GOD EATER:救雷の神鳴   作:ひょうたんふくろう

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53 極東のアラガミに関する諸調査(ミッションコード:7406CO002)

 

【極東のアラガミに関する諸調査】

 

◇ミッションコード

 7406CO002

 

◇ミッション目的

 作戦エリア内に出現するアラガミの種属調査および生態調査などの諸調査。

 

◇ミッション概要

 神機兵の無人制御に用いるアラガミの行動原理の解析データを構築するため、作戦エリア内に生息するアラガミの生態調査、分布調査、多様性調査などの諸調査を実施する。なお、データ収集及び測定には専門的な知識および能力が必要とされるため、本ミッションには調査員として非戦闘員が同行する。本ミッションに参加する神機使いには彼らの護衛も求められることに注意されたし。

 

 ※本ミッションには、調査依頼元であるブラッド隊が共同参加します。

 

◇ミッション参加者

 

・極東支部

 雨宮リンドウ(少尉/クレイドル)

 ソーマ・シックザール(少尉/クレイドル)

 藤木コウタ(少尉/クレイドルおよび第一部隊/第一部隊隊長)

 アリサ・イリーニチナ・アミエーラ(少尉/クレイドル)

 片桐キョウヤ(上等兵)

 桜田チハル(上等兵) ※

 ペイラー・榊(支部長/アラガミ技術開発統括責任者)

 

・フェンリル極致化技術開発局

 ジュリウス・ヴィスコンティ(大尉/ブラッド/隊長)

 神威ヒロ(上等兵/ブラッド/副隊長)

 ギルバート・マクレイン(曹長/ブラッド)

 ロミオ・レオーニ(上等兵/ブラッド)

 香月ナナ(上等兵/ブラッド)

 シエル・アランソン(上等兵/ブラッド)

 レア・クラウディウス(開発室長)

 ラケル・クラウディウス(副開発室長)

 

 

 ※神機使いではなく、オブザーバー(アシスタント)としての参加。

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

「なんか……すごいことになっちまったな……」

 

「友好的で、ある程度意思の疎通が出来るアラガミかぁ……ホントにそんなの、いるのかな?」

 

「にわかには信じがたいですが、事実なのでしょう。そうでもなければ、隊長とラケル先生のあの態度には説明がつきませんよ」

 

 エイジスへと至る地下通路。ブラッド隊の四名──ヒロ、ロミオ、ナナ、シエルは神機を片手に、周囲を軽く警戒しながらもその少々薄暗い道を進んでいた。

 

 歓迎会から一夜明けて。【ヒトを襲わない、ある程度意思の疎通が出来るアラガミ】という特大級の爆弾がもたらしたショックは、それはもう凄まじいものであった。そんなのブラッド隊であっても見たことも聞いたことも無いし、そんな事実を歓迎会の席でさらっと明かされたのもそうだし、その事実をラケルとジュリウスだけが掴んでいた……要は、チームのみんなには秘匿されていたのも、そのあと普通に何事もなく歓迎会が続行されたのも。

 

 そう、あの時起こったおよそ全ての出来事が理解の範疇を超えていたと言って良い。そうでもなければ、隊長からの直々の命令にこうして半信半疑でいることもなかったことだろう。

 

「ヒロぉ。俺よくわかってないんだけどさ、なんでジュリウスやラケル先生は俺達に内緒にしてたんだろ……?」

 

「んー……たぶんだけど、ジュリウスも半信半疑だったからじゃないかな。あとは、きっと……」

 

「きっと?」

 

「……最初は、極東の人たちが悪い人たちだと思っていたんだと思う。隠れてこそこそアラガミの実験をしていたわけだし、少なくとも良い印象は抱いてなかったはずだよ」

 

「あー、そっかあ。……でも、それって駄目なことなんだっけ?」

 

「……フェンリルに対して隠蔽工作を行ったという意味では、規律違反と成り得ます。ただし、そもそも報告義務があったかと言われると……難しいところがありますね」

 

 本来報告すべきことを報告しなかったというのであれば、アナグラがやったことは間違いなく違反行為となる。しかし、今回の件については報告義務そのものがない──より正確には、そんな事態なんてそもそも想定されていないわけだから、何かルールを破ったとも言えないというのが実情だ。

 

 有益な情報を秘匿、独占していると言われればそれまでだが、そんなのどこの支部でも大なり小なりやっていることだし、フェンリル本部はより大規模かつ顕著に、情報や資源の独占をしているのだから、アナグラだけが非難される謂れはないだろう。

 

「じゃあジュリウスは、本当にアナグラの人たちが悪い人たちなのか、実際に目で見て確かめようと思ってたってこと?」

 

「たぶん……だから、あんな風な言い方をして、あんな風にピリピリしていたんだと思う」

 

「……私が言うのも何だけど、ジュリウスってちょっと不器用?」

 

「どっちかって言うと、生真面目すぎるってだけ……かも?」

 

 ともあれ、ギルのファインプレー(?)のおかげで、早々に状況は公開、共有されることになったのは事実である。良くも悪くもすべてがつまびらかになったたため、こうしてヒロたち四人は実際にその話題のアラガミを確認するべく、エイジスに向かっているというわけだ。

 

「でも、お酒って怖いのな……俺、ギルのあんな顔初めて見たもん。【酔ってうっかりやらかしちまった】って顔に書いてあったというか」

 

「うんうん。でも、改めて振り返ってみると別にやらかしたわけでもなんでもなくない? それより、ジュリウスの眉間に皺が寄っていたというか、なんか胃のあたりを押さえていたのが私は気になったかな」

 

「…………今から思えば、隊長の心労は察するに余りあります」

 

 きっと自分たちが知らないところでいろいろな気苦労を背負い込んでいたのだろうと、この場にいる四人全員が全く同じことを思った。

 

「まぁでも……極東の人たちは、良い人たちだったよね?」

 

 何気ないヒロのつぶやき。おそらく最もジュリウスが気にしていて、そして最も重要であろうその事実。

 

「うん! ご飯も美味しいし、天国みたいだった!」

 

「コウタ隊長とはめっちゃ話が弾んで、すっげ―盛り上がったし!」

 

「か、可愛いカピバラもいました……!」

 

(あと、ギルがうっかりするくらいには酒も美味しかったらしい……と)

 

 三者三様の答え。なにやらちょっとベクトルが異なる気がしないことも無いが、三人ともが極東に対して悪い印象を抱いていない。短い時間だったとはいえ、現場を知る神機使い同士で話が弾んだのは言うまでもなく、そして彼らは間違いなく暖かく自分たちを迎え入れてくれた。

 

 であれば──ジュリウスが懸念しているようなことは起きえない。起きえないというか、ただの杞憂で終わる問題となる。少なくとも、ヒロは自分で見た光景が嘘だとは思えなかったし、極東の人間たちを信じたいと思えた。

 

「……よし! じゃあ、改めて任務の確認をしようか」

 

 気持ちを改めて切り替えるために。

 

 ヒロは、現在分かっている情報──そして、ジュリウスから通達された任務を諳んじた。

 

「俺達の今回の任務は、ヒトを襲わず、意志の疎通が出来るアラガミ──ルーの調査をすること。ラケル博士が実際にルーと触れ合ってみたいって希望しているから、それに先立ち本当にルーが危険でないかを確認するのが役目だ」

 

 ルーが危険でないというのはアナグラの調査によってわかりきっている事実ではある。ただ、だからといっていきなり超重要人物であるラケルをその場に立ち会わせていいはずがない。だからまずは、戦闘力があって万が一にも備えられるヒロたち四人が、実際にそのアラガミの様子を確認すると言うことになる。

 

「ルーっていうアラガミは、白いガルムのような見た目らしい。風貌こそ恐ろしいものの性格は穏やかで人懐っこく、人間の指示を高い精度で理解し、実行するほど知能が高い……って話だよ」

 

「神機を持つのも万が一のため……ルーに対する警戒というよりかは、エイジスに群がるアラガミに対して、ですよね」

 

「うん。そのアラガミも、ルーが食べちゃうから最近はめっきり見かけなくなったって話だけど」

 

 食性は間違いなくアラガミのそれなのに、ヒトだけは決して食べず、襲わない。ヒトに対する思いやりもあり、ヒトを背に乗せて走り回ったり、顎の下を撫でられて喜ぶ姿すら見せるという。

 

 そんな人間染みた行動をするルーだが、それ故にほんの少しばかりの問題もある。

 

「次に、このメンバーの選定理由だけど……ルーは人に対する好き嫌いがあるらしいから、それを考慮した結果だね」

 

「アレだよね、女の子にはすぐ懐くけど、男の人には懐きにくいってやつ」

 

「そうそう。これも主観的な話になるけども……ルーと一番仲が良いチハルさんの見立てでは、シエルとナナは【文句なしで好かれるタイプ】、俺とロミオは【普通に可もなく不可もなく】って感じで」

 

「ジュリウスとギルが【ちょっと苦手なタイプ】かもって話だもんなあ。……なんか、わかるよーなわからないよーな」

 

 女の子であればほぼ例外なく最初からかなり好感度が高く、その後の親密度も明らかに高くなりやすい傾向がある。一方で成人男性の場合はあまり興味を示さず、自分から積極的に関わろうとしない。指示には普通に従うものの、遊びとしてじゃれついたりスキンシップを図ったりといった行動はほとんど見せないという。

 

「女子供を守るべき対象として見ていて、逆に男はそう思っていないからそんな態度をとるって話だけど……でも、コウタさんは割と最初からそれなりに仲が良かったみたいだし、全く逆のタイプのソーマさんやリンドウさんもチハルさんより反応が悪かったってだけで、普通に触れ合えたらしい」

 

「【一番嫌われている俺でさえ、そっぽ向かれたり尻尾であしらわれたり鼻でどつかれるくらいで済んでる】ってキョウヤは言ってたけど……アラガミにどつかれるってヤバくないのかな……」

 

「手加減してるってことでしょうね。……隊長とキョウヤが同じタイプには思えませんが、チハルが【苦手なタイプ】と判断した根拠は何でしょうか?」

 

「ルーは甘えん坊の男の子みたいだから、大人の男の人には嫉妬に近い感情を持つかもしれない……って」

 

「……それは、なんとも」

 

「他にも細かくいろいろあるみたいだけどね」

 

 ちゃらちゃら、ヘラヘラしているタイプであるキョウヤが最も友好度が低いとして。比較的似たタイプであるハルオミについてはなぜかコウタと同程度の友好度であったりする。ちょっと不思議に思えるが、チハルを始めとしたアナグラの人間によると【なんとなくわかる】ということで意見は概ね合致しており、ルーを知るものであれば、誰に聞いても「なんとなくこの人の初期友好度はこれくらいである」という予想は概ね同じになる。

 

 そのうえで、ジュリウスとギルについては今までアナグラに似たタイプの人間はいなかった。【少なくともキョウヤより低いってことはない】とチハルを始めとした誰もが言うのでそこについては問題ないはずだが、【ロミオやヒロより高いとは考えにくい】という意見も多かったため、最初に接触を図るメンバーはこの四人となったのだ。

 

「チハルさんたちは先行して、ルーに俺たちが来るのを伝えている。ジュリウス、ギル、ラケル博士、レア博士……あと、榊博士が後からヘリで合流。合流するかどうかは俺達からの報告次第になるけど、これはもうほぼ確定だろう……って、極東の人たちはみんな思っているみたいだね」

 

「よっぽど信頼されているというか、アラガミなのに人と同じように話が通じる前提で扱っているよなあ。俺、アラガミの話をしているとは思えないんだけど」

 

「意思の疎通が出来るアラガミ、ですもんね……。これがサリエルやシユウのような人型のアラガミならまだわからなくもないのですが、ガルムのような見た目でこちらの意図を理解するというのは、あまり実感がわかないです」

 

「だよねー。……そう言えば、大きさってどんなものなんだろ? 手懐けられるくらいだし、小型のアラガミなのかな? オウガテイルくらいなら人も乗せられるよね?」

 

「ヴァジュラより二回りは大きいらしいよ」

 

「「えっ」」

 

「まずはシエルとナナから接触することになるから、よろしくね?」

 

 ヴァジュラよりも二回りも大きいとなると、そこらのアラガミの大半よりも大きいと言うことになる。いくら人懐っこい性質を持つとはいえ、予備知識も何もなしにそんなアラガミを手懐けることが出来た桜田チハルはいったい何者なんだ──と、ヒロは改めて思った。

 

「そうだ、接触で注意することが一つあったね……まだ事例は一つしかないけれど、ルーとの物理的接触で感応現象が起こる可能性があるらしい」

 

「アリサ・アミエーラ少尉の件ですね。彼女の場合、ルーとの接触によりチハルに対する著しい庇護欲……いいえ、母性の発現が確認されたそうですが」

 

「うん。元々あった母性が喚起されたのか、それともルーが持っていたものを感応現象で共有してしまったのかはわからないらしいけど……ブラッド(おれたち)は《血の力》という別種の感応現象を使えるわけだから、念のため注意したほうが良いらしい」

 

「あのさー……私、母性が喚起されるって言われてもいまいちピンとこないんだけど……つまりそれってわかりやすく言うと」

 

「うん?」

 

「ルーに触れるとママになっちゃうってこと?」

 

「そうなんだけど、なんかヤだなその表現……」

 

 まだたった一つだけしか事例が無いが、ルーと感応現象を起こしたアリサは、チハルに対する明らかに普通ではない関心──具体的には、庇護欲を示すようになった。それは感応現象によりチハルが泣き叫ぶ姿を見てしまったためだと言われているが、それだけでは説明がつかないほどに、彼女の行動傾向は変わってしまった。

 

 具体的には、まるでチハルの母親であるかのようなふるまいを見せるようになった。ただ、それもあくまで程度問題であり、何も自分のことを本当に母親だと思っているわけではない。女の子同士のスキンシップならあり得る範囲のレベルで、今までよりも明らかにその傾向が強くなったというだけだ。

 

「実害はない……ないんです、よね?」

 

「チハルさんがひたすらに気恥ずかしい思いをするくらい、だね。母性を喚起された側……アリサさんの方は、気恥ずかしい思いよりも世話を焼きたい気持ちの方が上回っているらしいよ」

 

「母親なら普通……なんでしょうか?」

 

「…………わかんないけど、多分そうだと思うよ」

 

 ともあれ、これで任務についてのおさらいは完了だ。これ以上は実際にルーをその目で見て確認するしかないだろう。

 

 エイジスまでの一本道であるこの通路も、あと十数分も歩けば終わりが──出口が見えてくる。ロミオも、ナナも、シエルも……この場にいる誰もが未だに半信半疑の中で、その時は確かに、しかし確実に近づいてきていた。

 

「……そうだ、最後にひとつだけ」

 

「ん? まだなんかあるのか、ヒロ?」

 

「──これ、貰ったんだ」

 

 ヒロがポケットから取り出したのは──オレンジ、ピンク、緑、そして白いバンダナだった。

 

「朝食が終わって、エントランスで公共放送をぼーっと見てたらさ……チハルさんがわざわざこれを渡しに来てくれたんだ」

 

「え……これ、バンダナ?」

 

「うん。なんでも、ルーはバンダナを着けている人間を友人だと思う傾向があるらしい。別に報告書に書くほどのものじゃないらしいけど、『あの子と一番仲が良い私が言うんだから間違いないよっ! 絶対着けておくべきだよっ!』って、チハルさんがわざわざ全員分用立ててくれたんだ」

 

「えっ、俺帽子(コレ)被ってるんだけど脱いだ方が良いのかな?」

 

「腕に巻くのでも、首に巻くのでも何でもいいらしいよ? 何なら着け方もたくさん教えてくれたし、アレンジも色々教えてくれた……あと、色が気にくわなかったら他のをあげる、シンプルな柄のしか用意出来なくてごめんね……って言ってた」

 

「なるほど……何か視覚的にわかりやすい特徴を以って判別を容易にしている、というわけですね。そして同族であると認識させることで、友好度を高めやすくさせているということですか」

 

「……そうなのかあ?」

 

「……なーんかアヤシイ、ような?」

 

「ま、まあ……第一人者が言うことだし、着けて損は無いはずだよ」

 

 ──まさか、バンダナ仲間を増やしたいだけってことはないだろうし。

 

 心の中によぎったそんなバカバカしい考えを振り払って。この後すぐに訪れるであろう衝撃的な光景に対して気を引き締めるように、ヒロはその真っ白なバンダナを額にきゅっと結び付けた。




 ブラッド隊メンバーの階級については適当です。調べてみたのですが、ジュリウス隊長以外はよくわかりませんでした(ゲーム本編に記載があったようななかったような……?)。極東到着直後なのでゲーム本編におけるミッションとしては難易度2であり、シナリオクリアの難易度6で主人公の階級が少尉になることを考えると、単純計算で上等兵くらいかなって思いました(それでも入隊数か月で階級があがっているわけですが)。

 なお、ギルは既に五年のキャリアがあるので曹長くらいだと思ってます。

◇階級についてはこんな感じのイメージ◇
新兵  :難易度1~  教育訓練中。
上等兵 :難易度2~  キャリア1~3年くらい。一般神機使いとしては難易度3くらいの実力?
曹長  :難易度4~  キャリア4~6年くらい。極東の一般神機使いの平均はこれくらい?
少尉  :難易度6~  シナリオクリア時点。ネームドキャラレベル。
中尉  :難易度10  最終ミッションクリア後(最終階級)。
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