問題だらけで草ァ!! -Toward the sky- <1st Season>   作:白鷺 葵

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【諸注意】
 1.この作品は『大丈夫だ、問題しかないから』シリーズのリメイク版です。
 2.『ガンダム00』を原作に、アニメ版『地球へ...』、及び『スーパーロボット大戦』や『Gジェネレーション』シリーズ等の要素とクロスオーバーしています。
 3.主人公含め、オリキャラが多数登場します。
 4.キャラ改変や原作崩壊、原作死亡キャラの生存要素があります。
 5.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 6.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 7.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 8.基本はギャグとラブコメ色強めですが、時々シリアスになります。
 9.読了後に如何なる負の感情を抱かれても、書き手にはどうすることもできません。

 10.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替えになります。
 11.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味しています。
 12.良くも悪くも飯テロ要素があります。注意してください。

上記が大丈夫の方は、本編をお楽しみください。


25.『Toward the Terra』

 

 ユニオンの空は、今日も青い。

 遠くには、飛行するフラッグから発生した飛行機雲が綺麗な尾を描いている。

 

 

「隊長。人革さんが、ガンダムとやりあったってのは本当ですか?」

 

 

 ハワードの問いかけに、グラハムは頷いた。

 

 

「四散しているデブリの状況からして、20機以上のティエレンが大破したらしい」

 

「ついでに、戦艦や鹵獲用の罠も潰されたそうだ。費やした財産と得た情報の採算が合わなくて焦ってるらしいぞ」

 

 

 クーゴとグラハムが、ハワードとダリルに端末画面を示した。それを覗き込んだ2人は、一瞬で顔色を変えた。

 先程までの笑顔は鳴りを潜め、酷く困惑した表情を浮かべている。2人の気持ちは、クーゴもよくわかる。

 鹵獲寸前まで追いやられたとはいえ、やはりガンダムはガンダムである。侮ることはできない。

 

 この作戦が始まる以前のユニオンは、調査の一環でガンダムの鹵獲を検討していた時期がある。人革連が独自に鹵獲を試みた結果が大敗ならば、ユニオンやAEUが独自に鹵獲を試みても、同じ轍を踏むだけだ。予算的な問題で、圧倒的な大敗が見える。

 それに、問題はガンダムだけではない。ガンダムを守るかのように出現し、人革軍のMSや戦艦を消し飛ばした青い流星。人革とソレスタルビーイングたちの間を悠々と泳いで行った白い鯨――移動要塞クラスの大型艦。流星は不明だが、艦は明らかにソレスタルビーイングと別組織だ。

 

 だからといって、クーゴたちは諦めるつもりなどない。

 

 仲間たちの瞳には、強い闘志が宿っていた。

 ダリルがヒュウ、と口笛を吹く。

 

 

「やれやれ。コイツらとやり合うのが空恐ろしくなってきましたよ」

 

「まったくだ」

 

 

 彼の言葉を肯定し、ハワードが肩をすくめる。言葉とは裏腹に、ハワードとダリルの瞳もぎらついていた。

 それでこそ、フラッグファイターである。クーゴとグラハムも緩やかに目を細めて頷く。

 

 

「MSの性能差が勝敗を分かつ絶対条件ではないさ」

 

「だな。戦い方次第では、ガンダムを追いつめることも可能だ」

 

 

 グラハムの言葉を引き継ぐようにして、クーゴは言葉を紡ぐ。

 

 

「いくら性能が高くたって、奴らも無敵の化け物じゃない。追いつめることが可能なら、勝てる確率も0じゃない」

 

 

 それは、人革軍との戦いやAEUのカスタムイナクト、および新型カスタムフラッグとの戦闘データで判明している。

 虚憶(きょおく)のデータベースでは、特に、敵の物量や性能差云々をひっくり返して勝利を掴み取ってきた。

 例を挙げれば本当にきりがない。『人の心の光』が起こしてきた奇跡の数々を、クーゴたちは知っている。

 

 

「あてにしてるぞ、フラッグファイター」

 

 

 グラハムが不適に微笑んだ。クーゴたちも頷き返す。

 

 そうと決まれば、今日も訓練や情報収集に精を出さねば。頭の中で、あの日見たガンダムの武力介入映像を思い返す。

 散乱するデブリの破片、ガンダムたちの戦闘様子、人革軍のMSを消し飛ばした青い流星、白い鯨を思わせる巨大な艦――。

 

 

(……白い、船)

 

 

 クーゴの脳裏に、白い船が引っかかった。あの巨大な艦と同じようなものを、どこかで見たことがある。

 記憶の中に残る映像と、あの日《視た》虚憶(きょおく)の光景を重ね合わせる。

 宇宙を泳ぐように進むのは、白い鯨を思わせる船。それは、宇宙を流浪する者たちの、最後の楽園だった。

 

 脳裏を駆けたのは、歌。

 どこかで耳にした、歌。

 

 

「そうだ、AEUの軍事演習場!」

 

 

 クーゴはぽんと手を叩いた。何事かと、ハワードとダリルがクーゴを見た。

 

 この場で唯一話が通じるグラハムは、最初は首を傾げたけれど、クーゴの様子から察したらしい。合点がいったというかのように頷いた。

 クーゴたちが初めてガンダムを目撃したとき、あの純白のガンダムが発したシグナル。それによって目にした虚憶(きょおく)の光景を思い出す。

 

 マントを羽織った2人の指導者。

 宇宙を流浪する白い船。

 安住の地となるはずだった赤い星。

 赤黒く染まった死の星。

 異なる種族の長たちが苦悩する姿。

 覚悟を決めた長たちが突き進む姿。

 散り逝く者たちの姿。

 命を懸けて叶えた夢が紡いだ未来。

 思いを継ぐ者たちが邂逅し、共に駆けていく光景。

 そして――自分が見知った、美しい青い星。

 

 その光景の中に出てきた白い船と、人革連の大規模作戦で出現した移動要塞クラスの巨大艦は、大きさ以外の要素は完全に一致している。

 白い鯨を思わせるようなデザインと雄大さ。宇宙を泳ぐように進む船の名前を、クーゴたちはまだ知らない。

 

 

「確かに、あのとき見た虚憶(きょおく)にも、大きさ違いの同じ船が出てきていたな」

 

「ビンゴ!」

「うむ!」

 

「た、隊長?」

「ふ、副隊長?」

 

 

 そのままハイタッチし、クーゴとグラハムは互いの手を打ち鳴らす。置いてけぼりのハワードとダリルは相変わらず首を傾げていた。

 隊長と副隊長だけで盛り上がっていたらしい。クーゴとグラハムはコホンと咳ばらいした。2人にも、詳しいことを話さねばならないだろう。

 丁度いいタイミングで時報が鳴った。正午を告げる音であった。ビリーとエイフマンの休憩時間も近いことだし、詳しいことは昼休憩で話すことにする。

 

 昼ご飯のお弁当に関する算段込みで、クーゴとグラハムはアイコンタクトを交わした。

 

 

「詳しいことは昼休憩のときに話すよ。ゆっくり弁当でも食べながらさ」

 

「カタギリとプロフェッサーも、そろそろ休憩の時間だろうからな」

 

「おお! ってことは、副隊長の料理か!」

 

「毎回楽しみにしてるんですよ! 今日は何が出るのか……」

 

 

 クーゴとグラハムの言葉に、ハワードとダリルが目を輝かせた。彼らの表情は、本当に嬉しそうである。

 期待されると応えたくなるのが人間の性だ。今回のお弁当も、彼らを満足させることができればいいのだが。

 

 処刑台に立つような気持ちを押し殺し、クーゴは仲間たちと談笑しながら、ビリーとエイフマンのいる研究室へと歩き始めたのだった。

 

 

 

*

 

 

 

 保冷剤を敷き詰めたクーラーボックスの中から、重箱クラスのお弁当箱と少し大きめのケースを取り出す。ケースの中身は、野菜のテリーヌと塩レモンを使ったプリンが入っていた。

 前者は市販されている野菜のパウダーを使って作ったもので、綺麗な3層になっている。赤がにんじん、緑がほうれん草、黄色がかぼちゃのパウダーを使った。飾りに切ったプチトマトを乗っけてみた。可愛い感じになったと思う。

 後者は、暑い時期にぴったりだと言われる塩レモンを、プリンにかけるシロップに使った物だ。白い器に入っているためか、プリンの黄色がよく栄える。アクセントとしてミントとチョコレートの欠片を乗っけてみた。

 

 重箱の中身は、長芋をベーコンで巻いた天ぷら、ハムと野菜を使ったマリネ、ささみとオクラを使ったイタリアン風の南蛮、エビとパプリカを炒めバジルで和えたものだ。うだるような暑さに対抗するため、冷たくても美味しく食べられるものとさっぱりした味のものを中心に取り揃えてみた。

 あとは、クリームチーズとカッテージチーズを挟んでジャムとマーガリンを塗ったサンドイッチである。こちらもまた、冷やして食べると美味しい品だ。おかずの一覧を見た面々が感嘆の声を上げる。

 

 

「見てるだけでも涼しい感じがするね」

 

「最近は、異常気象かと疑いたくなるほど暑いからの。老体には厳しすぎる」

 

 

 クーラーが効いている部屋に籠りきりなビリーとエイフマンにしてみれば、外のうだるような暑さには体がついていかないらしい。最近では、“日射病で倒れた患者数が最多記録に並んだ”そうだ。季節など丸々無視した天気が続いている。

 太陽光エネルギー的な意味合いから考えると、晴れの日が続く方が嬉しい。しかし、暑さまでは必要ないだろう。20世紀末頃から地球の大気汚染や異常気象が取りだたされていたけれど、23世紀になった今でも変わっていない。

 

 いつか、人類が地球を()てていく日が来るのだろうか。それは即ち、人類の宇宙進出が本格化することを意味する。

 

 

「この調子でいくと、いずれ人類が地球を()てていかなきゃいけない日が来るのかな」

 

 

 サンドイッチを片手に、クーゴはぽつりと呟いた。建物内の窓から見上げた空は、どこまでも青く澄み渡っている。

 環境破壊や異常気象が続けば、この空も見れなくなってしまうのだろうか。いつの日か、この空も、濁ってしまうときが来るのだろうか。

 青い空を愛するグラハムや、彼を敬愛するハワードとダリルも、何か思うところがあったらしい。つられるようにして空を見上げた。

 

 遠くでフラッグが飛んでいる。たなびく飛行機雲が綺麗だ。

 平和な空であるが、地上はいつも争いに満ちている。

 

 

「……もしかしたら、イオリア・シュヘンベルグも、キミと同じだったのかもしれんな」

 

「プロフェッサー、それは一体どういうことです?」

 

 

 エイフマンの呟きに、ハムと野菜のマリネを食べようとしていたグラハムが手を止めた。緑の目には疑問の色が浮かんでいる。

 

 

「地球を()てて宇宙に出たとしても、紛争の火種を抱えたままであれば、また同じことの繰り返しになる。争いによって住むべき場所を失い、また宇宙を彷徨い……それを繰り返し続けることになるじゃろうて」

 

「文字通りの堂々巡りじゃないですか」

 

「それもまた、人の業ってヤツですかね」

 

 

 エイフマンの言葉を噛みしめるように、ダリルとハワードが呟いた。前者は山芋のベーコン巻き天ぷらを、後者はエビとパプリカをバジルで和えた炒め物を口に運ぶ。

 ビリーも南蛮を咀嚼しながら、興味深そうにエイフマンの話を聞いていた。彼は何かを思い出したようで、「そういえば」と手を叩く。

 

 

「最近見に行った映画のストーリーも、今言ってた話がベースになってたんだよ」

 

 

 ビリーはそう言って、彼の机の中からパンフレットを引っ張り出してきた。面々の前に、映画のストーリーが書かれているページを示す。

 

 舞台は西暦3000年代後半。新たな年号――【Superior Dominance】と改正され、【S.D.体制】と呼ばれる新体制が築かれてから、581年の時が流れた。地球に住めなくなった人類は機械による管理の下、植民地惑星で生活をしている。人類の生殖も機械が行い、『無作為に選ばれた精子と卵子を使った試験管ベビーが養父母に託され育てられる』ことが普通になっていた。

 そんな中、自分の誕生日に【ミュウ】と呼ばれる新人類として目覚めてしまった少年は、ミュウの長である青年によって次世代の指導者として見出される。ミュウは【サイオン】能力の凄まじさから、人類から迫害されていた。少年はミュウを率いる【指導者(ソルジャー)】たる青年から、新たな指導者としての役目と“地球(テラ)帰還(かえ)る”という悲願を託されるのだ。

 

 果たして、彼は地球へたどり着くことができるのか。

 新人類(ミュウ)と人類の行く末は――?

 

 パンフレットの煽り文句はそこで終わっている。

 

 

「近々、同じ映画の別視点も公開されるみたいだよ。実質的な2部構成だね」

 

「ほう。メカデザイン担当も相当の腕前だな。ここまで美しい船のデザインを見たのは初めてだ」

 

 

 パンフレットに描かれた白い船を見て、エイフマンは感嘆の息を吐く。

 群青の中に浮かびあがるのは、白い鯨を思わせるようなデザインの船。

 

 ――白い、鯨。

 

 AEUの軍事演習場で出会った純白のガンダム/イデアが、クーゴとグラハムに《視せた》虚憶(きょおく)。そこで浮かんだ白い船も、丁度これとよく似たデザインだった。

 クーゴとグラハムが目を剥いて、ビリーからパンフレットをひったくる。何度確認しても同じだ。あの船も、この船も、巨大な艦も、すべてよく似ている。

 すべてのページを確認すると、企画とスポンサーの欄に小さく悪の組織とあった。2人が同時にそれを読み上げると、ビリーが苦笑を浮かべて頭を掻いた。

 

 

「いやー、『これを見なかったら技術提供を打ち切る』って言われちゃったから、仕方なく」

 

「おいおい……」

 

「でも、とても興味深い作品だったよ」

 

 

 なんという会社だ。ツッコミどころ満載の要求に、クーゴは思わず頭を抱えた。

 

 しかも、それだけではなかったらしい。ちょっと待って、と、ビリーは再び自分のデスクを漁り始めた。

 ややあって、彼は4冊の本を引っ張り出してきた。本のタイトルは『Toward the Terra』で、ミュウ視点の上下巻と人類視点の上下巻に分かれている。

 今回映画化されたのはミュウ視点の方だ。人類側も近々公開されるとビリーは言っていたか。考えかけたクーゴへ、ビリーは本を差し出した。

 

 

「これをキミに読んでほしいってさ」

 

「……もしかして、『クーゴ・ハガネ()が読まないと技術提供打ち切り』とか――」

 

「頼んだよ、クーゴ」

 

 

 そうして、ビリーは背を向け、何かを思い出したようにグラハムの方を見た。

 

 

「あ、いけない。忘れてた。グラハム、キミの分もあったんだ」

 

「おいカタギリ。これはまさか、クーゴと同じ――」

 

「頼んだよ、グラハム」

 

 

 自分のデスクから同じ本4冊を引っ張り出し、グラハムに手渡す。いきなりの展開に、グラハムも面食らったようだ。

 クーゴは深々とため息をつく。グラハムも同じ気持ちのようで、難しそうな顔つきで本の表紙を眺めていた。

 軍学校時代にお世話になった教科書よりやや厚めだが、内容は物語だ。なんとかなるだろう。

 

 期限を尋ねると、ビリーは「『ゆっくりでいい。1度目を通してほしい』んだって」と苦笑いした。

 細かいのやら大雑把なのやら、クーゴはよくわからなかった。もう一度本の表紙を見る。

 

 ミュウ視点の上巻には、青い星、宇宙に浮かぶ白い船、銀の髪に真っ赤な瞳を持つ青年、盲目の占い師、金髪碧眼の少年が描かれていた。

 下巻には、青い星、宇宙に浮かぶ白い船、淡い緋色の髪にオレンジの瞳を持つ青年、盲目の占い師、金髪碧眼の青年が描かれている。

 人類視点の上巻には、青い星、宇宙ステーション、黒に近い藍色の髪を持つ青年、黒髪の女性、黒髪の少年が描かれていた。

 下巻には、青い星、不気味な雰囲気を漂わせる巨大な機械、墓標によく似た戦艦、銀髪の青年、黒に近い藍色の髪を持つ青年が描かれている。

 

 

「……やるしかない、か」

 

 

 クーゴはそう呟いて、本の表紙を撫でた。グラハムも、何とも言い難そうな顔をして『Toward the Terra』の表紙を眺めている。そんな自分たちを見ていたハワードが声をかけてきた。

 

 

「そういえば、副隊長。さっきの話ですけど」

 

「さっきの話?」

 

「ほら、副隊長が仰ってたじゃないですか。“AEUの軍事演習場で、人革連の鹵獲作戦で出現した白鯨と同じものを見た”って」

 

 

 昼食の時報と移動が理由で途切れていた話題だ。ビリーから齎された“『Toward the Terra』読破要請”によって流されかけてしまったが、『昼食を食べながら説明する』と約束していたのだ。

 丁度、説明に使えそうな資料――あのときの映像で出てきた白鯨と同じデザインの艦の画像の代替品もある。上手く説明できる自信はないし、信じてもらえるかどうかも分からないけれど。

 

 クーゴとグラハムは顔を見合わせた後、小さく頷き返して面々に視線を向ける。「信じて貰えるかは分からないが」と念押しし、あの日の話を始めた。

 

 情報関係部署に提出していたタブレット端末が返却されたこと。情報関係部署からは『ハッキングされた形跡、及び、その他異常等は無し』と言われたこと。返却されて早々、また何者かから介入を受けて、ガンダムの武力介入映像を視聴したこと。

 そのときに、白い鯨のような移動要塞クラスの艦が映し出されたこと。その船のデザインが、AEUの軍事演習場で《視た》虚憶(きょおく)や、『Toward the Terra』のパンフレットやミュウ編の表紙に描かれている白鯨の宇宙艦とそっくりなこと――。

 話を聞いていたハワードとダリル、及びエイフマン教授は、何とも言い難そうな顔をして『Toward the Terra』のパンフレットと原作小説――ミュウ編の表紙を見比べる。そんな中、おずおずとした調子で口を開いたのはビリーだ。

 

 

「……僕、映画の一場面で、()()()()()()が出来そうな技術が登場していたのを見たんだ」

 

「そうなのか?」

 

「勿論、この映画がフィクションだって理解してるよ! でも、この前の状況と凄く似ていて驚いたんだ! 実は、SD体制には恐るべき秘密が隠されていて――……」

 

 

 そこまで話したビリーだが、途中で言葉を濁して視線を彷徨わせる。不自然にブレーキをかけたような様子に、クーゴは思わず問いかけた。

 

 

「……もしかして、『クーゴ・ハガネ()とグラハム・エーカーに原作のネタバレをしたら技術提供打ち切り』って言われた?」

 

「そうなんだよ! ああ、危なかったァ」

 

 

 己の迂闊さと、その先に待っている末路の重さを噛み締めるようにして、ビリーは大仰にため息をつく。隣にいるエイフマンは咎めるような眼差しを向けていた。それに気づいたビリーは申し訳なさそうに視線を逸らしていた。

 “悪の組織が何を考えているのか分からない”のは、そこから技術提供を受けることになってから理解していたことだ。持ちかけられる無理難題にどのような意味が込められているのか、或いは相手側の面白半分なのかを察することは難しい。

 

 けれど、それを果たすことが出来た場合の見返りが大きいのも事実だ。その結果が、クーゴのフラッグに齎された武装――ガーベラストレートとタイガー・ピアスであった。

 

 三代国家のどこがイニシアチブを握るかなんて、正直、クーゴ・ハガネ個人にとってはあまり興味が無い話題である。

 だが、軍人としては、“自分が所属する陣営に利益があるほうが良い”に決まっていた。

 先程の自分が言った通り『やるしかない』のである。クーゴは再びため息をついて、ミュウ編の表紙に手をかけた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「スメラギさん、飲んでます?」

 

「飲まなきゃやってられないわよ」

 

 

 足元に散乱するアルコールの瓶をひょいと避けて、イデアはスメラギの元へと歩み寄った。

 先程、ティエリアに責められたことを抱え込んでしまっているらしい。

 

 

「……本当にごめんね、ダメな指揮官で。ごめんなさい。……ごめんなさいね、イデア。貴女も、私を怒りに来たのよね」

 

 

 能天気に見えて繊細な人。それが、スメラギ・李・ノリエガという人物だ。繊細すぎるがゆえに、彼女の心は失敗に――厳密に言えば、失敗による犠牲者の発生――に耐えられない。それは、彼女のトラウマと深く関わっている。

 一歩近づくたびに、アルコール臭が鼻に突く。イデア自身、あまりアルコールは好きではない。スメラギは自嘲気味な笑みを浮かべて、小さく謝罪の言葉を述べた。「ごめんね、ダメな指揮官で」と、呟くように繰り返す。己に罰を科すように。

 指揮官は常に冷静でなければならない。情に流されれば、更なる被害が発生する。勿論失敗だって許されない。犠牲者は増えるし、有事の際は非難の矢面に立たされる。そのプレッシャーは計り知れない。指揮官は孤高でなければならないから、尚更。

 

 

「スメラギさん」

 

「なぁに?」

 

 

 こてん、と首を傾げたスメラギを、イデアは静かに抱きしめた。

 

 まるで母親が子どもをあやすかのような動作に、スメラギは目を丸くする。年下だと思っていた相手から、そんな風にされるなんて思ってもみなかったらしい。

 イデアは何も言わず、彼女の背を撫でた。嘗てイデアが、母にあやされていたときのように。イデアをあやしていた母も、こんな気持ちだったのかもしれない。

 

 

「スメラギさんは、よくやってますよ。ソレスタルビーイングが誇る、最高の戦術指揮官です」

 

「でも、今回は」

 

「そうですね。確かに今回は、スメラギさんに責任があることも事実ですよ。でも、貴女のミスをカバーしきれなかった私たちにだって責任があります」

 

 

 尚も己を責めようとするスメラギの言葉を遮り、イデアは言葉を続ける。

 

 

「どんなに優秀な兵士を集めたって、指揮官がちゃんとしてくれなきゃ実力を発揮することはできません。スメラギさんが指揮をしてくれて、みんながバックアップしてくれるから、ガンダムマイスターである私たちは戦えるんです。もし万が一、私たちがどこかで失敗しても、スメラギさんたちがカバーしてくれるって信じてますから」

 

「イデア……」

 

「それと同じなんですよ。指揮官だって失敗します。人間ですもん。今回は、私たちがそれをカバーすることができなかった。貴女の信頼に応えることができませんでした」

 

 

 ごめんなさい、と、イデアは謝罪の言葉を紡いだ。スメラギは尚も自分を責めようとする。

 イデアはそれを封じるように、スメラギを抱きしめる腕に力を込めた。

 

 

「お願いです、スメラギさん。そんなに自分自身を苛めないでください。……独りで抱え込まないで、私たちにも一緒に背負わせてください。同じ、ソレスタルビーイングの仲間じゃないですか」

 

 

 祈るような気持ちで、イデアはスメラギの瞳を見た。驚きに満ちたヘイゼルの瞳が瞬く。

 

 それもそうだろう。ソレスタルビーイングの面々は、優秀だが脛に傷を持つ人間ばかりだ。もしくは、ガンダムを目撃してしまったがために引き入れられた者たち。ガンダムマイスターの過去だけでもとんでもないことになっている。

 テロリスト所属の少年兵として戦っていた際にガンダムを目撃した刹那、テロ被害者故にテロを激しく憎むロックオン、嘗ては“超兵”と呼ばれる強化人間の被検体だったアレルヤ、ヴェーダの申し子ティエリア、そして――“来るべき対話”のために彼らの守護を託されたイデア。情報提供はアメリアスからだ。

 秘密を抱えて所属する自分たちの交流は、そんなに多くはない。でも、なんだかんだ言って、自分たちは苦楽を共にしてきた。一緒に戦い、一緒に騒いで、ここまでやってきたのだ。みんな口にはしないけれど、それなりに、メンバーに対する愛着はある。

 

 ロックオンやアレルヤはメンバー全員のことを気にかけているし、ティエリアも文句タラタラであるが不器用なりに心配してくれる。

 刹那は何も言わず突拍子のない行動を取るけど、ティエリアと同レベルなだけだ。特に――今は関係ないけど――、グラハムとのやり取りではそれが顕著である。

 

 

(ああ、ティエリアが動き出したなぁ)

 

 

 漂う思念を察してイデアは苦笑した。ティエリアがぶちぶち文句を言いながらヴェーダにアクセスしている。検索内容は“スメラギ・李・ノリエガに対する効果的な謝罪方法”だ。本人はくだらないと感じているらしい。

 『差し入れが効果的』という回答を貰った彼は、アルコールに合うつまみを検索し始めた。しかし、ヴェーダが提示する品は限定品――しかも売り切れ続出の品だ。うんうん唸りながら、彼は品を手に入れようと悪戦苦闘している。

 これはこれで良い兆候だ。最終的には、ヴェーダを情報収集用と割り切って、自分自身の意志で決断を下せるようになってくれればいい。ティエリアは、“機械の代弁者”として生まれたわけではないのだから。

 

 イデアの脳裏に浮かんだのは、“同胞”の指導者や人類側の指導者と同じ名前を冠する少年たちから見せてもらった記憶――人類側の指導者が、土壇場で“同胞”との会談を選択したときの光景だ。

 

 “機械の申し子”として生まれ落ち、そのレールを走らされていた1人の男。彼は様々な人々との出会いや別れを経ていくうちに、自我と意識を確立させていった。

 “機械の申し子”でありながらも、機械が敷いた体制によって奪われていった大切な人々の死に様を目の当たりにし続けたことが、最後の決断に繋がっている。

 

 

『私は汚染されてなどいない!』

 

 

 銃の照準を機械仕掛けの管理者に向けた彼は、躊躇うことなく引き金を引いた。機械はそれを『“同胞”の長によって汚染された』と切り捨てて、容赦なく彼を傷つけたけれど。

 

 

『“僕たち”は、誰かに使い潰されるために生まれたんじゃない。望まれて生まれてきた子どもなんだ』

 

『……いつか、キミが““僕たち”の同胞”に出会う日が来たら、その子に教えてあげて欲しいんだ。そう思えるよう、助けてあげて欲しい』

 

 

 遺伝子的な関係を持っている青年の姿を思い出し、イデアはひっそりと笑い返す。

 ……自分は、彼からの頼まれごとを、きちんと果たせているだろうか。

 

 

「……ありがと」

 

「いいえ。気にしないでください」

 

「あと、もう1つだけお願いがあるんだけど」

 

 

 スメラギが、ぼそりと呟くように言った。

 

 

「もうちょっとだけ、こうさせて」

 

「お安いご用です」

 

 

 スメラギはイデアの胸に顔をうずめる。本能的に癒しを求めているのだろう。イデアはぽふぽふとスメラギの頭を撫でた。ぴょこんと跳ねるくせ毛の感触が心地よい。

 猫を撫でているような心地になるのは何故だろう。猫は猫でも、毛を逆立てている刹那とは違う。ゴロゴロ喉を鳴らしてすり寄ってくる方の猫だろう。

 

 そのとき、丁度いいタイミングで扉が開く音がした。「え」と、戦慄するような声が響く。イデアは振り返り、声の主に問いかけた。

 

 

「あ、アレルヤ。何か用?」

 

「へあっ!?」

『おうおう、お取込み中か? 随分と楽しそうじゃねぇか!』

 

「うん。お取り込み中。混ざる?」

 

「おおお、お取込み中ッ!?」

『そりゃあいいや! パーッとやろうぜ!』

「ダメだよハレルヤ! うわあああ、すみません! ででで出直しますぅっ!!」

 

 

 顔を真っ赤にしておろおろするアレルヤに対して、ハレルヤは面白い光景を見つけたと言わんばかりに声を上げた。わざと茶化せば、余計に焦った声を上げる。

 

 

「大丈夫よ、アレルヤ。もう終わったから」

 

「スメラギさんの言う通り。終わったから」

 

 

 アレルヤは本当に弄び甲斐がある相手だ。イデアとスメラギは顔を見合わせ、くすくす笑う。さっきまで湿ったような空気だったのが嘘のようだ。

 スメラギも完全復活したらしい。但し、酔いは全く醒めていない。あと8時間は経過させないと、アルコールは抜けないだろう。

 

 

「本当ですか? ああ、なんだ……」

『ちぇ、つまんねーの』

 

 

 アレルヤが安堵し、ハレルヤが口を尖らせた。このコンビは本当に息ぴったりである。方向性は正反対であるが。

 

 

「ところで、何か用?」

 

「あ、はい」

 

 

 スメラギに問われ、アレルヤはようやく自分の目的を思い出したらしい。

 思春期を思わせるように真っ赤だった顔から、一気に赤みが引いていく。

 普段の優男からは想像できないほど、険しい顔をしていた。

 

 

「スメラギさんとヴェーダに、進言したい作戦プランがあります」

 

 

 

*

 

 

 

 アレルヤの作戦プランはヴェーダのお眼鏡に適ったようだ。彼はティエリアと一緒に、人革連の研究施設を襲撃するという。

 

 イデアは刹那とロックオンらと一緒に、南アフリカの紛争地域に介入する。こちらはプラン通りで変更はない。喜ばしいのか、悲しむべきなのかよくわからなかった。

 ちなみに、ティエリアはヴェーダが推奨した謝罪の品をやっと手に入れたらしい。出撃前、そわそわしているティエリアとすれ違ったとき、彼の(かいな)には紙袋が握られていた。

 果たして彼は、マトモに手渡すことができるのか。あとはタイミング待ちだろう。ティエリアにはハードルが高いかもしれないが、頑張ってほしい。イデアはそっと微笑んだ。

 

 出撃する順番は、イデアたちが先である。エクシア、デュナメス、ハホヤーの班と、キュリオス、ヴァーチェ。

 ティエリアには時間が残っている。さあ頑張れ若者。イデアはそっと微笑んだ。

 

 

「――ガンダムハホヤー、出撃します!」

 

 

 カタパルトからハホヤーが飛び出す。白い天女は、天使とスナイパーと共に武力介入へ向かったのだった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「――そう。キュリオスとヴァーチェが動いた、か」

 

 

 端末を開いた女性は、頬杖をついた。

 現在、女性はアザディスタンのホテルにいる。

 

 アレハンドロが「復興支援より戦争停戦の支援をする」と言い残して去っていったのは、丁度先日のことであった。

 

 2人の会話を丸々聞いていたが、苛立ちと腹立ちが収まらない。何度、21世紀初頭の問題歌――因みに曲名は『死ねばいいのに』――を熱唱しそうになっただろう。

 嫌がらせに、アレハンドロにのみ聞き取れるよう能力を調整して、その曲のサビ部分を延々と聞かせてあげた。帰り際にイライラしているのを見て溜飲が下りた。

 落ち込んでいるマリナの顔もまた麗しいものだったが、やはり彼女には笑顔が似合う。アレハンドロに対する罵詈雑言を飲み下し、話し合いをしたのも先日のことだ。

 

 技術提供予定のラインナップと簡単な説明をすると、マリナは嬉しそうに笑ってくれた。もう、それだけで幸せな気分になる。

 やっぱりマリナ・イスマイールは女神様であった。マリナ教があったら真っ先に入信する。むしろ教祖になりたい。多分、言ったら困られるので黙っていた。閑話休題。

 

 

<ところでリチャード、準備は万全?>

 

<ああ。いつでもいいぞ>

 

 

 連絡してきた相手は、リチャード・クルーガー少佐であった。スターダスト・トレイマーのMSパイロットであり、人呼んで『仕事人班』の隊長でもある。由来はオルフェスとライラスのコンビネーション攻撃が、モロ“必殺仕事人”のアレだからだ。

 彼は後継者としてアニエス・ベルジュを指名しているが、何やら嫌な予感を感じているという。「近々愛娘を嫁に出さなければいけない予兆だ」と出かかったが、それを口に出したら失神してしまいそうだったのでやめた。

 最近は、アニエスの親友であるジン・スペンサーを見ても嫌な予感を感じているという。それもまた、「近々愛娘を嫁に出さなければいけない予兆」だ。これもまた、アニエスの一件と同じ結果になりそうだったのでやめた。

 

 ちなみに彼の妻は、アニエスとジンを「未来の息子たち」と周囲に紹介して回っている。

 母娘による策略で外堀は着々と埋まりつつあり、父親はハブられつつあった。知らないのは彼だけである。

 

 

<……なあ、大将。お前さん、今何を考えてた?>

 

<そうだね。婿関連の準備はどうなってるかなって>

 

<何言ってるんだ。サヤとアユルはまだそんな年じゃない>

 

 

 むっとした表情を浮かべたリチャード・クルーガーは、どこからどう見ても親馬鹿であった。とても、ハードボイルドな仕事人とは思えない。

 

 彼は、弟子のアニエスが仕事人として覚醒しつつあることに気づいているだろうか。最近はMSに搭乗するたびに仕事人モードになるのだ。サヤはそんなアニエスにゾッコンだから、更にタチが悪い。

 この前のシュミレーターでは、Wカップルが“どっちの嫁/婿が素敵か”で壮大な大喧嘩を繰り広げたそうだ。勝敗は、シュミレーター、現実共々相打ちである。互いの健闘を讃え合っていた姿が印象的であった。

 

 

<こちらの準備も万端じゃ>

 

<いつでも構わんよ>

 

 

 通信に割り込んできたのは、クラール・グライフとスオル・ダグラスだ。2人は日本支部の代表者であり、現在は人呼んで『潜伏班』の隊長と副隊長でもある。本来は技術開発と戦闘を兼任している班なのだが、今回の任務名がつけられていた。

 今回は彼らの班に所属している征士郎とひまり、一鷹と悠凪も加わる。心強い援軍だ。そういえば、沙慈・クロスロードとルイス・ハレヴィの転校騒ぎは収まったらしい。クラールのゼミの様子を見た母親は、2人の日本残留に同意してくれたという。

 しかし、今度は『みんな揃って、是非ともスペインに遊びに来てくれ』コールで大変なことになっているそうだ。一難去ってまた一難である。お誘いを無碍に断るわけにもいかず、『スペイン旅行も楽しそうだ』という意見もあって、少々揉めているらしい。彼らにも休暇が必要だ。

 

 

「――さて」

 

 

 雑談を、この辺で終える。

 そろそろ仕事の時間だ。

 

 

「緊急コード発動。『星屑の放浪者』。秘密結社(かぶしきがいしゃ)悪の組織は、これより、私設遊撃部隊スターダスト・トラベラーとしての活動を再開する!」

 

 

 その言葉を皮切りに、女性はてきぱきと指示を飛ばした。

 

 

「今回の任務は人命救助、および施設の破壊。本当の任務名は『証拠隠滅作業』だけど、胸糞が悪いので任務名を変更したわ。人革連の特務機関施設に閉じ込められている被検体たちを全員救出と並行して、施設の証拠隠滅としての破壊工作を行って頂戴。作戦時間内の最中に、ソレスタルビーイングのガンダム2機――キュリオスは確実に来襲する上、施設存続派の息の根がかかった奴らも出てくるので、全力で妨害して。時間を稼ぐことだけに集中すること!」

 

<了解!>

 

 

 通信はそこで終わる。それと同時に、スターダスト・トラベラーの活動が始まった。

 端末画面には、作戦行動を行う面々の様子が映し出されている。女性はそれを見守っていた。

 

 

「ベル」

 

 

 不意に聞こえた声に振り返る。そこにいたのは、エルガン・ローディックだった。

 

 

「何しに来たのよ、国連代表」

 

「前にも言ったが、姿を晒しすぎではないか?」

 

 

 エルガンは苦笑交じりに遠い目をした。

 女性は静かに、厳かに、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

 

実験動物(モルモット)として扱われる悲しみを、私たちは《識っている》はずよ。……初代指導者(ソルジャー・ブルー)が、私たちに教えてくれたじゃない」

 

「……そうだったな。彼が亡くなる、数か月前のことだった」

 

 

 女性の言葉に、エルガンは沈痛な表情を浮かべた。

 

 銀色の髪に赤い瞳を持った、初代“同胞”の指導者(ソルジャー)。“同胞”を殲滅しようとした惑星破壊兵器と相打ちになる形で命を落とした、勇敢なる荒ぶる青(タイプ・ブルー)初被検体(オリジン)

 良くも悪くも、グラン・パを『青い星(テラ)へ帰る』ことに突き動かした人だった。命を懸けて“同胞”たちの未来を切り開いた人だった。最期に、愛する女神に悲しい嘘をついた人だった。

 

 

『また、キミの抱く青い星(テラ)を見せてくれ』

 

 

 彼は知っていた。もう二度と、彼が焦がれた青い星(テラ)を見ることは叶わない、と。

 彼は知っていた。もう二度と、彼は楽園に帰って来ることはないのだ、と。

 彼は知っていた。もう二度と、彼の女神と言葉を交わすことはないのだ、と。

 

 

「……ところでエルガン。国連代表ってヒマなの?」

 

 

 ジト目で彼を睨めば、エルガンは小さく肩をすくめた。

 

 

「アレハンドロの件は、本当にすまないと思っている」

 

「思っているなら、何としてでも派閥争いに勝ちなさい。アレは野放しにしてはいけないわ」

 

「わかっている。作戦は進行中だ。――確実に、落とす」

 

 

 エルガンと女性は、互いの瞳を覗き込むようにして見つめ合った。ぴりぴりとした空気が漂う。

 お互いの感情を察して、2人は表情を緩める。目指す場所が同じで、そのために、自分たちのできることを頑張っている。

 ならば何も問題ない。女性とエルガンはふっと微笑を浮かべ、頷き返した。伊達に、幼い頃から一緒に遊んでいた訳ではない。

 

 現在、国連はエルガン派とアレハンドロ派が真っ向から対立している図式となっている。エルガンを追い落として世界を牛耳りたいアレハンドロと、イオリア計画および“同胞”たちの計画を円滑に進めるために踏ん張るエルガン。2人は火花を散らしていた。

 女性は静かにエルガンの瞳を見た。かつて“牙”として共に宇宙を駆けたときから、何一つとして変わっていない。トオニィたちと撃墜数を競い合っていた頃の、獣の目だ。参謀役でありながら、参謀という枠に収まりきらぬ凶暴性を秘めた眼差しだ。

 

 策謀を張り巡らす生活が長かったせいで“牙”が丸くなってしまったかと心配したが、いらぬ杞憂だったようだ。むしろ、頭脳戦を経て、更に鋭くなったように思う。

 

 

「……頑張れ」

 

「お前もな」

 

 

 女性の言葉に、エルガンは微笑みながら背を向けた。ひらひらと手を振る。次の瞬間、エルガンの姿は消えてしまった。

 それと入れ替わりに、女性は身支度を整える。今日もまた、マリナとの話し合いがあるのだ。気合を入れなくては。

 

 

(さあ、今日も頑張ろう!)

 

 

 女性は己の頬を叩く。鏡に映った自分の顔は、“牙”時代と変わらない、強い闘志を宿していた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 Superior Dominance体制が築かれて、今年で280年目に差し掛かった頃。

 

 木星の衛星にあるガニメデに、その育英都市は存在していた。

 都市名はアルタミラ。教育に関わる機関が集中する場所であった。

 

 

「次は貴方の番よ。準備して」

 

「はい」

 

 

 看護師の女性に促された“彼”は、検査室に足を踏み入れた。

 

 ICUとよく似た機器の上に横たわる。“彼”は頭に脳波測定用のヘルメットを被らされ、上半身には脈や心拍数などを計測するための電極パッドを付けられた。

 看護師や医師たちのアドバイスに従い、“彼”はゆっくり力を抜く。この試験にパスすれば、“彼”もまた、大人への仲間入りを果たすのだ。

 成人検査が終了すれば、同年代の友人たちと共に、割り振られた教育機関――宇宙上にあるエデュケーショナル・ステーションへと向かうことになる。

 

 “彼”は楽しみだった。これから自分に待っている未来が、輝かしいものであると信じて疑わなかった。

 青い瞳は、未来への希望と不安で揺れ動いている。その気持ちを抑えるようにして、“彼”は天井を見ていた。

 

 

『成人検査を始めます』

 

 

 機械のアナウンスが響く。

 そうして、機械は動き出した。

 

 

『一切の記憶を捨てなさい。貴方はまったく新しい人間として、青い星(テラ)の上に生まれ落ちるのです』

 

 

 聞こえてきた言葉に、“彼”は愕然とした。今までの記憶を消される――それが、成人検査の本当の目的。

 次の瞬間、頭の中を弄繰り回されるような感覚に襲われた。頭が割れてしまいそうになる。

 

 消えていく。

 

 友人たちと過ごした楽しい日々が。両親とともに笑いあった時間が。“彼”を構成するために必要な一切の記憶が、黒塗りにされては壊されていく。

 大切なものばかりだった。忘れたくないものばかりだった。その苦痛に悲鳴を上げながら、“彼”は力を振り絞る。

 

 

(嫌だ)

 

 

 友の顔も名前も忘れた。

 

 

(嫌だ)

 

 

 両親の顔も名前も、もう思い出せない。

 

 

(嫌だ)

 

 

 自分が暮らしてきた都市は、どんな場所だっただろうか。

 

 

(嫌だ!)

 

 

 自分の名前は、何だったのか。

 それを思い出すことすら、叶わない。

 

 

「な、何だ!?」

「確認しろ!」

 

 

 どこかで、機械の異常音が響く。どこかで、焦る看護師と医者の声が響く。

 

 

「きゃあああああ!」

 

 

 看護師の悲鳴が響いたのと同じタイミングで、成人検査用の機械が爆発した。状況が理解できず、“彼”は思わず目を見開く。

 いつの間にか、頭に装着されたヘルメットがなくなっていた。拘束がなくなったため、“彼”は体を起こす。周囲には機械の残骸が漂っていた。

 

 何が起きたのだろう。“彼”は己の手を見て息を飲んだ。

 自分の体が、青い光に包み込まれている。

 少し手を動かした瞬間、瓦礫の漂う速度と方向が変わった。

 

 

(僕がやったのか?)

 

 

 “彼”は目を疑った。慌てて鏡を見る。

 

 プラチナブロンドの髪からは色素が抜け、銀色になっている。

 青かった瞳は、いつの間にか真っ赤に変わっていた。

 

 視線を下に向けると、腰を抜かしてへたり込んでいた看護師と目が合う。

 

 

「止めて、殺さないで!」

 

 

 看護師は、自分の身を庇うようにして体を丸める。頭を抱え、ガタガタと震えていた。

 

 違う。

 そんなつもりじゃない。

 自分は何もしていない。

 

 “彼”の気持ちは、この場の誰にも届かなかった。

 

 

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

 弁明する間もなく看護師の金切り声が響いた。それを皮切りに、屈強な男たちが部屋へとなだれ込む。彼らは皆、銃を持ち防弾ジョッキに身を包んでいた。

 男たちが“彼”に向かって銃を構える。彼らにも状況を伝えようとしたが、問答無用で引き金が引かれた。銃弾が“彼”めがけて撃ち放たれる!

 

 

「うわあああああああ!」

 

 

 “彼”は慌てて身を守った。

 衝撃が発生し、弾き飛ばされ、床に叩き付けられる。

 “彼”はそのまま、意識を手放してしまった。

 

 

 

*

 

 

 

「僕は一体、何者なんだ?」

 

 

 “彼”は、額に手を当てた。

 

 

「何も……何も、思い出せない……!」

 

 

 自分が何者であるか、何一つ証明できるものがないのだ。

 出身地も、両親の顔や名前も、友達の顔や名前も、過ごした街の名前も、果てには己の名前すら憶えていない。

 縋る(しるべ)を求めるように、“彼”は研究員を見上げた。男は無感動な鉄仮面を崩さず、手元の資料に目を落とす。

 

 研究員は淡々と、“彼”に事実を告げた。

 

 

「お前はブルー・1(ワン)、突然変異種・ミュウのニュータイプだ」

 

 

 そうして“彼”は今までの過去を失い。

 『ブルー』として、新たなる生を受けたのであった。

 

 

 

*

 

 

 

『お前の強力な破壊力を有するサイオン波は、とても興味深い』

 

 

 実験。

 実験。

 実験。

 

 毎日が実験ばかりだった。

 拷問のような実験ばかりだった。

 

 深層心理を隅々から探られ、頭の中を滅茶苦茶になるまで弄られ、心身ともにかなりの負荷をかけられた。

 

 

「銃弾をすべてテレキネシスで受け止めるなんて……サイオンの封じ込めは大丈夫なのか?」

「やはり、成人検査が引き金なのか……」

「はい。記憶操作時のシナプスの刺激が脳の構造を変化させ、サイオンを発動させるようです」

「テラズ・ナンバーによる記憶の消去に抵抗して、サイオンが顕在化したというのか?」

「だとすると、これからもブルーのような存在が増えるという可能性が大きいということだな」

「まだまだ増えるということか。厄介な話だ」

 

 

 実験。

 実験。

 実験。

 

 まるで家畜を扱うかのように、自分たちは牢屋に閉じ込められた。

 人間1人が横になる程度のスペースしかない個室。体は拘束され、自由はない。

 

 

「成人検査を元にしたサイオン検査の開発はどうなっている?」

「順調に進んでいます」

 

 

 実験。

 実験。

 実験。

 

 機械に繋がれたミュウが、悶え苦しみながら死んでいく。

 

 

「成人検査はもっと対象者の不意をついて、深層心理を徹底的に調べた方がいいんでしょうか」

 

 

 実験。

 実験。

 実験。

 

 機械の台座から転がり落ちて死を迎えた者がいた。

 ヘルメットを外し、のたうち回りながら死んでいった者がいた。

 

 人類たちの非道な実験によって、ミュウたちは命を落としていった。

 

 

「なんて数だ……!」

「突然変異種ミュウの発生は止められんのか……!?」

 

 

 実験。

 実験。

 実験。

 

 死体は袋詰めにされ、解剖および剥製に回された。

 死後も尚、ミュウに安息は与えられなかった。

 

 悲痛な顔をした死体は、どんどん増えていった。

 

 

「ガニメデの養育都市アルタミラの検査の結果、ミュウの殲滅は、グランドマザーの絶対命令だそうだ」

「当然だ。人の心を盗み見るような者は、認められるわけがない」

 

 

 実験。

 実験。

 実験。

 

 

「僕たちが一体、何をしたって言うんだ!?」

 

 

 ただ、『生きていた』だけではないか――。

 

 ブルーの叫びは無視された。

 悉く、尽く、ことごとく。

 

 

「人類統合軍は養育都市アルタミラに対して、惑星破壊兵器メギドシステムを敢行! ミュウの殲滅に成功する!」

 

 

 実験漬けだったある日、ブルーをはじめとしたミュウたちは、育英都市アルタミラに閉じ込められた。

 人類がミュウたちを殲滅する作戦に出たことを知り、アルタミラおよびガニメデからの脱出を試みる。

 

 惑星破壊兵器メギドの使用により、アルタミラは炎に包まれる。惑星ガニメデ崩壊まで、もう時間がなかった。

 

 

「早く乗り込むんだ! 船に!」

 

 

 ブルーは同胞たちに呼びかけた。仲間たちが慌てて乗り込んでいく。崩壊は刻一刻迫り、ついに時間切れが訪れた。

 

 多くのミュウたちが取り残されている。助けを求めて叫んでいる。だが、もう無理だ。ブルーはリーダーとして決断し、ガニメデを脱出する。

 死にたくないと叫ぶ声が遠のいた。後ろ髪を引かれる想いで、それでもブルーたちは前へ進むことを選んだのだ。間一髪、星が崩壊する前に逃げ延びた。

 

 仲間たちと一緒に、ブルーは振り返る。惑星ガニメデが爆ぜる――星の命が終わる瞬間が、はっきりと確認できた。

 自身が生きているという事実を噛みしめる者、失われた命を悼む者、これからの不安に押し潰されそうな者。ほんの一握り、生き残った同胞たち。

 ざわめく彼らを安心させるように、ブルーは己を奮い立たせる。屹然とした眼差しは、不確かな未来を見据えていた。

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 周囲に漂うのは沈黙だった。クーゴも、グラハムも、自分たち越しから本を覗き込んでいたハワードやダリルも、険しい表情を浮かべたまま口を真一文字に結んでいる。

 

 現在、クーゴとグラハムが読み進めている本は『Toward the Terra』のミュウ篇・上巻だ。ミュウの指導者であるブルーが、主人公の少年――ジョミー・マーキス・シンに己の過去を追体験させている場面である。ブルーがミュウとして目覚め、指導者となるまでの過程が描かれていた。

 げに恐ろしきものは人間。その言葉を地でいくようなシーンが満載である。実験内容は拷問同然だし、ミュウの死に様まで克明に描き出されている。目を逸らすなと言わんばかりに、鬼気迫った描写であった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……なんか、凄いな。これ」

 

「そうだな」

 

 

 絞り出すようにして、クーゴは小さく呟いた。グラハムたちも頷く。

 異質なものは排除する。定められた決まりごとに盲目的に従う。

 人間の性が悪い方向に動いた話だと言えよう。

 

 異質なものと言えば、人間卒業への道を踏み出しているクーゴとグラハムである。

 

 通信回路を開いていないのに他人と相互意思疎通が図れたり、ガンダムの武力介入現場に介入(?)できてしまったりしている。共有者(コーヴァレンター)としての能力も相まって、更に異質さが極まっていた。

 運が良いのか悪いのか。今のところ、クーゴやグラハムの人権は確保されている。共有者(コーヴァレンター)虚憶(きょおく)に関する研究成果や人権保護活動が行われてきたというおかげもあるのかもしれない。

 

 

(いい時代に生まれたんだな、俺って)

 

 

 もし、生まれた時代が今と違かったら、クーゴが辿る運命にだって雲泥の差があったろう。

 今こうして、仲間たちと一緒に本を読むこともなかったかもしれない。

 

 ちらりと視線を向ければ、苛立たしげな表情のまま本を読み進めるグラハムの姿があった。ハワードとダリルも、横顔に憤りをにじませている。彼らは骨の髄まで軍人であるが、それ以前にヒトである。超えてはいけない一線については、しっかりと弁えていた。

 人類がミュウに行った実験という名の拷問も、非道な行いばかりだ。捕虜に対する行為だったとしても、許されることではない。人でありながら、もはや人を捨ててしまったかのような行為が平然と行われている。物語の中だといえど、許せそうになかった。

 “誰1人として、その行為や発言に疑問を持たない”――なんて恐ろしい状況だろう。ストッパーがいないということが、最悪の極みまで行ってしまった。意志の統一を間違うと、ミュウ虐殺のような痛ましいことが起こってしまうのだ。“どう統一するか”も課題の一つに違いない。

 

 

「“誰1人として、その行為や発言に疑問を持たない”、か……。なんだか似ているな」

 

「ここ最近のユニオン軍で起こった出来事も、人類側の反応とほぼ一緒だ。不気味極まりないったらありゃしない」

 

 

 ハワードとダリルが顔を見合わせる。

 

 彼らが差しているのは、“クーゴのタブレット端末が何者かからの介入を受け、ソレスタルビーイングの武力介入の生中継映像を放送した”ことから端を発した一連の出来事であった。その後も何者かからの介入は続いており、その度にソレスタルビーイングの武力介入映像が放送される。モラリアへの介入では、ユニオン軍の施設の一部がジャックされるという大事件が起きたのだ。

 なのに、数時間後の人々の反応は不気味だった。“ユニオン軍の施設の一部がジャックされた”というのに、その場に居合わせていた関係者の大半が、口を揃えて『そんな事件など起きていない』と発言したのである。最終的には、『異変を調べまわっていたクーゴたちが異常者である』とみなされそうになった。咄嗟に彼らの言葉を肯定して謝罪して事なきを得たが、彼らの反応には命の危機を感じた。

 

 

「フィクションとはいえ、この不気味さは“我々の周辺で起きている出来事”と通じるものがあるな……」

 

「読み進めれば読み進めるほど、鬱になる話じゃなきゃいいんだが」

 

 

 グラハムとクーゴは深々とため息をつく。

 

 

「犠牲者の屍が築かれていくことを、殆どの人間が知らない……。恐ろしいことなのか、幸せなことなのか」

 

「知らないでいるには無責任すぎるし、知ったら知ったで重すぎますぜ……」

 

「まったくですな」

 

 

 ハワードとダリルも頷いた。グラハムのページをめくる手が止まる。クーゴも同じ気持ちであった。

 しかし、期待に満ちた満面の笑みを浮かべたビリーの顔を思い出すと、本を閉じることはできない。

 悪の組織からの技術提供は必須だ。その協力を取り付ける条件を果たさないと、即座に契約が切られてしまう。

 

 クーゴは深呼吸し、ページをめくった。物語の時間がゆったりと流れていく。

 止まっていて欲しいと思う程平和な光景は、逃れようのない悲劇へ向かって動き始めた。

 

 

 

***

 

 

 

(――それにしても)

 

 

 仲間たちと別れたクーゴは、栞を挟んだ個所からページを遡る。場面は、主人公のジョミーが成人検査を受けたとき――正確には、そのシーンが描かれた挿絵のページだ。

 

 頭を抱えて絶叫するジョミーと、ジョミーの記憶を削除せんとする機械の端末――円錐形のフォルムに彫像のような顔を有する不気味なモニュメント――テラズ・ナンバー5。

 その姿は、ソレスタルビーイングがモラリアに介入した際、イデアを害そうとしていた謎のモニュメントと瓜二つだ。

 姿形だけではない。ジョミーを抹殺しようとしたテラズ・ナンバー5と、イデアを害そうとしていたナニカの雰囲気は非常に似通っている。

 

 けれど、それ以前に――テラズ・ナンバー5に強い既視感を抱くのは何故だろう。

 “どこかで見たことがある”と思った理由は、何故なのか。

 

 

成■■査(しゅくふく)を始めます』

 

『一切の記憶を捨てなさい。貴方はまったく新しい人間――■■■として、“青き星(■■)”の上に生まれ落ちるのです』

 

 

 ――フラッシュバックしたのは、見知らぬ光景。

 

 

「――“てんしさま”」

 

 

 ――口をついて出たのは、覚えのない単語(ことば)

 

 

『■■■は存在してはならない生き物。――直ちに処分を行います』

 

 

 ナニカがイデアに対して告げた言葉を思い出す。

 けれど、前半の一部が上手く聞き取れなかった。

 

 

(――()()()()())

 

 

 理由は分からない。だけど、クーゴは本能的に()()思った。

 

 

(――()()()()())

 

 

 理由は分からない。だけど、クーゴは本能的に()()思った。

 

 映像が消えていく様は、いつか感じた恐怖と似ている。無数の手が視界を目隠ししていくような――目隠しをされてしまったら、()()がなくなってしまうような。

 背中に駆け抜けた悪寒に体を震わせる。「アレはダメだ」という漠然とした危機感を覚える。あの映像がすべて消えてしまったら――

 

 

<――だめ>

 

 

 りぃん、と、澄み渡る音がした。誰かに目を隠される。青い光が瞬いた。

 ()()()()()()()()()()ような気がしたのは、何故だろう。

 

 ――そもそも自分は、何を考えていたんだっけ?

 

 

「……もう少し、読み進めてみるか」

 

 

 クーゴは栞を挟んだ箇所まで戻ると、また本の続きを読み始めたのだった。

 

 

 

 クーゴ・ハガネの災難は続く。




【参考及び参照】
『COOKPAD』より、『簡単一品☆お野菜テリーヌ(VEGEKOさま)』、『レンジで簡単♡はちみつ塩レモンプリン(❤ももら❤さま)』、『ウマイ!*長いものベーコン巻き天ぷら*(✿GINhaha✿さま)』、『混ぜるだけ!デパ地下風ハムマリネ(ちゃとPさま)』、『ささみとオクラのイタリアン南蛮♪(santababyさま)』、『冷製、海老とパプリカのバジル炒め(☆ムーニン☆さま)』、『〖冷やして美味しい*ひと口サンドイッチ〗(まあちゃんままさん♡さま)』
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