問題だらけで草ァ!! -Toward the sky- <1st Season>   作:白鷺 葵

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【諸注意】
 1.この作品は『大丈夫だ、問題しかないから』シリーズのリメイク版です。
 2.『ガンダム00』を原作に、アニメ版『地球へ...』、及び『スーパーロボット大戦』や『Gジェネレーション』シリーズ等の要素とクロスオーバーしています。
 3.主人公含め、オリキャラが多数登場します。
 4.キャラ改変や原作崩壊、原作死亡キャラの生存要素があります。
 5.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 6.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 7.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 8.基本はギャグとラブコメ色強めですが、時々シリアスになります。
 9.読了後に如何なる負の感情を抱かれても、書き手にはどうすることもできません。

 10.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」への場面転換、及び視点切り替えになります。
 11.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味しています。
 12.良くも悪くも飯テロ要素があります。注意してください。

上記が大丈夫の方は、本編をお楽しみください。


ネタバレだらけで草ァ!!
??.大団円まであと(50-n)年


 

 

「ご覧ください! 地球連邦が誇る外宇宙航行艦、ソレスタルビーイング号の雄姿を!」

 

 

 テレビ画面に映し出されたのは、外宇宙探索を目的とした航行艦だ。船の名前として選ばれたのは戦争根絶を掲げた同名の私設部隊。数年前――ソレスタルビーイングがこの世に姿を現したときや、独立治安維持部隊が台頭していたときにこの話をしたら、誰がそれを信じるだろうか。……いいや、その前段階である『外宇宙から異種族がやって来た』から躓きそうな気配がする。

 ソレスタルビーイングを含んだ様々な私設部隊が台頭してきたことで、世界は良くも悪くも大きく変わっていった。三大勢力で睨み合いを繰り広げていた大国はいつしか地球連邦政府として1つに纏まり、滅びの過去(みらい)を乗り越え、外宇宙生命体や異種族たちとの対話や和解を経て、輪廻の輪を断ち切ったのだ。外宇宙航行艦の旅立ちは、新たなる始まりに相応しい話題であろう。

 

 地球と人類の未来をかけた戦いが終わったのは、僅か1か月前のことである。その傷跡は未だ色濃く残っていた。

 でも、だからこそ、新たなる始まりの象徴――“外宇宙探索へ向かう部隊”の出発を祝わずにはいられないのかも知れない。

 艱難辛苦に耐え忍ぶには、ほんの僅かでも、自分たちの前を照らす希望(あかり)が必要なのだ。

 

 

「まさか、隊長と副隊長が揃って()()()()()()()()とは思わなかったなァ」

 

 

 動かしていた手足を止めて、何かを懐かしむように目を細めたのはアキラ・タケイ。彼の視線はテレビ画面に釘付けとなっていた。

 彼の言葉に反応し、他の2名――ハワード・メイスンとダリル・ダッジが手を止める。ハワードとダリルもまた、アキラと同じくテレビ画面を見つめた。

 

 テレビ画面に映ったアナウンサーは熱を帯びた様子で、外宇宙航行艦の出航パレードが賑わっていることを告げていた。

 

 

「出航まであと少しか」

 

「未だに実感が湧かないな。あの2人が地球を去るだなんて」

 

 

 ハワードとダリルは夢心地のまま呟く。そのためか、零した言葉も、ニュースへの反応も、どこか他人事であった。

 

 一応、2人は隊長と副隊長の“お別れ会”に参加しており、副隊長とその息子の作ったカレー鍋を食べながら酒を飲んでワイワイやっていた人間である。

 出発日当日に見送りへ行けないからこその“お別れ会”だ。勿論、それが自分達の上司と過ごす最後の時間だとは十二分に理解していた。

 ぼんやりとテレビを眺める3人とは違い、世界は刻一刻と未来に向けて動き出している。時間は進み、二度と戻ることは無い。

 

 

「2人とも『やりたいことがある』って言ってましたよね。『外宇宙探索部隊に立候補したのはその過程なんだ』って」

 

「それ以上は何も言わなかったが、顔見れば分かる」

 

「あれは初恋に浮かれる少年だったな。多分、本人たちは全く意識してないと思うが」

 

 

 3人は顔を見合わせ、旅立つことを選んだ上司2人の姿を思い浮かべた。

 

 金髪碧眼で顔の左側に大きな傷がある隊長と、歩く年齢詐称と呼ばれた黒髪黒目の副隊長が並ぶ背中が《視える》。2人の視線の先には、焦がれてやまぬ天使がいるのだろう。

 隊長は一目惚れしてからずっと一途に天使を追いかけていた。副隊長は一時天使の元に居候しつつも、迷走していた隊長を助けるために奔走し、その過程で天使と距離を縮めている。

 彼らが天使に向けた一途な愛が、外宇宙生命体との対話/人類の未来を切り開くに至った要因なのだ。究極の混成部隊に合流したときから、こんな未来が訪れるような気はしていた。

 

 去りゆく人々に思いを馳せつつ雑談を続けているうちに、艦の出発時刻が来たようだ。セレモニーは滞りなく執り行われ、外宇宙航行艦ソレスタルビーイング号は宇宙へ向けて旅立っていく。ゆっくりと、しかし確実に、前へ向かって。まるで人類の歩みそのものだ。

 旅の目的は、滅亡の危機に瀕した外宇宙生命体の故郷を救うこと。地球連邦と各地の施設部隊組織の力を結集された外宇宙航行艦でも、彼らの旅がいつ終わるかは分からない。ハワード、ダリル、アキラが現役軍人でいる間に帰って来るのか、或いは亡くなった後に帰って来るのか。どちらの可能性もあり得る。

 

 

「――本当に、行ってしまったんだな」

 

 

 ソレスタルビーイング号が見えなくなった後で、ハワードが噛みしめるように呟いた。ここに来てようやく、“隊長と副隊長はもういない”という事実と向き合うことになったのだ。膜一枚隔てたソレを改めて突きつけられ、実感し、3人は空を見上げる。

 晴れ渡った空には雲1つすらない。空の向こうには花が咲いている。外宇宙生命体との対話と和解が成立したときに、彼もしくは彼女らが咲かせた花だった。人と共に生きる道を選んでくれた証は、今日も美しく輝き、咲き誇っていた。

 

 

「いつまで感傷に浸ってんだよ、フラッグファイター」

 

「ジョシュア……」

 

「隊長だって言ってるだろーが」

 

 

 空を見上げていた3人は、後ろから聞こえてきた声によって引き戻される。振り返った先には、眉間に皴を寄せたジョシュア・エドワーズの姿があった。

 ジョシュアはつい先日、数時間前に旅立っていった隊長から直々に後任として任命されたばかり。故に、隊長と呼ばれるようになって日が浅い。

 『隊長と副隊長がいなくなる』という実感が薄かった3人は、たまに素で彼の名前を呼んでしまっていた。尚、実感を得た後もそんな感じだったのだが。

 

 

「世界は変革を迎えててんやわんやしてるんだ。こんなところで立ち止まっていられないだろ」

 

「言われなくともそのつもりです。やるべきことは沢山あるので」

 

「そちらこそ、隊長直々に後を託されたんでしょう? 期待してますよ、新隊長」

 

「言ったな!? よし見てろよ。元・隊長殿なんざ簡単に超えてやるんだからな!」

 

 

 ジョシュアの煽り――遠回しに発破をかけている――に応えるように、ダリルとハワードがニヤリと笑い返す。間髪入れず、ハワードが2人に嚙みついた。

 

 

「今日は部隊の親睦会だからな。こっちは準備万端、気合十分なんだよ!」

 

 

 「もう始まってるから、早く来いよ!」なんて自信満々にそう言って方向転換し、去っていく背中を見送る。ハワード、ダリル、アキラも和やかな気分で踏み出そうとして――止まった。

 3人の頭脳は個別に、けれども同じ懸念に辿り着く。慌てて奴の背中を追いかければ、奴の進行方向から漂ってくる異臭。ジョシュアが扉を開けた先には、文字通りの地獄絵図が広がっていた。

 

 親睦会に参加していた面々の大半がひっくり返って呻いている。腹を押さえている者、ゴミ箱に顔を突っ込んでいる者、泡を吹いて痙攣している者、発狂して暴れている者など様々だ。

 テーブルの上に載っている料理も然り。色がおかしいやつ、臭いがおかしいやつ、視界に入るだけで食欲が失せるやつ、食べ物の体を成してないやつのオンパレード。

 割れた皿やコップ、ひっくり返った参加者で構成された死屍累々の山。その中でただ1人、連邦初の革新者が涼しい顔で料理を食べていた。

 

 

「メ、メシマズテロだぁぁ!!」

 

「くっ、遅かったか……!」

 

「医者ー! 衛生兵ー!」

 

「な、なんだよォ!? みんなしてそんな大袈裟な……」

 

 

 トラウマを爆撃されたアキラが悲鳴を上げ、ダリルが沈痛そうな面持ちで額に手を当てる。ハワードは即座に踵を返し、内線に手をかけた。部下たちの反応に涙目になるジョシュアを完全無視する形となる。むくれるジョシュアに同意したのは、彼の料理を食べ進める連邦の革新者だった。

 

 

「ソルブレイヴズ隊隊長の言う通りですよ。なんです、そんなに慌てて」

 

連邦(そこ)革新者(バカ舌)は黙ってろ!」

 

「失礼な。私はゲテモノ系“も”やぶさかではないだけです」

 

「人の料理をゲテモノって言うな!!」

 

 

 連邦の革新者は、ダリルとジョシュアの地雷を見事に踏み抜く。

 その脇で、援軍を呼ぶというミッションを達成したハワードが応急処置に駆け回っていた。

 

 

「たいちょぉぉぉぉぉぉぉぉ! ふくたいちょぉぉぉぉぉぉぉ! はやく、はやくかえってきてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 尚、度重なるジョシュアのメシマズがトラウマになってしまったアキラは幼児退行しており、泣き叫ぶのが関の山である。

 医療関係者がここに辿り着くまで、アキラは“もういない”――否、宇宙に旅立ったためすぐに戻って来れない2人の人間を呼び続けていた。

 

 

 

 

◆◆◇

 

 

 

 

 嫌な予感がした。

 とてつもなく嫌な予感がした。

 とにかく嫌な予感しかしなかった。

 

 ハワード・メイスン、ダリル・ダッジ、アキラ・タケイは真顔で互いの顔を見返し、即座に走り出す。目的地は厨房だ。

 

 目的地に近づくが、虚憶の中で《嗅いだ》ような臭い――むせかえるような甘さや刺激臭は一切感じない。虚憶で《視た》地獄絵図が単なる杞憂ならそれでいいのだが、自分たちの経験則上、それは無理な話だろう。良くて未遂、悪くてメシマズフルコースが待っている。

 ただひたすらに不味いマフィン、コーラで煮炊きしたリゾット、チョコレート1枚とコーヒー1瓶を投下したカレー、青い蛍光色のパンケーキ(暗い所で光る)、アキラの親戚が送って来てくれた果物で炊いたご飯や雑炊、口に出すのも悍ましい冒涜的な物体(?)などなど、列挙するものに事欠かない。

 

 

「鼻歌《聴こえて》きた!」

 

「冷蔵庫漁ってるの《視え》ます!」

 

「それなら、今乗り込めばテロを阻止できるな……!」

 

 

 はやる気持ちをどうにか抑えつつ、辿り着いた厨房の壁に背を預ける。そのままジョシュア・エドワーズの様子を《探れ》ば、冷蔵庫の中身を書きだしていた。

 足りない材料の名前を口に出してはうんうん唸っている。買い出しに行く算段を立てているのだろうか。ならば、確保のタイミングは厨房の扉を開けたとき。

 

 己の気配を極限まで殺し、3人は待つ。程なくして、鼻歌交じりに買い出しの材料を諳んじるジョシュアの気配が近づいてきた。そして――

 

 

「「「確保ォ!」」」

 

「うわあああああああああああああああ!?」

 

 

 男3人がかりの突撃が、ジョシュアに襲い掛かった。

 

 

 

**

 

 

 

 テロは未然に防がれ、人々の平穏は守られた。

 

 達成感で満ち溢れたハワード、ダリル、アキラの横で、拘束されたジョシュアが萎れている。勿論3人はまったく気にしていない。『美味しいご飯は人を元気にしてくれる』と語っていた副隊長の言葉ごと、本日のランチを噛みしめていた。

 暫し恨めし気な眼差しを向けていたジョシュアだが、諦めて食堂のランチを食べることにしたらしい。拘束を解くよう言って、ジト目で3人を見つめてきた。3人は2つ返事で拘束を解く。ジョシュアはよろよろとした足取りでカウンターの方へ向かっていった。

 

 

「外宇宙生命体との戦いからn年が経過し、今年も記念式典が――」

 

「外宇宙生命体否定派が声明を――」

 

「先日XX国で発生したテロは、革新者の排除論を掲げる過激派武装組織が関わっており――」

 

 

 テレビ画面に映し出されたのは、世界の現状を伝える映像。地球と人類の未来を賭けた戦いが終わって早n年が経過したが、世界はそう簡単に変わるものではない。今日も今日とて、どこかで誰かが暗躍し、その余波を受けた無辜の人々が涙を零すのだ。

 人類は外宇宙生命体と対話することを選び、数多の犠牲の果てに和解した。人類の方針は“外宇宙生命体との共生”に定まり、新たなステージに足を進めようとしている。だが、誰もがみんな“革新を肯定的に捉える”訳ではない。変革に背を向け、他者を傷つける者もいた。

 地球連邦は今日も多忙。“独立治安維持部隊が幅を利かせて理不尽をばら撒いていた一件以降、軍縮政策に舵を切ったところに来訪した外宇宙生命体との戦いが起きた”という背景のせいで、どこもかしこもジリ貧である。それでも、足を止められない理由があった。

 

 

「隊長と副隊長、今どこで何をしてるんだろう」

 

 

 ランチに舌鼓を打って満足したアキラは、食器を片付ける手を止めてテレビ画面を見つめる。

 彼の言葉を聞いたハワードとダリルも、釣られるようにして動きを止めた。思いを馳せるように遠くを見やる。

 

 

「2人ともMIAになったと思ったら、外宇宙生命体と融合して帰って来たんだったな」

 

「そのすぐ後、2人揃って辞表出したんだっけ。あれは驚いた」

 

「副隊長は義息子(むすこ)くんと同じ派遣会社だけど、派遣先の守秘義務がキツくて情報入ってこない。隊長に至っては、『就職した』という連絡以降音信不通だし……」

 

 

 ハワード、ダリル、アキラは顔を見合わせ、軍を去ることを選んだ上司2人の姿を思い浮かべた。

 

 3人は“隊長と副隊長は地球連邦軍の軍人として在籍し続ける”と思っていたし、“今後もソルブレイヴズ隊を率いるツートップとして君臨し続ける”と思っていた。更に付け加えるとするなら、“自分の後任を指名し、引継ぎまできっちりやり遂げていく”とは思っていなかった。今でも時々、“部隊長の後任にジョシュアが指名された”という事実が夢物語のように感じてしまう。

 外宇宙生命体との戦いで、2人が何を見て、どう感じたかは分からない。そもそも、あんな地獄絵図同然の戦場で生き残れたのかも不明だ。本人もあまり語ろうとしなかったというのもある。それでも、地球連邦側の調査では死亡寄りの行方不明だった隊長と副隊長は、外宇宙生命体と融合することで生き永らえて“還って来た”。

 

 

「2人とも『やりたいことがある』って言ってましたよね。『軍を辞めたのはその過程なんだ』って」

 

「それ以上は何も言わなかったが、顔見れば分かる」

 

「あれは初恋に浮かれる少年だったな。多分、本人たちは全く意識してないと思うが」

 

 

 金髪碧眼で顔の左側に大きな傷がある隊長と、歩く年齢詐称と呼ばれた黒髪黒目の副隊長が並ぶ背中が《視える》。2人の視線の先には、焦がれてやまぬ天使がいるのだろう。

 隊長は一目惚れしてからずっと一途に天使を追いかけていた。副隊長は一時天使の元に居候しつつも、迷走していた隊長を助けるために奔走し、その過程で天使と距離を縮めている。

 彼らが天使に向けた一途な愛が、外宇宙生命体との対話/人類の未来を切り開くに至った要因なのだ。それと同じくらい、良くも悪くも、天使は彼らの影響を受けている。

 

 隊長と副隊長、2人が負い続けた天使たち――互いが互いの人生に密接に関わっているのは、元第8航空部隊(オーバーフラッグス)隊として空を駆けた頃から感じていた。それ故に――それでも上に仮説という2文字が付くけれど――、2人が軍を辞した理由も、大方見当がつく。

 ソレスタルビーイングも、地球連邦軍も、数多の罪過と業を積み重ねた。闇に葬り去ってきた屍の山を無かったことにすることはできないが、これからを変えていくことは出来る。痛みを抱えて、それでも未来のために革新を選んだ人の想いを無下にしてはいけない。

 

 先の大戦で3人が見聞きした“奇跡”の価値は、今でも問われ続けているのだ。

 

 

「どこで何しててもいいさ。2人がご健勝であるなら」

 

「だが、戦場――特に敵同士としては会いたくないな」

 

「変なこと言わないでくださいよ。日本じゃそれ、フラグなんですから」

 

 

 ハワードが天を仰ぎ、ダリルが顎に手を当てて頷く。アキラは肩を竦めた。

 そんな彼らを咎めるかのように、後ろから声が響いた。

 

 

「過去の話はそのくらいにしとけよ、フラッグファイター」

 

「行儀悪いですよ隊長」

 

「もうすぐ食い終わるからセーフだセーフ!」

 

 

 残り数口分となったランチを口に運びつつ喋っていたジョシュアは、アキラの指摘を受けて眉間の眉を深くした。そのままランチを口に運び、よく噛んで、水で飲み降してから再び口を開く。

 

 

「世界は変革を迎えててんやわんやしてるんだ。こんなところで立ち止まっていられないだろ」

 

「言われなくともそのつもりです。やるべきことは沢山あるので」

 

「そちらこそ、少佐直々に後を託されたんでしょう? 期待してますよ、エドワーズ隊長」

 

「言ったな!? よし見てろよ。元・隊長殿なんざ簡単に超えてやるんだからな!」

 

 

 ジョシュアの煽り――遠回しに発破をかけている――に応えるように、ダリルとハワードがニヤリと笑い返す。間髪入れず、ハワードが2人に嚙みついた。

 そのタイミングを待っていたと言わんばかりに、ソルブレイヴズ隊の出撃要請が入る。4人は顔を見合わせた後、出撃準備のために駆け出した。

 

 例え同じ場所に立つことが二度となくなっても。

 それぞれが、各々の理由で離れていったとしても。

 目を閉じれば、ちゃんと《視える》。ちゃんと《分かる》のだ。

 

 

「――御旗はここに」

 

 

 そう呟いたのは誰だったのか。あるいは、己自身がその気なしに漏らした言葉だったのか。その問いの答えを探すには、今は余裕が無さ過ぎた。

 

 この世界のどこかで、群青(あお)く輝く旗が立っている。数多の逆風に晒されても尚、その御旗(しるべ)は失われることは無い。

 風を受けて、それでも胸を張って、只真っ直ぐ在り続けるのだろう。――その事実が、今の4人を突き動かすのだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 ソルブレイヴズ隊の出撃理由となった過激派武装組織は、問題なく壊滅した。しかし現在、新たな問題が発生している。

 ソルブレイヴズ隊と相対峙しているのは、ソレスタルビーイングのガンダムと、フラッグ系列――特にブレイヴを下地にした新型機だ。

 

 前者は連邦軍のデータを参照するに、エクシアと呼ばれる旧式のガンダムであろう。だが、データベースに登録された資料とは違い、新たな改造が施されているようだった。

 後者に関する情報は皆無。類似性がある機体として提示されたのは、旧ユニオンのモビルスーツ・フラッグに関係する系譜の機体ばかり。一番類似性が高いのがブレイヴだった。

 奇妙な組み合わせの2機とは“過激派武装組織の鎮圧”という点では共闘するに至ったが、この後の動きが分からない。身構えた面々は神経を研ぎ澄ませ、《聲》に耳を傾ける。

 

 

<……どうするんだ>

 

 

 懐かしい《聲》がした。具体的に言うなら、“派遣会社に就職後、派遣先の守秘義務がキツくてほぼ音信不通状態に等しい元・副隊長”の声だった。

 

 

<勿論、決まっているとも>

 

 

 懐かしい顔が《視えた》。具体的に言うなら、“金髪碧眼で左側に傷があり、外宇宙生命体と融合することで生還した元・隊長”の顔だった。

 元・副隊長は咎めるような調子で元・隊長を見つめている。それに対し、元・隊長は不敵な笑みを浮かべた。――嘗て自分たちを率いていた頃と、何も変わらないままで。

 

 

<『三十六計逃げるに如かず』だ!>

 

<だったら“最初から見つからないようにする”んだよ、このおばか!!>

 

 

 

 

 

 

 オーバーフラッグス/ソルブレイヴズ隊元・副隊長の災難――その始まりは、今から6+n年前まで遡る。

 

 

 




【推奨BGM】
虚憶/去りゆく人に思いを馳せて:<星降る夜に>(『地球へ...』アニメ版)
虚憶&現実/ジョシュアの飯がヤバい:<UNION>(『機動戦士ガンダム00』1stシーズン)
現実/去った人に思いを馳せて:<思い出>(『地球へ...』アニメ版)
現実/あーあ、遭遇(であ)っちまったか:<RECOVER>(『機動戦士ガンダム00』1stシーズン)
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