか? 犯罪じゃないけど不快感はある、くらいのもんだな」

 

 なんだろうなあ。これを聞く限りだと、クラスメイトの気になるあの娘が知らない男子と喋っていてモヤモヤする……って言葉の方がしっくりくる気がするんだけど。もしかしてこいつ、自分で自分の気持ちに気付いていないパターンか?

 

「とまあ、こいつが妙にそっけないのはその嫌悪感を感じ取っていたからだと思ったんだが……」

 

「ふむ」

 

「よく考えたらこいつ……エリナには普通なんだよな」

 

「あ」

 

 あ。

 

「本当に感応現象で気持ちを読んでいるのなら。あいつこそ一番警戒されて……いいや、嫌われているはずだろ」

 

 【ちょっとした不快感】程度の気持ちを読み取っただけでそっけない態度になるというのであれば。アラガミに対する明確な憎しみを抱いている人間が相手なら、もっとはっきりとした警戒心──ひいては、殺意に近いそれを抱いていてもおかしくない。

 

 キョウヤが述べたのはそういうことで、そして悔しいことに、理屈だけで言えば確かに筋が通っていると言えないこともないこともない。

 

「エリナちゃん……アラガミのこと、大っ嫌いだもんね……」

 

「まぁ好きな奴なんていないだろうけどさ。それにしてもあいつの執着はちょっと異常というか」

 

「……嫌いになるだけの理由が、あいつにはあるからな」

 

 どことなく重い空気。この様子だと、チハルちゃんたちもエリナちゃん……というか、エリックのことは知っているのだろう。少なくとも、神機使いの兄貴がアラガミに食い殺されたってことくらいは知っているだろうし……あの娘が神機使いになった理由って、マジでそのまんまそれ(・・)だもんな……。

 

「だから、感応現象じゃないと俺も思うことにした。こいつはただ単に、女好きのマセガキだ。そうだな、やんちゃ真っ盛りの五歳児くらい?」

 

「むー……そこは、小さい男の子ってだけでいいのに」

 

「あとさ……俺らはともかくとして、アリサさんやソーマさんみたいな歴戦の神機使いを前にして、なんでこいつはこうも平然としていられるんだろうな?」

 

「……」

 

「もし、本当に感応現象で相手のことがわかるってんなら……いいや、そうじゃなくとも。自分を傷つけ得る相手に対しては、それ相応の警戒心を抱くのが普通だと思うんだよ。実際俺達だってこいつと会う時は神機を持つし──もし俺がアラガミだとしたら、ソーマさんやアリサさんには正直近づきたくない……と思う」

 

 いくら報告書を読んでいたとしても、歴戦の神機使いがアラガミを相手に隙を見せるはずがない。いや、歴戦の神機使いだからこそ警戒心を持つはずで、何かあった時にすぐ対応できるように身構えるはず。初対面ならなおさらその傾向は強くなるわけで、そうであるにもかかわらず。

 

 あの時の私は、普通に無警戒でアリサに近づいた。なんならちょっとテンション上がってアホ面晒していたような気もする。だってあの衣装……いいや、ゴッドイーターのヒロインの一人を生で見られるんだもの、テンションが上がらないわけがない。そりゃそうだわ。

 

「アラガミを誰よりも憎んでいるエリナを敵視しない。本能的に警戒心を抱いているはずのアリサさんも敵視しない。感応現象なら伝わるはずのソーマさんのフランス語の指示も伝わらなくて……全部諸々併せて考えてみると、こいつはただ単に女好きのマセガキだ」

 

 悔しいことに、女好きのマセガキって所以外は大体合っていると言えなくもない。「感応現象で気持ちを読み取る」という彼らの盛大な勘違いも、このへらへらした神機使いはそれなりの根拠を元に否定して見せた。

 

 ……どうにもキャラを掴みあぐねているんだけども、こいつもしかして地頭は悪くない感じ? コウタもああ見えて閃きの天才みたいな描写が結構あったしなあ。ユーバーセンスがバレていた件もあるし、なんか思った以上に私のことが推理されて丸裸にされちゃっているのかしら……?

 

「まぁ、コウタさんもアリサさんも……というか、クレイドルの人たちは妙にフレンドリーすぎる気もするが。俺達よりもアラガミを見てきていて、俺達よりもアラガミを知っているはずなのに……なんか最初から無防備すぎる気がしたんだよな」

 

「あ、それは思ったかも。正直私……ルーちゃんと一緒にアナグラに向かっているとき、どうやってみんなを説得しようかすっごく悩んだもん。問答無用で討伐されるか、最悪実験体扱いになっちゃうかもって。アリサさんがルーちゃんのことをすぐに信じてくれたのも、ちょっとびっくりだったし」

 

「あ、あはは……あの時も言いましたけれど、後輩の話を信じない先輩なんているわけないでしょう?」

 

 微妙にアリサの目が泳いでいるように見えるのは、多分気のせいじゃない。単純にクレイドルの面々は、シオちゃんという前例があったから……アラガミとも分かり合えると言うことを知っていたというだけだ。尤も、人型じゃなくてイケメン狼型だとは思ってもいなかっただろうけれども。

 

「とはいえ……私は実際に感応現象を体験したわけですし、キョウヤくんの意見には懐疑的なんですよね。榊博士も感応現象で意志疎通しているって仰ってましたし──」

 

「……この際だから、お前ら二人にも言っておくが」

 

 アリサの言葉を途中で遮ったのは、ソーマだった。

 

「榊のおっさんの言うことは、あまり鵜呑みにしないほうがいいぞ」

 

「え……」

 

「あのおっさん、嘘はつかないが正しいことを言うとも限らない。信頼はできるが、信用はあまりできない。間違ってはいないし、きっと正しいんだろうが……納得できるかどうかは別だな」

 

「ちょ、ソーマさん……支部長相手にそんなこと言っていいんすか?」

 

「この前、リンドウだけが呼び出されていたし裏で何かやってんだろ。隠していることがあるのか、あるいは俺たちに言うべきでないと思っているのか……何かあるのは間違いないはずだ」

 

「え……そんな、それってまさか」

 

「……お前が心配するようなことにだけはならない。が、あのおっさんに限っては前例がいくつかある」

 

「前例って……」

 

「…………三年前、俺達はあのクソマズいジュースを製作する片棒を知らないうちに担がされた。それ以上の説明が必要か?」

 

「「……」」

 

「アナグラの今後の発展に関わる非常に重要なミッションだと……あのおっさんは、言ってたんだよ」

 

「「……」」

 

「それが、あのザマだ」

 

 ソーマの目は死んでいる。榊博士のフォローをしようとしたアリサの目もまたどこか遠いところを見つめていて、チハルちゃんもキョウヤもなんというかこう……すごく、すごく居た堪れない雰囲気を醸し出している。

 

 ──ルゥゥ?

 

「……ま、こいつについては無邪気で単純なヤツだとは思うがな。男か女かまではわからねえが」

 

 ぽんぽん──と、何かを確かめるようにして私の脚を撫でたソーマはその白い神機を肩に担ぎ直して言った。

 

「おしゃべりはここまでだ……見えてきたぞ」

 

「あ……」

 

 嘆きの平原。そこにそびえる黒い影。ついこの前来たときは無かったはずの、まるで大きな山のようなそれは。

 

「仕事の時間だ──行くぞ」

 

 平原の覇者とも呼ばれる、異形の超弩級アラガミ──ウロヴォロスだった。




 榊博士、内緒で【シオちゃん追い込み漁】とかもやってましたね……。

※中途半端なところで止まっていましたが、第二章の終わりまで書けましたので投稿再開いたします。1月がマジやばやばで何もできなかったために、感覚としては1か月弱で書いて投稿再開した気分なんですけど、実際は2か月も経ってたんですね……。
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