GOD EATER:救雷の神鳴   作:ひょうたんふくろう

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※閲覧制限がかかっているため、報告書の中で彼らが読めているのは目次と【概要】の部分のみです。

【参考情報】
14 新人指導実地訓練:死亡事故に関する報告書
24 スプリング・フェスティバル:ミッション発行情報
30 スプリング・フェスティバル:結果報告書
39 新種のアラガミに関する諸調査:ミッション発行情報
45 新種のアラガミに関する諸調査:結果報告書


46 不思議な話(前)

 

「凄く高度な偽装工作ですね、これ」

 

 だから一緒に、どうしてそんなことをしたのか考えましょう──と、彼女は驚愕に目を見開いている彼に穏やかに笑いかけた。

 

「違和感がいくつかあるのだけれど、まずは前提から……。この【スプリング・フェスティバル】のミッション発行時の情報がこちらです」

 

 あなたの場合はこっちのほうが見慣れているかしら──という彼女の言葉と同時に、流れるように切り替わるモニター。少々狼狽しながらも彼は、その様子を顔には出すまいとモニターの文字を追っていく。

 

「KIA扱いになっていた桜田チハルの保護……そのために、合流ポイントにいるアラガミの掃討をする……」

 

「……どう思いますか?」

 

 あえて言葉にはしなかった、気になる一文。おそらくきっとそのことについて聞かれているのであろうと悟った彼は、正直に自分の考えを告げた。

 

「未知のアラガミのオラクル反応と共にアナグラに向かっているとありますが、正直なところこれは……先ほどの結果報告書から察するに、カリギュラの腹の中に腕輪があったということでしょうか」

 

「いいえ。桜田チハルという神機使いは五体無事で生還しているわ」

 

「は……?」

 

 桜田チハルが生きている──というのは彼にもわかっていた。先ほどの報告書のミッション結果には【桜田チハルの保護】とはっきり書かれていたのだから。

 

 一方で、それだけしか(・・・・・・)書かれていないことにも気づいていた。無事に(・・・)保護されたとは彼は思っていなかった。KIA扱いの人間が無事に戻れた事例は非常に少ないし、無事だったら普通はその旨を報告書に書くものだ。そう書けなかったということは、それだけの事情があったということに他ならない。

 

 そして、カリギュラという非常に強力なアラガミの存在と、アラガミ反応と共に移動している腕輪の反応。加えて、そもそもの問題である妙にハイレベルの閲覧制限の理由を考えれば。

 

「待ってください……! 凄惨な状態で、かろうじて生きている状態で発見されたから……! だから、閲覧制限がかかっていたということじゃないんですか……?」

 

「そうよね。腕輪の反応と一緒に動くアラガミ反応に、無事に保護されたとは一言も書かれていない報告書。【桜田チハルの容態について】なんて項目もあるのだから……誰だってきっと、そう思う。だから(・・・)閲覧制限を掛けたんじゃないかって、この概要だけを見れば、そう察する」

 

 けど、そうじゃないの──と、彼女は淡々と告げた。

 

「そもそも、ミッション発行時は未知のオラクル反応という表現を使っている──つまり、最初からカリギュラではないことはわかっているの。作戦の目的についても、桜田チハルの保護と合流としている。これってなんだか……本人が生きているって確信しているみたいじゃない? 未知のアラガミ反応が一緒なのに、どうしてそんな表現を使っているのかしら……?」

 

「それは……まだはっきり決まっていない段階で、後ろ向きな表現を使うのは憚られたからなのでは」

 

「既にKIA扱いなのに? 無残に死んでいる可能性の方が高いのに、無駄に希望を持たせるのは残酷なことのように私には思えるのだけれど……」

 

「……」

 

「アナグラの人たちが、そんな人たちでないと私は信じたいわ……」

 

 この時点で、彼の頭の中には困惑が満ちていた。極東支部──アナグラの神機使いは最前線でアラガミを狩る、凄腕の神機使いばかりのはずだ。妙にきな臭い噂の絶えないフェンリル本部とは異なり、政争や後ろ暗いところなんてないはずの、現場主義の実力派が揃っている支部であると──そう思っていた。

 

 なのにどうして、こんなにも不穏で奇妙な出来事が罷り通っているのか。

 

「じゃあ……じゃあどうして、桜田チハルが生きているかのような表現を……」

 

「腕輪のバイタルが確認されたからじゃないかしら?」

 

「……あ」

 

「単純な話よ、ジュリウス……。あなた、ちょっと疲れているのかしら? いったん座って、一緒に紅茶でも飲みましょう?」

 

 呆然とする彼をよそに、彼女は慣れた手つきで紅茶の準備を進めていく。まずはお湯を沸かし、次に茶葉を用意して。

 

 そして──彼女が車椅子から半ば身を乗り出してティーカップを取ろうとしたところで、ようやく彼は我に返った。

 

「私がやります」

 

「あら。ありがとう、ジュリウス」

 

 そうして、しばらく無言のまま二人の時間は過ぎていく。やがて、彼の淹れた紅茶が彼女の前に置かれ、そして彼も椅子に腰を落ち着けたところで──紅茶を一口飲んでくちびるを湿らせた彼女は、話を続けた。

 

「最初から、アナグラの人たちは桜田チハルが生きていることを理解していた。それはきっと間違いない……とすると、気になってくることがないかしら?」

 

「……桜田チハルと共にあった未知のアラガミの反応、ですね。カリギュラで無いのはもちろんとして……桜田チハルを喰い千切って腕輪を腹に入れていたわけでもない。順当に考えれば、これの正体は……【スプリング・フェスティバル】の報告書にあった、新種の白いアラガミでしょうか」

 

「ええ、私もそう思うわ。実は……そもそも桜田チハルがKIAになったのは、ミッション中に想定外の強大なアラガミに襲われたからって理由なのだけれど……」

 

 つい、と画面に表示される【新人指導実地訓練:死亡事故に関する報告書】。こちらは閲覧制限は設けられておらず、その詳細を全て確認することができた。

 

 内容としては、悪い意味でよくあるもので──ミッション中に発生した通信障害のためにアラガミの接近に気付くのに遅れ、仲間を逃がすために囮となった桜田チハルが神機を遺して行方不明になったというものである。

 

「ランク6相当のアラガミ七体に囲まれた……ですか。本来であれば、少尉以上の階級の人間が部隊を組んで対応する相手ですね。正直な所、上等兵が時間稼ぎをできただけでも奇跡的なように思えますが」

 

「ええ。きっと、とっても仲間想いの良い娘なのでしょうね……。それより気になるのは、この七体の行方のほう。戦闘の痕跡から、大半は救援部隊が到着した時には既に死んでいた……ということだけれど」

 

「『ヘリコプターの操縦士および榎本ケイイチの両名が未確認のアラガミの雄叫びを耳にしている』……おそらくこれが、新種の白いアラガミの仕業ということでしょうか」

 

「……どう思いますか?」

 

「ふむ……おそらくは、間違いないかと。そうでもなければ上等兵がこの状況を打開できるとは思いません。推測でしかありませんが、この七体自体は白いアラガミが倒して……どういうわけか、その白いアラガミは桜田チハルを生きたままその場から拉致した」

 

「私もあなたと同じ見解です……ここで重要なのは、【白いアラガミが桜田チハルを生きたまま拉致したこと】と、【白いアラガミはすさまじく強大な力を持っていること】の二点だと私は考えます。そのうえで……先ほどの、【スプリング・フェスティバル】の報告書に改めて戻って考えてみましょう」

 

 死亡事故の報告書が画面から消えて、目次と概要だけしか書かれていない報告書がモニターに映し出される。映し出されたそれそのものは先ほどと全く変わらないが、今の彼にとっては、それは先ほどとは全く異なるもののように思えた。

 

「まず気になるのは、【白いアラガミについて】という項目があることでしょうか。妙に詳しく項目立てされていますが、普通だったらここには簡易的な説明のみに留めて、別途報告書を作成するものだと思いますが」

 

「そうじゃないと検索性も悪くなるし、詳しく説明しているのに非公開にする意味も分からない。それとも私が知らないだけで、神機使いであればその理由が分かったりするのかしら……?」

 

「いいえ……むしろ、不確定な情報であろうと積極的に発信してほしい、というのが我々現場の人間としての本音ですね。実は、新種の報告書に閲覧制限が掛かること自体はそんなに珍しくないのです」

 

「あら、そうなの……?」

 

「ええ。とはいえ、理由としては大したものでは無く、その多くは【まだ十分な調査ができていないため、内容がまとまった段階で公開する】といったものでありまして。調査の結果、新種ではなくただの奇形や見間違いなどで報告自体が白紙になることも多く、その気持ち自体はわからなくもないのですが」

 

「へえ……それは初めて聞いたけれど……それを閲覧制限の隠れ蓑にした可能性もあるのね」

 

「……先生は、他の何かが見えているのですか?」

 

「紅茶を飲んで、ゆっくりと考えてみましょう?」

 

 促されるまま、彼は少し温くなった紅茶に口をつける。香りはいくらか飛んでしまっているもの、それでも心を落ち着けるには十分なものであり、ゆっくりと喉を湿らすだけで頭の中が少しずつ、少しずつクリアになっていくのがはっきりとわかった。

 

「……ミッションの結果が、おかしい?」

 

 彼女は、ティーカップを持ったまま静かに笑った。

 

「最初はカリギュラの腹の中にある腕輪の回収任務だと思っていましたが、その可能性は先ほど否定された。であれば、桜田チハルを拉致した白いアラガミの討伐任務と考えるべきのはずなのに……討伐したとは、どこにも書かれていない」

 

「白いアラガミについてやたらとクローズアップしているのに、【発見した】としか書かれていない。40体を超える中型種の討伐もすごいことではあるけれど……それを一番に書く必要はないし、カリギュラの事なんて全く触れられていない。……ええ、本当に不思議というか、どこか奇妙でちぐはぐですよね」

 

「真っ当に考えるなら、白いアラガミと戦闘を行って彼女を取り返すには至ったものの、討伐するには至らなかった……となりますが。しかしそれだと、閲覧制限を掛ける意味がやっぱりわからない。ましてや彼らは激戦区で戦う精鋭たちだ。強大な相手を取り逃したと言うならなおさら、情報の共有はしようとするはず」

 

 どうして、白いアラガミについて不自然なほどに触れられていないのか。これではまるで、ミッションの本当の目的をあえてわかりにくく記載しているようではないか。KIA認定の人物の保護という奇跡的な出来事ばかりに目が向いて、本来報告書として報告すべき──神機使いの知見として共有すべき大切なことが、隠されているようではないか。

 

 彼の中に、そんな疑惑が沸き上がり──そして彼のそんな気持ちを感じ取ったのか、彼女は一つ、助け舟を出した。

 

「ねえジュリウス。私が気になった違和感は、もう一つあるの」

 

「もう一つ、ですか?」

 

「ええ──ミッション参加者を見てもらえる?」

 

 ミッション参加者。読んで字のごとく、そのミッションにアサインされたメンバー。先ほどはチラッと目を通しただけのそれを、彼は改めてじっくりと見てみた。

 

「三部隊の合同任務……ですが、雨宮リンドウ少尉にソーマ・シックザール少尉、さらには藤木コウタ少尉……クレイドルの面々が揃っていますね」

 

「あら、知っているの……?」

 

「神機使いで、雨宮リンドウとソーマ・シックザールを知らない人間はいませんよ。旧くの時代から今なお最前線で戦い続けている神機使いですから。最近、クレイドルという独立支援部隊を立ち上げたというのは何かの資料で目にしましたが」

 

「そんなクレイドルが、なぜかこのタイミングで極東に揃っているのも少し出来過ぎな気はするけれど……私が気になるのは、この部隊編成そのものなの」

 

「そうですか? 強大なアラガミと戦うために、クレイドル同士……熟練者を固めたというように、私には思えますが」

 

「そうよね──だから(・・・)不思議なの」

 

 紅茶を一口飲んで、彼は改めて彼女の発言を考えてみる。

 

 仮想敵は、強大な力を持つ白い新種のアラガミ。このミッションに参加しているメンバーの中で、他にそんな強敵と戦えそうなのは階級が少尉である真壁ハルオミくらいしかいない。そうなると、人員の配置としてはこれが最適であるように……少なくとも、彼にはそういう風に思えた。

 

「片桐2番隊にいる、新兵二人。藤木少尉は、普段は第一部隊として彼らとチームを組んでいるという話なの。なのにこのミッションだけ、普段のチームを割いてまで雨宮1番隊に配置されている」

 

「ですからそれは……白いアラガミを倒すために、熟練者を固めた結果というだけでは?」

 

「それが本当の目的なら。それほど危険なアラガミの出現が予測されるミッションに、どうして新兵が四人も参加しているのかしら?」

 

「……!」

 

「人手不足、というのはあるかもしれないけれど。死亡事故の報告書では、ミッション参加資格者がいなかったために救援が遅れたとあったわ。……つまり彼らには、人命の危機という非常事態であっても無茶な出撃はできないという認識が根付いている」

 

 ティーカップをゆっくりとソーサーの上に戻して。

 

 彼女は穏やかに微笑んだ。

 

「ねえジュリウス──本当に、不思議な話だと思いませんか?」

 

 彼女の言葉と共に彼の心の中に広がっていく違和感。いや、違和感というよりもこれは、不信感と表現したほうが正しいだろう。

 

 何の変哲もないはずのミッション参加メンバーの一覧。ただの文字の羅列でしかないそれが、今の彼にはどこか薄気味悪く、何か得体のしれないもののように思えてならない。つい先ほどまでは気にも留めなかったそれらが、何か怪しい呪いでもまき散らしているのではないか──こんな不穏なものにまるで気づかなかったこと自体が、彼には信じられなかった。

 

「た、確かに……でも待ってください、そうするとこの片桐2番隊もおかしいです。クレイドルを集めないといけないほどの危険な任務なのに、上等兵が隊長になって二人の新兵を率いるというのはあまりにもリスクが大きすぎる!」

 

 少なくとも、彼ならそんな判断は下さない。仲間の命が最優先で、こんなにも無茶なミッションが発行されたらその時点で抗議の声を上げることだろう。

 

「熟練者を固めなきゃいけないほどのミッションなら、こんなことはできない。上等兵に部隊長を任せられるミッションなら、熟練者を固める理由がない……! つまり、この配置には何かしらの隠れた意図がある……!」

 

「ふふ。やっぱりあなたに相談して正解だったわ……ねえジュリウス、この場合、どちらの方に違和感があるのかしら?」

 

 奇妙な高揚感に包まれたまま、彼は落ち着きを取り戻そうとティーカップを持ち上げる……も、その手は予想外に勢いよく空を切る。どうやら、自分でも気づかないうちにすっかり紅茶を飲み干していたらしい。彼のそんな様子を、彼女はくすくすとおかしそうに笑って見つめていた。

 

「まず……真壁3番隊は問題ないと思います。真壁隊長の階級は少尉で、新兵を率いるのも頷ける。……言い方を変えれば、入って数か月の新兵をアサインできる程度には簡単なミッションだと言うことなのでしょう」

 

「……」

 

「それを踏まえると、おかしいのはクレイドルで固めた雨宮1番隊ということになります。総合的な戦力の分配という意味では、やはり上等兵ではなく少尉以上が隊長となるべきです。ましてや普段チームを組んでいるというのならなおさら……片桐2番隊ではなく、藤木2番隊とすべきだった」

 

「……」

 

「先程も述べた通り、我々神機使いの間で雨宮リンドウを知らない人間はいません。それは、彼と共に出撃した人間の生還率が90%以上という非常に高い数値であるためです。フェンリル随一のこの数字であれば……彼の指揮能力であれば、片桐キョウヤを部隊に組み込んだところで何ら問題はない」

 

 なのに、雨宮1番隊はクレイドルの人員で固めている。客観的に考えればなんてことのないはずの簡単なミッションであるのに、熟練者を……それも、あのクレイドルを固めて臨まねばならないほどの何かがあった。

 

「どういうことだ……? 白いアラガミを討伐するという意味では、部隊編成の意味が分かるのに……それ以外の情報を総合すると、このミッション自体が簡単なものだったということになる。いや、そうじゃなくて……【簡単なミッションである】ということと、【白いアラガミの討伐】という前提が両立している……のか?」

 

「……ここで、先生が特別にヒントをあげましょう」

 

「……ヒント、ですか?」

 

「ええ。極東には【人の口に戸は立てられぬ】という言葉があります。閲覧制限こそかかっていますが、調べればちょっとだけ……ほんの少しだけ、わかったこともあるのです」

 

「……なんでしょうか、それは」

 

 内緒にしてくださいよ──と穏やかに笑いながら、彼女は告げた。

 

「事前に決められていた、この三部隊の役割です。部隊を三つに分けての殲滅作戦だったのですが、片桐2番隊は活路を切り開く陽動部隊、雨宮1番隊は陽動の隙に桜田チハルを保護する主力部隊、そして真壁3番隊が退路を確保しつつ支援する後方部隊であったそうです」

 

「それは……明らかに違和感がありますね」

 

 少し考えればすぐに気づける違和感。あるいは、彼だからこそすぐに気づけたというべきか。

 

「この中で最も危険なのは陽動部隊です。白いアラガミとの戦闘を抜きにしても、本来であれば上等兵にさせるべきじゃない。強大なアラガミと戦う準備をしていたと仮定するなら、片桐2番隊は雨宮1番隊の力を温存させるための捨て石と捉えるべきですが……それもありえない」

 

「……それは、どうして?」

 

「片桐2番隊にはフォーゲルヴァイデ家の御令嬢とシュトラスブルク家の御令息がいます。フェンリル傘下企業の財閥の人間に、そのライバル関係にある名門財閥……実態は知りませんが、フェンリル本部からしてみれば非常に重要な人間であるはずです。感情を一切排除して、捨て石という可能性を考えたとしても……損失の方が大きすぎる」

 

「加えて二人とも、極東では初となるポール型神機のテスターでもあります。もし捨て石にするなら……私だったら、真壁3番隊にいる新兵の二人を片桐2番隊に組み込みますね」

 

 もちろん、仮定の話ですけれども──と穏やかに笑って、彼女は紅茶のお代わりを淹れた。

 

「しかしそうなると、やはりこのミッションの危険性は高くないと判断されていた……? しかし、白いアラガミが強力なアラガミであることは彼らも理解していたはず……そんなアラガミと遭遇する可能性があるのに、どうして片桐2番隊が陽動部隊に選ばれたんだ……?」

 

「……もう一つだけ、優しい先生がヒントを上げましょう」

 

 ほわりと鼻腔をくすぐる良い香り。気づけば彼のティーカップに、彼女が新たな紅茶を注いでいた。

 

「先程のあなたのお話……【簡単なミッションである】ということと、【白いアラガミの討伐】という前提。これをもっと、偏見をなくした素直な気持ちで考えて見ない?」

 

「…………」

 

「ええ、そうなの。ただ純粋に事実だけを受け止めるの。科学者が道から外れてしまうのは、いつだって自分の余計な偏見のせい。事実を事実のまま、その通りに受け取れば……きっとそれが、答えになる」

 

「……まさ、か」

 

「……自分でも信じられないの。だからこそ、あなたを呼んで確かめたかったの」

 

 彼の中に浮かんだ、突拍子もない一つの考え。辻褄だけは合うが、辻褄しか合わない……そんなことを口に出せば、即座にメンタルケアを受けることを強制されるような、あまりにも荒唐無稽なその事実。

 

「まさか……彼らは、そもそもこの白いアラガミを討伐する気なんて最初から無かったのか? いいや──」

 

 彼のその言葉を聞いて。

 

 彼女は、静かに微笑んだ。

 

 

 

「──彼らはこの白いアラガミが、人を襲わないと確信していたのか?」




 ラケル先生がふとした拍子に見せるママ感がとても大好きです。あと何気にジュリウスと話すときは、ほんの少しだけ口調が砕けることがあるんですよね。

 ちなみにブラッドの全員に対し愛情をもって接し、母親のように振舞っているラケル先生ですが、公式設定で【年齢不詳】となっています。レア先生が28歳なので、ラケル先生も二十代半ばくらいだと思われますが、ここでブラッド隊の面々の年齢を確認してみると……。

ジュリウス:20
シエル  :16
ロミオ  :19
ナナ   :17
ギル   :22

 ……後方姉面ならまだしも、後方ママ面するにしては少々年齢が近すぎる気がしなくもないです。マグノリア=コンパス出身で幼少期からラケル先生を知っている人はともかく、ギルに至っては【最近出会ったばかりの3~4つ上のお姉さん(事実上の上官)がいきなりママ面してきた】ということになるので、かなり気恥ずかしいでしょうね。
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