GOD EATER:救雷の神鳴   作:ひょうたんふくろう

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63 滅びの奇知(前)

 

「ラケル博士は──終末捕喰を起こそうとしているのかもしれない」

 

 

 

「…………は?」

 

 ビールを飲もうとしていたことすら忘れて。缶を持ったまま固まってしまったリンドウは、自分でも気づかないうちに口の端からそんな間抜けな声を漏らしてしまった。

 

 ラケルが嘘をついていた。これはまぁいい。

 ラケルがルーを最初から知っていた。これもまぁわかる。

 ラケルの裏金がとんでもない金額であるのも理解できるし、その裏金を使って何かを企んでいるらしい……というのもまた、分からなくはない話だ。

 

 だけれども。

 

「……もう一回」

 

「ラケル博士は、終末捕喰を起こそうとしているのかもしれない」

 

 改めて耳に飛び込んできた、その言葉。どうやらリンドウは自分でも気づかない間に酷く酩酊してしまったか、あるいは目の前にいる榊がとうとうトチ狂ってしまったらしい。

 

 そうでもなければ、いったいどうしていきなり終末捕喰だなんて単語が出てくるのか。

 

「……一つ一つ、教えてくれ」

 

 あまりにも突拍子のない事を言われると、却って頭が冷静になるというか、以前ほど衝撃で心を揺さぶられることもない。知りたくなかったそんな事実を知ってしまったリンドウは、手に持っていた缶ビールを机の上においてから榊に続きを促した。

 

「ルーくんの正体が、私はずっと気になっていた。前にも言ったが、ルーくんは我々の内情を知っているかのような動きをしている。それはフェンリル関係者でしかわからないことのはずで、だからアラガミ化した元人間なのではないか……と、キミだけに相談した」

 

「だけど、殉職した神機使いも、アラガミ化の報告もなかったって、あんたは……」

 

「ああ、確かにそういった。そもそも、元人間説はある意味では私の願望に近い。可能性の一つではあるが、そうだと決めつけて推論するのは非常に危険だ」

 

 だから、この話は榊とリンドウの間だけでしか共有されていない。チハルを含めたアナグラメンバーやフライアのメンバーには、あくまで知能が高い新種のアラガミである……心を感じることが出来るアラガミであるという説明をして、それを公的な見解とした。

 

「だけど」

 

「……ん?」

 

「もう一つだけ、あるだろう? それも、神機使いならざる存在であってもアラガミ化する手段が」

 

「はぁ? 普通の人間がアラガミ化? そんなの……あっ!?」

 

 言ってる途中で、リンドウは気づいてしまった。

 

 オラクル細胞の暴走によるアラガミ化。人間がアラガミになってしまうのだとすればそれしかない。適合試験の失敗によるものか、あるいはかつての自分のように、戦闘中に腕輪を失い体内のオラクル細胞の制御が出来なくなった場合など。一度アラガミ化が始まってしまえばそれを止める手立てはなく、変わっていく体と地獄のような飢餓感に塗りつぶされていく意識に怯えて、ただ静かにその運命を受け入れるしかない。

 

 だけど、それ以外のアラガミ化の事例が……たった一つだけ、ある。

 

 それも、その手法の場合はオラクル細胞の有無は関係ない。

 

「アルダノーヴァ……! 人造アラガミか!」

 

 かつて、神薙ユウを始めとした第一部隊が立ち向かったそのアラガミ。月の緑化現象……つまり、三年前の終末捕喰に非常に関係のあるアラガミであるわけだが、その正体は人工的に製造された──人間の手によって生み出された存在(かみ)である。

 

 当然、ただのオラクル細胞の塊が生物として動くわけがない。その脳ミソとでも言うべきものに使われている……いいや、中身(・・)は。

 

「アレは前支部長が……普通の人間が元になったアラガミだ……!」

 

「その通り。あの人造アラガミは乗り込んだヨハン自身が核となることで、アラガミとしての存在を成立させている。……尤も、一度乗り込んだが最後、肉体とアラガミの体は融合して二度と元には戻れない」

 

「……」

 

「アレは、人型神機とも呼べる存在になるわけだが」

 

「……」

 

「ルーくんは──獣型神機と呼べる存在なのではないだろうか?」

 

 神機自体が、アラガミという存在を兵器に落とし込んだようなものだ。つまり、神機使いが使うそれは人造剣型アラガミとでも言うべき存在となるが、理屈としてはそれと大きくは変わらない。オラクル細胞で出来た実体がどんな形をしているのか……違いとしては、それくらいである。

 

 ただし、人造アラガミにはある明確な特徴があった。

 

「オラクル細胞の侵喰によってアラガミ化したキミは、明瞭な意識を保てなかった。しかし、自らアルダノーヴァと一体化することでアラガミ化したヨハンは」

 

 しん、と世界が静まり返る。

 

 リンドウがそのことに気付いたのと、榊の口からその事実が語られたのはほぼ同時であった。

 

「──最後まで明瞭な意識があった(・・・・・・・・・・・・・)。今際の際だというのに我々に舟に乗るように……生き延びてほしいと促すくらいには、ね」

 

「……あっ!?」

 

「気づいたようだね……そう、人造アラガミならアラガミ化しても人としての意識を保てる可能性が高い。アラガミであるはずのルーくんが、アラガミらしからぬ理性を持っていることにも説明がついてしまう」

 

 ルーが元人間だったとして。

 

 オラクル細胞の暴走によるアラガミ化ではなく、人造アラガミに乗り込むことでアラガミ化したのであれば、神機使いで無くともアラガミ化することができる。そして何より、アラガミ化しているにもかかわらず自我を失わず、理性的であることができる。

 

 すなわち……ルーがアルダノーヴァと同じ人造アラガミであるなら、これまで説明がつかなかったことの説明が出来てしまうのだ。

 

「た、確かに理屈は通るさ……! ルーがアラガミなのに理性的なのにも、アラガミ化した神機使いがいないことにも……! だけどよ、博士!」

 

「うん?」

 

「いくらなんでも、秘密裏にルーを作るってのは無理があるだろ! 莫大なオラクルリソースに大規模な研究設備……どう考えたってすぐに、ば、れ……!?」

 

 言ってる途中で、またしてもリンドウは気づいてしまった。

 

「……同じことを考えると、行きつく先はやっぱり同じになるということなのかな」

 

 人造アラガミ──アルダノーヴァ。リンドウがしようとした否定は、まさしくアルダノーヴァの存在そのものが否定する。三年前、極東前支部長のヨハネス・フォン・シックザールは最後のその瞬間までアルダノーヴァの存在を隠し通し、誰にも邪魔されることなくそれを起動して見せているのだから。

 

「エイジス計画……人類の希望であるその計画は、どういうわけかなかなか進まなかった。それもそのはず、エイジス計画に使われているはずのオラクルリソースは、アーク計画に使われていたのだから」

 

 そして。

 

「そう、なにかしらの隠れ蓑があれば人造アラガミは製造できてしまう。……ところで」

 

 不思議なことに、似たような話にリンドウは聞き覚えがあった。

 

 

 

「莫大な予算がついていてオラクルリソースを潤沢に使いながらも、なかなか進まない開発計画……つい最近、どこかで聞いた話じゃないかい?」

 

 

「──神機兵開発計画! フライアの連中がやってる案件じゃねえか!」

 

 

 

 人類の理想郷を実現するために進められていたエイジス計画。

 人類を守る新たなる力を生み出すために進められている神機兵開発計画。

 

 そのどちらもが莫大なオラクルリソースを必要としていて。

 そのどちらもが大規模な研究設備を有している。

 

 ならば──神機兵開発計画もまた、エイジス計画が裏で行っていたようなことが出来てしまう。

 

「キミが言った通り、人造アラガミなんてものを作ろうとしたら莫大な金、潤沢なオラクルリソース、そして長い時間が必要となる。特にオラクルリソースなんて貴重なものは、秘密裏に集めるのは無理なんだ。大なり小なり、絶対に足がつく」

 

「だからこその、隠れ蓑ってか……! 他にちゃんとした大義名分があるから、堂々と運び出したとしても気づかれない……!」

 

「ヨハンがやったのと、全く同じ手口だね。……実際、かなりの裏金があったわけだし」

 

 神機兵が五体は作れるほどの裏金とオラクルリソース。分かっているだけでそれくらいあるというのであれば、バレていないだけでほかにももっとあるのかもしれない。いずれにせよ、どういうわけか行方の分からなくなっているリソースがあるのは紛れもない事実だ。

 

「そうか……! だからあんたは、ラケル博士の周りを調べたのか……!」

 

「秘密裏に人造アラガミを造れる方法なんて、それくらいしか思いつかなかったからね……。けれど、半ばダメもとで調べてみたら本当に横流しの痕跡があると来た。もちろん、例の養護施設の運営費として使ったというのも本当ではあるのだろう。いくら御父上が援助していてくれたとはいえ、彼女は若くそしてこのご時世だ。金なんていくらあっても足りるはずがないし、裏金の本当の使い道に対するカモフラージュにもなる」

 

「……」

 

「だけど、それを考慮しても……そうだね、ヴァジュラより二回りは大きい《お人形》を作れる程度のオラクルリソースはあったと思うよ」

 

 あまりにも酷似している状況に、見事なまでにすべての説明がついてしまう都合の良すぎる推測。そして、それの証明となってしまう確かな証拠が出そろってしまえば、もはやその疑惑は事実であると判断しても良いだろう。

 

「じゃあなんだ……ラケル博士が、ルーのことを知っていたのは」

 

「ルーくんを造ったのが、彼女たちだからだね。報告書を読んでいたのは、そうだね……ルーくんを探していたから、とかじゃないかな」

 

「そもそもだけどよ……金と材料と時間があるからって、アラガミなんて作れるのか? それこそ、あんたや前支部長みたいな専門家でもないと……」

 

「何言ってるんだい、リンドウくん──ラケル博士の専門分野は神経科学で、レア博士の専門分野はオラクル駆動装置(アクチュエータ)だ。人造アラガミという観点で見れば、私やヨハンよりも向いているさ」

 

 レアが人造アラガミの体を造り、ラケルがアラガミの体を操る「核」を接続するための神経系を設計する。人工的にアラガミを造るという観点で見れば、アラガミという存在そのものを研究していた榊やヨハネスよりも、よっぽど適任の二人と言えるだろう。

 

「それに、神機兵の開発はそのまま人造アラガミに応用できる技術だ。神機兵か人造アラガミか……どちらかはわからないけれど、研究の副産物として生まれたものなのだろうね」

 

「……どういうことだ?」

 

「あの時、ラケル博士は無人神機兵の有用性について説いてくれたわけだが……じゃあ、有人神機兵の有用性とは何なのだろう? 無人神機兵に対して、何が優れているのだろう?」

 

「何って……」

 

 またなんか微妙に話が逸れてしまった。しかしながら、これもまた榊の考えを理解するためには必要なことなのだろう。どうせグタグタ考えてもしょうがないので、リンドウはもう余計なことは何も考えず、ただひたすら榊の質問の事だけを考えることに決めた。

 

「神機を使えない人間でも、アラガミに対抗できる戦力になる……ってことじゃ、ないのか?」

 

「その通り。だけど……神機兵はそもそも、【誰も傷つかないため】に開発されたものだよ? 人が乗ったら、そもそもの開発コンセプトから外れてしまうじゃないか」

 

「……あ」

 

「元々の目的を考えたら、有人神機兵の開発なんてするべきじゃない。だったら二人で無人制御に集中すべきだ」

 

「でもよぉ……適性が無い人間でも戦えるってのはデカくないか? もし本当に神機兵が導入されたら、俺達神機使いもちょっとは楽になるだろ?」

 

「それはそうだけど、その神機兵一体を導入するのにどれだけのコストがかかると思う? さっきキミも言ってたじゃないか、神機兵を導入するくらいならその分神機使いを支援したほうが採算が取れるって」

 

「あ」

 

「しかも、有人制御には大きな問題があってね……神機兵に搭乗するにはある程度の適性が必要で、現状では一般人じゃ乗りこなせない。神機兵の動きに耐えられる存在……具体的には、神機使いじゃないと乗れないね」

 

「……ん?」

 

「さらに搭乗するには入念な事前検査が必要で、最悪命を落とすこともある」

 

「……えっ?」

 

「搭乗者の精神に大きな影響を与えることが分かっているし、有人運用は非人道的だとあの(・・)フェンリル本部が難色を示すほどだ」

 

「待て待て待て待て待て」

 

 神機に適性を持たない人間でも戦えるというのが神機兵のメリットのはずなのに、実際に搭乗するには神機使いでないとならない。

 

 ただ搭乗するだけなのに入念な事前検査が必要で、しかもどういうわけか命を落とす危険がある。

 

「意味ねえじゃねえか! 神機使いしか乗れないうえに、乗ったら死ぬかもしれないってどういうことだよ!? 真っ向から存在意義否定しているじゃねえか!」

 

「うん、まぁそうなるよね」

 

 極めつけは……あのフェンリル本部が、【非人道的だ】という理由で難色を示しているというその事実だ。

 

「適合試験で麻酔無しで手首にドリルで穴をあけてくるような連中が、【非人道的】って言うレベルって……正気か?」

 

「相当だよね、うん」

 

「だいたい、精神に影響を与えるってどういうことだよ? アレってロボットみたいなものじゃないのか?」

 

「神機兵もまた、人型神機……つまり、キミたちの腕輪のように何かしらの形で神経的な接続を必要としているのだろう。どう考えても、【人に優しい、誰も傷つかない兵器】というコンセプトからは外れている……けれども」

 

「うん?」

 

「オラクルで出来た筐体(ボディ)に人が乗りこみ、神経的な接続がされているというのは」

 

「人造アラガミと同じ……そうか、有人神機兵の開発ってのはそのまんまルーの研究に繋がるのか」

 

「無論、赤い雨や感応種の影響を受けないというのは有人、無人に関わらず神機兵の強みではあるが、どちらも神機兵開発が始まった当時は存在していなかったからね。やっぱり、隠れ蓑として使われている開発計画であることに違いはないと思う」

 

 無人制御はともかく、有人制御は明らかに本来のコンセプトから外れている。しかし、その原理自体は人造アラガミのそれとほぼ同じで、その研究成果はそのまま流用することが出来る。つまり、ルーの研究をすれば神機兵の開発も進み、そして神機兵の研究をすればルーの研究にもつながることになる。

 

 表と裏で密接に繋がっているからこそ、秘密の研究をカモフラージュしたまま実施し続けることが出来るというわけだ。

 

「他にも細かいところはいろいろあるが、三年前のあの事件との類似性、神機兵と人造アラガミの類似性、人造アラガミであればルーくんの謎が説明できることと……裏金の事実と、ラケル博士がルーくんを知っていたという事実。以上より、私はラケル博士がルーくんを造ったと考える」

 

 笑って流すには、あまりにも状況が出来上がりすぎてしまっている。突拍子もない推測ではあるが、否定の材料は無くて肯定の材料ばかりがあまりにもありすぎる。本来独立して存在するはずのファクターが結びついて一つの事実となるのであれば、もう認めないわけにはいかない。

 

「……【ラケル博士がルーのことを最初から知ってた】っていうその事実が、あんたの推測を決定的にするための最後のピースだったってわけか」

 

「その通り。そしてこれは、まだまだ議論の途中でしかない」

 

「……ラケル博士がルーを探して報告書を読んでいた理由。いや、終末捕喰の件が先になるのか?」

 

「うむ。どちらも重要だが、それを検討するためには……まず、人造アラガミなんて代物を作った理由から考えるべきだろう」

 

「理由、ねえ……ここまでアーク計画の時と状況が合致しているんだから、やっぱりルーをノヴァとして終末捕喰を引き起こそうとしてるって考えるべきか? 戦力が欲しいだけだったら、それこそ神機兵で良いわけだし」

 

「どうして、終末捕喰を起こそうとしているのだろう?」

 

「……」

 

 おそらく、榊の中には既に答えがある。これまでのやり取りの中で何度も何度もこんな風に問いかけられているのだから、今更リンドウがそれに気づかないなんてことはない。

 

「さすがに、選ばれた人間だけ外に逃がして一度地球をリセットする……なんてところまでアーク計画と同じなわけはないだろうな」

 

「うむ。彼女たちに例のチケットが配られたかはわからないが……その存在は知っていてもおかしくない。ヨハンとラケル博士は面識があったはずだし、ソーマくんへのあの言葉は……まぁ、そういうことだろうし。それなのに、ヨハンの失敗をそのままなぞるとは考えにくいね」

 

「……自分たちと似たようなことをやっていたからこそ、アナグラに注目していたって可能性も十分にあるな。しかしそうなると……ますますわかんねえ」

 

「……」

 

「ただ終末捕喰を起こしたところで、何の意味もない。やるからには、何かしらの旨味が無きゃいけない」

 

 ヨハネスの場合は、一度終末捕喰をあえて起こすことで人類滅亡のカウントダウンをリセットするのが目的だった。リセットされた後に宇宙へ退避した人間が地球に再び降り立つことで、アラガミのいない新世界で人間が生きて行けるようにした。

 

 そう、ヨハネスは限られた一握りだけでも人間を救おうとした。やり方こそ間違っていたが、人類の未来を願っていたこと自体に疑いはない。

 

 だけど、今回の場合は……そんな、旨味が無い。

 

「……彼女たちの行動理念を、改めて振り返ってみようか」

 

「あん?」

 

 榊からの助け舟。なんだかここ最近、誰かの考えとか行動とかについて考えることが多いよな……なんて、リンドウはぼんやりと思った。

 

「そうだな……わかりやすいところで言えばマグノリア=コンパスっていう児童養護施設に、【誰も傷つかない】兵器である神機兵の開発。傷ついた人間を助け、もう誰も傷つかないようにする……少なくとも表向きは、慈愛の精神にあふれた聖人みたいに思えるが」

 

「そうだね。大袈裟かもしれないが、それすなわち人類の救済と言っても良いと思う。さっきも言ったが、神機兵開発にはあまりにもコストがかかりすぎるし、実運用を想定した場合は採算が取れない。人の命を救うことだけを目的とした、慈善事業みたいなものだ」

 

「そんな人間が終末捕喰を起こすとしたら……やっぱり、人類のためってか? それともルーを使って終末捕喰を起こすことに意味がある……のか? あるいは終末捕喰という前提が間違っているか……そもそも特異点が無ければ終末捕喰は起きないはずだ。……いや、待て」

 

 特異点とは、終末捕喰を引き起こすための起動キーみたいなものだとリンドウは認識している。そしてそれを与えられたアラガミは、この地球上のありとあらゆるものを喰らい尽くし、その結果として生命というそれそのものをリセットして再分配する……と、そう聞いている。

 

「終末捕喰は全てを喰らい尽くす……だよな?」

 

 そう、終末捕喰は人間もアラガミも関係なく、全てのものが喰らい尽くされるという現象だ。特異点を与えられることによって見境が無くなったアラガミが、全力で暴走していると言い変えてもいい。

 

「でも、ルーが終末捕喰を起こしたら? 意識があって、人を襲わないあいつが終末捕喰を起こしたら……どうなる?」

 

 そして……人造アラガミは、普通のアラガミと異なり明瞭な意識を保っている。

 

「人を救済しようとしているラケル博士が造った、人を襲わない人造アラガミが終末捕喰を起こしたら……」

 

 そこから導き出される結論。あり得ないはずの、しかしそうだとしか思えない考え。

 

 リンドウの考えを引き継ぐようにして紡がれた榊の言葉が、静まり返った深夜の部屋にはっきりと響いた。

 

 

 

「──アラガミだけを対象にした、コントロールされた終末捕喰もできるかもしれないね」




 神機兵には神機使いしか乗れない、と明確に断言している記述はありませんでしたが、原作にて神機兵に搭乗していると明言されているのは(私が調べた限りでは)神機使いのみで、少なくとも肉体的な頑健さが必要なことであることは明らかであること、またGE2RBにて、搭乗者保護のための出力制限などが設けられてようやく有人神機兵が実用化したことから、ここでは「今のところ神機使いしか乗れない」としています。

 ちなみに、「有人神機兵は非人道的だとフェンリル本部が難色を示している」ことについては公式見解です。また、「有人神機兵に搭乗する際は神経的な接続を必要とする」というのは独自解釈です。だってそうでもないと搭乗者のメンタルに影響が出る理由がつかないんですもの……。

 最後に蛇足となりますが、レアせんせーがビビっていた、あるいは榊博士が感づいた【ヴァジュラより二回りは大きい《お人形》を作れる程度のオラクルリソースと裏金】の本当の使い道は、お察しの通りアレです。 
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