気ままに行くリク(偽)の旅路   作:仙儒

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11話

 四面楚歌とはこのことを言うのだろう。

 

 幸い表面上は此方に最大限の配慮を見せている諸侯に陛下。

 

 ぶっちゃけ彼お方と始祖様の存在をにおわすことで面と向かってちょっかいをかけてくる輩は居ないが、お零れに預かろうとにじり寄ってくる家格の低い名ばかり名家や発言権の無い分家筋が発言権を取り戻そうとメジロ家を中心に権力闘争が起こってしまっている状況。しかもメジロ家を中心にしているのにもかかわらずメジロ家が蚊帳の外という非常にまずい状態になっている。

 

 えぇー。これマジどうすんの? 

 

 妙齢の女性はおもむろに天を仰ぐ。

 

 いや、本当にコレどうするの。

 

 メジロ家の発言力や彼お方たちとの繋がりはありがたいけど、周りの収拾がつかない。下手したら国が割れかねない事態だぞこれ。親善大使として来てるある王国の王から「独立すんなら後ろ盾するぜ。その代わり彼お方との繋ぎをやってね」(意訳)と言う押印と思われる物がきっちりと押された密書まで届いてる始末。

 

 ああ、眩暈がしてきた。

 

 国の中枢を担う者たちからドーベルとアルダンを是非とも嫁に! 嫁に出すのが嫌ならこっちから婿出すよと言う内容を添えての釣書が捌ききれないほど届いている。質の悪いのだとそもそも血筋とか関係なく顔がいいのを養子に迎えて釣書を偽ってきてるのもある。

 

 家の孫娘はそんな安くねーんだよ。ホストクラブじゃねーんだぞ、マジで舐めてんのか。あ゛あ゛(# ゚Д゚)!

 

 何時も心の中まで淑女たれと律していたメジロ家のお婆様は、それが頭からすっぽ抜けてしまうくらいにはお疲れである。

 

 それに今や、アルダンとドーベルの発言権はメジロ家の家長である自分を遥かに超えてしまっている。

 

 無理やり変なお見合い……ましてや政略結婚言いつけてみろ。此方が秒で見限られる。ぶっちゃけメジロ家から全てを断ったところであの二人を援助する組織や団体なんて腐るほどいる。

 キーブレードを使えるというだけでそれだけの価値があるのに、バックには始祖様たち本人が付いている。彼お方との繋がりもある。

 

 2人に逃げられればただでさえ外聞きが悪いのに、キーブレード使いに見限られる家のレッテルを張られ、メジロ家の信用が地に落ちる。メジロ家没落とかシャレにならん。

 

 そう言うわけで嫁に出せないし婿も取れない。

 

 ただ、あの2人(ラモーヌ入れて3人か)が思いを寄せてる人物は彼お方。釣書を送ってくるどの家よりも政治的な意味でも、格的な意味でも、本人たちの意思的な意味でも価値がある。

 

 そんなわけで執事に「全部燃やしとけ」と今日も言いつけて思考をめぐらす。

 

 マンハッタンカフェにサンデーサイレンスの二人を血筋に迎えたいのだが、そちらに対しては始祖様がきっちりと目を光らせているので下手に手出しできない状況。

 代わりに変な野次さえ入れなければ自身の存在をにおわせて周りを牽制することに対して黙認してくださるスタンスでいてくれるらしい。むしろ、キーブレード使いに対する保護を進んでしてくれるならば神の国の秘薬(エリクサーやポーション)や希少な貴金属等を融通してくれている。その利益は少しずつだが確実にメジロ家に利益と発言力を強化してる。

 ついでに言えば始祖様を介してキーブレード使い達を自然と囲えるので他の名家よりも優位に立てるのはメジロ家に計り知れないアドバンテージと利をもたらす。

 

 それにしても、である。

 

(なぜ今なのです? 始祖様にリク様)

 

 長い歴史の中で、我々の知る限り始祖様たち以外のキーブレード使いが出現し、あまつさえ一堂に会した事実はない。

 

 始祖様を継ぐ資格としてキーブレード使いが居たとすれば、それこそそれを正当性として国ができているが、それが無い。

 

 まぁ、そう言うことなのだ。

 

 何かが起こっているのか、起ころうとしているのか。それはわからない。

 

 ただ、何かが大きく動き出したことだけは理解できた。

 

「フフッ。そう身構えなくても取って食べたりしないわよ」

 

 いつの間にか執事が淹れた紅茶に口を付ける始祖様のゴドルフィンバルブ様には突っ込まない。

 

 普段糸目で見せない海を思わせる蒼い瞳が此方を優しく見据えている。そのどこまでも深く、全てを見透かしているような眼差しに居心地の悪さを感じる。

 

 コトリと持って居たティーカップとソーサーを置くと、窓辺へと歩いていくゴドルフィンバルブ様を目で追う。

 

「……実を言うと私達も何も知らないの。マスターの深い考えは私達では測り知れないわ。ただ、悪いことにはならないと思うわ」

 

 勘なんだけどね~と曖昧な答えを返す始祖様に何とも言えない感情を抱く。執事が音もなくそっともうひとカップ紅茶を用意してくれたのを口を付ける。

 

「そう言えば私達の妹弟子がまたできたわ。ライスシャワー、ケイエスミラクル。そして、シリウスシンボリの3人よ」

 

 いきなりの発現に飲みかけていた紅茶を吹きそうになる。

 

 確かどこかの名士の娘にそんな名前の子がいたような気がするのと、よりによってシンボリ家からキーブレード使いが出たことに臍を嚙む。

 シンボリ家と明確に敵対しているわけではないが、日本においてシンボリ家を知らぬ者はいないと言わしめる強い影響力を持つ名家の一つ。我がメジロ家も勿論そうだが、正直メジロ家が独占できてたリソースが大きくそがれてしまうのは言うまでもないだろう。

 

 この調子でポンポンキーブレード使いが増えればたまったものではないのだが……。

 

「そう身構えなくても、キーブレード使いに成れる人物はそうやすやすと出てくることは無いわ。……と言っても貴方たちからしてみればそうは思えないのが現状ではあるのだろうけど」

 

 ニコニコしながらこちらの思いをさらりと言ってくるのは心臓に悪いのでやめていただきたい。

 

 まぁ、私に対しての釘差しでもあるのかもしれないが。余り政治的利用しようとするなよと。

 

三女神(私達)は全てのウマ娘を祝福するけれど、それは政治的事由(貴方達)を優遇することではないわ。そこの所を理解してほしいのだけど」

 

 にこにこと笑いながら今度こそやんわりとだが明確に言葉にして釘を刺される。

 

「理解しております。ですが、こちらも善意だけでできることには限界があることを理解していただきたく」

 

「ええ、それもわかってるわ。だから色々とこっちでも用意しているじゃない。十分すぎる利益を受けてるみたいだけれどまだ足りないかしら?」

 

「い、いえ。決してそのようなことは」

 

 ここは少し強気に出て様子見をしようとしたが、そこらへんは流石は始祖様と言ったところかしっかりと下調べをしていたらしい。

 ここで欲をかいて梯子を外されてはメジロ家が本当に没落する。くどいが繋がりを持ちたい団体組織は幾らでもいて、キーブレード使いになったシンボリ家に鞍替えでもされようものならたまったものではない。

 

 少しでも選択をミスれば没落の二文字が付く綱渡りに眩暈を覚え、それをごまかすように紅茶を口にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新たな世界を開拓するためにグミシップにてあっちに行ったりこっちに行ったり。

 

 この間久しぶりにラビットハウスに行ったらタカヒロさんに大層驚かれた。マンハッタンカフェとその鏡合わせなサンデーサイレンスが普通に居ることに突っ込みを入れちゃダメっすかね? っと思ったけどこいつらもいつの間にかキーブレード使いに成ってたんだった。なら世界を渡れても何ら不思議ではないな、ヨシ!

 

 チノがキラキラした目で魔法の使い方を聞いて来たのをどうしたものかと無い頭をひねらせ、取り合えず魔法を使うにはイメージが大切だとそれっぽいことを言ってトロンの所に繋がるVR渡しといた。

 

 魔法にしてはサイバーパンク過ぎるような気がするけど魔法が使えるからヨシッ!

 

 大本にはなぜか世界を越えて築かれる謎ネットワークが解決してくれた。便利だね! いや、考えてみたらモバイルポータル含めてどういう原理なんだ? 普通に繋がるけど世界が違うんだよな。便利だから深く考えなくていいか(異世界の科学の力ってスゲー)

 

 一応、ヴェントゥスが貰っていたように気休めだけど木でできたキーブレードを渡しておいた。グミシップの中に置いてあったんだよね。観光名所のお土産屋に置いてある木刀かな?

 

 距離感がバグっている……というか、揶揄われている感覚なのだが絡んでくるサンデーサイレンスの頭をどこからか取り出したメガホンを打楽器に変えつつ頭を下げて引き離してくれるマンハッタンカフェ。彼女からどことなく苦労人の気配がする。

 

 因みに、噂話は一通り聞いたがハートレスもノーバディも関係なさそうなものだった。

 

 タカヒロさんに懐かしの金銀財宝の入ったトランクを引き渡すと、見慣れないバイトと思われる娘が「白昼堂々ブツの取引かっ!」と突っ込んできたが、当たらずしも遠からず。

 

 これにはタカヒロさんも引き攣った苦笑いを浮かべている。

 

 プラモだとは思うんだがチャカ持ってる。こえぇー。サバゲーにでもはまってるのかね?

 

 それを仮にも客に向けるのはどうかと思うけど。タカヒロさんも「リゼ君の思ってるようなものではないさ。それよりもお客様にそんなものを向けるのはやめなさい」と注意されてバツが悪そうにそれをしまい謝罪してきた。

 根は良い娘のようだ。

 

 取り合えず自己紹介をしとく。彼女はリゼと言うらしい。

 

 バイト中なのであまり拘束するのもよくないだろうと思い、その日はラビットハウスを後にする。

 

 出て来る途中、店内の隅っこにどこかで見たような人物と目が合ったような気がしたが誰だったかな?

 

 

 

 ラビットハウスを出て木組みの町をなんとなく散策する。

 

 吐く息が白く、町行く人々は厚着で心なしか此方を見ているような気がする。

 

 まぁ、イルミネーションで彩られる季節に袖なし薄着の人物が徘徊してたらそりゃ見るよね。

 

 ジャックの所に行ってサンタの手伝いでもしようかと思いながらグミシップへと足を急がせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪がちらほらと降り始める曇天の空をなんとなく見上げる。

 

 吐く息が白くかすみ、静けさと寒さが心と体を抉る季節。去年までは憂鬱な季節が来たという感想を抱いていた。実際は自分の被害妄想で自分を追い込んで、心が擦り切れていただけだったのだけど。

 

 今思うと、本当に滑稽だった。

 

 だけど、やっぱりこの物悲しい時間が私は好きみたい。こう、孤独を楽しむというのかしら。

 

 知らず知らず懐かしい歌を口ずさむ。

 

 冬の引き締まった空気の中、いつもよりもよく音が響く。

 

 ふと、歌い終わると一人しかいないはずの屋上にぱちぱちと手を叩く音が。驚いて振り返ると、続いてパーンという破裂音と共に紙吹雪が舞う。

 

「メリークリスマス! お姉ちゃん!」

 

 驚きあっけにとられたけど、それも一瞬のこと。

 

「クスッ、なんなの、それ」

 

 サンタ服に髭メガネの典型的なジョークグッズに身を包む妹のベガの姿が。

 

 ベガはモバイルポータル(ウマホとは違うらしい)で何かメッセージを打ち込んだ後、大きな鍵を天へと掲げると、あの人のとは違う形の宇宙船が屋上に来た。

 それに乗り込み、操縦席に備え付きの椅子に座るとベガは操縦桿を握ることなく大きな鍵を向けて「宇宙へ!」と元気に発する。

 

 その言葉に応えるように宇宙船は空へと高度を上げてゆき、あっという間に成層圏を抜け宇宙空間へ。

 

「思ったのだけど、宇宙なのに浮かないのね」

 

 2回彼の宇宙船に乗ったことがあったが、宇宙船内で無重力を体験したことは無かったなと思い出して口にする。

 

「重力魔法を使ってるからね。……切ろうか?」

 

「ええ、お願いしていいかしら」

 

 「ラジャー」と言う返答と共にベガの前にモニターが出てピッピッと指でそれを操作する様は正にSF映画そのもの。なのに飛び出てくる言葉は難しい装置の名ではなく魔法と言うファンタジーな代物。

 そのあべこべさがおかしくて、ついまた、クスリと笑ってしまう。

 

「ん~? お姉ちゃんご機嫌だね。いいことでもあった……これからあるのかな?」

 

 どうかしらねと答えを濁すと、え~教えてよーと絡んでくる。この手の性格の人物は余り好ましくないと思っていたのだが、妹と言うだけでこうも変わるものなのか。

 それとも、そう言うほっとけない病のお人好しな人達が周りで私を構い続けるものだからそれに絆さr……もとい。毒された結果なのか。

 

「そう言う貴方もとても楽しそうだわ」

 

 なんとなく気恥ずかしい気持ちをごまかすように聞き返す。

 

 えへへ~、わかる~? と言いながら

 

「大好きなお姉ちゃんと一緒なんだもん。マスターが体をくれなきゃ体験できなかったことだから。なんだか、とっても嬉しくて。はしゃいじゃうんだ。えへへ~」

 

「ベガ……」

 

 頭をかきちょっとそっぽを向きつつ告げられる。

 

 そこから覗く頬の色は赤く染まっている。こちらもこっ恥ずかしいセリフだが、本当に彼に出会わなければ、彼にこの子のことを話さなければこんな幸せで楽しいひと時など訪れていないのだから。

 

「そうね。私も同じ思いよ」

 

 この言葉を交える当たり前の奇跡と幸運に感謝を込めて。

 

 ――”思いは言葉にしなければ相手に伝わらない。

 

 思いを込めても言葉は時に無力だから、行動も伴わなければならない”。

 

 幼いころに彼から言われた言葉を思い出す。

 

 気恥ずかしさをごまかす意味も含めて彼女の頭を撫でる。これは今過ごしているこの時間が自分が妄想した都合のいい夢ではないことの確認の意味も含まれている。

 

 えへへ~とニコニコしながら頭を私の撫でてる手に擦り付けてくる彼女。なんとなく同室のカレンさんと重なるような気がする。

 

 そんなことを考えながら撫でてるうちに足元の感触が消えてふわりと体が浮き上がる。

 

 おおっ、なんて小さく声を漏らした彼女と二人仲良く宇宙船の天窓に当たり浮遊が止まる。

 

 外には地上からは観測できない幻想的な世界が顔をのぞかせ、その圧倒的な存在に気圧される。背筋をゾクゾクと言葉にならない感覚が駆け抜けて、胸と頭を貫きジワリとした確かな熱となり全身へと広がっていく。

 

 見ていると吸い込まれてしまうような感覚で宙を眺めてると「えいっ!」と言うかわいい掛け声とともに彼女が抱き着いて来る。

 

「……凄い光景だよね。自分の存在って本当に小さいんだって思い知らされる」

 

「……そうね」

 

「本当はね、お姉ちゃんとこうしてグミシップから宇宙を眺めるの、これで3回目なんだ。その時は体が無かったからお姉ちゃんの中から見てたんだけど」

 

 「知ってた?」と問いかけてくる妹に私は首を横に振る。それに対して「だよねー」と軽い返事が返ってくる。

 

「体を持ったら必ずお姉ちゃんと一緒に見ようと決めてた。……本当にマスターにも、マスターに出会ってくれたお姉ちゃんにもとっても感謝してる」

 

 妹の独白を黙って聞く。

 

「もちろん、体を得たことで楽しいことも大変なこともあったけど。それは体があるから体験できること。マスターは私に礼はいらない。心に従えって言って私を送り出したんだけど、この恩はどうしても返したい。それが私の心が命じてることだから……」

 

「まずは本人を見つけなくちゃいけないんだけど。見つけたら……どうしたらいいか、わからないんだ。どうしたら……何をしたらこの恩を返せるかな?」

 

 不安げにこちらを見上げる妹。明るく活発で甘え上手なこの子が初めて見せる一面。その様子は迷子の幼子のようで。

 

「私もお礼……ちゃんとしなきゃならないわね。大丈夫よ、二人で考えて行けばいいわ。ゆっくり考えましょう?  どうせすぐに姿なんか現さないわ、彼は」

 

 そう言って彼女の頭を優しくなでる。

 

 彼は星の数ほどある世界を冒険していると言っていた。ならば再開するのはずっと先の話だろう。

 

 その時に改めて妹のベガのことを私からもお礼が言いたい。

 

「うん……そうだね。いっぱい相談に乗ってね? お姉ちゃん。そうだ! あれ用意してたんだった! 暗い話はここまでにしてこれ食べよー。とっておきだよ~」

 

 宇宙船の床に引っ張られて行き、足が付く。どうやら重力魔法を使ったらしい。

 

 そのまま部屋を出てったけどすぐに戻って来た。その手にはローストチキンの乗った大皿を持って。

 

 テーブルはどうするんだろうと思っていたら床が光ったと思ったら立派なテーブルが出現した。本当に何でもありね……。

 

 ローストチキンを食べつつ木星圏内まで来ていた外の光景を見つめる。

 

 後、30分もしないうちにここを離れ土星圏内に入るのだという。

 

 ボイジャーも真っ青なスピードで星の海を航行する宇宙船に不思議な感覚を覚えつつ、静かに流れゆく景色を眺める。

 ローストチキンがなくなると、ベガはフルーツタルトを持ってきた。何でもなかなか会えない姉に会いに行くことを伝えたところ、それならばとリトルシェフなる人物が腕によりをかけて作ってくれたのだという。

 

 因みに見た目も味も大変美味しかった。

 

 久しぶりに身も心も満たされた中、地球へ向けて帰る。

 

 ベガがニヤニヤと笑いながらこちらをチラチラと見てるのを気になり問いかけるが「べっつにー」とはぐらかされる。なんて言うか、何か企んでるのがバレバレなのだが……。

 自分の妹の素直さを微笑ましく思うべきか、将来を心配すべきなのか。

 

 その答えは地球に帰って来た時に知ることとなる。

 

「アヤベ!」

 

「え? あなた何でここに?」

 

「え? ベガ? がクリスマスやるから良いケーキ用意しろってチャットが来てたんだけど……」

 

「……」

 

 困惑気味に問い返してくるトレーナーの言葉を聞いて、妹を見ると明後日の方を向いて吹けてない口笛を披露している。

 

「あ、ダーレーアラビアンサマカラキュウナヨビダシガー。ワタシイカナクチャー。ってことでお姉ちゃんにトレーナーさん良きクリスマスを~!」

 

「あ、ちょっ! 全くもう」

 

 急に棒読みのセリフを口にして、此方にウインクをしてそのまま宇宙船に駆け込み飛んで行ってしまった。

 

 要らない気ばかり回すんだから。あの子は。

 

「なんだか大変そうだな。ケーキくらい食ってけばいいのに」

 

 こっちはこっちで気を使われたことに気づきもしない。

 

 その鈍さが気に食わなくて抓った私は悪くないと思う。これには同室のカレンさんも賛同してくれると思うわ。

 

 部屋に戻ったらニヤニヤした件のカレンさんに根掘り葉掘り聞きだされるのだった。




宇宙船=グミシップです
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