「へへへー……!」
「ご機嫌だな、チハル」
「そりゃあね!」
私の背中の上で、なんともまぁ嬉しそうに笑うチハルちゃん。なんだかんだで直接顔を合わせる……というか、こうして一緒に外に出るのは五日ぶりってところかしらん? 私の買い被りでなければ、久方ぶりのおでかけにご機嫌になっているって感じ。ウチの娘ってば可愛すぎか?
なんか一人お邪魔虫もいるけど、寛大な私は許してあげることにする。娘の友達を背中に乗せてやるこの度量のデカさ。自分で自分が恐ろしくなっちゃうっていう。
「早くアラガミ出てこないかなあ……! もう、何でもいいからぶっ放したい気分!」
「物騒なこと言うなあ」
「…………普段のキョウヤくん、もっとひどいこと言ってるからね?」
おまけにおまけに。
チハルちゃんってば、なんとおにゅーの神機を携えていたりする。どうやらようやっと神機が直った……っていうかコレ、多分完全新規製作だろうな。ゲームじゃ見たことがないデザインしているし、さっき「おそろい!」って言ってたから、きっと私の素材を使って作られた神機なのだろう。
なんとなく、マルドゥークの神機っぽい感じはする。ただ、私が知っているそれよりもチハルちゃんが持っているその白い神機は何百倍もイケメンだ。できることなら私が使ってみたいくらい。
……ではあるんだけど、なーんかそこはかとなく嫌な予感というか、【雷】と【神】の複合属性っぽい気がするんだよなあ。【剣の達人】とかついてないといいんだけど……そういや遺された神機とかスキルインストールとかってどうなってるんだろ?
まぁ、なんにせよ。
──ルゥゥ!
「……こいつもご機嫌だな」
「そりゃあね!」
なんとなくそんな気分になったので、スピードをちょっと上げてみる。しっかり大地を踏みしめて、風を切りながら走ることのなんと心地の良いことか。ドライブデートにしては少しばかり景色が荒廃しすぎているのは否めないけれど、誰もいないこの大地を存分に駆けられるってのは気分がすっきりする。
……私の素材で作った神機を使ってくれるって、なんだかちょっと照れくさいというか、面はゆいというか。ちょっと胸がどきどきしてクセになっちゃいそう……アブナイ扉を開きそうになっちゃうっていう。こんな気持ち、アラガミにならなきゃ絶対に味わえなかったことだろう。
「今日は軽くコクーンメイデンを狩るんだろ?」
「うん! ルーちゃんの好物だし、ここからちょっと離れたところでまた微妙に大量発生しているんだって。あと、騎乗射撃の練習にちょうどいいかなって思ったの!」
「ちょっと的にしては小さめだが、動かない分やりやすい……か」
「あと、私ブラストだから移動しながらの射撃自体が経験ないんだよね。……ちゃんと教えてよね、キョウヤくん?」
「へいへい、仰せのままに……うん?」
おん?
どうしたお前、トイレか? ちゃんと出発前にあれほどトイレ大丈夫かって聞いたろ? 男の子なんだからその辺の茂みで適当に立ちションでもしとけっていう。
「おいルー、ちょっとストップ」
とんとん、とキョウヤが踵で合図を送ってくる。何気にこいつ、チハルちゃんに次いで私の扱いがわかってきているというか、悔しいことに「やりやすい」んだよな……。
──ルゥ?
「どしたの、キョウヤくん?」
「いや……いま、視界の端に何かがキラッて反射した気がする」
「反射ぁ? 水たまりとか金属片とか、そーゆー感じのアレ?」
「金属っぽい感じなんだが……動いていた、と思う。瞬いてるっていうか、チカチカってなってたから」
だから違和感があった──と、キョウヤがつぶやいている。前から思ってたけどこいつ、なんか地味に目が良いんだよな。
「あと」
「ぬ?」
「……気のせいかもだけど、なんか、紅かったような」
……えっ?
「ルー、ちょっとジャミングつかってくれねえか? たぶん、あっちのほうだ」
もしかしたら、ボルグ・カムランの堕天種かも……なんて、キョウヤが話しているけれども。
紅くて、金属質で、何よりこの時期ってことは。
──ルゥ。
ジャミング……ではなく、ビリビリパワーのユーバーセンス(仮)をちょっと広めに発動。いつものコクーンメイデンやらザイゴートの反応のほかに、キョウヤが指示した方向にて割とデカめのオラクル反応が一個。なんとなくだけどあまり感じたことのないレアもので、たぶん食べたらすっごく美味しいやつ。
──ルゥ!
「お」
「何か見つけたのかな?」
とりあえず走る。せめて、目視確認の一つはしておきたい。
私が美味しそうに感じるってことは、つまりめちゃくちゃ強いアラガミってことなわけで。相手がどんなやつなのかってくらいはきっちり見定めておかなくっちゃならない。
それにたぶん……予想通りなら、私がこの場で始末するのはあんまりよくないだろう。タイマンでも楽勝で倒せると思うけどね。
「よっぽど美味そうなやつなのかな? ……コクーンメイデンの突然変異種とか?」
「変なこと言わないでよ……それよりも、その、もっとせくしーになったサリエルの変異種のほうが可能性あると思う」
うーん、どっちもすごく興味があるけれども。前者は味覚的に、後者は視覚的に。あと地味にチハルちゃんからの偏見(?)に泣きそう。間違ってはいないので何の反論もできないのが悲しいところだ。
いずれにせよ、そんな面白そうなものじゃないんだろうな。
「全然わかんないけど……キョウヤくん、見える?」
「……うげ」
──いた。
小高い丘と、あとなんかよくわからん廃屋の上に登った──その、一番見晴らしの良いところ。周囲を一望できるそこだからこそ、遥か彼方の向こうのほうで……お日様の光をキラキラと反射させる、凶悪なその紅い体を見つけることができた。
「……チハル、残念なおしらせだ」
「……聞きたくないけど、言って」
「ボルグ・カムランじゃない……ありゃ、新種のアラガミだ。それも結構ヤバそうなやつ」
「つまり……」
「──デートは中止だ。さっさと撤退するぞ」
▲▽▲▽▲▽▲▽
「紅いカリギュラ……のように、俺には見えました」
支部長執務室。キョウヤの口から紡がれたその言葉を聞いて、ギルの目の前は真っ白になった。
「少なくとも、カリギュラっぽい形の紅いアラガミってのは間違いないっす。遠目からだったんで、細部まではわからないですけど」
この支部長執務室に集まった神機使いたちを相手に、キョウヤが目撃したことを説明している。コクーンメイデンを狩りにチハル、ルーと一緒に出掛けたのに、そんな正体不明のアラガミを見つけたため任務を中止して切り上げてきたのだ……と、説明している。
この極東だ。凶悪なアラガミが出現したり、今までに見たことがないアラガミが出現したりするのは日常茶飯事なのだろう。説明を聞いている榊やほかの神機使いもそこまで驚いた様子は見せていないし、そしてギル自身、まだここに来てから日が浅いとはいえ、それを理解しつつある。
だけど。
今回に限って言えば。
「……どこで見た!? まさか見間違いだなんて言うんじゃねえだろうな!?」
「うおっ!?」
ギルは、キョウヤの肩口を掴まずにはいられなかった。
「答えろ! どこで見た!?」
「いっつつ……おい、ギル? お前、何をそんな──」
「良いから答え──!?」
「落ち着け、ギル。……お前、 頭に血が上りやすいのは変わんねえんだな」
周りのことが見えなくなっていたギルを宥めたのは、ハルオミであった。
「……ハル、さん。俺……その、すみません」
「謝る相手は俺じゃないだろ?」
「あ……すまん、キョウヤ」
「お、おう……別に良いけどよ。お前、大丈夫か? 顔色めちゃくちゃ悪いぞ?」
大丈夫だ、と言ってギルは帽子を目深に被りなおす。本当は全然大丈夫ではないのだが、わざとらしいくらいに大きく深呼吸をして、無理矢理呼吸を落ち着けて。そして、気合いを入れなおすように両頬を叩く。
ロミオも、ナナも、シエルも。仲間がみんな、心配そうにこちらを見ているのがギルにははっきりとわかる。だからこそ、これ以上無様な醜態を晒すわけにはいかなかった。
「……紅いカリギュラなんて、そう何体もいるはずがない。十中八九、
「……ギル」
「だから……あいつは、俺が倒す」
それだけ言って、ギルは支部長執務室を後にする。もしギルが本当に冷静だったのであれば、倒すための段取りやさらなる情報収集のためヒアリングをつづけたのだろうが、それに思い至っていないという事実が、今のギルの心境を物語っていた。
「ね、ねえハルさん……なんか、明らかにギルの様子がおかしかったけど。その、紅いカリギュラってなんなのさ……?」
みんなが気になっていたことを、ロミオが不安そうに口にする。実際、今までギルがあんな風に取り乱したことなんてなかったし、そういう人間でもなかったのだから、そう感じるのは当然のことだろう。
それに対して、ハルオミは。
「んー……そうだなあ」
少しばかり、考えるそぶりを見せてから言った。
「あいつの……いや、俺たちの因縁の相手ってところだな」
これ以上は、デリケートな話題になっちまうからな……とハルオミは続ける。なにかセンシティブな裏があるのは誰が見ても明らかで、さすがにこれ以上話を広げようとする人間はここにはいない。【これ以上話をしたくない】と暗に告げるという意味では、ハルオミが取った選択肢は最上と言っていいだろう。
「……」
ただし。
話をしたくない──過去を詮索されたくないために部屋を出ていったギルとは違って。
ハルオミが話をしたくなかったのは、ギルとは全く別の理由によるものだ。
「なあ、副隊長さん……と、チハル」
「……はい?」
「わ、私ですか?」
だから、ギルとは違って大人なハルオミがそう告げるのも、ある意味では当然のことだった。
「今晩、ラウンジに来てくれないか? ちょっと一杯、付き合ってほしいんだ」
▲▽▲▽▲▽▲▽
「どういうことだよ、ヒロ……!」
翌日。
朝のかなり早い時間。ミッション受注カウンターのその目の前で、ギルは周りの目も気にせずにブラッド隊の副隊長──立場上は上官にあたるヒロに対して、語気を強めて言い放った。
「なんでお前が、あのカリギュラの討伐任務を受注してるんだよ……!!」
ほかの誰にも任せたくなかったから。だからギルは、朝一番でこの受注カウンターにやってきたのだ。自分よりも先に来ていた神機使いはいなかった……より正確に言えばいないこともなかったが、ともかくカウンターに並んでいたのは間違いなくギルしかいなかった。そしてカリギュラの討伐資格を持つ神機使いの数はこの極東でも多くない。
だから、万が一にもその任務が【横取り】されることなんてないはずなのに。
蓋を開けてみれば──すでに受注済みになっている。それも、受注者はほかでもないヒロだ。
「アラガミの討伐任務が発行されるのは、よほどの緊急事態でもない限りは最速で翌日のはずだ! 今来たばかりのお前がどうしてもう受注してるんだよ!」
考えられるとするならば。
副隊長という立場を利用して、特例的にねじ込ませた。
「お、落ち着こう? カウンターの目の前でそんな大声出したら、みんなの迷惑になっちゃうから……」
「……」
焦ったようなヒロの言葉。まったくもってその通りなので、ギルは黙るしかない。
そして……自分の言葉を否定するでもなく、反論するでもなく、ただ『落ち着け』と言ってくれたおかげで。そのおかげでギルは、どうにかこうにか最低限の落ち着きを取り戻すことができていた。
「……」
ふう、とギルは大きく呼吸をする。
なるべく務めて冷静に考えれば……きっとこの心優しい副隊長は、自分のことを慮ってこんなことをしたのだろう。何もしなければ一人で討伐任務に出撃しかねないと踏んで、普段は絶対に行わないような強権行為に踏み切ったのだろう。
冷静。そう、今の自分は冷静だ。そういう風に行動の裏を読めるくらいには、頭が冴えている。
少なくとも、そういう風に思ってもらわないと困る。それが、ギルの出した結論であった。
「ヒロ……たぶん、お前は俺のことを心配してこんなことをしたんだろう。……ジュリウスかハルさんあたりに聞かされたか……いや、調べりゃすぐに俺の事情なんてわかることだからな」
「ギル……」
「だけどよ」
どうしても、こればっかりはギルも譲る気はなかった。
「これは俺の問題で、俺がやるべきことだ。……これ以上、関わるな」
少し悲しそうな……いや、寂しそうな顔をして。ヒロは、はっきりと答えた。
「仲間を支えたい……それだけじゃ、ダメかな?」
「……っ!」
ダメなわけがない。そんなの、ほかでもないギルが一番よくわかっている。もし逆の立場ならギルだって同じようなことをしただろうし、もしロミオが似たようなことをしたら……即座に拳骨でブン殴って、一緒にアラガミを討伐した後にもう一度ブン殴るだろうと断言することさえできる。
「だが、それでも……!」
「あー、お取込み中のところ悪い!」
割り込んできた声。
ある意味予想通り、そこにはいつもの飄々とした笑みを崩さない先輩がいた。
「副隊長さんは、俺が巻き込んじまったんだ」
「ハルさん……!」
ちょっと不思議なのは。
「……チハル?」
「……お、おはよーございます」
どういうわけか、ハルオミの隣には少々おどおどした様子のチハルがいる。今日はいつものお気に入りの赤いバンダナではなく、やや青みの強い紫色──
「ったく、お前こんなに早起きだったか? それともアレか、居てもたってもいられなかった……ってか?」
「ハルさん……」
ある意味お前らしいよ──という、ハルオミの冗談めいたその言葉。そんな雰囲気を崩さないまま、ハルオミはごくごく自然に、いつもと全く変わらない様子でさらっとその言葉を言い放った。
「ギル、四人で行こう」
正確には、四人と一匹だけど──というハルオミの小さなつぶやきは、しかし今のギルには聞こえない。
「いくらハルさんの言うことでも……!」
「なあ、ギル」
「……」
「これは、俺の問題でもあるんだぜ? それにもし俺が一人で行ったとして、お前……黙って見ているか?」
そんなはずはない。もしそんなことがあったとしたら、たとえ服務規程違反で処罰されようとも、ギルは神機を持ち出してハルオミを追うことだろう。たとえハルオミに拒絶されたとしても、共に戦うことだろう。
いくらハルオミが熟練の神機使いだとしても、相手はあの紅いカリギュラだ。一人で戦わせるだなんて、絶対にあってはならないことだ。そんなことをすれば、おそらく。
「……っ!」
──そこまで考えて、ようやく。
ギルは、自分がしようとしていたことが何なのか──ひいては、この尊敬する先輩にどんな思いをさせてしまうところであったのかということに、気づくことができた。
「……すんません。目の前の事しか、考えられなくて……」
「いいんだよ、似た者同士だ。……なあ、二人とも?」
ハルオミの言葉にヒロはしっかりとうなずき。そしてチハルは、あいまいに笑いながらも小さくうなずいた。
「聞いたよ、ギル。ギルの昔のこと……それと、ケイトさんのこと」
「わ、私も……その、勝手に聞いちゃって、ごめんなさい……」
「……いや、いいんだ。調べりゃすぐにわかるし、別に隠しているわけでもねえからな」
それに、どうせハルさんから無理矢理聞かせられたんだろ──と、ギルは精いっぱいのぎこちない笑みを浮かべる。
言うようになったな──と、ハルオミはギルの肩をやさしく小突いた。
「まぁなんだ、なんだかんだ言ってもあの紅いカリギュラをどうにかしたい気持ちは俺も同じさ。そりゃ、無理して倒そうとまでは思ってないが……倒せる機会をみすみす逃すつもりもない。ここまでは、いいよな?」
あの紅いカリギュラはギルの因縁の相手であると同時に、ハルオミの因縁の相手でもある。ギルよりも精神が熟達しているためにギルほど取り乱していないというだけで、ハルオミだってあの紅いカリギュラを倒したいという気持ちは変わらない。
ギルとハルオミが違うのは、ただ一点。
ギルは自分の手で決着を付けたかったのに対し──ハルオミは、無事に
「やるなら全力で、だ。出来得る限りの戦力を集めて、確実にあいつを倒そう。三年前にグラスゴーに現れたあの日から、あいつは全く姿を見せなかった……この機会を逃したら、次にまたいつ姿を現すのかわかったものじゃない」
あの日から、各支部を転々と渡り歩いていたハルオミでさえその噂すら聞くことができなかったのだ。今回は、まさに千載一遇のチャンスと言っていい。
「ブラッドアーツを操る副隊長さん。同じくブラッドアーツに目覚めたチハル。そして歴戦の猛者である俺……それに、お前。戦力としては十分だろ?」
「……むしろ、この中じゃ俺が一番足手まといって感じすらあるっすね」
「ははは、わかってるじゃないか! チハルの実力は、
「ちょ、ハルさん!?」
「わっ!?」
がし、と長年の付き合いのある友人のような──実際、長年の付き合いなのだが──そんな気安さを以て、ハルオミはギルの肩に腕をかける。引っ張り込むようにしてヒロの肩にも腕をかけて、そしてアイコンタクトを送ってチハルを自らの胸元に……そう、傍から見れば男三人で覆い隠すようなポジションに呼び寄せた。
「──ルーがいれば、カリギュラが逃げに徹したとしても取り逃すことはない。あいつの機動力はカリギュラのブースターにも劣らないし、ジャミングはユーバーセンスの役割も持っている。何より……すでにあいつは、カリギュラとの戦闘経験がある」
あの日、ハルオミが紅いカリギュラの追跡を断念した理由の一つであるその機動力。背中のブースターで逃げに徹された場合、神機使いの足ではどう頑張っても追いつくことはできない。たとえ相手が手負いだろうと、あの高速で空を駆けられてしまえば、もうどうしようもないのだ。
だけど、ルーがいれば。
ルーの機動力であれば、そんなの関係なしに追跡することができる。多少高く飛ばれようとも、雷で撃墜することができる。たとえカリギュラが物陰に身を潜めようとも、ユーバーセンスでその位置を割り出せるから意味がない。たとえ瞬間的に距離を離されようとも、その位置さえ分かっていれば……あの機動力と無尽蔵とも言えるスタミナで、確実に追い詰めることができる。
「……」
そして、あの戦闘能力。ルーが戦う姿をギルは何度か見かけているが、味方で良かったと何度思ったか数えきれないくらいだ。正直なところ、もしルーが普通のアラガミだったらギルは絶対にルーには勝てないだろうし、ブラッド隊として挑んだとしても、せいぜいが部隊を半壊まで追い込まれたうえで何とか撃退できるくらいではないか……と、そう睨んでいる。
そんなルーに加えて、ブラッドアーツを操るヒロに、チハルもいる。ヒロの実力はいわずもがなで、現状、ブラッド隊の中で自分と同等以上の実力があるとはっきり言えるのはヒロかジュリウスしかいないとギルは思っている。そのうえで、一緒に戦っていて戦いやすいのは、間違いなくヒロのほうだ。
チハルのほうは……純粋な技量ではまだ自分に分があると思っているが、やはりブラッドアーツが扱えるというのは非常に大きい。自分にはまだ扱えない技術であるのはもちろん、その単純な破壊力はブラッドの中でも噂になるほどだ。
加えて、このチハルという少女は小柄な体格に見合わずなかなか度胸があり、それでいて気配りが利いている。周りをよく見ていて、自分が持ち込んだ回復錠やOアンプルをさりげなく分け与えたり、あくまで安全優先とはいえ、隙を見て回復柱やホールドトラップを設置したり……と、さりげないサポートがすごく光るのだ。それも、神機を持たない状態で、である。
あと、単純にルーとのコンビネーションがすごい。現状、ルーに最も的確に指示を送り、一緒に戦えるのはチハルだけだ。神機を持っていないときもすさまじい活躍を見せていたのだから、神機を持った今は、さらなる活躍を見込めることだろう。
つまり。
「自分で言うのも何ですけど……っていうか、ここまでお膳立てされておいてアレなんですが」
この極東で隊長を任されるほどの実力があるハルオミ。
新進気鋭のブラッドアーツを操るヒロ。
同じくブラッドアーツを使い、サポートが光るチハル。
有無を言わせない圧倒的な実力を持つルー。
そして……こうして並べてみると幾分か見劣りしてしまうが、それなり以上に熟練の神機使いである自分。
「これだけそろってれば……万に一つもあいつに負けることは無い。むしろ、過剰戦力とすら思えてきますね」
ギルのつぶやきに、ハルオミは笑って答えた。
「言ったろ、俺もあいつをどうにかしたいって……これが大人の全力、本気ってやつなのさ!」
・令和のこの時代に、十年以上前に発売されたゲームの二次創作を見ているみなさんにあえて説明する必要はないと思いますが、ギルの過去(フラッキング・ギル)の詳細についてはゲーム本編をご確認ください。
・【神】と【雷】の複合属性……【剣の達人】……ウッ