ウロヴォロス──それは、平原の覇者とも呼ばれる超弩級の巨体を誇るアラガミだ。複数の眼と触手を持つ異形のアラガミであり、かつての生物とは似ても似つかないほど悍ましく気味の悪い姿をしている。
動き自体は緩慢で、そのためか体中に苔だの蔦だのが絡みついているが──体の大きさが大きさなものだから、ウロヴォロスが移動するだけで周囲一帯に結構な被害が発生する。当然、神機使いがウロヴォロスを討伐するのも簡単な話ではなく、単純な触手の薙ぎ払い一つでさえも、致命的なダメージになりかねない。
「うっひゃあ……! でっけーなぁ……!」
「……喉の奥まで見えてんぞ、チハル」
「……キョウヤくんのえっち」
「理不尽すぎない?」
神機を改めて担ぎ直した片桐キョウヤは、前方はるか遠くに佇むその巨大な影を見て、しみじみと呟いた。
「しっかしまあ……話に聞いちゃいたが、あそこまでデカいとは。というか、あんなデカいのがいったいどこに潜んでいたんだ?」
「……
「そうですね。それに……昔はともかく、今は戦闘方法も確立されています。危険なアラガミではありますが、決して倒せない相手ではありません」
白金のジャケット──クレイドルの制服を身にまとった熟練神機使いであるソーマとアリサは、ウロヴォロスを見てなお表情を崩さない。まるでいつも通りだと言わんばかりで、そして実際、彼らはあの巨大な異形を簡単に打ち倒すほどの実力がある。それどころか、堕天種や接触禁忌種だって今までに何度も倒しているという確かな実績もある。
そう。この二人がいれば、いかにウロヴォロスが相手と言えど臆する必要はない。ソーマもアリサも、この程度であればソロで討伐できるほどの実力を持っている。上等兵で階級が低いチハルやキョウヤというお荷物がいたとしても、四人もいれば余裕でお釣りがくるくらいだ。
ただし。
「それでは──改めて、本日のミッションのおさらいをしましょう」
アリサは、少しだけ心配そうな顔をして──白いアラガミにまたがるチハルを見た。
「今日行うのは騎乗戦闘訓練。つまりチハルちゃんとキョウヤくん、そしてルーさん──あなたたちが主体となって、あのウロヴォロスを討伐してもらいます。私たちはあくまで非常時のサポート要員なので、そのつもりで」
ダメだと思ったら、すぐに戻ってきてくださいね──そんな、アリサの言葉の中に揺らめく不安を吹き払うようにして。
──ルゥゥゥアアアアッ!
白きアラガミは、空に向かって大きく吠えた。
▲▽▲▽▲▽▲▽
──ああ、本当にデカいなあ。
近づくほどに大きくなっていくその巨大な影を見て、キョウヤはどこか他人事のように思った。
ウロヴォロス。アラガミの中でも随一の巨体を誇る異形。オウガテイルはおろか、ヴァジュラやボルグ・カムランといった大型のアラガミでさえもかわいく思えてしまうほどの巨躯。文字通り、見上げても見上げきれないほどの体の大きさで、移動にちょっと巻き込まれただけでも致命的なダメージが──具体的には、見るも無残な轢死体になってしまうことは疑いようがない。
──近づきたくねえよなあ……。
キョウヤは第二世代の神機使いだが、剣はほとんど使わず銃を使うことが多い。アラガミに切りかかるのなんてオラクル補給の時くらいで、基本的には敵から距離を取って戦うことを主としている。
そんな自分が、明らかに階級に見合っていない弩級のアラガミに接近しようとしている。
──ルゥゥ?
「……震えているの、キョウヤくん?」
「んなわけあるか」
何でそんなことができているかと言えば。
自分の足ではなく──この、白いアラガミの背に乗って近づいているからだ。
「……速いよな、こいつ」
「そりゃあ、ルーちゃんだからね」
「……この速さで接近しているのに、まだあんまり近づいている感ないよな」
「……そ、そうかも」
自動車なんて目じゃないほどに、ルーの脚は速い。こうして密着しているからこそ普通にチハルと会話ができるものの、そうでなければ轟轟と風を切る音がうるさくて、まともに会話なんてできなかっただろう。
「……」
速さと巨大さのせいで距離感覚がおかしくなりそうだが──目標までの距離は、おそらくあと300mも無い。この調子ならあと数秒ほどで、戦闘領域に突っ込むことになるだろう。
「──任せるぞ」
「おっけぃ!」
キョウヤはいつも通り──心を奮わせるための叫び声を上げた。
「──いィィィィィやッはァァァァッッ!!」
──ルゥゥウァァァアア!!
流れる景色。明らかになった巨躯の全貌。
異形の複眼がこちらの姿を捉え──そしてキョウヤは、ありったけの弾丸を真正面からブチ込んでいく。
「ほぅら喰らえ喰らえッ! おかわりもあるぞッ!!」
突撃しながらの銃撃。アサルトが最も得意とする、機動力を活かした怒涛の連撃。一発の威力こそやや控えめなものの、その凄まじい弾幕による突破力は他の銃身ではあまり真似のできないものだ。
しかも今回は──キョウヤは、撃つことだけに専念できる。移動の事なんて気にしなくていいし、被弾のことも考えなくていいというのだから最高だった。
──ォォ……ォォォ……!
ダメージが通ったのか、それとも単純に鬱陶しかったのか。地の底から響き渡るようなおどろおどろしい叫び声が空気を震わせ、巨体から伸びた触手がキョウヤたちに向かって叩きつけられてくる。
が、もちろん。
「ルーちゃんッ!」
──ルゥッ!
白いアラガミには当たらない。余裕をもってその一撃を躱し、その勢いを一切落とさないままウロヴォロスに接近していく。
「いいねェ、何も考えずに好きなだけ撃てるってのは!」
撃って。撃って。撃って撃って撃ちまくって。
今までにないくらいの勢いで、キョウヤはひたすら弾丸を叩きこむ。神属性の汎用バレットだが、乱射するにはこれ以上ない程の性能だ。本来であれば、真正面から敵に弾丸を叩きこむなんてよほどの好機に恵まれなければできないことだが──この機動力であれば、全くもって問題ない。
「ルーちゃん! 接近はもう十分! 一定の距離を保ちながら、あいつの周りをぐるぐる回る感じで!」
──ルゥ!
事前の取り決め通り──ある程度接近したところで、ルーに対してチハルが新たな指示を出す。真正面に立たないよう……あるいはさながら獲物を追い詰める獣のように、ぐるぐるとウロヴォロスの周囲を走り回るような形だ。
「ひゃっはァァァッ!!」
当然、キョウヤの銃撃は止まらない。銃撃に集中できるのをこれ幸いとばかりに、とにもかくにも銃を乱射していた。
「……騎乗射撃、ちゃんとできてる?」
そろそろだろうな──なんて思いつつ、チハルは持ち込んでいたOアンプルをキョウヤの膝に突き刺す。チハルの方が前に乗っている以上、そこしか刺せる場所が存在しなかったのだ。
「効いてはいるが、効果的ってほどでも無さそうだ! 何より、あんだけデカけりゃ目ェ瞑ってても当たっちまう! アサルトの乱射じゃ嫌がらせにしかなってねェ!」
「だよね……だけど、その割にはけっこー嬉しそうだよね?」
「さっきの銃撃で角と複眼がぶっ壊れた! 狙いにくい部位をぶっ壊すのには向いてるな!」
動きが遅くて大きな敵だから、射撃自体の難易度は大したことが無い。加えて、その大きさが大きさだからアサルトの銃撃の効果も大して表れていない。
けれども──高い機動力のおかげで、瞬間的とはいえ真正面から銃撃を叩き込める。本来だったら絶対に立ってはいけないウロヴォロスの面前から、弱点である顔面に銃弾を叩きこむことができる。そのおかげで、普段はあまり獲ることのできないアラガミ素材が入手できる。
「んー……大きくて動きが遅い相手なら、カノンさんみたいに一撃が大きな人の方が騎乗射撃には向いているのかな。小さな相手だと移動しながらの銃撃も難しそうだし」
でも、騎乗射撃自体の有効性は悪くなさそうかも──と、チハルは頭の中のメモ帳に記入する。一定以上の射撃技術こそ必要なものの、高機動力と射撃だけに集中できるというその二点は、ガンナーからすれば喉から手が出るほど欲しいものだろう。
「キョウヤくん、次の検証に移ろう?」
「ええ!? まだまだ全然撃ち足りないだろ!?」
「何言ってんの、もう私のアンプル6本は使ったよ? これ以上やってたらその……全部の検証が終わる前に倒しちゃうし、キョウヤくんのズボンが穴だらけになっちゃうかも」
「……マジ?」
「うん、マジ」
撃ちすぎ注意、ペース配分の感覚が乱れる傾向があり──と、チハルは報告書にその一文を書き加えることを決めた。
「ルーちゃん、今度は最接近! あいつの足元をすれ違って向こうまで行く感じで!」
──ルゥウ!
体表からぶすぶすと煙を立ち上がらせているウロヴォロス。しかし、まだまだ致命傷には至っていないのだろう。その潰れた複眼はしっかりキョウヤたちを捉えているし、今もまた……今度こそ仕留めるとばかりに、無数の触手を振り上げている。
──ォォォ……!
面前にぬうっと迫る黒い影。動き自体はそこまで速くないように見えるが……それはその触手が大きすぎるからであり、実際の速度は見た目よりもはるかにあったりする。
──ルゥゥ!
しかし、そんな触手の連撃をルーは軽々と避ける。もうもうと立ち込める土煙すら意に介さず、鼻で笑うようにしてその脇をすり抜けていく。
そして。
「オラァッ!!」
伸びきった触手を真っ二つに引き裂くように、キョウヤの──剣形態に変形した神機が叩きつけられた。
──ォォォ……ォォ……!!
「効いてる!」
「だな!」
移動しながらの、すれ違いざまの一撃。ウロヴォロスの体躯に対してそのブレードはあまりに小さいが、叩きつけられた速度が速度だ。普通に人力で放った一撃よりも更に広い切り口と威力で……あの長い触手を、半ばから断ち切っている。
「ルーちゃん、もう一回!」
──ルゥ!
一撃、二撃。
すれ違って、切り返して、またすれ違う。
やっていること自体はそれだけだが、そのたびに触手が一本、二本と切り落とされ……そして、ウロヴォロスの苦悶の声が嘆きの平原に響いていく。
「騎乗斬撃……! ショートでもここまで切れるなんて! 私のバスターだったら、もっと!」
「いや……威力自体はデカそうだが、取り回しが悪そうだから何とも言えないぞ。あと正直、手応えが大きすぎてこっちの腕の方が持たない」
「そ、そうなの?」
「ああ。それに、
「なるほど……すれ違いざまに頭をカチ割っていくイメージ? 思想としてはブーストハンマーと一緒かな?」
「そうなんだけど……その表現、なんかヤだなぁ……」
騎乗斬撃についてはまずまずの結果が得られた。少なくともヴァジュラ程度の大きさが無ければ使えそうにない戦法ではあるが、どのみち小型アラガミ相手ならここまでする必要性はどこにもない。巨大なアラガミに対する一つのアプローチとしては悪くない……といったところだろう。
「次は騎乗捕喰なんだけど……キョウヤくん?」
「出来る出来ないで言えばできそうだが……こいつの速さで捕喰やったら、マジに神機ごと持ってかれそうな気がする」
「じゃあ……」
「最後の検証──
「あいあい!」
高い機動力を得るために神機使いがアラガミに騎乗する……のではなく。
戦闘用の付属オプションとして、アラガミが神機使いを背中に乗せる。
「ルーちゃん」
やっていること自体は同じだが、それがもたらす結果は。
「──好きにやっちゃえッ!!」
──ルゥゥゥァァァッッ!!
雄叫びと共に放たれる雷。紫電と共に迸ったそれはウロヴォロスの巨体を貫き、びくりとその触手を震わせる。ぴん、と硬直したそれをろくに見もせず鋭い爪で切り落としたルーは、その勢いのまま別の触手を噛み千切る。
「ひゃっはぁぁぁぁッ!」
その攻撃の──「噛み千切る」という動作のわずかな隙をカバーするように、キョウヤが銃を乱射する。別の方向から伸びてきた触手を撃墜し、そして触手の向こうにある顔面にさえも弾丸をぶち込んでいた。
──ルゥゥ!
放たれる雷球。ウロヴォロスの匂い──苔と土と妙な生臭さが入り混じった匂いに、電熱特有の匂いが混じる。真っ黒に焦げながらもなんとか繋がっていたその触手は、追撃の弾丸で見事にはじけ飛んだ。
「「!?」」
がくん、とキョウヤとチハルの視界がぶれる。
気づいた時には上空に放り出され──いいや、ルーが大きく跳び上がっていた。
──ォォォォォ……ッ!!
一瞬。
ほんの一瞬過ぎ去っただけのはずなのに──さっきまでキョウヤたちがいたところが、文字通り抉り取られている。それどころか、ウロヴォロスを中心とした半径50mほどのエリアが、重機か何かで荒々しく掘削されたかのような有様になっていた。
「な……何が起こったの……!?」
「あの野郎……! 触手ごと体を回転させたんだ! 周りにあるやつ、全部薙ぎ払いやがった!」
ルーが空に大きく跳び上がってくれたから、チハルたちからはその全貌が良く見えた。跳び上がってくれなければ、何が起こったのか推測すらできなかっただろう。
巨体という最大の特徴にして、単純が故に最強の武器。体を回転させるというたったそれだけのことで、ウロヴォロスはここまでの脅威となる。
「ルーちゃんが跳んでくれなかったら危なかった……! あんなの、神機のガードじゃどうにもなんないよ……!」
「……こいつには動きが見えてたのか? 動き出す前から跳んでた……よな?」
──ルゥゥゥォォォォッ!!
「「っ」」
体にびりびりと響く雄叫び。それと同時に放たれた、放射状に──否、ルーを中心としてドーム状に広がる雷の波。それはヴァジュラやディアウス・ピターがしばしば用いる電撃とほぼ同一のものではあるが、今この瞬間に限って言えば。
「なんか……いま、あいつの触手ピカって光らなかったか?」
「……ウロヴォロスの閃光攻撃! アレ喰らうとスタンするって書いてあった!」
「俺らが無事なのは……」
「ルーちゃんが電撃でかき消してくれたから……かな」
回転薙ぎ払い。上空に跳んで逃げたところで閃光攻撃。
真っ当に考えれば、それだけで終わるはずがない。逃げ場のない上空に追い込んだうえでさらに体の自由を奪おうとしたのだから、最後の止めの一撃があってしかるべき。
「なぁ、チハル」
「うん」
この時になってようやく。
チハルとキョウヤは──なんだかすっごくヤバそうに輝いているウロヴォロスの複眼に気付いた。
「ウロヴォロスって……」
「眼からビームを出す。サリエルのそれとは別格の、マジでぶっといヤバいやつ」
おそらく、ビームの発射まであと数秒もかからない。ウロヴォロスの全身が発光しながら鳴動しているし、なんだかヤバそうなパワーが複眼に集中している気さえする。
そして──ウロヴォロスの複眼は、空中にいる自分たちをしっかりと捉えている。
──ルゥゥ……ッ!!
バチバチと迸る紫電。気づけば、ルーのガントレットに凄まじいまでの雷がまとわりついていた。
「……飛び降りるよ、キョウヤくんっ!」
「おい!?」
「大丈夫! ルーちゃんならビームくらい余裕っ! 私たちの方が足手まといっ!」
チハルの判断は速かった。ルーの背中から立ち上がるやいなや、真正面から抱きしめるようにしてキョウヤに飛びつき、そのまま力強くルーの背中を蹴って空へと飛び出していく。
「キョウヤくん! 抱っこ! あとアレやって!」
「無茶言うな! ……ええい、そのまましっかり掴まってろッ!」
一方でキョウヤも、チハルの意図を察したのだろう。チハルに抱き着かれたまま神機を構えて……その銃身をルーに向けた状態で、引き金を引いた。
「ひゃーっ! なんかこれ、楽しーっ!」
「浮かれんな、頭バンダナ娘!」
──俗に言う、ドローバックショット。その名に反して弾を発射するわけではなく、あくまで敵からの距離を取るだけ──そんな、アサルトだけが使える神機の特殊機構。まるで見えない糸に引っ張られるかのようにして、二人とルーの間に距離ができる。
そして。
──ォォォォォォォォッッ!!
──ルゥァアアアアアッ!!
放たれた極大のオラクル光線。
神々しいまでの雷を纏った、落雷のような一撃。
雷を纏ったガントレットがオラクルの奔流を切り裂き、空が割れるような轟音が響いて──目も開けられないほどの閃光が迸った。
「……どうなった?」
ややあってから。
その両足でしっかりと大地を踏みしめたキョウヤは、立ち込める煙のその向こうを見ようと目を凝らす。
「おうコラ、いい加減離れろ」
「……せっかくだし、お姫様抱っことかしてくれないの? この際キョウヤくんでもいいからさ。ほら、役得でしょ?」
「今の段階で、ガキにしがみつかれているだけにしか思えないんだよなあ……」
既にチハルには、結果が分かっていたのだろう。だからこそ軽口を叩く余裕があり、そしてまた、その証明はすぐに行われることになった。
──ルゥゥ──ッ!!
「ルーちゃん!」
どう、と倒れ伏した異形の巨躯の上で、白いアラガミが大きく雄たけびを上げている。ウロヴォロスの複眼は見るも無残な状態となっており、顔面そのものがガントレットによって叩き潰されていた。どうやらかなり深くまでその傷は達しているようで、ぐちゃぐちゃになったその奥から、黒い煙がぶすぶすと燻っているのが見て取れた。
「あの高さから、電撃と一緒にガントレットを顔面に叩き込まれたんだもんな……そりゃ、いくらデカくても致命傷になるか。……あいつ、ビーム食らったのにぴんぴんしてやがるな」
「食らったっていっても、切り裂きながらだったしねえ……。それにルーちゃん、元々全体的に丈夫だし」
二人が会話をしている目の前で、ルーはブチブチとウロヴォロスの触手を噛み千切る。ようやっと晩餐にありつけたと言わんばかりに上機嫌に、その大きな大きな遺骸を思う存分に喰い漁っていた。
「おーおー、また美味そうに食ってんな……美味いのか、アレ?」
「どうだろ? ルーちゃん、味よりも量の方が大事なタイプみたいだし」
口の端からぼたぼたと落ちるオラクル片。もはや何色なのかもわからなくなったウロヴォロスの体液で体を濡らしながら、頭を突っ込むようにしてルーはその身体を貪っている。この光景だけ見れば、本当におっかないアラガミに見えるよね──なんて、チハルはそんなことを思った。
「なぁ、チハル」
「なぁに、キョウヤくん?」
「……俺達を乗せるより、あいつ単体で突っ込ませた方が強くないか? 俺達がいないほうが電撃だって自由に使えるし……俺達が乗る意味、本当にあるのか?」
「それはまぁ、そうかもだけど……でもルーちゃんだけじゃ、作戦行動はできなくない?」
「……」
「戦闘能力は確かにそうだけど、ただ強いだけだったらそれなりに替えが効くし。機動力や索敵能力も考えると、誰か一人は神機使いが乗ったほうが良いと思う。ルーちゃんの本領は、やっぱりチームプレイだって」
「……ま、そこらへんは今回の結果から偉い人たちが考えることか」
「あとね……こっちのほうが大事なんだけど」
「あん?」
チハルは、かつてないほどの勢いで食事を楽しむルーを見ながら呟いた。
「……ルーちゃん一人に任せていると、全部食べちゃうから」
「そりゃ……致命的だな」
神機使いの仕事の一つ。アラガミを討伐し、そのコアや素材を収集して持ち帰ること。そうやって得られたコアが新たな神機を作る材料になったり、アラガミの研究……より具体的には、アラガミ装甲やアラガミ防壁を作る材料となる。最新の偏食因子に更新しなければ防壁は簡単に食い破られてしまうのだから、ある意味じゃ最も重要な仕事と言っても良い。
「ルーちゃんには悪いけど、コアとか大事なところは回収しよ? これだけ大きな獲物だもん、一番おいしいところが食べられなくてもきっと満足してくれる……はず」
「……説得は任せるぜ? 食事の邪魔されたら、誰だって不機嫌になるわけだし」
ウロヴォロスは無事に討伐完了。あとは大事な素材を回収しつつ、この白いアラガミの食事をのんびりと待てばいい。あのウロヴォロスを討伐したのだからきっと報酬も悪くないはずで、もしかすれば神機の強化だってできるかもしれない。
そんな風に考えながら、キョウヤは額の汗を拭おう──として。
「チハルちゃんっ! キョウヤくんっ!」
後方から、慌てたように走って来るアリサに気付いた。
「アリサさん……? なんすか、そんなに慌てて」
「あ……もしかして、結構危なっかしかったですか?」
「それについてはあとでみっちりお説教ですっ! あれだけ注意したのになんであんな無茶な真似を……! 何かあったらどうするつもりだったんですかっ!」
「わぷ!?」
本当に、心配したんですからね──と、アリサは空いている片腕だけでチハルを抱きしめる。まさかいきなり抱きしめられるとは思ってもいなかったのか、チハルは目を白黒させたままなされるがままになっていた。
「アリサさん……それ、俺にはやってくれない感じっすか?」
「……悪いが、マジに冗談を言ってる場合じゃねえんだ」
「……ソーマさん?」
アリサの後からやって来たソーマ。その引き締まった表情を見て、キョウヤの背筋がピンと伸びた。
「……なにか、不測の事態でも起きたんですか?」
ウロヴォロスは倒れている。そして、ここにはクレイドルが二人もいる。たとえ想定外のアラガミが乱入してきたとしても簡単に処理できるだろうし、それこそかつてのような──ランク6相当のアラガミが七体紛れ込んできたとしても、このメンバーなら余裕をもって対応できることだろう。
「今しがた、本部との通信が回復したんだが」
「ああ、さっきまであいつのジャミング……いや、ユーバーセンスで使えなかったんですよね」
忌々しそうに、ソーマは吐き捨てた。
「コウタたちからの救援要請が来た──感応種が、現れたらしい」
設定上は天災レベルの脅威となっているウロヴォロスさんですが、実際のゲームでは……
・動きが遅くて攻撃を当てやすい
・攻撃間隔が長いため攻撃を当てやすい
・予備動作がわかりやすいので攻撃を当てやすい
・体(部位)が大きいので攻撃を当てやすい ※角は除く
・全身よわよわなので攻撃は大体クリティカルになる
・体力が多いのでたくさん攻撃できる
ということで、神機使いの99割はウロヴォロス道場の門下生として足繁く彼(彼女?)の元へと向かう毎日でありました。私も黒BAでだいぶお世話になりましたので、この場を借りて感謝を申し上げます。