THE LAST COMPANY   作:帝都造営

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THE LAST COMPANY
大日本帝国海軍 飯田望海軍大尉の手記より引用


 ――――現状、歩兵連隊にも容易に運用が可能で、かつ最小の人的資源で『やつら』を効率的に屠る手段は機関銃ないしは機関砲だとされている。

 

 当初は戦車並みだとも言われていた『やつら』というのは、結局のところ装甲という意味ではアルミ板ほどであったわけで、練度の低い部隊であっても急所を捉えることができるのは速射性に優れ、かつ継続火力の大きい兵器であったわけだ。

 

 しかし如何に有用な兵器といえど、今日の『戦争』の目的が戦線を維持すること、即ち我が方の領域を死守することにある以上は、単位時間あたりの継続火力ではなく更に戦略的な継続火力にまで気を配らねばならないのが用兵家である。

 

 この際の戦略的な継続火力というのは即ち補給であり、具体的には機関銃に込める弾丸である。発射速度を調整しても一度戦闘が発生するたびに何百、何千の弾を消費する機関銃、それを戦線にズラリと並べて『やつら』と戦うというのだ。たとえその方面に疎い者であっても、いかに兵站への負担が大きいか分かるはずだ。そして、往々にして素人の見解とは楽観的なものだ。

 

 ともすれば用兵家、即ち軍隊の運用者たる将校というのは結局のところ、機関銃以外の『やつら』に対する対抗策を講じることにその存在意義を見いだすことになる。元々は遠く輸送船を駈って大陸、南洋へと進み、その知略をもって帝國または友邦の敵を懲らしめるために存在するのが将校という生き物だ。

 

 海外より全ての兵を引き、自国領域の維持すらも危うくなった現状において彼らに求められたのは、動くことの叶わぬ機関銃陣地の維持などではなく、失われた領域の奪還、そして全ての脅威の排除でなければならない――――

 

 

 ――――――以上のことが当時の日本陸軍における共通の認識であり、また現実であった。

 

 

 思えば陸軍は幸せである。

 彼らの戦場は変わることもなく陸上であったし、戦場が本土であるという末期ガン患者のような戦況も見方を変えれば戦力補充が容易と受け取ることも出来た。

 そう、陸軍が常に悩まされてきたのは何よりも人的資源の補充における遅さではなかったか。それがあまりにも皮肉な形で解決されたのである。補充される新兵は例に見ないほど練度が低いが、一度でも戦線が崩れれば真後ろの故郷が消えるとなれば士気は高く、死守命令にも説得力を持たせることとなった。

 

 では一方、海軍はどうであっただろうか。

 百余隻を数えた艦艇は既にその過半を海中に没し、制海権は失ったも同然である。海洋国家たるこの国において制海権の喪失というのは国土の喪失に等しい――――故に国内治安と災害出動、そして海外派兵のみを担当としてきた陸軍が領土の保全に動くことになるのである。

 

 そうだ。現在横たわるこの惨状は海軍の責任なのだ。しかし誰が彼らを責めることが出来るだろうか……精々が赤子というものだ。なにせ彼らの親たちには、『やつら』を抑える術などなにひとつ持ち合わせはしなかったのだから。

 

 そんな海軍が取り得る術とはなんだったのであろう。

 

 目下のように陸戦隊を編制し陸上戦力の一翼を担うことか。

 

 それとも海軍という看板自体を下ろし神々の黄昏に備えるのか。

 

 

 はたまた、神国の矛となり盾となる日を夢見て新たなる戦術の構築に取り組むのか。

 

 

 ――――結果論ではあるが、海軍は最後の選択肢を掴み取る。

 

 

 平成三十七年一月。

 呉鎮守府下にて再編された第七〇一大隊の七〇一二中隊。

 定員を遙かに割り込む僅か数十名により構成されるその中隊が、その始まりである。












本作は作者の未完結小説「模倣の決号作戦」の精神的続編でもあります。
よろしくお願いします。
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