GOD EATER:救雷の神鳴   作:ひょうたんふくろう

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84 グルメ・ツアー(ミッションコード:7407NO028)

 

【グルメ・ツアー】

 

◇ミッションコード

 7407NO028

 

◇ミッション目的

 作戦エリア内のアラガミの掃討、巡回および香月ナナの《血の力》の制御。

 

◇ミッション概要

 極東管轄エリアの広範囲において、多数のアラガミのオラクル反応が確認された。民間の輸送隊の移動ルートやサテライト拠点の近辺にもアラガミのオラクル反応が確認されているため、複数部隊による大規模掃討作戦を実施する。

 なお、本任務は香月ナナの《血の力》の制御も目的とし、特例的に複数の作戦エリアを跨いで実施するものとする。香月ナナは複数の作戦エリアを所定のルートに則って移動し、《血の力》によるアラガミの誘引および《血の力》の制御を試みる。また、彼女の《血の力》で誘引されたアラガミを各種ポイントで待ち受ける神機使いが迎撃し、これを殲滅するものとする。

 

◇ミッション参加者

 

・神威1番隊

 神威ヒロ(上等兵/ブラッド/副隊長)

 香月ナナ(上等兵/ブラッド)

 台場カノン(上等兵/第四部隊)

 桜田チハル(上等兵)

 

・ヴィスコンティ2番隊

 ジュリウス・ヴィスコンティ(大尉/ブラッド/隊長)

 シエル・アランソン(上等兵/ブラッド)

 ソーマ・シックザール(少尉/クレイドル)

 

・雨宮3番隊

 雨宮リンドウ(少尉/クレイドル)

 アリサ・イリーニチナ・アミエーラ(少尉/クレイドル)

 榎本ケイイチ(新兵)

 松宮レイナ(新兵)

 

・真壁4番隊

 真壁ハルオミ(少尉/第四部隊/第四部隊隊長) 

 ロミオ・レオーニ(上等兵/ブラッド)

 片桐キョウヤ(上等兵)

 

・藤木5番隊

 藤木コウタ(少尉/クレイドルおよび第一部隊/第一部隊隊長)

 ギルバート・マクレイン(曹長/ブラッド)

 エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ(新兵/第一部隊)

 エミール・フォン・シュトラスブルク(新兵/第一部隊)

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

「それじゃ、いっくよぉーっ!」

 

 さて。

 さてさて。

 さてさてさて。

 

 今日も今日とて、私の背中の上で元気いっぱいに叫ぶチハルちゃん。今日はピンク色の春らしいバンダナでばっちり決めていてとってもオシャレさん。なんだかこのままどこまでも走り出して、どこか良い感じの場所でピクニックでもしたい気分っていう。

 

「今日は全力でアラガミ食べ放題だからねっ! 良いって言うまでアラガミを食べ続けなきゃダメなんだからねっ!」

 

 マジかよなにそれ最高かよ。もしかして天国はここにあったのか……?

 

「ナナちゃんも、具合が悪くなったら無理せず言ってね? そのときは適宜休憩をとるようにするから!」

 

「本当に、遠慮なんてしなくていいですからね? 私、こう見えても衛生兵ですから!」

 

「あ、あとムツミちゃんからおでんパンをお弁当で作ってもらったから。お腹が空いたらいつでも言ってくれ」

 

「みんなぁ……!」

 

 私の背中の上で繰り広げられるやりとり。なんとも珍しい組み合わせというか、今日はチハルちゃん、ヒロくん、ナナちゃん──そして、カノンちゃん様が一緒。思えばカノンちゃんと一緒に出撃するのもずいぶん久しぶりというか、何気に両手でギリギリ数えられるくらい少なかったりする。今の会話を聞く限り、この人選には何やら明確な意図があるようだけれども……。

 

 

 ──ルゥゥ……!

 

 

「……なんか唸ってるね、ルー」

 

「これは……”おなかすいた!”の鳴き声かな?」

 

「チハルちゃん、わかるんですか?」

 

「もっちろん!」

 

 めっっっちゃおなかすいた!!

 

 というか、なんかすんげえ良い匂いがするの!!!

 

 まずカノンちゃん。たぶん今日もまたお菓子を持ってきているっぽい。クッキーのようなケーキのような、そこはかとない甘い香りを私の鼻は確かにとらえている。エイジスに会いに来てくれた時くらいしかカノンちゃんのお菓子は食べられないし、そして私はサイズがサイズだ。全然食べた気になれない分、余計にそれが恋しくなってしまうというか。

 

 そして、それ以上に良い匂いがするのがナナちゃん。なんだろね、この前はクッキーとかはちみつのようで、それでいてバター醤油みたいな食欲刺激しまくりんぐな香りだったのに、今はもう完璧全力で焼肉かバーベキューって感じの匂いなの。とりあえず肉、とにかく肉、良いから黙って肉……って感じの、まさに肉々しい肉ッ!! って感じの良い匂い。

 

 いやもうマジで原始的な本能を刺激されるというか……許されるなら、ぺろりとその体を舐めてしまいたいくらい。だってもうお口の中マジで焼肉な気分なんだもの。ちょっぴりにんにくの入った濃いめの焼肉のタレが恋しいですわァ……!

 

「今のうちに言っておくね、ルーちゃん」

 

 はいはい、ママはあなたの言うことは何でも聞いてあげますよう……っと。

 

「今日はナナちゃんの《血の力》の制御が目的だからね。《血の力》でアラガミがめっちゃ寄ってくるんだけど……私たちは、とにかくアラガミを引き寄せる! 目の前に立ちふさがったやつだけ食い破って、それ以外はほかの人たちに倒してもらうの!」

 

 あーね、なるほどね。《誘引》でアラガミを引き付けまくって、夢中にさせているところを横かあるいは後ろから攻撃して削っていく感じね。常に移動し続けるから囲まれてボコられる心配はないし、削り役もぶっちゃけ安全地帯から不意打ちするようなものだから危険性はかなり低い……と、至れり尽くせりな作戦ってわけだ。

 

「みんなが待っているポイントを順々に巡っていく感じになるけど、今日は遊んでもらえないからそのつもりでね? あと、ぶわーってやつは今日は普通に使っていいけど……定期連絡をするから、合図をしたら止めてくれる?」

 

 ──ルゥ!

 

 あいあい、りょーかい。なんとなくだけど状況が読めてきましたよっていう。つまり私は……というかこのチームは誘蛾灯役ってワケだ。そのままだったらアラガミに囲まれて大変なことになっちゃうけれど、私という最強無敵で完璧なママがいるからこそ実現できるパーフェクトな作戦……この大胆さ、さては発案は榊博士だな?

 

 まぁでもなんだ、つまるところ走り回ってアラガミを喰らい尽くすってだけ。難しいことは偉い人たちに任せて、私はただいつも通りアラガミを美味しく食べればいい。どうせ何匹こようと私に敵うわけないんだから、マジでいつもとやること変わらないっていう。

 

「ナナ……準備はいい? 俺もできるだけ、ナナをちゃんと《喚起》できるように頑張るから」

 

「ヒロ……うん、いつでも大丈夫。ごめんね、変なことに巻き込んじゃって」

 

「そこはありがとうって言ってほしかったな……まぁ、早いとこ終わらせてまたみんなでご飯を食べようよ」

 

「……うんっ!」

 

 そうして、ナナちゃんの嬉しそうな声が聞こえたかと思えば。

 

 私の背中から、焼肉真っ盛りな感じのいい匂いがあふれ出した。

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

「ひゃっはー!」

 

 食べ放題だぜぇぇぇぇ!!

 

 群がってくるアラガミの大群。右を見ても左を見ても、もちろん前を見てもアラガミでいっぱい。オウガテイルやザイゴートなんかの小回りが利くアラガミが今のところは多いけれど、コンゴウやグボロ・グボロ、サリエルにヴァジュラ……と、よく見るいつものメンバーもいっぱい。今までどこにこれだけ隠れていたんだって問い詰めたくなるくらい。さすがはアラガミの動物園っていう。

 

 ──ルァァァ!!

 

 ──ギャアアアア!?

 

 で、目の前にいる奴だけ食べまくる。すれ違いざまにガブっとやるだけの簡単なお仕事。日本人としてはこう……きっちり余すことなく食べきってしまいたい所だけど、今日はそんな時間はないので一番美味しそうなところ……具体的にはコアのあたりだけを噛み千切ってあとはポイ。バチが当たりそうな食べ方だけれど、バチを与える神様が食い千切られてるんだから世も末っていう。

 

「ナナは《血の力》を開放することだけに集中して! 守りは俺がなんとかするから!」

 

「う、うん……!」

 

 私の背中の上では、ナナちゃんが《血の力》を解放しようと頑張っているっぽい。さっきから焼肉みたいな美味しそうな匂いがぷんぷんしているんだけれども、時折それが強くなって……炭火焼肉のような、バター醤油のような、味噌とかニンニクみたいな匂いが混じることがある。たぶんコレが《誘引》を使ったときの匂いなのだろう。いまだ安定していないところを見るに、この様子だとまだまだ時間がかかりそう。

 

 今更ながら、ヒロくんが一緒なのは《喚起》するためか。……これ、制御できていないだけで《喚起》自体はできてるんじゃないのかね? まぁ細かいことは考えても仕方ないから別にいいか。

 

 ──ルゥゥゥ!!

 

 ──アアアアア!!

 

 そしてやっぱり、アラガミがいっぱい。もはやわんこそばレベル。食べても食べても向こうからやってくるんだもん、これだけ楽しいことはそうそうない。

 

 ……いや、冷静に考えるとだいぶヤバいよね。いくら極東と言えど、ここまで大量のアラガミに囲まれたら辞世の句を詠む覚悟を決めなきゃいけない感じ。私がいるから大丈夫だけれど、私がいなけりゃ絶体絶命大ピンチ間違いなしっていう。

 

「よーし、命中!」

 

 右前方、私のほうに狙いを定めていたザイゴートが落雷のような音と共に盛大に弾け飛ぶ。どうやらチハルちゃんがブラストをぶっぱなしたらしい。どぅん、どぅんとあちこちにバカスカ撃っていて……銃声が聞こえる度に、ちょいと遅れてアラガミの叫び声が続く。

 

「やっぱり強いなあ、ルーちゃんの銃は!」

 

 そうでしょう、そうでしょう。なんたってその銃、ママのケツの毛をむしり取って作られた銃だもの。冗談でも比喩でもなく割とマジで。あと、何度も神機でケツを齧られたものだから、地味にあの辺十円ハゲみたいになっているっぽいんだよね……。まぁ、すーすーして悪い感じじゃないんだけどさ。

 

「まだまだ全然余裕だからね! もっと全力で《血の力》を使ってもらって大丈夫だよ!」

 

「う、うん……! 私、頑張ってみる!」

 

 道をふさぐヴァジュラの大胸筋のあたり。なんかこう、ぷちぷちって感じの食感がとってもデリシャス。噛み応えがそこそこあるのと、濃厚なのになぜか後味はさっぱりしている感じが堪らない。

 

 シユウは頭からぱっくりむしゃむしゃしてやるのが最高。上半身を丸ごと一口で頂けば、いかにも焼き鳥っぽい素敵な味がお口いっぱいに広がってとっても幸せな気分になれる。惜しむらくは、ボリュームが少なめでたくさん食べないと満足感を得られないところだろうか。

 

 ボルグ・カムランは……口直しにはいいけれど、コイツ見た目の大きさの割には可食部が少ないのがなあ……。味は決して悪くないのに、その分がっかり感も一入というか。腕の盾をおせんべみたいにバリバリ貪るのがきっと正解なのだろう。

 

 クアトリガはね、体に流れているオイル(?)が意外と絶品なんですわ。見た目通りドロッとしていてとても飲めたものじゃないんだけど、その脂っこさが逆にクセになるというか。食べている時は「二回目はないかな」って感じなのに、気づけばあの脂っこさが恋しくなってくるというか。食べられるところがいっぱいあるのもイイネ!

 

 ──ルァァァ!!

 

「いっぱい食べてね、ルーちゃん!」

 

 焼肉食べ放題、あるいはホテルのバイキングか。ああいうのって本当にわくわくするというか、冷静に考えるとそこまでお得ってほどじゃないのにすっごく楽しいよね。やっぱ人間、そこそこの質のものを何も考えずおなかいっぱいに食べたいときってあると思うのよ。

 

「チハル! もうそろそろジュリウスたちがいるポイントじゃないか!?」

 

「うん! ……ルーちゃん、飛んでるやつを中心に雷で!」

 

 あいあい、りょーかい。

 

 範囲は広め、背中のマント状の発電器官は使わない程度の威力で全方向に向けてビリビリパワーをぶっ放す。小型のアラガミはほぼ無力化できて、飛んでるやつは大体落ちた。無事なのもいるけれど……ありゃダメだ、炭化した足がボロボロ崩れているし、もう使い物にならんね。無事って言ったけど全然無事じゃねえや。見た目こそなんともないやつも、ぴくぴく痙攣するばかりでまともに動けそうにない。

 

 ……なんて思っている間に、アラガミのお代わりがやってくる。最高かよ。

 

 ──タァン!

 

 あら。

 

 膝をついて蹲っていたシユウ(堕天種)の頭が吹っ飛んだっていう。

 

「──シエルちゃんだあ!」

 

 すげーな、この距離から頭を撃ち抜くか。確かにスナイパーのブラッドバレッドって超長距離弾とか結合阻害弾みたいな便利で使いやすいものが多かったけれど……明らかにゲームの時より距離があるのに、ホーミングなしであの小さな目標を撃ち抜くのはさすがっていう。

 

「お、おー……ジュリウスとソーマさんが、アラガミをぶった切りまくってる……」

 

「やっぱソーマさんもジュリウスさんも強いなあ……! なんで一撃でアラガミを真っ二つにできるんだろ……?」

 

 前方……ではなく、もはや斜め後ろの方にて、ソーマとジュリウスがアラガミをばったばったと薙ぎ払っている。ただでさえ横からの不意打ちなうえ、相手は痺れてろくに動けないような連中だ。この二人にとってはサンドバックにすらなっていないみたいだし……ついでに言えば、後方からのシエルちゃんの支援射撃もある。お手本みたいな動きで安心感が半端ない。

 

「この調子で次のポイントに行ってみよ……ぬ?」

 

 おや。

 

「ね、ヒロくん……あれって」

 

「……嘘、だろ」

 

 あらあら、まあまあ。

 

 遥か彼方、前方に見えるは……すっげー懐かしのあのお方じゃありませんか!

 

「こ、こんなところにテスカトリポカ……? しかもなんか、微妙に色が違うような……」

 

「──違うよ、チハル。アレはテスカトリポカじゃなくて……ポセイドンだ」

 

「……ぽせいどん?」

 

「クアトリガ神属の第二種接触禁忌種だ。元々珍しいアラガミで、三年前を最後にめっきり姿を見なくなったって話だけど……」

 

 ポセイドン。【神】属性っぽい色をしたテスカトリポカのコンパチアラガミ。ひとたび力を開放すれば周囲は瞬く間に焦土と化す……と言われるほどの高火力を有すると謡われるアラガミだけれど、ぶっちゃけマジでテスカトリポカと変わらなくてだいぶ影の薄いやつ。ついでに名前の割に作れる装備も大したことがなかったような。

 

 んで、元々DLC専用のアラガミだったとはいえ……GE2ではすっかりリストラされちゃうっていうね。同じDLCでも、ヴィーナスはちゃんと続投できたのに。いや、ここはDLCのアラガミもしっかり存在するという事実が知れただけ良しとしようか。それってつまりヴィーナスもいるってことだし!

 

「強いの……?」

 

「ものすごく、ね。ひとたび暴れ出したが最後、周囲が更地になるそうだよ」

 

「な、なんでそんなのが……も、もしかして私のせい……?」

 

「ううん、ナナちゃんのせいじゃないよ。いや、引き寄せられたのはナナちゃんの《血の力》のせいかもしれないけど……こーゆーのは、極東(ここ)じゃ割とよくあるってコウタさんが言ってた」

 

 接触禁忌種が出るくらいじゃいつものことだ。接触禁忌種のはずのラーヴァナが難易度2のミッションの討伐対象になっていたりするし。ヒト型アラガミが出現したり、オオカミ型イケメンママアラガミだって出現するのだから、この程度には早々に慣れてもらわないと困るっていう。

 

「次のポイントにいるのは……リンドウさんたちか。リンドウさんとアリサさんがいれば絶対大丈夫だけど……ケイイチとレイナちゃんが一緒にいるのはちょっと不安かも」

 

「じゃあ、ここで倒す?」

 

「うん。ルーちゃんなら絶対負けないもん。……ちなみにヒロくん、ポセイドンの弱点って」

 

「【神】属性だね。でも、装甲はガチガチで剣撃はほとんど通らない。一番効果的なのが、銃で頭や兜を狙うこと」

 

「……詳しいんだね?」

 

「ほら、この前キョウヤと一緒にアラガミを調べていたから……や、やましい意味はないからね!?」

 

「ふぅん……まぁ、そういうことにしておいてあげようか」

 

 テスカトリポカが倒せれば、普通にポセイドンも倒せると思うよ。セオリー通りに攻撃すれば全く問題ないし、あいつの頭は【ないぞうはかいだん】も【のうてんちょくげきだん】もめっちゃ通るし。銃禁止で戦闘したとしても、前面装甲を開いた瞬間にタコ殴りすれば大体ひるんでハメられちゃうもんね。

 

「じゃ、とりあえず先制で何発か撃ち込も──」

 

「──撃っていいんですよね?」

 

 あら。

 

 この声は、もしかして。

 

「もう、さっきからずっと……撃ちたくて撃ちたくて、しょうがなかったんです」

 

 がしゃこん、と神機を構える音。

 

 うふふ……と、どこか暗い笑い声。

 

「だって……しょうがないじゃないですか。こんなに撃ち放題なのに、お預けなんてされたら……もう」

 

 ぎゅぃぃん……と、特徴的な音。直接触れているからこそわかる、オラクル反応の高まり。たぶんだけどコレ、強制解放剤使ってバースト状態になってるね。

 

 

 

 

 

「──あはッ♪」

 

 

 

 

 

 私の背中の上で立ち上がったカノンちゃんが。

 

 なんかヤバそげな笑い声と共に、クソデカオラクル弾をぶっ放した。

 

 

 

 ──ドォォォン!!

 

 

 

「「ひゃっ!?」」

 

 前方で広がる大爆発。あまりにも規模が大きいせいで、アラガミの悲鳴さえもかき消している。爆炎の向こうでポセイドンのシルエットがゆらゆら揺らめいているのはわかるけれど……あれっ、ブラストの砲撃ってこんなにヤバい火力出せたっけ……?

 

「あはは! あは、あははははは!」

 

「ひええ……!」

 

「うっひゃあ……!?」

 

 バカスカ、バカスカ、どぉん、どぉんってカノンちゃんがブラストを撃ちまくっている。着弾するたびに熱い爆風が私の顔を撫で、そしてたぶんチハルちゃんのコートをばたばたはためかせているっぽい。きっとカノンちゃんのスカートと髪もカッコいい感じに揺れているのだろうけれど……その姿を見られないのがなんとも残念でならない。

 

「無様だねェ! ちょっとくらい撃ち返してきたらどう!? このままじゃ穴だらけになっちゃうよォ!?」

 

 ──ギャアアア!?

 

「いいねェ、いいねェ! もっと聞かせてよ、あなたの素敵な悲鳴を!」

 

 ──アアアアアア!?

 

「ほォら、お代わりあげる! 好きなんでしょ、こういうの!」

 

 断続的に響き渡る爆発音。なかなか容赦がないというか、カノンちゃんは割と的確に爆炎の中に弾をブチ込んでいる。誤射姫なのにこうも狙いが正確なのは、もしかして銃撃だけに集中できるというこの環境のおかげだろうか。

 

「ち、チハルちゃん……!? カノンさん、どうしちゃったの……!?」

 

「カノンさんは、その……銃を握ると、ちょーっと性格が変わっちゃうの……」

 

「いや……いやいやいや……。どう考えても”ちょっと”のレベルを超えてるんじゃ……。キョウヤだって銃を握ると性格が変わったけど、これはあまりにも……」

 

「ヒロくんの言いたいことはわかるよ……でもね、これはもう”そういうもの”だと思って受け入れたほうが良いって、先輩たちが言ってた」

 

「「……」」

 

 ちなみに、今もなおカノンちゃんは上機嫌で高笑いしながらぶっ放してます。耳元近くで景気よく撃つものだから、ちょっとお耳がじんじんしてきちゃいましたわァ……!

 

「カノンさんが一緒にいるのはね。衛生兵だからいざってときにナナちゃんのことを診られるのと……」

 

「……」

 

「大量のアラガミに囲まれた状況において、最も効果的な騎乗射撃ができるからなの。見ての通り、威力()すっごいからね」

 

「……」

 

「普段は、その……誤射率がちょびっとだけ高めなんだけどね。今は銃撃だけを考えればいいし、どこに撃っても当たるから……ちょっとだけ、いつもよりテンションが上がっちゃってるのかも?」

 

 あらまあ、ウチの娘ったら。最大限に配慮しているというか、めちゃくちゃ慎重に言葉を選んでいる感がひしひしと伝わってきますわ。

 

 ……あーあ、ポセイドンはもうほとんど虫の息だ。オラクル反応がみるみる弱くなっていて、何もしないでもあと数分のうちにはくたばりそう。いや、ここまで弱っていると別のアラガミに捕喰されるのが先か。まぁあれだけ強い弾を何発もブチ込まれればさもありなんって感じかしら。

 

「きゃははははッ! ねぇ、もっと楽しませてよ!」

 

 ……つまみ食いくらいはいいかしらん? 食べたことのないコアだし、まだあの砲撃にもギリギリ耐えているはず。確実に止めは刺しておくべきだし、今ならミディアムレアくらいの良い感じの焼き加減になっていないかしら……?

 

 

 

 

『──……ぃ、……るか……──?』

 

 

 

 

 おん?

 

「あれっ……チハルちゃん、今何か聞こえなかった!?」

 

『──ちら、……オ! ……ぁ、える?』

 

「えーっ? あー……うん、ノイズ交じりに何か聞こえる……ような?」

 

 砲撃音に紛れて酷く聞き取りづらいけれど……チハルちゃんかヒロか、ともかく誰かに通信が入ったっぽい……いや、これ私のビリビリパワーのユーバーセンス(仮)のせいで通信がつながりにくくなってるだけか?

 

 ──ルゥ。

 

 どれ、ちょいと一瞬だけOFFにしますよう……っと。

 

『──おーい、聞こえる? こちらロミオ、聞こえるなら応答頼みまーす』

 

「……聞こえた!」

 

 とりあえず一瞬足を止める。なんかあからさまにカノンちゃんががっかりした感じで声を漏らしたけれども、ここは少し我慢してもらうほかない。あれだけぶっ放していたし、近くのアラガミもさすがに様子見しているというか、安易に近づかずにじりじりとこちらの隙を伺っている感じ……つまり、しばらくは砲撃音がすることもなかろう。

 

「ロミオくん? どしたの、何かあった? 定期連絡の時間じゃない……よね?」

 

『あ、通じた……いや、ちょっと変なこと聞くんだけどさ……』

 

「変なこと……?」

 

 はて、変なこととはこれいかに。声の調子からして、別に緊急事態ってわけじゃなさそうだけれども。でも、作戦中にわざわざ連絡を入れてきたってことは、それなりに大事な用件であるわけで。

 

『……なあ、ナナもチハルも、ルーと一緒にいるよな? 俺たちのポイントまではまだ来てない……よな?』

 

「え……? どういうこと……?」

 

「ロミオ先輩? 私もチハルちゃんもルーの背中に乗ってるけど……どうしたの?」

 

「……一応、ほぼ予定通りにルートを巡れているはずだよ。さっきジュリウスたちがいるポイントを通過したばかりだから、ロミオのところに行くのはまだ少し先になると思うけど」

 

『だよな……やっぱ、そうだよな。……ハルさん、キョウヤ。やっぱチハルたち、ジュリウスのところを過ぎたあたりだって……うん、普通にみんな一緒だって言ってる』

 

 ハルさんとキョウヤがロミオと同じチーム? 人選が限りなく謎だけど、別にピンチになっているっぽい感じもしないし……いやでも、この口ぶりから察するに、こっちに連絡するよう指示をしたのはハルさんってことか?

 

 ……いや、だったらどうしてハルさんとキョウヤが通信に参加していない? アレって個人間の通信じゃなくて、部隊毎のオープンチャンネル……であっているかわからんけど、ともかく全体チャット的なあれだったよね?

 

『……チハル、落ち着いて聞いてほしいんだけど』

 

「うわあ……なんかそれ、絶対想定外のヤなことあった感じじゃん……」

 

 

 

 

 

『──ルーみたいなアラガミが、いる』

 

 

 

 

 

 ……は?





・ブラッドバレッドはスナイパーが一番使いやすいのが揃っていて便利だった気がする。ショットガン? ……まぁ、私はあんまり使わなかったですね。

・ゼウス、ヘラ、ポセイドン……なんであんなにも影が薄いの……?

・GEBに比べて、GE2のカノンちゃんはだいぶ過激になっていると思う。

・GE無印のモブ顔カノンちゃんが「ボヤボヤしないでよね!」ってリンクエイドしてくれるのも好きでした。というか、会話シーンと戦闘中の口調があまりにも違い過ぎて、最初は同行させるキャラを間違えたかもって思っちゃいましたね。
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