GOD EATER:救雷の神鳴   作:ひょうたんふくろう

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69 リッカの神機講座(前)

 

 神機は非常に危険なものだ。もちろん、あのアラガミに対抗できる唯一の攻撃手段──武器というよりかはもはや兵器であるそれが危険じゃないわけないのだが、一般的な意味での武器とは明確に異なる危険性が神機にはある。

 

 一般人が神機に触れたら神機に喰い殺される。神機使いであっても、自分の神機じゃない神機……つまりは、適合していない神機に触れると喰い殺される。神機というのはつまるところ剣の形をしたアラガミそのものであり、偏食因子の投与によって【美味しくないもの】だと神機に認識されていない限り、触れることすらできないのだ。

 

「いやー、いい仕事させてもらったよ!」

 

 が、しかし。

 

 適合者以外が神機に触れられないとなると、神機使いが自ら神機のメンテをしなくちゃいけなくなるし、そもそもの大前提として、神機の製作そのものも適合した神機使いが行わないとならなくなる。

 

 当然、この世にまだ存在していない神機に対して適合者なんているはずもなく、適合者がいないならば神機は作れない……と、論理的に矛盾した状態になってしまう。

 

 現実として、そんなことになっていないのは……技術者たちの努力の賜物に他ならなかった。

 

「ちょーっと時間がかかっちゃったかもだけど! 前の神機よりもすっごいのができちゃったんだから!」

 

 神機保管庫エリア。適合神機使いでなくても神機を取り扱える例外──神機整備士である楠リッカが操作盤の上で指を躍らせると、それに連動するようにして神機を格納したパレットが保管庫の奥から運ばれてくる。ごうんごうん、と独特な駆動音が少しばかり部屋に響き、そしてそれはチハルたちの目の前までやってきた。

 

「さぁ、よく見てあげて! これがあなたの、新しい神機!」

 

 ぴ、とリッカはそのボタンを押す。せり出してきたパレットからぷしゅう、と空気の抜けるような音。神機を封印していたその蓋がスライドするようにして外れ、専用のマニピュレーターによってとうとうそいつは姿を現した。

 

「おお……!!」

 

 真っ白の、どこか神々しくありながらも猛々しい雰囲気を併せ持った神機。

 

 それが、チハルの新しい神機であった。

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

「んじゃ、さっそく説明するね」

 

 アナグラ内部の、訓練所。新しい神機を手にしたチハルを前に、その神機を作った張本人であるリッカは、どこか嬉しそうに言葉を紡ぐ。

 

 ──ルーの《喚起》任務から外されてしまったチハルであるが、なんのことはない。あの事件の時に壊れてしまった神機がようやく直った……より正確に言えば作り直すことができたため、その試運転をすることになったのだ。

 

 貴重な戦力である神機使いをいつまでも遊ばせる理由は無いし、神機の試運転にルーが付き合える道理もない。チハルとルーをセットで運用するにしても、神機を持たないチハルが戦場に赴いていた今までが明らかに異常だったのは明白なわけで、こうしてチハルがルーと離れて神機の試運転をするのはごくごく自然な話であった。

 

「刀身も銃身も、もちろん装甲も。神機のコアとも言えるアーティフィシャルCNS以外は全部新規製作品! それも、そのメイン素材は……!」

 

ルー(あいつ)から採れた素材ってわけか。まァ見るからにそれっぽい感じだもんな」

 

「……それ以外のアラガミの素材もふんだんに使われているようですね。それも、相当強力なものであると見ました」

 

「ふふふ……! ええ、とっても素敵ですよ、チハルちゃん!」

 

「な、なんか照れるぅ……!」

 

 チハルの神機お披露目会にやってきた──キョウヤ、シエル、そしてアリサ。どこか照れ臭そうに神機を構えるチハルを見て、各々がその感想を述べていく。

 

「今更だけど……三人とも、わざわざ付き合うことなかったのに。説明だけならチハルちゃんと私だけで充分だし、実物は任務の時に確認するのでもよかったんじゃない?」

 

「え? そりゃ……相棒の神機なんだから、見といたほうがいいでしょ?」

 

「ああ……まあ、それもそうか」

 

 神機というのは神機使いの頼れる相棒とも言える存在だ。だから、相棒の相棒であるそれをきっちり確認しておきたいというキョウヤのその気持ちは、リッカには痛いほどよくわかった。むしろ、ちゃんと自分事として捉えているキョウヤをほめてやりたくなったし、なんなら頭の一つでも撫でてやろうかとさえ思えた。

 

「その……実は私もしばらく《喚起》任務から外れることになりまして。ルーの注目を惹きやすい私は《喚起》の妨げになりかねませんし、すでに血の力に目覚めているので私が《喚起》されることもありません。……だから、その、せっかく時間ができたので新しい神機を見てみたいなあって……!」

 

「うんうん、わかるよぉ……!」

 

 極東の神機製作技術を見てみたい、新しい銃がどんなものなのかすごく気になった──というシエルのその言葉に、リッカは大きくうなずく。他所の技術をじっくり見られる機会はそうそうないし、そうでなくとも誰かが作った神機というものは見ているだけで楽しいものだ。おまけに今回はあのルーの素材を使って製作しているのだから、余計に興味が湧いてもおかしくない。

 

「……で、アリサちゃんは?」

 

「チハルちゃんの晴れ姿を、見ない道理がありますか?」

 

「……」

 

「そうでなくとも! 最近はずっとブラッドと仕事してばっかりで……! ご飯も、お風呂も! ずっとラケル博士が近くにいて……!」

 

「……」

 

「チハルちゃんはアナグラ(うち)の娘なんですよ!? こんなめでたい時くらい、一緒にいさせてくださいよ……!」

 

「うんうん、わかったわかった。そうだねー」

 

「うわぁ……リッカさん、露骨に面倒くせえなって思ったな……」

 

「なんかその……すみません、ラケル先生には私からも言っておきますので……」

 

 悔しそうにギリギリと歯ぎしりをするアリサ。つまるところ、ここのところずっとチハルと一緒になる機会がなくて鬱憤(?)が溜まっていたのだろう。任務の時だけならまだしも、プライベートの時ですらそうであったというのであれば、そうなってしまうのも無理もないといえないこともなかった。

 

「おうチハル、お前ちょっとはアリサさんのことも考えてやれよ」

 

「う、うーん……一応、今でも二日に一回はアリサさんと一緒のベッドで寝てるんだけど」

 

「……えっ」

 

「わ、私からお願いしたことなんて一度もないんだからね!? あ、アリサさんが誘ってきてるんだからね!?」

 

「……でも、断ったりはしないんだろ?」

 

「……だって、断ろうとするとアリサさんすっごく悲しそうな顔するんだもん。あと」

 

「あと?」

 

「……ぎゅって抱きしめてくれて、すっごい安心するんだあ。あったかくて、柔らかくて、すっげー良い匂いして……クセになっちゃいそう」

 

「こいつも大概だよなあ。なっちゃいそう、じゃなくて既になってるじゃねえか」

 

「アリサちゃんもだけどね……明らかに性格変わってるし、これもうホントにママになっちゃってるんじゃない?」

 

 ごほん、とわざとらしく咳払いをして、そして改めてリッカは話し出した。

 

「さっき話した通り、この神機はルーの素材をメインとして、チハルちゃんが持ち帰ってきたアラガミ素材を使って作られている。正直な話、今のチハルちゃんの階級(じつりょく)と比較すると明らかにオーバースペックな感じもするけど……まぁ、性能が良くて悪いことなんてないからね」

 

 ルーという明らかに規格外の存在のアラガミ。少なくともランク6相当の上位個体を複数体同時に相手にしても余裕であしらえる程度には強力なアラガミなわけで、そんなアラガミの素材を使って作った神機が強くないわけがない。おまけに、テスカトリポカやアイテールといった強力な接触禁忌種の素材も使っているのだから、そんじょそこらの神機とは比べ物にならない性能を持っているのは疑いようのないことだった。

 

「まずは装甲だけど……これがもう、本当にすごくてね! 種別としては以前と同じくタワーシールドなんだけど、その防御力は文字通り桁違い! 具体的には……」

 

「具体的には?」

 

「──耐衝撃性、防刃性、耐摩耗性に優れていて非常に丈夫で頑丈。絶縁性、断熱性が高く難燃性でもあるから雷にも氷にも火にも強い。特に雷についてはとんでもない耐性を持っていて、弱点らしい弱点がない……強いて言うなら、【神】属性だけは目立って強いわけではない、くらいかな」

 

 その【神】属性でさえも、ほかの属性に比べたら高くないというだけで、平均以上の耐性値を誇っている。普通、この手の装甲はどこかの属性耐性が高ければまた別のどこかの属性耐性が低くなる……例えば、火属性に耐性のある装甲の場合は氷属性の耐性が低かったりするのが一般的だが、そんな常識に真っ向からケンカを売っているかのような性能だ。

 

「そ、そんなにすごいんですか……!?」

 

「正直、神機使い全員の装甲をこれにしたいくらいだよ。……まぁ、ルーの素材を使ってるからやるとしてもめちゃくちゃ時間がかかるんだけどね」

 

「もともとあいつ自身がめちゃくちゃタフだからなあ。そりゃあ、耐久性能もヤバくなるってもんか。……見た目は白いだけの普通の装甲っぽいのに」

 

 何度も何度も装甲を展開して、チハルはその感触を手になじませる。厳つい見た目とは裏腹に展開速度は悪くなく、その動きもスムーズだ。ついでになんだか思った以上に軽く感じる……というのも、決して気のせいなんかじゃない。原材料のオラクル強度があまりにも高すぎるために【軽くて丈夫】を実現することができているのだ。

 

「次は刀身ね。こっちも以前と同じくバスターブレード! 【破砕】も【切断】もすごく高いレベルでまとまっているうえ、なんと属性として【雷】と【神】もついているんだ!」

 

「物理属性にしろオラクル属性にしろ、複数の属性を持っている場合大体が中途半端な性能になりがちですが……」

 

「それがねえ、特化している神機と同じくらいの性能があるの! それこそ本来は相性が悪い相手でもゴリ押しできるくらいに! もう、これ一本あれば全部片付くんじゃないかな!」

 

「うっひゃあ……そんなにすごいんだあ……!」

 

 ルーのガントレットとよく似たその土台に取り付けられた、ルーの爪の鋭さを現したかのような荒々しい刃。バスターらしく重厚感のある分厚い刃で獲物を叩き潰すのはもちろん、ズタズタに引き裂くことも可能なのだろう。どこか神聖な感じがする蒼いラインが入っているために、なんとなく神々しいように感じるが……それがなければ、むしろ禍々しさが際立つほどの攻撃的な見た目をしている。

 

 そんな神機を、チハルはごくごく自然に振り回している。神機使いである以上、子供のような体格であっても身の丈を超える大きさの金属の塊を振り回せるのに不思議はないのだが、それにしたって不自然な光景というか、チハルの雰囲気とその神機が内包する存在感がちぐはぐで、見ている人の脳が混乱するかのような光景であった。

 

「で、お次は銃!」

 

「おっ、ようやくか!」

 

「な、なんかドキドキしてきました……!」

 

 銃の説明に移った途端に、キョウヤとシエルの目の色が変わる。内心で苦笑いしながらも、リッカは説明をつづけた。

 

「種別はもちろんブラスト! こっちも刀身と同じく、【破砕】も【貫通】も高いレベルでまとまっていて、オラクル属性も【雷】と【神】が得意な感じかな! ほかの属性の弾についても平均以上の威力を出せるから、やっぱりこれ一つあればどんな任務にも対応できるよ!」

 

「ほほぉ……! つまり、ヴァジュラやボルグ・カムラン……それにクアトリガも、割とよく見かける大型種はこいつで全部対応できるってことか……! 接触禁忌種みたいなヤバいやつも大体【神】が弱点だしな……!」

 

「中型種だと弱点を付けないこともありますが……しかし、素の攻撃倍率が高いから全く問題になりませんね! 弾丸でもレーザーでも、どんなバレットでも扱うことができますよ!」

 

「反動は普通のブラスト相応ってのはまァ仕方ないか……もともと連射するようなもんじゃないし、ここは攻撃倍率を活かしてデカい一発をブチ込むのが正解か?」

 

「おそらくは。いずれにせよ、特化した銃撃として特定の対象に対しては比類なき殲滅力が見込めますし、それ以外の数値も軒並み高水準ですから、汎用性も非常に高い……複数のアラガミとの戦闘が推定されるミッションでも活躍が見込めますよ!」

 

「……なんか、私よりキョウヤくんとシエルちゃんのほうが喜んでない?」

 

 チハルは斬撃も銃撃もどちらも卒なくこなす──両方とも満遍なくこなすタイプだが、どちらかと言えば斬撃を行う機会のほうが多い。比率にして、60:40くらいだろうか。それはオラクル回収の機会が比較的少ないバスターブレードを使っていること、さらには相棒であるキョウヤが銃撃メインの戦闘を得意としていることに起因しているわけだが、だからと言って銃に興味がないわけではない。

 

 そう、興味は確かにあるのだが──自分よりも、キョウヤやシエルのほうがはるかに目を輝かせて喜んでいるのは明らかであった。

 

「……確かに私、キョウヤくんほど銃に興味があるわけじゃないけどさ」

 

「いやあ……! いい銃ってのはいいモンだぜ……!」

 

「ふふふ……できることなら、試し撃ちさせて頂きたいくらいです……。いったいどんなバレットが活きるのか、楽しみでなりません……!」

 

「なんだ、シエルも”こっち”の人間だったのか? よかったら今度、俺とカノンさんと一緒にアラガミシューティングツアーに行こうぜ! 全員銃だけを使うってのが条件で、誤射とか気にせず好きなだけぶっ放していいんだ!」

 

「それは……! なんとも魅力的な……!」

 

「……もぉーっ! そんな物騒なツアーにお客さんを巻き込んじゃダメでしょ!? アナグラ(うち)の評判に傷がついたらどうすんのさっ!」

 

 なんだか意気投合しそうになっているキョウヤとシエルの間に割って入り、チハルは頬を膨らませる。こんなにも儚くて優しい雰囲気に満ち溢れるシエルの道を踏み外させてしまったら、アナグラとフライアの外交問題になりかねない──と、その心の中には義憤が満ちていた。

 

「なんだよ、大げさな……大丈夫、お前も連れてってやるからさ」

 

「……違う、違うんだよキョウヤ。あんたはもうちょっと、銃以外に興味を持ちな?」

 

「人並程度には持ってるつもりっすけど」

 

「うん、わかってないやつはみんなそう言うんだ」

 

「そうだそうだ! リッカさん、もっと言ってやって!」

 

「……この娘もこの娘で、問題アリなんだよなあ」

 

 距離が近すぎるのも問題だね──と、リッカは心の中だけでつぶやく。明らかに普通の関係じゃないけれど、だけどマジにそういう関係じゃない可能性もあるというのだから、リッカとしては妙にすっきりしないというか、奇妙なもどかしさとやるせなさを感じずにはいられなかった。

 

「……しかし、興味か。言われてみると気になってくるな」

 

「うん?」

 

 もしかして、意外と察しは良いのかも──というリッカのほんのり桃色な淡い期待を、キョウヤは見事に裏切って見せた。

 

「刀身と装甲だったら、強いアラガミ素材を使えば強いものができるってのは分かる。元々が強いんだから、そりゃそれを材料にして作られた神機も強くなるのは当然だ。けど……」

 

「けど?」

 

「……どうして強いアラガミ素材で強い銃身ができるんだ? 普通は口径がデカくて銃身(バレル)の長いほうが強いもんだが……俺らの銃にそこまで違いは無いっていうか、ぶっちゃけどれも同じだよな?」

 

「む」

 

 厳密には異なるものの、一般的な銃であれば口径……つまり銃口の直径が大きく、そして銃身(バレル)が長いほうが強力な射撃ができるとされている。しかしながら、神機の銃身においては、アサルトやスナイパーといった種別ごとの銃身(バレル)の長さや銃口の違いはあっても、同じ銃身であればほぼ同じ規格で製作されている。つまり、銃としての威力は銃身が同じであればほとんど変わらないはずである。

 

 が、実際は……銃の威力は、銃の形状ではなくその銃を構成しているアラガミ素材がどれだけ強力なものなのかによって決まっているのだ。

 

「なかなか鋭いところを突いてきたね……確かにキョウヤの言う通り、普通の銃だったらそうだよ。でも神機の場合は普通の銃とは仕組みが根本から違うんだ」

 

「仕組み?」

 

「うん。まずは弾が違う。普通の銃は弾丸に火薬を詰めている。口径が大きいってのは弾丸のサイズが大きいってことで、つまり火薬をたくさん詰めることができる。だから威力が高くなる」

 

 口径が大きいから強いのではなく。口径が大きいから強い弾丸を扱えるというのが正しい表現になるのかな──と、リッカは続けた。

 

「で、神機の場合だけど……神機は弾丸を使ってない」

 

「え? でもリッカさん、私たちが普段撃ってるのって弾丸……ですよね? バレット種別でも【弾丸】って書いてあるし……」

 

「そうだね、確かに弾丸って書いてあるけど……でも、実弾を持って行ってるわけじゃないでしょ? オラクルが保つ限りはいくらでも撃つことができるよね?」

 

「あ」

 

「チハルちゃんたちが銃弾と呼んでいるのは……ここでは、バレットと呼ぼうか。これは普通の銃に使う銃弾じゃなくて──」

 

「──バレットエディットによって製作された、いわば弾丸のレシピそのものです」

 

「正ぇ解!」

 

 自分の得意分野ということも合って、口を出さずにはいられなかったのだろう。今更ながらそのことに気づいて頬をほんのりと赤らめて恥ずかしがっているシエルに対し、リッカは高らかに宣言した。

 

「ここからはシエルちゃんにも協力してもらおうかな! ……バレットエディットについて説明できる?」

 

「はい。バレットエディットで製作されるバレットとは、正確にはオラクルチップを組み合わせた制御回路のことを示します。複数のチップを組み合わせた、弾丸として機能する最小単位をモジュールと呼び、通常の場合、複数のモジュールを組み合わせて編集(エディット)することでバレットを作成する……これが、バレットエディットと呼ばれる作業になります」

 

 【サイズ】、【弾種】、【発射条件】、【発射角度】、【属性】……と、一つのモジュールには最低でもこれだけのオラクルチップが組み込まれる。中でも【弾種】はモジュールの基礎性能に大きくかかわるチップであるが、その種類は非常に膨大だ。

 

 基本的なものでさえ、【弾丸】、【レーザー】、【放射】、【爆発】、【制御】、【球】……と六種類ほどもあり、そこからさらに細かい仕様に分かれていく。中には【装飾】という威力が全くない見た目だけのものもあり、バレットエディットを本当の意味で熟知し、使いこなせている神機使いは神機使いの1%にも満たないと言われているくらいである。

 

「モジュールを一つ作るだけでもその組み合わせは膨大で、そんなモジュールをさらに組み合わせてバレットは作られます。ちゃんとした知識がないと組むことすらままなりませんし、組むことができたとしても、まともに動いてくれません。思った通りの挙動となるように組めたとしても、威力やコストパフォーマンスに問題があって実用が難しいことも多いです。……尤も、これくらいならマシなほうで」

 

「……」

 

「やりたいことも、組み方もわかっているのに……モジュールの構成限界のため、物理的に組めなかったりとか。モジュール数の制約はクリアできても、消費オラクルの限界に引っかかってバレットとして扱えないものだったりとか」

 

「……」

 

「うふふ……ようやく理想のバレットができると思ったのに、モジュール数を数え間違えていて……! あと一つだけモジュールを使えたらとどれだけ思ったことか……! ほんの1%だけ消費オラクルが閾値を超えてエラーが出て……! たとえ回路が過剰負荷で焼き切れたとしても、一回だけでも撃ってみたかった……!」

 

「うわあ……」

 

「こりゃあ、相当バレットエディットをやりこんだクチだね……こんな悲壮感のある表情(カオ)、初めて見たよ……」

 

 使いこなすのが難しいため、バレットエディットに手を出す神機使いはほとんどいない。いたとしても、割とすぐに挫折する。大半の神機使いは既存の店売りのバレットを使うか、一部の職人と呼ばれる神機使いが製作し公開したバレットを流用することがほとんどだった。

 

「ですが! 難しいからこそ、思い通りのバレットを作れた時は堪らなくうれしいのです! 自分が作ったバレットを使ってもらった時なんてもう……! そう、バレットエディットは無限の可能性を秘めた、神機使いの希望そのものと言っていいでしょう!」

 

「う、うん……その、バレットエディットがすっげー難しいことだってのはわかったよ……」

 

「まあその、シエルちゃんの実体験についてはまた今度聞くことにして……ここでちょっとクイズ! バレットによって銃撃の威力が大きく変わるってのは今の説明で分かったと思うけど、同じ神機使いが、同じバレットを使っているのに銃ごとに威力が違うのはなんでだと思う?」

 

「え……」

 

 どこか自慢気に──あるいは挑戦的に微笑んだリッカは、からかうようにして言葉を紡いだ。

 

 

 

「さっき話した通り、銃の種類が同じなら口径も銃身(バレル)もほぼ同じ──つまり、メカ的な構造はほぼ同じになる。でも、そうであるにもかかわらず実際は威力が大きく変わるんだけど……さぁ、わかるかな?」




 バレットエディットってシステムは本当にすごいと思います。これ単体でゲームが一つできてもおかしくないくらいにシステムとして完成されていて、奥が深く、自由度も大きいです。まぁ、逆にそのせいで本当の意味で使いこなせている人はごくわずかだったと思うのですけれども。

 私も下手の横好きとしてちょこちょこ弄っておりました。ショートを愛用していたので、破砕属性は銃で受け持っていたのですが、破砕属性のバレットとして初期から店売りされているモルターは山なりの軌道なうえ射程も短くて扱いづらく、【重力の影響を受ける弾】を普通の直進する弾に変更して使い勝手を良くしていました。結局シンプルなやつが一番実用的なんですよね。

 あと、のうてんちょくげきだんの後ろのほうを改造して、【脳天直撃の軌道で着弾し、着弾点から回転する回復放射を放つ弾】を作ったりもしました。アラガミに張り付いて戦っている仲間を一斉に回復するってコンセプト自体は達成できたのですが、コスパがあまりよろしくなく、使える場面もよく考えたら限定的(味方が複数人も張り付く場面がほぼ無い、あったとしたら袋叩きしているときで、そんな状態なら回復の必要はない)で、普通にホーミング回復レーザーで充分じゃんってなりましたね……。

 最後に。

 【神】と【雷】の複合属性の神機が弱いわけがない。いいね?
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