気ままに行くリク(偽)の旅路   作:仙儒

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2話

 周りは一寸先も見えぬ暗闇の中。

 

 ドーベルは訳も分からずに立ち尽くしている。

 

 唯一の光源は、足元からの淡い光だけ。その陽光を思わせる優しくあたたかな光が照らし、ステンドグラスを思わせるカラフルなモザイク模様の中に、目をつむる大きな自身の姿。

 手にはアルダンさんやリクさんが手にしていたのとは形が違うが、同じものだと思われる大きな鍵が握られている。

 その隣に向かい合わせになるように鍵を持つアルダンさんが同じ格好で描かれている。

 二人の真ん中にはアルダンさんが首から下げているアクセサリーが描かれており、その5つの中にはトレセン学園で見たような気がする人物の顔と見覚えのない少女が幾つか描かれている。どれも未だに関わった事がない人物だ。

 

 それらの背景にはいつぞやの黄昏の街を思わせる時計塔と思われるものが描かれていた。

 

 え? 本当にどうなってんの?

 

 確か、大きな鍵を握っていたアルダンさんを問い詰めて御伽噺みたいなそれを話半分に聞いて遅いからと混乱してるだろうから気を使われて泊って行けと言われて眠りについたらこれである。

 

 ―――キミは何を求める?

 

 ―――能力を駆使するふしぎな力?

 

 ―――簡単には倒れない強靭な身体?

 

 ―――それとも……どちらにも偏らない身体と精神?

 

 混乱しすぎて逆に冷静になっているドーベルは此処が何処なのか、その質問は何なのかを問いかけるが返事は一切返ってこない。

 

「あー、もう何なのよ! 選べばいいのね選べば!」

 

 とは言え、どれもこれもいまいちピンと来ない。なんだかこう、ゲームとか漫画みたいな認識でいいのだろうか?

 ならば、強靭な肉体とどちらにも偏らない精神と身体と言う脳筋なイメージの付くものよりも、魔法などのイメージがあるふしぎな力を好奇心で選んだ。

 

 ―――キミは何を学びたい?

 

 ―――誰にも負けない勇敢な力?

 

 ―――仲間を助ける優しい強さ?

 

 ―――目には見えない内なる強さ?

 

 これまたふわっとした質問だ。

 これも例にもれず、具体的な事を尋ねても声が返ってくることはない。

 自分には才能なんてないとわかってるから、あったらいいなと言う内なる強さを選んだ。

 

 ―――本当にそれでいい?

 

 その問いかけに頷くと、水の流れる音がして足元を見ればくるぶし位まで水につかっていて驚いていると、今度は大きな波の音が聞こえて前を向く。自分の数倍以上の波が迫っていた。

 びっくりして急いで波から逃げようとするけど、水に足がとられて進めないどころか引き波によって大波の方へと引きずられている。

 

 抗う暇もなく大波に飲まれて自身がくるくると水の中で回転して方向感覚が一瞬のわからなくなるが、光がさしてる方へ上がっていく。

 

「ぷはっ!」

 

 水面に顔を出した勢いで手を付いて立ち上がる。

 息を整えながら周りを見回し、思わず息をのんだ。

 

 くるぶし位の位置まで澄んだ水につかり、その水面に夕日や星々を写し、とても幻想的な空間にいた。

 どことなく、ウユニ塩湖を思わせるどこまでも続きそうな美しい世界。

 

 ウマホでも持っていればすごい奇麗で幻想的な写真がとれそうだな~。そう、この世界の壮大さと奇麗さと幻想的な世界に息を飲む。手には黒を基調とするザ・昔の洒落た鍵……キーブレードが現れた。柄の部分からはチェーンで黒い王冠を思わせるアクセサリーがついたキーブレード(過ぎ去りし思い出)が握られている。

 

 ―――さぁ、時間がない。

   ―――頑張ってね。

 

「え? っちょ! ああ、もう!!」

 

 周りに影ができて黄色い目のマスコットキャラみたいなのが周りに出てきた。かわいく愛嬌のある見た目に反して、どこかしら不安と不気味さを煽ってくる目の前の存在。

 

 それらが襲い掛かってくる。見た目の可愛さに反して鋭いひっかき攻撃を行ってくるえげつない存在にキーブレードを叩きつけたら影が消滅してハートみたいのが天に向かって還っていく。

 

 そんな光景をまじまじと眺めている余裕などなくて。次から次へと襲い掛かってくる黒い影の攻撃にどうすればいいかわからずに適当にキーブレードを振り回しながら逃げ回る。

 

 しばらくして、何時の間にか周りにいた黒い影はいなくなり、何とか倒し終わったのだと肩で息をする。全力で走り切ったよりも疲弊していることを認識し、改めて周りを見渡す。

 

 今更ながらに思う。ここはどこなんだろう?

 

 それを考えた瞬間、急に抗えない眠気が襲ってそのまま意識が真っ暗になる。

 

 

 

 

「うわっ!」

 

 ベッドから飛び起きて自分の手を見る。

 

 夢? だいぶ変な夢であったと手を握ったり開いたりしながら妙にリアルだった夢に何だったのだろうかと考える。

 

 夢の中でアルダンさんと形は違うけど同じ鍵……アルダンさん曰く、キーブレード? だっけ? を手にしていた自分を思い浮かべ、手を前に突き出す。

 

「……まぁ、夢は夢だよね」

 

 そう呟いて何も起こらない現状に、だれが見てるわけでもないのに羞恥心が湧き出てきて悶絶しそうになった時、その鍵は現れた。

 夢ではなかった、のか。それを思った時、自分も特別になれたことと、これで幼いころから温めていたこの思いの人物と同じ存在となったことに対する優越感と興奮に知らず知らずのうちに尻尾がブンブンと左右に揺れる。

 

「やっぱり―――ですのね」

 

「!!」

 

 それも一瞬のこと―――。

 

 一人のはずの部屋から声が響く。

 興奮しきっていた体に頭から冷や水をかけられたような気分になる。

 

 声のした方を向くと、静かにたたずむアルダンさんの姿が。

 

 薄暗い部屋の中のはずなのに良く見える姿とは反対に、前髪で目元が隠れて表情自体はうかがえない。それこそいわくつきの場所ならば間違いなく幽霊だと認識してしまいそうな雰囲気が醸し出されている。

 色んな意味で悲鳴を上げなかった自分をほめてあげたい。

 

 アルダンさんは私の手ごと掴み、私の出した大きな鍵をまじまじと見つめ始める。

 

「あの、その……ええっと」

 

 私がどう言葉をかけたものかと言葉を探し問いかけようと声を発するが、ちらりとこちらを一瞬見ただけですぐに鍵の方に向いてしまう。

 どうしよう。内心おどおどしていると、ひとしきり見て満足したのか、「はぁー」と言うため息とともに私の手を離した。

 

「……日を改めます」

 

 それだけを言い残して部屋を出ていくアルダンさん。

 

「本当に何なのよ、全く」

 

 私の口から出た言葉が虚しく響いた。

 

 

 

 

 結局、あれから一睡もできずに迎えた朝。

 

 アルダンさんは昨日のことが嘘だったのでは無いかという程何のアクションも起こさない。

 

 もしかしてリアルな夢でも見ただけだろうか? 直前にも現実離れした内容の夢を見ていた気がするし。何て考えて幾日かしたころ。何事もなく日常に戻って夢のことも忘れかけていた時、メジロ家の本家から呼び出しが来る。それも至急来るようにというお達しで訳も分からぬまま執事にリムジンに押し込まれて本家へ。

 

 本家に到着して御婆様がいるという部屋に通される。

 そこには、アルダンさん以外にメジロ家の中枢を担うそうそうたる面々が揃い、重々しい空気を漂わせていた。どう見ても親戚の顔合わせではない。

 誰もが口を開かずに、しかし何処か品定めするような普段親戚から向けられることのない視線に困惑しているとアルダンさんが私に「キーブレードを出しなさい」と言って来る。

 彼女の手にはすでに大きな鍵……キーブレードが握られていた。

 

 流石にここまでされて察せないほど馬鹿ではないつもりだ。急な呼び出しはこれが原因か。

 

 そう思いながら手を前に出す。一瞬光があふれ、黒を基調としたキーブレードが現れる。そうすると集った親戚達から「おお!」と興奮気味の声が漏れる。

 

 「我が家から二人も始祖様達の力を継ぐ者が現れたぞ!」と声を上げて喜ぶ親戚達の中で御婆様だけが難しい顔をしている。

 

 ああ、めんどくさいことになったなとため息が出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木組みの街から帰って来たらまたヨーロッパみたいな街並みだった。

 

 キンハの秩序の魔法の中には服装や姿形が変わるだけではなく、言葉が通じるようになる魔法も含まれているから言葉だけでは本当に外国かは判別できないが、行き交う人々の目鼻立ちが違うので外国だと思う。

 

 適当にうろうろしていたらメニューの看板が出てきて、そこに書かれてたのは英語だったので英語圏なのだろう。

 

 で、土地勘もなく見事に迷子になり彷徨っていたら変なところに出た。

 

 何かもぞもぞ動いてる袋を抱えて黒塗りの高級車から出て来た如何にもマフィアみたいな感じの連中と目が合ってしまう。

 

 アニメか何かかな? この場合ラノベなのか?

 

 そんな事を考えてたら拳銃向けていきなり撃ってきた。反射的にキーブレードを構えたら銃弾をそのまま撃った奴に跳ね返したみたいで倒れて血を流し始めた。

 そうしたら何人かがマシンガンで撃ってきた。流石にそれには対応できないとリフレガを使う。マシンガンの玉が透明な壁に阻まれて、次の瞬間には壁が硝子が砕け散るように弾けて、その破片と撃ち込まれた弾丸が乱反射する。

 

 それで全員が吹っ飛んで静まり返る。暫く周りを警戒していたけど動き出す様子がないのを見て溜息をはき、もぞもぞ動きている袋を回収してとんずらしようとして袋を開ける。

 まぁ、予想通りと言うか何というか。手足を縛られ口にもテープを貼られたちびっ子が涙を流しながらこちらを見てきた。よく窒息しなかったなと思いながら口のテープを剝がしてあげる。手足を縛っているテープは剝がせそうに無かったのでキーブレードで斬った。

 

「よく頑張ったな僕。もう大丈夫だ。さぁお母さんとお父さんのところへ帰ろう」

 

 そう言って、ちびっ子がかぶっていたベレー帽みたいなやつの上から撫でてやる。

 目元は帽子と髪の毛で見えなかったが口は大きくへの字を描いている。体は小刻みに震えていて、もしかしたら俺も相当警戒しているだろうなと思っていたが俺に抱き着いて大声で泣き始めたので取りあえず敵ではないと判断してくれたらしい。

 

「ははは……、そんな大声を出して泣くな。男の子だろ?」

 

 そう言って背中をさすってやる。

 

 「き゛さ゛ま゛~」と小さく呟きながらも泣き止む気配がなく、暫く背中をさすって過ごした。

 

 撫でてるときに気が付いたんだけどこの子には尻尾が付いていたのでウマ娘だと気が付いたけど、男と勘違いしていたのを自分から訂正するのは何となく負けたような気がするので訂正しないでこのまま突き通すことにする。何に負けた気がするのかはわからんけど。

 

「さて、僕も早く帰りたいだろう?」

 

「私の名前はファインモーション! お姫様なんだぞ! レディに対して失礼だぞ」

 

「はいはい、お姫様お姫様」

 

「む~。きさま~」

 

 適当に返してへそを曲げだした幼女を肩車する。

 

 最初は何かギャーギャー言っていたが歩いて町中に入ったところであっちに行け~、こっちに行け~これは何? きさま~と興奮気味に頭の上から指示が飛んでくる。

 

 そんで、たまたま町の電気屋の前を通った時に売り物のテレビに肩車してる幼女が行方不明になったと速報が映されていた。

 

 この幼女。マジモンのお姫様らしい。

 

 急いで幼女を警察なりなんなりに引き渡そうと思い人目もはばからず大きくジャンプして、ペガサスを召喚して幼女を肩車から自分の前に座らせて、幼女に家なりなんなりに案内してもらおう。

 

 それを幼女に伝えると、幼女が王宮と思われる場所を指差してくれた。と言うか、空から見たらそんなに離れてないところにあった。歩いて移動すると結構時間かかりそうだけど。

 

 で、王宮にペガサスで乗り込んで幼女を降ろして面倒になる前に空に逃げて闇の回廊を使って場所を移動した。

 闇の回廊を抜けるとそこは雪国だった。

 

 

 

 ……小説かな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とても怖くて震えていた自分が目にしたのは陽光に煌めく銀髪の神様。

 

 幼かった私でも理解できる、とても幻想的で、まるで物語に入り込んでしまったかのような出会い。思わずに神様? って口に出しそうだったくらいだ。

 

 だって、私は彼の顔を王宮にある礼拝堂で何度も見ているから。大きな十字架を背後にそれぞれに形の違う大きな鍵のようなものを手に持っている3女神様の像。そして、もう一つ。その3女神様達がかしずく先に天へとこれまた剣のような鍵を掲げる一柱の男性の神様。その神様の像と全く同じ顔で片手にはその神様と同じ形の大きな鍵を持っていたから。

 

 ウマ娘をトレーナーが指導すると言う今の形にしたのも、この神様が最も偉大な3女神様を鍛え導いた伝承があるから、今でもトレーナー業はとても神聖で格式あるものとして扱われ、国によっては協会に所属してる者がトレーナーをやっていたりもするくらいである。

 

 その神様はとても優しいけど……失礼だった。いきなり私のことを男と間違えたのだ。……そりゃぁ、その時の格好は短い髪の毛に加えてお母様から男の子みたいね~と言われてたけども。

 

 け・ど・も。

 

 それだけじゃなく適当にあしらったのだ。う~、私お姫様なんだぞ~と言っても「へー、そうなのか」と棒読みで返って来てそれにへそを曲げて。

 

 そんな様子の私は神様に肩車されて移動していく。お母様はしたないことをお許し下さいと最初は思ってたんだけど、いつもよりも高い位置から物事を見るのは初めてだった。

 

 大型のデパートに入り、あれもこれもと興味あるものの前に行けと指示を出し行く途中にまた新しいものを見つける。とても楽しい場所だった。

 

 ちょっとしたお菓子も買ってもらいそれを神様の頭をテーブル代わりにして広げ、それを食べる。

 

 食べたことのない、でも後を引く美味しさだった。

 

 それを食べ終わった時だった。通り道にある売り物のテレビに私が映ったのを見て誘拐されてたんだったと思い出した。

 それだけ神様と一緒にいるこの時間が楽しくて忘れていたのだ。

 

「え? っきゃ!」

 

 いきなり肩から降ろされるとすごい勢いで抱きかかえられて地面が一気に遠のいていく。

 

「ペガサス!」

 

 真っ白で四本足の見たことないのに知っているという矛盾した感情が湧き上がる大きな翼をもつ生物の背に乗る。

 見たことない立派な生物に乗って私が指差した王宮に向かって飛んで行く。

 

 本当に物語に入り込んでしまったみたい。

 

 私が興奮からはしたないことを忘れて大声で、

 

「お母様ー! お姉様ー! お父様ー!」

 

 と声を上げて城の方を少し回ったので王宮使えの人が何事かと出てきて、その中には私の家族もいた。

 それを神様に伝えて下ろしてもらうように伝える。

 見たことない羽根をはやしたこの生き物から羽が幾つか抜けて宙に舞っているさまはとてもこの世のものとは思えなくて、ゆっくりと地面まで降りてきたのを確認して私を下ろしてくれる神様。

 お母様とお父様の顔を見たらまた連れ去られたときの事を思い出して涙を流しながらお母様に飛びついた。

 

「……娘を連れてきたことには礼を言う。貴様、何者だ!」

 

 それ程大きな声ではなかったけど耳に響く声に涙を拭い、「違うのお父様! その人は私を助けてくれた神様d」ヒヒィィン!!!」

 

 神様は何にも言わなかったけど、一瞬だけ幻想的な生物の上で大きな鍵を掲げる事を返事とし、あっと言う間に空へと飛び立っていった。

 

 お父様は「そんな……まさか。そんなバカな」

 

 そうブツブツ呟いていた。

 

 不意に優しく抱きしめられ

 

「今度こそ大丈夫よ。無事でよかったわファイン」

 

 そう呟かれてまた涙が溢れた。

 

 

 あれから十年。日本に旅立つ日にお父様に呼び出されて「あの時のことを覚えているか?」と問われた。

 

「はい、忘れたことなど一度もありません」

 

「ああ、そうだろう。知らなかったこととはいえあのお方にはとんでもない無礼なことを働いた」

 

 そう言って悩まし気に頭を抱えるお父様。

 

「もし、あの方を見つけたら必ず謝罪とお前を助けたお礼がしたいと言って捕まえておいてくれ。できないようなら居場所を必ず掴んでほしい。私自らがそっちに行って勲章の授与と感謝状を渡す。……あの方が本当にあの方本人かわからないが、間違いなく血筋のはずだ。お前かピルs「私がします!」……本当にいいのだな?」

 

「はい、私が良いのです!」

 

 そうやってはにかむとお父様はため息をはき、「任せる」とだけ言って私は「はい♡」と答えた。

 

 アイルランドの諜報活動で彼は東の果ての国ジャパンに多く出現していることが分かったのだ。

 

 最初はお姉様に繋ぎを付けようとしていたんだけどそれだけは譲れないのでお父様に粘り強く交渉した結果、ジャパン行きが叶った。

 これは女の感なのだがお姉様も神様に惹かれてるような気がするのだ。ダメダメ幾ら仲のいいお姉様でもこれだけは譲れない。あの人は私の神様なのだ。

 

 王族として、次代を必ず生まなきゃいけなくて。それにはキーブレード…だっけ? を使うあの人の血を我が王家に入れる。王家の義務も私の気持ちも満たされる正に完璧なプランだよ。

 

 ああ、早くジャパンに行けないかな。待っててね、私の王子様(神様)




どうでもいいですが、問いかけてくる声はミッキーの声を魔法で思念だけ飛ばして問いかけてる設定みたいです。

アルダンは 「簡単には倒れない強靭な身体」と「誰にも負けない勇敢な力」と言う脳筋な選択をしています。
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