問題だらけで草ァ!! -Toward the sky- <1st Season>   作:白鷺 葵

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【諸注意】
 1.この作品は『大丈夫だ、問題しかないから』シリーズのリメイク版です。
 2.『ガンダム00』を原作に、アニメ版『地球へ...』、及び『スーパーロボット大戦』や『Gジェネレーション』シリーズ等の要素とクロスオーバーしています。
 3.主人公含め、オリキャラが多数登場します。
 4.キャラ改変や原作崩壊、原作死亡キャラの生存要素があります。
 5.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 6.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 7.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 8.基本はギャグとラブコメ色強めですが、時々シリアスになります。
 9.読了後に如何なる負の感情を抱かれても、書き手にはどうすることもできません。

 10.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」への場面転換、及び視点切り替えになります。
 11.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味しています。
 12.良くも悪くも飯テロ要素があります。注意してください。

上記が大丈夫の方は、本編をお楽しみください。



3.ビギニング・エンカウント -その気なし編-

 

 本日は晴天なり。雲一つない蒼穹が広がる。徹夜明けの脳と心身には、鮮やかな青は非常に染み渡って痛かった。クーゴが足を止めている間にも、先導するグラハムの背中はどんどん遠くなっていく。

 クーゴはのろのろと首を動かした後、体を引きずるようにして彼の後に続いた。軍事演習場の観客席は、AEUの新型兵器を見に来た人々でごった返している。気を抜くと置いていかれそうだ。

 そんなとき、人混みの中に見知った背中を見つけた。茶髪の髪をポニーテールに結び、白衣を身にまとった技術者――紛れもないビリー・カタギリの後ろ姿だった。

 

 

「モビルスーツ、■■■■。AEU初の太陽エネルギー対応型か」

 

 

 派手に飛び回り、パフォーマンスを繰り広げているのはAEUの新型モビルスーツ。それを興味深そうに見上げていたビリーの元へ、グラハムが歩み寄る。

 

 

「AEUは軌道エレベーターの開発で後れを取っている。せめてモビルスーツだけでもどうにかしたいのだろう」

 

 

 グラハムはそんなことを言いながら、“AEUの新型兵器”を見上げた。不敵な笑みを浮かべる相棒の背中を追いかけながら、クーゴはよろよろを足を進める。

 4徹の体に階段はきつい。足元がおぼつかないし、頭の中に痛みが反響していた。奴の無茶を通すためにどれ程の強行軍を組んだのか。正直、もう横になって寝たい。

 

 

「いいのかい? MSWADのエースコンビがこんな場所で油を売ってて」

 

「よくはない」

 

「いいと思っている奴の神経が知れない」

 

 

 じゃれあいのような会話をし始めたビリーとグラハムの言葉を切って捨てながら、クーゴは虚ろな目で空を見上げた。“AEUの新型機”は自由自在に空を翔けぬけ、次々と標的を屠っていく。フラッグと同等の機動性だが、『“AEUの新型機”がフラッグの脅威となりえるか』と問われれば返答に窮するだろう。

 どうしてクーゴがこんな場所にいるかというと、「“AEUの新型機”お披露目会を見にいく。乙女座の勘が、ここにいけば《運命に会える》と叫んでいる(要約)」と言い出したグラハムのフォローに走り回った挙句、4徹でふらふら状態にもかかわらず「山羊座のキミにも、《運命の出会い》が(以下省略)」と引きずり出されたためだ。

 だいぶ前にも、グラハムは似たようなことを言った――具体的には『彼女こそ、私の運命だ。間違いない!』からの初手剛速球(口説き文句)火の玉ストレートをぶん投げたばかり。お熱になっている運命の相手がいるにも関わらず、新たな運命を求めるというのは不誠実ではなかろうか。親友の思考回路が分からない。

 

 空が青い。こういう状態の空を蒼穹と呼ぶ。そういえば、クーゴは蒼穹作戦という戦いに参加したことがあった。

 空を取り戻し、明日を手にするための戦い。竜宮島の子どもたちとファフナーは、あれからどうなったのだろう。

 

 

(蒼穹作戦? 竜宮島? ファフナー? 何だそれ。……ああ、この前見た虚憶(きょおく)に、似たようなのが出てきたな)

 

 

 寝不足のせいか、思考回路が虚憶(きょおく)の方に引っ張られてしまったらしい。気を抜くと虚憶(きょおく)と現実の境目が曖昧になってしまいそうだ。

 

 多元世界になってから20年の月日が経過し、世界は閉塞感で満ちている。それでも、表面上はまだ平和を保っていた。

 『戦争を起こせば泥沼になり、収拾がつかなくなって、挙句の果てには人類滅亡に繋がりかねない』と思い至り、自他共にブレーキをかけようとする程度の理性は残っているが故に。

 

 

「ねえグラハム。キミはクーゴに何をしたの」

「今回、このお披露目会に参加するために、色々と手を回してもらった」

「あれは完全に振り切れた目をしてるよ!? 死んだ魚の目だ! ……彼に何させたの?」

「……徹夜」

「何徹させたの?」

「4徹」

「ダメだよ!! 徹夜とアルコールが絡んだクーゴは『仕事以外は危険物』だって何度経験すればわかるんだい!?」

「本当に、申し訳なかったと思っている」

「あーもう、どうしてこうなるまで放っておいたんだ!?」

「……返す言葉もない」

 

 

 ビリーとグラハムが、2人並んでひそひそ何かを話し合っていた。果てしなくどうでもいい。

 クーゴは2人から目を逸らし、ぼんやりと空を見上げた。相変わらず目に染みる青さだ。

 

 どこからか咳払いの音が聞こえ、グラハムの声が響く。

 

 

「アフリカ共和国では、我がブリタニア・ユニオンが支援するギザン共和国とAEUのバックアップを受けたマラニアが連日戦闘を繰り広げているのだからな」

 

「――ですが、それはギザンとマラニアの問題。ブリタニア・ユニオンとAEUが戦争に入った訳ではありません」

 

「あなたは……」

 

 

 グラハムの言葉を引き継ぐようにして、別の男の声が聞こえた。ビリーが驚いた声を上げる。

 彼らの声に釣られるようにして首を動かせば、軍服に身を包み、仮面を被った1人の青年がこちらに近づいてくる所だった。

 

 

「ブリタニア・ユニオンのグラハム・エーカー中尉、クーゴ・ハガネ中尉、ビリー・カタギリ顧問ですね。私はゼクス・マーキス上級特尉。本日は我がAEUの新型発表会によくおいでくださいました」

 

「あなたがOZのライトニングバロンですか」

 

「噂はかねがね聞いております」

 

「えっ?」

 

 

 青年――ゼクス・マーキスは静かに一礼する。グラハムとクーゴも彼に頭を下げたが、ゼクスの困惑した声が聞こえてきた。間髪入れず、ひそひそ声が聞こえてくる。

 

 

「ああ、すみません。彼、徹夜明けなんです。……多分、彼、今向いている方向に“ゼクス特尉がいる”と認識しているんじゃないかな……」

「そ、そうなのですか?」

「この新型発表会に参加するために、その……色々、かなり無理をさせてしまって……。彼は本当に有能な副官(おとこ)なので、どうしても頼ってしまうのです」

「そうなのですか……。貴方は彼のことを、深く信頼しておられるのですね」

 

 

 クーゴが空を見上げている間に、グラハムたちはゼクスと距離を縮めていたらしい。

 心なしか堅苦しい空気が解け、和やかな雰囲気が漂い始めた。

 

 

「私も中尉たちのお名前は聞き及んでおります。ご一緒してもよろしいでしょうか?」

 

「我々は構いませんが、いいのですか? 関係者席にいなくて」

 

「今回のお披露目は私の管轄とは異なりますので、今日は純粋に一見物客ですよ」

 

 

 いつの間にか、MSWADの精鋭コンビと顧問はOZのゼクス・マーキス特尉と“AEU新型機”のお披露目会を見ることになったらしい。

 クーゴは返事をしたつもりはないが、ゼクスと一緒にお披露目会を見ることに対して特段問題は無いと思ったので頷くことを選んだ。

 “AEUの新型”は元気にノルマを達成している。それは見ている人間にとっての合格点を叩き出しているようで、あちこちから歓声が《聴こえてきた》。

 

 

「いかがです? 新型のご感想は?」

 

「上級特尉の前では、うかつなことは言えませんよ」

 

<――まあ、カタギリだったら、『フラッグの猿真似』くらいは言いそうだが……>

 

<――どうもこうも、ぶっちゃけた話、ウチのフラッグの猿真似なんだよなぁ。ヘリオンだってブラストの猿真似だったワケだし>

 

 

 グラハムは曖昧な笑みを浮かべることで、ビリーは沈黙を保つことで、ゼクスの面子を守ることにしたらしい。しかし、彼らの本心ははっきり《聴こえて》くる。

 普段のグラハムなら『空気は読むものではなく吸うものではないのか?』みたいな切り返しをしてきそうなものだが、この思考回路(はつげん)はAEUに対する火の玉ストレート過ぎた。

 

 これをゼクスに漏らしたが最後、和やかな空気は一瞬で霧散していたに違いない。幾らゼクスと“AEUの新型機”関係者同士が管轄外であっても、友軍を詰られて平然としていられる輩はいないのだ。

 

 ただ、何も言わないのもそれはそれで問題になる。

 それを十二分に察知していたのか、グラハムは一言付け加えた。

 

 

「ですが、デザインだけは独創的だと申し上げましょう」

 

「そこ、聞こえてっぞ! 今、イヤミを言いやがったな!?」

 

 

 グラハムが肩をすくめて笑った直後、新型機のパイロットががなり立てた。コックピットが開き、緑の角ばったパイロットスーツに身を包んだ男が観客席を見返す。ピンポイントでグラハムの方を向き、彼はまた怒鳴りつけた。

 今回、この最新MSに登場しているのはパトリック・コーラサワー。姓が炭酸飲料のようだ。いつぞやのMSファイトで優勝を治めて以来、彼はめきめきと頭角を現したらしい。触れこみは「模擬戦2000回無敗の男」だったか。真面目に計算して考えれば、確実に矛盾が発生する数字である。どこからどう見ても盛っていることは明らかだ。

 犯人は軍部か、本人か、それとも両方か。十中八九本人だろう。“破界”や“再世”、“時獄”や“天獄”、“究極の混成部隊”加入時もそんな感じだった。人は彼を“不死身のコーラサワー”と称する。機体が大破しようとも、当人の帰還率が驚異の100%だったためだ。『大丈夫、必ずそこへ還る』というのは、彼のための言葉だと思う程に。

 

 そこまで考えて、クーゴは首を傾げた。変な用語が頭の中を飛び交っていたような気がしたからだ。もう何も思い出せない。

 コーラサワーの売り出し文句は“不死身”ではない。では、なぜ“不死身のコーラサワー”という言葉が浮かんだのだろう。

 

 

「集音性は高いようだな」

 

「みたいだね」

 

 

 グラハムは笑い、ビリーが苦笑する。クーゴは首を振った。

 

 

「違う。あれはパイロットだ。パイロットが色々と凄すぎるからだ」

 

「……ねえクーゴ。キミは一体、どこを見て、誰と話してるの?」

 

 

 ビリーのいるほうからではなく、クーゴが“ビリーがいる”と認識している場所の反対側から声がした。今日はいい天気である。空が真っ青だ。

 

 

「クーゴ中尉は、パトリック少尉をどう見ますか?」

 

 

 どこからか声がした。ゼクスの声だ。

 彼の問いかけに答えるため、クーゴは首を動かす。

 誰かがヒュッと息を飲む音が聞こえた気がした。

 

 <こ、これがジャパニーズ・ホラーに出てくるイチマツニンギョウ……!>と戦慄したのはどこの誰だったのか。

 <首の可動が怖すぎる>と怯えていたのはどこの誰だったのか。クーゴには全く分からない。

 

 

「模擬戦2000回無敗の男」

 

「……差し出がましいようですが、それは……恐らく、何か別のもの同士が混ざっているのでは……?」

 

「何度撃墜されても、何度機体を大破させても、必ず戻ってくる“不死身のコーラサワー”」

 

「た、確かに彼は緊急発進(スクランブル)2000回をこなし、今のところ無事に帰投していますが、流石に“不死身”と呼ばれる程では……」

 

「自爆したって戻って来るし、何なら近くで自爆した友軍にも不死身を感染させる」

 

「中尉。パトリック少尉の人間離れが進んでいます。流石に、彼にはそんな力はないと思われますが……」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 クーゴの周囲からは困惑の《聲》が《聴こえてくる》。彼らはみんな、パトリック・コーラサワーという人間については“問題児”というイメージで凝り固まっているらしい。だけど、虚憶(きょおく)の中にいる“不死身のコーラサワー”は、『腕に覚えがある問題児』という一言で終わらなかった。

 

 『友軍の中でも早いタイミングで撃墜されがちなため、見逃されやすい』のだろうが、モビルスーツでの離着陸が上手かったり、周りの動きが見えない先頭にいるのに1人だけしれっと回避に成功していたり、初見の武装や不意打ちにも対応できていたり、合理的な武装選択をしていたり、記録映像をコマ送りにしないと分からないレベルの繊細且つ精密な挙動をしていたりする。

 それと、恋愛関係においてはグラハム・エーカーとタメを張れるレベルの一途さだ。と言っても、“惚れた女の好敵手として相応しい存在で在ろう”とストイックに邁進するグラハム・エーカーとは違い、パトリック・コーラサワーの行動原理は“惚れた女に対して、己の全権を委ねた上で、どこまでも傍に控え、とことんついていく”タイプの一途である。

 愛する女のためならば、禄でもない噂が立つ治安維持部隊に自ら志願したり、彼女と離れてアルティメット・クロスに出向することも厭わない。部隊内ではコメディリリーフを――本人の意志及び意図は問わず――買って出ている印象だけれど、相手の実力や活躍を素直に認めて褒めてくれるし、誰に対してもそれを忘れない男だった。

 

 

『水臭いな、お前ら! 何で名乗ってくれないんだ!』

 

『今は地球連邦軍の軍人なんだろ? だったら、俺の僚友だ!』

 

『しかし、考えてみれば凄いな……。ブリタニア・ユニオンとAEUのエースが肩を並べて戦っていたんだから』

 

 

 それに救われた経験のある人間は多い。

 そうして、()()もまた、それに救われるのだ。

 

 

「良くも悪くもお気楽で前向きだけれど、それ故に、過去の蟠りを一切気にしない。嘗て敵対した者同士であろうと、共に戦えることを素直に喜び受け入れる度量の広さと精神的余裕を併せ持つ」

 

 

 クーゴ・ハガネは《識っている》。――だから、胸を張って言えるのだ。

 

 

「楽しみなんです。――いつか、()()()で背中を預け合って戦うの」

 

 

 

◆◆◇

 

 

 

 ユニオン基地は今日も晴天。特に問題は起きていないし、このまま行けば問題なしのまま終わるだろう。

 どこかでは虚憶(きょおく)のような代理戦争染みた小競り合いが行われているかも知れないが、自分たちが所属する部隊は平和そのものである。

 

 

「AEUヘリオンの後継機開発、か」

 

 

 小さく呟き、クーゴはコーヒーを飲み干す。クーゴにとって、新聞とインターネットが主な情報入手先であった。

 ただ、親戚たちのコネクションがべらぼうに凄まじいため、そこからも情報が入ってくる。喜ばしいことであるが、素直に喜べなかった。

 今回の情報も、AEUでモビルスーツ開発に勤しむ親戚が自慢してきたことだ。親戚はフラッグに対抗心を燃やしており、見返すつもりでいるらしい。

 

 

「ああ、リアルドの猿真似の」

 

 

 クーゴの呟きを拾ったビリーが、ほぼ反射と言っていい速さで、連想した単語を口にする。

 

 事実ではある。ヘリオンはリアルドが生み出された後に誕生した機体だ。大きな違いは運用目的とデザインぐらいで、性能はこれでもかというくらいリアルドと酷似していた。というより、リアルドを参考にしたのだから当然といえる。

 リアルドが長距離の高速移動に適した変形機体であるなら、ヘリオンは用途に応じて対応する機体だ。実際、様々なバリエーションが発表されており、機体の種類に運用目的が反映されている。機体の運用次第では、リアルド以上の使い勝手の良さや成績をたたき出すこともあった。

 

 

「後継機はさしずめ、フラッグの猿真似になるんだろうね」

 

「手厳しいな」

 

 

 クーゴは苦笑した。これを親戚に聞かせたら卒倒すること間違いなしだろう。

 だが、親戚の中に燃えている炎に油を注ぎ、その結果、後継機が化ける危険性も孕んでいる。

 

 

(この場に親戚がいなくてよかった)

 

 

 クーゴは心の底から思った。技術屋の戦争については、よく知っている。AEUのMS開発者たちは今頃、入手したフラッグを分解(バラ)しているのだろうか。愛機が分解(バラ)されているような気分になり、クーゴはこめかみを抑えた。

 敵MSを出し抜く技術を得るためには、そのMSの性能や武器をきちんと知っていなければならない。他国の企業で働く技術者が『技術開発』を名目に、妻および夫や親戚名義でMSを入手して分解するなんてよくあることだ。

 MS分野だけではない。今の話は、どの企業でも行われている戦いである。職業や専門が違うだけで、戦争の次元や方向性は全く違う。親戚たちが多方面で活躍するクーゴはよく理解していた。何せ、日本全土では飽き足らず、世界進出を果たしつつあるのだから。

 

 

(刃金(ウチ)の本家は、昔から男児に恵まれなかったからなあ)

 

 

 一族――特に本家のアレコレを思い返しながら、クーゴはコーヒーが淹れ終わるのを待っていた。

 

 刃金の本家は、中々男児が生まれなかった。運よく男児が生まれたとしても、何かしらの理由で早逝しやすい。故に、女性が婿養子を貰って血筋を守ってきたという。しかしそれだけでは飽き足らなかったようで、嫁入りした刃金の女が嫁ぎ先を――事実上、意図したか否かに関わらず――乗っ取り、嫁ぎ先や本家の繁栄に貢献してきたそうだ。

 現在、刃金家は(事実上の乗っ取りによって派生した)分家が日本全土に存在してる。日本制覇はクーゴが生まれる以前から成し遂げられていたそうだ。そのうち世界制覇もしてしまいそうで怖い。刃金の血筋が世界制覇を成し遂げるかどうかは、自分含んだ海外組の行動にかかっていた。実にどうでもいいが。

 

 AEUでMS開発に勤しむ親戚の情熱を思うと、ビリーの発言は身も蓋もない。親戚を援護するつもりはないけれど、黙って見過ごせる気にもなれなかった。

 

 

「お前、ボロクソに言いすぎだぞ。あのときはデザイン以外何も言わなかったじゃないか」

 

 

 クーゴがいさめるようにして声をかけた。

 間髪入れず、隣に座っていたグラハムが頷く。

 

 

「当然だ。AEU、ひいてはOZに所属するゼクス・マーキス特尉がいる前で、流石にうかつなことなど言えんだろう」

 

 

 グラハムの発言に、ビリーは首を傾げる。

 

 

「えっ? ……グラハム、OZって何だい? ゼクス特尉って……そんな人AEUにいなかったはずじゃ」

 

 

 彼の言葉通りだ。AEUには“OZ”という名前の組織はない。特尉という階級に“ゼクス・マーキス”という名前の人物もいなかったはずだ。

 でも、なぜだろう。クーゴには、“OZ”という単語も“ゼクス・マーキス”という人物名にも覚えがある。もしかして、虚憶(きょおく)に関係しているのだろうか。

 グラハムはクーゴの虚憶(きょおく)による影響を受けているのだろうか。しかし、彼がそんな発言をするのは、クーゴがコーヴァレンター能力を発動させているときだけだ。

 

 今、クーゴはコーヴァレンター能力を発現させていない。

 だから、ヴィジョンを通した虚憶(きょおく)の共有現象は起こっていないはずなのだ。

 

 にもかかわらず、グラハムはぺらぺらと話し始める。

 

 

「ああ、彼は私の友だ。プリベンター・ウィンドを名乗っていてな」

 

 

 プリベンター・ウィンド。いつぞやの虚憶(きょおく)で、彼が拾い上げてくれた情報の1つだ。プリベンターと言う秘密組織に所属する、誰かのコードネームらしい。彼は同じ組織に所属するライトニングとコンビを組んでおり、組織内では『風神と雷神』で通っていたという。

 このコンビの補佐役としてもう1人同行していたようだが、彼のコードネームはわからなかったらしい。グラハム曰く「その人物のコードネームの由来は、『日輪の使いは烏』」だというが、彼に関するエピソードはだいぶキレッキレなものが多いらしい。

 

 

「各々のコードネームを決めた際、彼のコメントが中々に切れ味が鋭くてな。ウィンドについては『火の勢い強くして炎上させそう』、ファイヤーについては『破壊消火かな?』や『火消しが火をつけて大丈夫?』、ライトニングについては『ライトニングバロンを差し置いてそれはどうなんだ?』や『雷でどうやって火を消すんだ? 雨でも降らすのか?』などと言っていたんだ。……彼は4徹明けだったから、心身共に限界寸前だったのだろう」

 

 

 何かちぐはぐだ。理由はわからないけれど、“グラハムの話は時系列がバラバラである”クーゴは悟る。そのことをグラハムに指摘しようとしたときだった。立て板に水の如く喋っていた彼が、ぴたりと話を止めてしまう。

 

 

「…………む? 私は何を言っているんだ?」

 

 

 グラハムはそう言って、首を傾げた。自分が何を言っていたのか、何を言おうとしたのか、そのすべてを忘れてしまったようだ。

 

 知っている。この現象には覚えがあった。虚憶(きょおく)を持つ人間に見られる、典型的な言動。

 クーゴが虚憶(きょおく)所持者としての能力を開花したときも、最初は彼と同じ言動をしたものだ。

 

 

「グラハム。キミは……」

 

 

 ビリーもクーゴと同じことを悟ったのだろう。驚きに目を見開いている。

 ヴィジョンを介して虚憶(きょおく)を共有していた人間が、虚憶(きょおく)を有するようになるだなんて。

 そんなケースは初めてだ。研究員たちが色めき立つ姿が見えるような気がして、クーゴは内心苦笑する。

 

 当の本人はきょとんとした顔で目を瞬かせていた。が、クーゴたちの表情を見て何かを察したようで、顎に手を当てた。考え込むように唸ったあと、彼は肩をすくませる。

 

 

「成程な。気を抜くと、記憶と虚憶(きょおく)の境目がわからなくなりそうだ。キミの苦労が目に浮かぶようだよ」

 

「どうせなら虚憶(きょおく)のことだけじゃなくて、普段の訓練やら何やらのときの俺の苦労を察してくれたらいいのにな」

 

「む……」

 

 

 身に覚えのありすぎたグラハムが閉口する。バツが悪そうにしてくれるだけマシだ。

 

 グラハムの実力は折り紙付きだし、多少の無茶や道理ならば文字通りこじ開けてしまえる。ただ、他者にも己と同じレベルを“無自覚に”要求している節があった。

 自分にそんな実力があるとは思わないが、どうやらクーゴはグラハムの要求するレベルに応える力があるらしい。もっぱら、彼のフォローに走ることが多かったが。

 

 そんなことを考えていたら、端末が鳴った。宛名を確認する。差出人は――歌い手仲間のエトワール。

 自然と端末をいじる速さが上がる。メッセージを開けば、数日前に投稿した動画の感想であった。クーゴの頬が自然と緩んだ。

 本文を読み進め、クーゴは思わず手を止める。書いてある文章を何度も読み返しては、何度も確認しなおす。

 

 

『今度、コラボレーション企画をやりませんか? その際、是非ともオフで顔と声を合わせてみたいのですが』

 

 

 来た。クーゴは思わず、端末を握り締めて小さくガッツポーズを取った。

 クーゴの様子に何か気づいたグラハムとビリーが端末を覗き込む。文面を理解した2人は顔を見合わせ、クーゴの方を覗き込んだ。

 

 

「ほう、デートのお誘いか。これはしっかり作戦(プラン)を練る必要があるな。我々も協力しよう!」

 

「そうだね。僕たちにできることがあったら言ってくれよ!」

 

 

 我がことのように喜ぶ親友2人。しかしこのチームには、悲しい弱点があった。

 

 

「……そう言うお前らは、女性をエスコートした経験があるのか?」

 

「あ」

「む」

 

 

 ビリー・カタギリは、『好きな人がいるけれど告白したことのない』男である。年齢はそのまま『彼女いない歴』に換算できた。

 グラハム・エーカーは、『空を飛ぶために縁談を蹴った』男である。もちろん、彼の年齢も、そのまま『彼女いない歴』に換算できた。

 クーゴ・ハガネは、『そもそも恋愛する状況にない』を地で行った男である。当然、己の年齢はそのまま『彼女いない歴』に換算できた。

 

 この中で一番モテるのは誰かと言われたら、クーゴは迷いなくグラハムを挙げる。

 

 だが、上司の縁談を断った一件や空に対する情熱に負けて、最終的に女性の方が諦めてしまうのだ。

 たとえ女性側が諦めなかったとしても、最後はグラハム自らが引導を渡す。女性を不快にさせずにあしらう技術は称賛に価した。

 

 社交界に顔は出すものの、グラハムは常にマイペースだ。気分を害せばすぐに去っていくし、気分が乗れば延々と語り続ける。戦闘での引き際なら察せるのに、その他に関する引き際にはやや疎かった。

 彼が女性を熱心に口説く図など想像できない。むしろ、女性が勝手にわらわらと群がってくる方だった。社交界の光景を思い出し、クーゴは天を仰いだ。できればあそこに近づくことなく人生を生きていきたいのだが、階級には責任と束縛が付き物であった。

 

 

 

「……はあ」

 

 

 前途は多難である。

 

 まずは、エトワールに返信する文面を考えるところから始めなくては。

 オフ会のプランを練るのは、その後からだ。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 女性はくすくすと笑っていた。端末に映し出されるのは、先程届いたばかりのメッセージ――歌い手仲間・夜鷹から送られてきたメッセージである。

 頬が緩むのを止められない。妙に浮ついた気分になる。鼻歌を歌いながら、女性は艦の廊下をスキップしていた。

 

 もの鬱気に宇宙を眺めていたのは、眼鏡をかけた青年だ。彼は女性に気づくと、訝しげにこちらへ視線を向けてきた。十数分後、彼はヴェーダからの緊急ミッションを受領するだろう。困惑しながらも、粛々と準備手続きをしてくれるに違いない。

 シミュレーターを終えた色男は、ピンクの髪の少女と何やら話していたようだった。女性が通り過ぎたことに気づき、2人は首を傾げる。あと数十分後に、彼らは自分の姿を見て仰天したメカニックに「あれ見た!?」と絡まれることになる。

 反対側からやって来た浅黒い色の青年が女性とすれ違った。あと数秒後に、“もう一人の彼”と「あの様子だと男関係だ。察しろや」「え、えええええええ!?」と会話を交わし、反対側からやって来たハロから「ヒトリシバイ、ヒトリシバイ」と言われてしまうのだ。

 

 女性は浮かれた足取りのまま、シミュレーター室へと直行する。今日は相棒である“彼女”と一緒に、フォーメーションの確認をするという予定があった。数分後に“彼女”がシミュレーター室へとやってくるだろう。浮足立っている自分の姿を見た『彼女』は、いつもと変わらぬ仏頂面でいるに違いない。

 お互いのプライベートには言及しない。それが、クルーたちの暗黙の了解だ。しかし、シミュレーション終了後、“彼女”は眼鏡の青年から「ヴェーダからのミッション」を言い渡されることになる。それが女性の護衛だと知った“彼女”は、表情一つ変えず、2つ返事で引き受けるのだ。そして、ヴェーダが提示した案に眉をひそめる。

 

 

「楽しみだなぁ」

 

 

 女性はほぅ、と息を吐いた。腰まで伸びた薄緑の髪がさらりと揺れる。

 

 もうすぐだ。もうすぐ夜鷹に出会える。顔を合わせ、声を聞き、言葉を交わすことができるのだ。

 彼が歌った曲を聞きながら、女性は“未来”へと思いを馳せた。

 

 黒髪黒目の小柄な東洋人。日本生まれの日本育ちだが、“空へと行かなくてはならない”という使命感に駆られてユニオンの軍人になった男性。本名は刃金(はがね) 空護(くうご)。名前の通り、ユニオンにおける“空の護り手”として活躍している。

 彼はエトワールと接触するために動画を投稿し始めた。エトワールも彼と接触するため、積極的にコンタクトを取った。夜鷹もエトワールも、客観的に見れば“お互いにお互いの計画に沿って動いた”だけにすぎない。打算が前面に出ていることは確かだった。

 それでも、女性は胸を張って言える。「自分にとっての夜鷹/クーゴは、全てにおいての《運命の相手》である」と。歌い手のエトワールも、天上人としての自分も、もう二度と表舞台に出ることのないであろう自分も、夜鷹および刃金 空護/クーゴ・ハガネに魅せられた。

 

 

「『死ぬのが怖くて、恋ができるか』か」

 

 

 夜鷹の歌を聞いて以来、女性は新たな虚憶(きょおく)を見るようになった。その中で、とある女性が零していた言葉だ。

 

 世界への反逆者として生きる自分たちに、人並みの平穏や普通の人生など、到底約束されない。そんなものを望むこと自体が、己の破滅へと繋がりかねないからだ。

 だけど、と女性は声高らかに叫びたい。自分たちだって人間だ。誰かを嫌いになったり、好きになったりするのは当然のことである。それができなきゃ、真の平和は訪れない。

 ただ、許し合えれば。互いがそこにいて、生きていくことを許し合えるならば。その当たり前を、「当たり前なのだ」と言うことができれば。それが、平和である証ではないのか。

 

 女性は知っている。そう願いながらも、世界を管理する機械(そんざい)から否定されたために、踏みにじられた命があったことを。

 管理された社会。完璧な箱庭。誰も気づこうとしないけれど、小さな綻びは存在しているのだ。そこに気づかなければ、そこを直そうとしなければ、世界は変われない。

 

 

『だが、人間はそれを赦さない。……いや、彼らのシステムがそれを赦さないのだ』

 

 

 女性の脳裏によぎるのは、亡き母や尊敬する指導者から受け継いだ記憶――嘗て“同胞”を率いた2代目の指導者が、己の心を捨て、鋼の意志を持って修羅の道を進む始まりとなった宣言の1つ。人類に打ち捨てられた植民惑星を安住の地とし、根差そうとしたことから端を発した別離と挫折が、2代目指導者をその道へ進ませた。

 

 あの頃の“同胞”たちは、長き流浪の旅路に疲れ果てていた。そんなときに発見した赤い惑星(ほし)は、人類が入植しようとして失敗したために捨て置かれ、以後は気にも留めなかった辺境だった。“同胞”――特に2代目指導者と同年代である若い世代にとっては、渡りに船だと言えるだろう。

 赤い惑星を安住の地とすることに関して、素直に提案が通った訳ではない。初代指導者と同年代の“同胞”たちは『青い星に帰るという悲願を蔑ろにするのか』と怒りを見せたし、2代目指導者と同年代だった若い世代の“同胞”は『赤い惑星で暮らしたい。怯え逃げる日々はこりごりだ』と主張した。

 

 一時でも“赤い惑星に根差そう”と思ったことは間違いだったのか。提案した本人たちが遠くへ旅立ってしまった今となっても、その是非は問えないままだ。人類軍の攻撃によって赤い惑星は消滅し、そこを安住の地にしようと考えていた若い世代の多くが命を落としたのは事実。

 でも、彼らの血を継ぐ次世代の“牙”が生まれ落ち、彼や彼女らが青い星への道を阻む障害を粉砕し尽くしたのも事実だ。そして何より――赤い惑星の“牙”が生まれ落ちなければ、女性は()()()()()()

 

 彼女たちがいなければ、女性は希望の(まも)り手として、天上人と共に歩むことはできなかった。

 

 

「イデア・クピディターズ」

 

「ああ、刹那」

 

 

 後ろから聞こえた声に、女性――イデア・クピディターズは振り返る。この艦で自分は、ラテン語で『理想への憧れ』という意味のコードネームで呼ばれていた。

 シミュレーターでコンバットパターンの練習をする相手が、目の前にいる少女――刹那・F・セイエイだ。勿論、彼女の名前もコードネームである。

 中東出身の特徴である浅黒い小麦色の肌に、砂漠を思わせるような赤銅色の瞳。艶やかな黒髪は、少年と見間違う程短くまとめられている。

 

 

「今日のシミュレーションデーター、更新されたみたい」

 

「聞いている。始めるぞ」

 

「了解。よろしくね」

 

 

 挨拶を交わし、シミュレーターに乗り込む。

 

 刹那の愛機はガンダム01、エクシア。格闘戦を得意とするタイプであり、MS全般だけでなく、対ガンダム戦も想定して作られた機体だ。

 いいや、対GNフィールド用のMSともいえる。エクシアの武装は、GNフィールドを切断できる仕様になっているからだ。

 ガンダムタイプとの戦闘を予測した機体というのは、世間に太陽炉やガンダム系の情報が流出するという懸念に対応しているのだろう。

 

 イデアの愛機はガンダムESP-Psyonタイプモデル03、ガンダムハホヤー。機体名の由来は防衛を司る天使の名前から。イデアの持つ虚憶(きょおく)とイオリア計画、および“自分たちの計画”の技術で生み出された機体だ。元になった機体は、C.E.(コズミック・イラ)と呼ばれる年代に開発された無人・自立運用展開教導機の宇宙探査用MS・スターゲイザーである。

 そのため、刹那や他のマイスターたちのガンダムとルーツが違う。最初はそのことで面倒なことになりかけたが、イデアの能力とヴェーダの采配のおかげでどうにかマイスターになれたのだ。機械によって命を脅かされた存在の末裔としては、機械の采配で命拾いするとは複雑な気分である。

 

 白と青を基調にしたエクシアの隣に、純白のハホヤーが並ぶ。その様は、戦乙女の後ろに佇む天女のようだった。

 

 ハホヤー――或いは、ハホヤーの元になった機体・スターゲイザーが背負った巨大なリングが、天女が羽織る羽衣を連想させる。この機体に搭載されているシステムを稼働させれば、機体周囲に発光現象が発生し、ますます「羽衣を羽織った天女」に近い佇まいとなるのだ。

 ミッションスタートを告げる機械音と同時に、エクシアとハホヤーが出撃した。緑色の粒子が光の軌跡を刻む中、青緑に輝く光が縦横無尽に残像を刻む。ぱっと見の武装数は少ないが、驚異的な機動力と発光現象を攻撃転用するという戦闘手段を持つダークホース――それが、イデアの駆る愛機であった。

 

 

(タイプアンノウン系で組まれた部隊ね。……新しく追加されたタイプか。あれ、G-ARF型って名前になったのね)

 

 

 タイプアンノウンとは、イデアの虚憶(きょおく)から形成されたデータを基にして再現された機体たちの中で、黒い靄を纏って表示される機体の総称である。

 イデアの虚憶(きょおく)は映像で残せるが、それでも不鮮明な部分は存在した。『武装と能力値の再現は可能だが、機体の姿が不鮮明』な場合は、黒い靄を纏った姿で表示される。その仕様から、クルーたちからはタイプアンノウンとして呼ばれるようになった。

 

 G-ARF型は、日本の剣術をベースにしたコンバットパターンを駆使する機体であった。メインウェポンは日本刀を模したようなブレードで、近接戦闘を得意としている。エネルギー消費が少なく、戦艦を真っ二つにしたりビームごと敵機を真っ二つにしたりする程の破壊力を宿していた。

 剣の名前は「ガーベラストレート」。名刀の名を冠した剣の切れ味には充分注意する必要があった。イデアは刹那へ視線を向ける。彼女は無表情のまま、G-ARF型に攻撃を仕掛けた。ブレード同士がぶつかり合い、派手に火花を散らしている。

 エクシアとG-ARF型のぶつかり合いを見た他のG-ARF型が刹那に攻撃しようとする。それよりも先に、ハホヤーが武装を展開する方が早かった。ヴォワチュール・リュミエールの稼働により発生した光輪が、G-ARF型を弾き飛ばす。間髪入れず、ビームガンで追い打ちをかけた。直撃を受けた機体が爆散した。

 

 同時に、エクシアがG-ARF型を一刀両断する。ガーベラストレートごと叩き切ったのだ。

 

 やや荒削りな太刀筋であるが、彼女と出会ったときと比べると格段に成長している。イデアは微笑み、G-ARF型を翻弄するように戦場を飛び回った。

 その隙をついて、刹那が次々とG-ARF型を屠っていく。エクシアの背後にいたG-ARF型が、右手にエネルギー弾を生み出して攻撃しようとしていた。間髪入れず、イデアも反撃に転じる。身に纏っていた光輪を飛ばし、G-ARF型を撃破した。

 

 

「ミッション、コンプリート」

 

「これで全機撃破。うん、時間ぴったりね」

 

 

 刹那の無機質な声が戦いの終わりを告げた。成績を見て、イデアも満足げに頷く。

 

 軽くインターバルを入れ、次のシミュレーションを始める。普段と変わらぬルーチンワーク。何度目かのシミュレーションが終わったとき、部屋の扉が開かれた。

 眼鏡をかけた青年が、相変わらず仏頂面で立っていた。紫色の髪が揺れる。ああそうか、ヴェーダからの緊急ミッションを受領したのか。

 

 

「2人とも、ヴェーダからの緊急ミッションだ」

 

 

 予想した通りの状況に、イデアはひっそり悪戯っぽい笑みを浮かべる。それは、青年と刹那が気づかぬ程ささやかなものだった。

 

 

 

◇◇◆

 

 

 

 格納庫に新しい機体が並んでいた。ユニオンフラッグとAEU■■■■の系譜を継いだ、フラッグの究極系とも言える量産機。

 

 機体の主な色は鮮やかなエメラルドグリーンである。しかし、その中に混じって、赤・黄・緑の挿し色が入った機体やナイトブルーの機体ものがあった。

 前者は『搭乗者が“同胞”である』こと、後者は『搭乗者が部隊の指揮官である』ことを示している。

 

 一般機だろうと指揮官機だろうと、この機体に乗れる人間は限られていた。主たる人間の一角として、グラハム・エーカー隊長率いる精鋭たち――“太陽の勇者”部隊が挙げられた。

 

 

「こうして見ると、感慨深いものがあるなぁ」

 

 

 クーゴはしみじみと息を吐いた。

 

 ブラストの猿真似、フラッグの猿真似。ビリーがヘリオンや■■■■を酷評していたことを考える。まさかフラッグの発展に■■■■の系譜が加わるなんて、誰が予想しただろう。この新型機――“勇者”は御旗と制定のいいとこどりをした欲張りセットであった。

 この2機を掛け合わせた“勇者”が生まれたこと自体が、新しい世界の幕開けに相応しい。その一歩として、この機体は華々しく空を舞うのだろう。自分もまた、この機体と共に空を舞う。考えただけで、口元が緩んできた。

 今ならグラハムの気持ちがよくわかる。空を愛し、空を翔ることを望んだ彼の、子どもっぽい表情。きらきらした想いに触れた気がして、あまりの眩しさに目を細めた。今でもグラハムはその気持ちと若々しさを失っていない。

 

 そしてそれは、新たな世代にも受け継がれつつある。クーゴは、新しく配属された2人の新人のことを思い出した。

 彼らは昔からの友人らしく、とても仲が良かった。2人はグラハム・エーカーに憧れる新米軍人である。若いって素晴らしい。

 

 今年でクーゴも35歳。思考回路もおっさん臭くなったものだと苦笑する。

 

 

「存在自体が年齢詐欺と言われるキミが言う台詞か?」

 

「その言葉、そのままバットで打ち返すぞ」

 

 

 今年で34歳になったグラハムに、クーゴは笑いながら言い返してやった。相変わらず、この男には「年齢+歳児」という言葉が似合う。現在34歳児の男は、今日も元気であった。

 グラハムは先の大戦で顔半分に大きな傷を負っていたが、それでもまだ充分若く見えるレベルである。彼らしさを取り戻し、憑き物がとれたということもあるに違いない。

 そこまで至るまでの道は、決して平坦なものではなかった。あまりにも長い道のりを思い出し、また気分が遠くなる。喉元過ぎればなんとやら、だ。

 

 またこうして、くだらない会話で笑いあえる日が来るなんて。

 戦いのさなか、ずっと願い続けた日常が目の前にある。それはとても幸せなことだ。

 

 

「一般機の中でも、キミのは更に特別性なんだろう? E■P-■s■onバ■■トとは、“星屑の流浪者たち”の技術部も奮発したものだ」

 

 

 グラハムは笑いながら、クーゴが駆るであろう機体を仰ぐ。一般機とは違い、晴れた空を思わせるような天色(あまいろ)の機体。

 先の戦いで“目覚めた』クーゴの、ひいては今後、現れ/増えていくであろうクーゴの“同胞”たちのための、特別なシステムが搭載されている。

 クーゴは己が搭乗する機体を仰ぎ見る。先の戦いで共に駆け抜けた“奇跡の帰還者”と、孤軍奮闘していた相棒と共に駆け抜けた“益荒男”の系譜を組み込んだ、新しい翼。

 

 

『今回は、徹頭徹尾、旧ユニオンが誇るカタギリ技術顧問が手掛けた機体じゃ。……ワシが教えることは、もうなくなってしまったな』

 

『ようやくエイフマン教授に合格点を貰ったんだ! それから、っ……『次世代は、キミが牽引していけ』って……!』

 

 

 フラッグの生みの親と、フラッグの系譜を1つの到達点へ導いた新世代の技術顧問たちの姿を思い返す。前者はどこか寂しそうに、後者は喜びと寂しさを深く滲ませて、“勇者”の話をしていたっけ。

 彼らの想いを継いだ“勇者”と共に、クーゴやグラハムは戦っていく。その光景を頭の中に思い浮かべる。青い空を自由自在に飛び回る天色(あまいろ)の機体。考えるだけで、心躍るものだった。

 

 クーゴの思考回路を中断するかのように、端末が鳴り響く。差出人はエトワール――もとい、彼女だ。

 

 

「ほう、デートのお誘いか」

 

 

 グラハムがこちらをからかうように目を細めた。

 クーゴだって負けていない。茶化すように彼を小突く。

 

 

「お前こそ。“彼女”とはどうなってるんだ?」

 

「ふふ。あえて言わせてもらおう! 私と“彼女”は「やっぱりいい。今のでよくわかった」

 

 

 全力で叫びそうになったグラハムを制する。彼を茶化すとロクなことにならない、典型的な例であった。

 

 思い出したくない苦労が頭に浮かび、クーゴは天井を仰いだ。他人の恋路に巻き込まれた日々は、今でも時折フラッシュバックしてくる。

 これ以上この話題にこだわると、クーゴの精神衛生上、辛いものがあった。どうにかして話題を変えよう、とクーゴは決意したときだった。

 

 

「グラハム少佐!!」

 

 

 救いの天使が来た。クーゴは素直にそう思った。クーゴが先程思い浮かべた新米軍人2人組である。

 グラハムは眩しいものを見るように目を細めた。彼がこの2人に目をかけていることなど、見てすぐにわかった。

 

 彼等が並ぶ光景は、先の大戦以前の自分たちを思い出させてくれた。自分たちには長い戦いと離別があったけど、今、こうして共に歩んでいる。

 この2人はどうだろう。自分たちのように、対立して離別するなんて経験はしてほしくない。クーゴとグラハムが肩を並べて戦えるようになったのは、仲間たちが手を貸してくれたおかげだ。

 何かひとつでも狂ってしまっていたら、クーゴはグラハムを連れもどすことができなかったかもしれない。もっと言えば、最悪の末路に至っていた可能性もある。考えるだけで恐ろしかった。

 

 グラハムは2人と雑談を始める。その後ろ姿を眺めながら、クーゴはふと考える。

 

 新米軍人2人組は、自分たち以上の偉業を成し遂げるだろう。彼らは互いに互いを高め合い、優秀なパイロットとして大成する。

 最高の相棒――この表現がとてもよく似合う。クーゴとグラハムの関係とよく似た、けれども、クーゴとグラハムとは違う形で、彼らは空を翔るのだろう。

 

 

「……さて、今のうちに返信返信、っと」

 

 

 端末を開いてエトワールに返信する。文章を推敲し、少しの間躊躇った後で、クーゴは送信ボタンをクリックした。

 

 

 

 

◆◆◇

 

 

 

 

 突如浮かんだ虚憶(きょおく)を記憶し終えて、クーゴは大きくため息をついた。あの虚憶(きょおく)は、少しだけ年を食った自分たちがいた。

 あれは未来の光景なのだろうか。だとしたら、自分たちにも、いずれ虚憶(きょおく)で出てきたような後輩ができるということになる。クーゴはもう一度、端末を見直してみた。

 

 

「世代交代、かぁ。俺らからしてみれば、まだまだ先のことなんだけど」

 

 

 正直、実感がわかない。

 

 当然だ。まだ自分たちは彼らのような若人と出会っていない。そもそも、今の自分たちの年齢が彼らと近しい。

 あんな穏やかな眼差しで、若さを羨望するようになるにはまだ早かった。

 いつかはあんな風になるのだろうか。……あんな風に、なれるのだろうか。

 

 そこまで考えて、クーゴはふと考えた。「虚憶(きょおく)の中で笑いあっていたあの2人組は、あの後どうなったのだろう」と。

 知っている(知らない)。その先を、クーゴは知らない(知っている)。クーゴ・ハガネはその先を――

 

 

「…………命の、名前――」

 

 

 突然、歌がクーゴの口をついた。再び虚憶(きょおく)がフラッシュバックする。

 

 

(――!)

 

 

 赤い機体が飛び出した。強大な敵に向かって、青年は容赦なく銃口を向ける。だが、彼の一撃は、敵に一切のダメージを与えられていなかった。

 珍しく、グラハムが戦慄する。クーゴの背中にも悪寒が走った。反応が遅れた赤い機体に、敵は容赦なく一撃を振りかざす。青年に待ち受ける運命は、絶対の死。

 それはだめだ。そう思ったとき、青い機体が赤い機体の前に躍り出る。もう一人の青年が、赤い機体に乗る青年を守ろうとしているのだ。一撃が迫る。

 

 そこへ割り込んだのは、クーゴが駆る天色(あまいろ)の機体だった。グラハムが名を呼ぶ声が、一拍遅れて響く。

 次の瞬間、すさまじい衝撃が走った。青い機体共々派手に吹き飛ばされる。爆ぜる音。背後から聞こえたのは、機体の暴走音。

 

 止めなければと思ったとき、自分の機体にも異変が起き始めた。

 

 ばちばちと火花が爆ぜ、警告音ががんがん鳴り響く。頭が痛い。自分の機体もまた、青い機体の異変に引かれているのだろう。

 まずい。これはまずい。最悪だ。グラハム、と、クーゴは呼びかける。自分が何を言いたいのか理解したらしい。奴は今にも泣き出しそうな顔で、クーゴを見ていた。

 それでいい、と、クーゴは笑う。ほら、撃て。お前にだから頼むんだ。撃て、早く。手遅れになる前に、早く。お前は隊長なんだろう。部下が見てるぞ、このおばか。

 

 いいや、おばかは俺の方だ。あいつにあんなことさせちゃいけないのに。こんなの、副官失格じゃないか。

 そこへ、連邦のものとは違う機体が飛び出してくる。剣がこちらに向けられた。ああ、そうか、止めてくれるのか。

 

 俺はどうでもいいから、後ろの奴は助けてやってほしい。こいつは将来有望な若者なんだ。

 

 その訴えは聞き届けられたのだろうか。わからない。理解する前に、視界が真っ白に染まったからだ。

 不意に、脳裏を駆けたのは1人の女性。最後に会ったのは、この戦いが始まる数日前のことだった。

 

 会いたい。会いたいな。

 こんなことになるのなら、もっと話をしておくべきだった。

 もっとよく顔を見ておくべきだった。後悔ばかりが募る。

 

 そういやグラハム、大丈夫だろうか。また、変な方向に突っ走っちゃいないだろうか。仮面つけたりしてしまうんだろうか。最後のはやめてほしい。やっと外してくれたのに、またあんなのになったら困る。

 ああ、そうか。俺は死ぬのか。未練と心配をたくさん抱えたまま、死んでいくのか。35年の人生。意外と短かったというか、随分と中途半端というか。20代前に命を落とすことが多い刃金の男にしては、長く生きた方だろう――

 

 

「クーゴ!? 大丈夫なのか!? 顔が真っ青だぞ!」

 

 

 声がした。見上げる。虚憶(きょおく)の中で見たときよりも若い、いつも見慣れた、グラハム・エーカーの姿だった。

 

 奴は今にも泣きだしそうなとした顔でクーゴを見ていた。クーゴも、彼の顔を見ながら何度か瞬きをする。

 あまりにも平穏すぎる光景。先程のような、人生クライマックス状態とは完全に無縁な状況だ。

 

 必死になる彼の姿を見ていて、失礼だが、クーゴは思わず吹き出してしまった。途端にグラハムが眉間にしわを寄せる。

 人が心配しているのに、と、彼は怒りの言葉を漏らした。「ぷんすこ」という擬音がよく似合う怒り方である。

 それを見ているだけでほっとする。ふふ、と、クーゴは笑った。クーゴの変化を見たグラハムも、同じように笑った。

 

 

「その様子なら大丈夫そうだな。戦場に出る前からあんな状態だとは、不戦敗もいいところだ」

 

「酷い言い草だな。こっちは完全武装してるつもりなんだけど」

 

「完全武装か、言い得て妙だな。この場で着物を着ている人間はキミくらいなものだ」

 

 

 クーゴの格好を指摘したグラハムは、どこかウズウズそわそわした調子でクーゴの格好を観察する。これが任務の一環でなければ、子どものように目を輝かせて大はしゃぎしていたかもしれない。

 家庭環境の影響もあってか、クーゴは洋服よりも和装や着物で過ごすことの方が多い。本日の格好はカジュアルな着物スタイル――濃紺カラーの着物一式フルセットの組み合わせで纏めてみた。目印がてら、同系色の中折れ帽と和傘も付けて。

 

 あちこちから「キモノ」「サムライ」というひそひそ声が聞こえてくる。中には話しかけてくる一般人もいて紛らわしかったが、適宜対応しておいた。閑話休題。

 

 

「その服装、私とキミが初めて会ったときのことを思い出すよ。あのときも、キミはこれと同じ和傘を持っていたな」

 

「午後から雨が降るって聞いたから、念のために持ち歩いてたんだよ。……まさか、暴漢を滅多打ちにする用途で振るう羽目になるとは思わなかったけどさ。おかげで先代はお釈迦になっちゃって買い替えたんだから」

 

「奴を確保しようとした私よりも先に動いたキミの雄姿は今でも覚えているぞ! その翌日、私と同じ基地に配属になった僚友として紹介され、『キミが私よりも年上だ』と聞かされたときの衝撃もだ!」

 

「俺だって、最初はお前のことお巡りさんだと思ったんだからな。俺が蹴飛ばしたナイフを迷うことなく足で止めたんだもの。それが全ての始まりになるなんて誰が予想できるかってんだよ」

 

 

 過去の出来事を肴に、軽口をたたき合う。そうしていると、不思議と気持ちが凪いできた。

 クーゴとグラハムは互いの顔を見合わせて微笑みあい、前に向き直った。周囲を見回し、待ち人を探す。

 

 現在、クーゴとグラハムはエトワールと接触するため、待ち合わせをしているところであった。

 

 ユニオンにある大きなショッピングモール街。相談して決めた待ち合わせ場所の目印は、大きなカエデの木と白いベンチだ。現在、クーゴとグラハムがいる場所がそうである。

 自分たちは待ち合わせ時刻よりも、わざと早めに来て待機していた。クーゴはベンチに座って、グラハムは少し離れた場所で他人の振りを装いながら。

 万が一、クーゴに何かあったときのための護衛役およびサポート役として、グラハム自らが同行を引き受けてくれたのだ。先程のことといい、とても心強い援軍である。

 

 

「さんきゅ。俺はもう大丈夫だから、他人のフリに戻ってくれ」

 

「その旨をよしとする!」

 

 

 グラハムは大仰に頷いて、所定の位置へと戻ろうとした。が、奴はぴたりと足を止める。何かに取りつかれたかのように微動だにしない。

 奴の視線を辿れば、中東出身と思しき少女と、薄緑色の髪を腰まで伸ばした女性がこちらへ近づいてくるところであった。

 グラハムの視線は少女へと向けられている。彼女は白を基調にした清楚なワンピースを身にまとっていた。着慣れていないのか、どこか足取りがぎこちない。

 

 

「運命だ……」

 

 

 グラハムが、感慨深そうにそう言った。

 

 

「は?」

 

「彼女こそ、私の運命だ! 間違いない!!」

 

「何を言っているんだ、お前は」

 

 

 意味を理解できなくて、クーゴは思わず眉をしかめた。相変わらず、グラハムは少女をじっと見つめている。

 翠緑の瞳はきらきらと輝いている。良い意味でも悪い意味でも、奴はまっすぐであった。

 

 少女は女性としばらく何かを話していたようだ。彼女は頷き、女性と離れようと歩き出す。

 

 次の瞬間、弾丸を思わせるような速さでグラハムが飛び出した。クーゴが止める間もなく、奴は少女の元へと文字通り突撃する。

 異常に気付いた少女が逃げようとしたが、それよりも先に、グラハムが少女の手を取る方が圧倒的に早かった。

 彼は社交界でも滅多にお目にかかれない爽やかな微笑を浮かべている。しかし、少女も女性も、果てには周囲にいた人々もどん引いていた。

 

 クーゴだって今すぐ他人のフリして逃げ出してしまいたい。しかし、ここで逃げたら誰が奴を止められるのだ。

 だというのに、クーゴは動けなかった。目の前で起こっている超現象についていけない。

 

 

「貴様、何者だ!?」

 

 

 グラハムの手を振り払い、少女が奴に問いかけた。

 赤銅色の瞳は不審者への敵意に満ち溢れている。

 クーゴには、警戒する少女の気持ちがよくわかった。

 

 それを知ってか知らずか、グラハムは満面の笑みを浮かべた。

 

 

「私はグラハム・エーカー。キミの存在に、心奪われた男だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このときのクーゴ・ハガネはまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は諦めたくないんです。人の心の光を、信じているから」

 

「貴方は、それを人に伝える力を持っている」

 

 

「貴方に会えて、本当に良かった」

 

 

 クーゴの運命が、イデアとの出会いから始まることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フラッグファイターであるグラハム・エーカーは、既に死んだ」

 

「ここにいるのは、ただの亡霊だ」

 

 

「どうしてこうなったんだよ。お前、こんな奴じゃなかっただろ?」

 

 

「……ああ、そうだ。ミスター・ブシドー、お前に言伝を頼みたい」

 

「俺の相棒であるフラッグファイター、グラハム・エーカーに伝えてくれ」

 

「『どんな手を使ってでも、お前を御旗(みんな)(ところ)まで連れ帰る』ってな!」

 

 

 少し先の未来で、かけがえのない相棒(グラハム・エーカー)と対立することを。

 

 

 

 

 

 

 

「う、うわあああああ! フラッグが、フラッグがぁぁぁぁぁ!」

「コイツ、フラッグに擬態した!? しかもメタリックカラーになった!」

「気を付けろ! コイツに直接触れると同化されるぞ!」

 

「あ、でもかっこいいかも。カラーバリエーションで、この色を提案してみようかな」

 

 

「何だコイツ!? きっしょ! きっも! 超ひっでぇ!!」

「仲間を取り込んで強くなりやがった! なんて奴だ、インベーダーめ!」

「サイズ差なんて関係ない! 俺たちにだって、戦いようがある!」

 

「こんな進化はしたくないなぁ。ゲッター線も使いよう、ってことか」

 

(そういえば、人革の民間企業に努めてる身内から『ゲッター線についての研究始めた』って聞いたけど……うん、まさかな)

 

 

「虫だー!」

「人間が、虫の女王と合体したぞー!」

 

「この突破口を開くのは、“アイモ”だな」

 

「“アイモ”って、確か、恋の歌だっけ? あの虫の群れが、別の虫の群れに向けて贈るやつ。数百年に1回歌うか歌わないかの……」

 

「クーゴ、是非とも歌詞を教えてくれ!! ちょっと少女宛に歌ってくる!」

 

 

「機械に支配されてたまるか!」

「人間様を舐めるなよぉぉ!」

「機械仕掛けの神が、なんだってんだー!」

 

「管理社会、か……」

 

「未来は自分たちで決めるものだと思うけどな」

 

 

「『あなたはそこにいますか?』って訊かれたんだけど、どう答えればいいんだ?」

「俺はここだ! ここにいるぞー!!」

「消されてたまるか! 俺がお前を消してやるー!」

 

「深い質問だよな。『あなたはそこにいますか』って」

 

 

 ユニオンのシュミレーターが、クーゴの虚憶(きょおく)の影響を受けて、異種生命体だらけになってしまうことを。

 

 

 

 

 

 

 

「下半身がサイコロ……」

『気を付けろアレルヤ! ふざけたナリだが、あいつぁヤベーぞ!!』

 

「たった一撃でヴァーチェが大破しただと!? あのMS、大きさも威力も化け物か……!?」

 

 

「俺は、ガンダムになれない……。ガンダムは、ハロだったのか……?」

 

「どうしてこんなMSを出した!? こんな悪魔を出したんだ! 言え、言うんだ!!」

 

 

 ガンダムマイスターのシミュレーターが、イデアの虚憶(きょおく)を受けて、地獄絵図に化してしまうことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 クーゴ・ハガネの災難が始まるまで、あともう少し。

 

 

 




【参考および参照】
『日本の伝統色』より、『天色(あまいろ)


【リメイクして初めて気づいたこと】
英語にした際のスペルの見間違い+発音の聞き間違い=組織名の誤植。
リメイク版ではそちらの名称を修正しますのであしからず。
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