ここ最近のことを、振り返ってみようと思う。
フランちゃんとの顔合わせの日から、ブラッドとのミッションがめちゃくちゃ増えた。増えたっていうか、もう八割以上はブラッドとのミッションと言ったほうがいいかもわからん。アリサやソーマといったガチメンバーはまだしも、それ以外のアナグラの人たち……具体的にはエリナちゃんやレイナちゃんとはエイジスでの私の監視の時くらいしかまともに会えなくて、なんだかちょっぴり寂しいと思わないこともないこともない。
なんとも驚くべきことに、彼ら(というより、榊博士か?)は私を対象としてヒロくんの《喚起》を発動させるのを目的としているらしかった。『感応現象でおしゃべりできるようになるかもだから、気合い入れて頑張るんだよっ!』ってチハルちゃんが言っていたのを覚えている。
《喚起》ってのはブラッドの血の力を目覚めさせる、ないしはブラッドアーツを使えるようにするためのものだと思っていたけれど、どうも彼らはそれ以外の使い道があると判断しているらしい。細かい原理なんてゲームの時じゃ説明されていないからよくわかんないけれども。
いずれにせよ、彼らはなんとかして私と感応現象を起こし、意志を共有したいと思っているっぽい。正直この前のアリサとの感応現象(?)も私は何ともなかったわけだし、果たしてどれだけ効果が見込めるのやら。いやまあ、《喚起》で感応現象が起こせるのならそれに越したことはないけれど。
ともあれそんなわけで、私、チハルちゃん、ヒロくん、そしてブラッドの面々での任務……具体的には、討伐任務に行く日々が続いた。
いやはや、ウチの娘のしたたかさには舌を巻いたっていう。『ルーちゃんはバンダナが大好きだからね! 《喚起》で心を通わせる必要があるのなら、バンダナは必須だよ!』ってめっちゃ布教しているんだもの。赤青緑、ストライプに柄物、果てはワンポイントがあるものまで……そのバリエーションはめっちゃ豊富。
加えてアレンジの幅もめちゃくちゃすごい。『やっぱりオシャレは外せないよね!』、『いろんな風に使えるからバンダナは最高なんだよ!』……と、ナナちゃんの頭にカチューシャ風にバンダナを巻いてみたり、シエルちゃんの頭にオシャレな喫茶店のおねーさん風にバンダナを巻いてみたり。
果ては、『さ、最近は男の人でもこーゆーの普通なので……!』ってギルの長髪を三つ編みにしつつそこにバンダナを編みこんでみたり。なんだかエスニックな雰囲気のあるイケメンが爆誕。ロミオがおなかを抱えてげらげら笑っていたのを覚えている。
『本当に効果あるのか……!? そもそも俺たちまでバンダナ着ける必要がどこにある……!?』 ってギルは憤っていた。すかさず私のふかふか尻尾で体を包んで黙らせる。『あーっ! ギルだけずるい!』、『俺も混ぜろよ!』ってナナちゃんとロミオも飛び込んできた。なんだこの子達可愛すぎか?
『やはりバンダナの有無で友好度が変わった……? バンダナを付けたことでチハルの同族であるとみなしたということか……?』ってジュリウスがまじめ腐った顔でつぶやいていたっけ。もちろんそんなジュリウスの頭にもバンダナ。やるだけやって損はない、ってことなのだろう。そういうところは実にジュリウスらしいと思う。
とりあえず、バンダナを付けた相手には殊更に媚びておこうと思う。少しでもウチの娘のアナグラ内の立場を良くしたいと思った次第。わが子を贔屓しない親なんていないはずがないのだから、これくらいのことは許されるはずだ。
実際の任務については特筆するべきことは無い。ヴァジュラ、コンゴウ、ボルグ・カムランあたりのよく見かけるアラガミをメインに狩りまくった。ただ、一応はブラッドとの共闘ってことであまりでしゃばりすぎず、あくまで作戦行動における一つの駒として動くって感じ。
『作戦行動として、みんなと連携が取れるかどうかを確認するって目的もあるんだからね!』ってチハルちゃんが言ってたから間違いない。実際、私はオペレーターからの指令を受けたチハルちゃんの指示に従って戦ったわけだし。……もしかしてこれ、二次受けってやつか?
正直私一人で戦ったほうがはるかに速いし、思い通りに戦えなくて若干のストレスを感じないこともなかったけれど、そこはお仕事ということで真摯に受け止める。上からの命令には逆らえないってのは社会人としての常識だ。まぁこの社会すでにほぼぶっ壊れているんだけどな!
そうそう、生のブラッドアーツが結構すごかったっけ。アレは確かグボロ・グボロと戦っていた時のことなんだけど、ジュリウスが気合い(?)を入れてグボロを切りつけた直後にオラクルの追加斬撃が叩き込まれてマジビビった。【神風ノ太刀・鉄】って名前のブラッドアーツだったはずだけど、風ってよりかはマジで普通にオラクルの斬撃。微妙にワンテンポ遅れて攻撃が発生する仕組みがいまだにわからないんだけど、アレどうなってんだろうね?
『すっげー……!』って私の背中のチハルちゃんが驚いていた。私のほうがすごいので特大級の雷(比喩表現ではない)にてグボロを消し炭にする。ほめてもらえると思ったのになんかみんなから微妙な顔をされた。ちょっとショック。
シエルちゃんも普通にブラッドアーツを使っていたっけ。空中でサリエルを切りつけた……と思ったら、派手なオラクルの刃による連撃が発生。やっぱりこれも神機の切りつけのあとにワンテンポ遅れてからその場にオラクル攻撃が発生している。原理不明。あんま難しいことは考えないほうがいいのかな?
ヒロくんはよくわからん。彼はその時々でちょこちょこ神機を持ち替えているし、何よりどんな神機も普通に使いこなしている。使用するブラッドアーツもたくさんある……っていうか、なんかゲームで見たことのない動きまでしてやがる。
まず、普通にブラッドアーツを一度の戦闘で複数種類使っている。ゲームじゃ一個しか使えないし、ジュリウスやシエルちゃんも一個しか使っていないのに、あいつだけはそんなの無視して普通に使いまくっている。
いや、理屈的にはおかしくなんてないのだろう。ブラッドアーツが一つしか使えないというのはゲームのシステム的な調整のためで、現実的に(?)に考えたら同時に一つしか使えない道理はない。そこまではまぁ、理解しないこともない。
ただね、さすがにステップ攻撃も弱攻撃も、すべての攻撃がブラッドアーツになってるのはやりすぎだと思うのよ……。
本人の消耗がかなり激しそうだったとは言え、【烈風刃】でひるませつつ距離を詰め、【ライジングファング】でかちあげ、【ハチドリの舞】で追撃し、【神縫い】で叩き落としつつ、【キラービーハイヴ】でとどめを刺すのはさすがにコンゴウがかわいそうになった。しかも【キラービーハイヴ】って強攻撃の五段目でしか発動しないはずなのになぜか初段で発動していたし。マジでどうなってやがる?
あれ絶対通信プレイでやったらリジョイン祭りになるやつ。というかエフェクトが派手めのやつはそうでなくとも通信不安定になりやすいし。ショートの【風斬りの陣】とか普通に使っているだけで処理落ちするし、アサルトで連射弾をひゃっはーしてるだけでもダメだから、通信プレイの時はその手の攻撃は外して使わないようにしていたっけ……。
ああ、思い出してきた。通信プレイであとちょっとでマガツキュウビを倒せるところだったのに、あいつの攻撃とこっちのブラッドアーツ、バレットのエフェクトが思いっきり被って【通信状況が悪いため、ゲームから外されました。リジョインしますか?】ってメッセージが出て……そのまま通信切断となったことがある。アレは悔しかったな……。
ちょいと話が逸れたけれども、ヒロくんはこんな感じでブラッドアーツをすごくアレンジ(?)して使ってる。もはやアレンジしすぎて別物みたいになっているものもいっぱい。本来は垂直回転のはずの【ジェノサイドギア】を水平回転で使って、ボルグ・カムランの胸部の口をこじ開けて真っ二つにしているのを見たときは、こいつ本当に同じ人間かって思ったよ。
さて、なんだかんだで二週間もする頃にはギルもバンダナを付けるのにも文句を言わなくなってきて、そしてロミオも一人できちんとバンダナを付けられるようになり、そしてシエルちゃんも独自にバンダナのアレンジをしてくる程度にはバンダナに染まった。一方で私に対して《喚起》は全く持って発動せず。
『もっと共闘しないとダメなのか……?』、『一緒にお昼寝したりとか、スキンシップを増やしてみるのはいかがでしょうか?』、『任務とか関係なしに、背中に乗って気ままに散歩に行くのとかいいんじゃないかなあ』、『おでんパンをみんなで食べるのがいいと思います!』……などと意見が出るも、めぼしい成果は得られず。
結局のところ《喚起》の発動条件である【心を通わせる】ってのが達成できていないわけで、そしてアラガミと心を通わせる方法なんて現状誰にも思いつかないために議論が迷走していると言っていい。
真剣な顔をしたジュリウスに、『現状、最も心を通わせているのは紛れもなくチハルだ。だから見た目も言動も、何もかもをできるだけチハルに寄せてみるのはどうだ──と、榊博士らから提案があった』……って通達されたときのヒロくんの顔を、おそらく私は生涯忘れることは無いだろう。
『チハルに対しての反応と、チハルに扮したお前に対する反応の違いを分析して、榊博士とラケル先生が【ルーに好まれる要素】を見つけ出す』、『行動分析としてはよくあることです。別に恥ずかしいことじゃありません』、『私も業務として似たような経験をしていますので、まさか断るはずなんてありませんよね?』……などとヒロくんは詰められていた。申し訳なさそうにしているジュリウスと、インカム越しに聞こえてきたフランちゃんの声が妙に印象的だったのを覚えている。
ヒロくんがどこまでチハルちゃんちっくに扮することになったのかは……彼の名誉のために忘れることにする。『……うん、私の前では弱音を吐いてもいいからね』ってチハルちゃんが肩ポンする程度には同情的な感じになっていたことをここに記そう。
あと、最終的に『…………』って死んだ目をしたヒロくんが私の角をぺろぺろ舐めてきたりもしたんだけど、アレ本当になんだったんだろ……?
ともかくそんなわけで、今に至るまで《喚起》が発動した形跡は一切なし。もちろん感応現象も確認されていない。めぼしい成果と言えば、チハルちゃんがブラッドの面々ともっと仲良くなれたのと、ブラッドへのバンダナの布教が済んだことくらいだろうか。
一応、何の成果もなしじゃいくらなんでも困るだろう……ってことで、ブラッドアーツっぽい感じでガントレットの一撃に雷を纏わせた後に爆発(?)させてみたけれども、
『まさか、今のはブラッドアーツか……!?』、『思ってたのと違うけど、《喚起》できたってことだよね……!?』ってその時はみんな盛り上がっていたけれど、次に会ったときはなんともなかった(というか、若干のお通夜ムードだった)から、やっぱそれっぽく見せただけのまがい物だってすぐバレたんだろうな。
だいたいこんなものだろう。最近はアラガミの味にも飽きてきたというか、大半のアラガミはすでに味わってしまったために「新しいものを食べる」喜びがほとんどと言っていいくらいに無くなってきてしまったのが困るところ。食べていないのなんてあとはヤバめの感応種やヤバめの接触禁忌種くらい……つまりはゲーム終盤でもなければ登場しない設定的にもヤバいやつばかりだし、さすがに個人の嗜好のためだけにそんなのが現れてしまっても困る。
そう考えると、なんだかんだで「いつもかわらない、そこにある味」であるコクーンメイデンは偉大なのだろう。あいつの場合はそこら中にいすぎるせいで逆に味に飽きがこなくていつまででもしがんでいられる。白米を食べ飽きる人がいないのと同じ原理だろうか。食べていて美味しいのは強力なアラガミのコア(できるだけおっきいやつ)なんだけど、食べていて落ち着くのはコクーンメイデンなんだよね。
私があちこちのアラガミを食べ散らかしているからか、いまだにイベントが起きる気配がない。できることなら、このままずっと平和な日常が続いてほしい。クソッタレなこの世界でも、それを願うくらいは許されてほしいものだ
──明日もみんな元気に、おなかいっぱいご飯を食べられますように。
通信プレイでブラッドアーツを使うとリジョイン祭りになるというジレンマ。