気ままに行くリク(偽)の旅路   作:仙儒

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3話

 闇の回廊を出た先は雪国。

 

 アナと雪の女王の世界かと思い氷の城が無いか探し回る。

 

 ソラが南国生まれだから寒さに弱いんだよと言っていたが南国生まれでなくても寒い。いや、まぁ、格好は半袖どころか袖なしだから見ている方は余計に寒いだろうな~、と他人事のように思う。

 

 

 ―――で。

 

 雪の中に大きな宝箱があったので思いっきりキーブレードで叩き空いた箱から出てきたのは結構立派な本だった。

 ページを開いて見たら100エイカーの森のメンバーが描かれていて、最初の数ページ以降は真っ白だ。

 

 これ間違いなくプーの本だよな。今まで散々探したのに見つからなかったのは此処にあったからだったのか。

 

 くまのプーさんこと100エイカーの森にソラはかかわっていたがリクはかかわりがないんだよな~と思いながらどうしてこんなところにあるのだろうと考える。

 

 まぁ、キンハ2で色々な世界にプーのページが散りばめられてたし余り考えないことにしよう。あれはⅩⅢ機関がページ奪っていったからだった気がするけど。

 

 雪が降り積もる中、防寒着を着込み灰色の空を見上げる見覚えのある小さいウマ娘の子が。

 

 確か、何時だったかグミシップで星の海を駆け抜けながらあの子だのなんだのと哲学的な話を語っていた子……アドマイヤベガ、だっただろうか?

 雪が深々と降る中、空だけを見上げているその姿は何処か道に迷った迷子の幼女のように見える。幼女に見えると言うか幼女なんだけどさ。

 

 とにかく、こんな所でどうしたんだと声を掛けた。

 

 振り返った幼女の第一声は、

 

「貴方、寒くないの?」

 

 だった。普通にくそ寒いです。

 

 周りに人もいなさそうだし、寒さを避けるためにグミシップを呼んで中に入り込む。

 

 幼女は当たり前のようにグミシップに一緒に入ってくる。

 

 メイン操縦室にてくてくと歩いていき、操縦室にある座席に座ってこちらを見てくる。

 

 どうやら速く操縦しろってことなんだろうけど。…どうでもいいけど前回乗った時のことよく覚えてたんだな。グミシップって外から見た見た目よりも全然内部広いんだけど。

 

 取りあえず、外が寒かったからホットミルクを入れて幼女にも差し出す。「ありがと」と言って受け取ったので操縦桿を握り飛び立つ。

 ぐんぐんとさっきまでいた場所が小さくなり雲を突き抜け成層圏を抜ける。

 

 青く輝く地球を目を輝かせながら見つめている幼女を視界の隅に確認しながら一気に加速して木星軌道上まで行ったところで自動操縦に切り替える。

 

 別に席から動いていいぞと言うと、席から飛び降りて窓に張り付く。

 

 暫く外を眺めていた幼女が視線は外を眺めながらも俺に問いかけてくる。

 

「貴方、宇宙人なの?」

 

 今更な質問だが、生憎宇宙人ではないので素直に異世界人と言う。

 

 「ふーん」と声が返ってきた後、どんな世界があるのかと問われた。

 

「色んな世界がある。それこそ宇宙に存在する星とおんなじくらいだ。俺もそんなに知っているわけじゃないんだ」

 

 再び「ふーん」と返ってくると例えばだけどと前置きをして聞いてくる。

 

「死んだ人が逝く世界……なんてものもあるのかしら?」

 

「ああ。あるにはある。それも複数。俺の知る限りだとENDofWORLDかオリンポスの冥界か観測できない虚構の世界……死後の世界だ」

 

 正確にはENDofWORLDは死後の世界ではないのだがその辺はどうでもいいだろう。

 幼女がそれを聞いてから少し空気が変わった。それと死後の世界というワードから誰か近しい人物が死んで落ち込んでいるのだろうと察した。

 

「……行きたいか?」

 

「……少し考えさせて。次までには決めるから」

 

 それだけ言って言葉は途切れた。もしかしたら、幼女の胸に宿るもう一つの心に関することだろうか? 悪意を全く感じないから特に何もする必要はなさそうだ。

 だが、何かあれば闇にとらわれてしまいそうな脆さを感じる。この子が完全に闇に落ちないのはもう一つの心が補強し支えているから。

 それがなんとなくわかるのは、リクが光と闇を操るからなのかキーブレードマスターとしてのなせる業なのかはわからない。ただ、漠然とそうであると思っただけである。

 

 まぁ、実際連れていくこと自体は構わないけどこの子の探してる人物が見つかる確率はかなり低いだろうけど。クァッド・ラトゥムには行ったことないんだけど後で行けるか確認してみよう。

 

 後はレプリカとかも回収できるなら回収したい。ホロウバスティオンの城にレプリカの予備とかないかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はトレーナーとしては新人の部類だが三女神様の導きのおかげか、はたまたマスターオブトレーナーと言われる神の導きか……。とにかく輝く才能の子と契約できた。

 気性難でとても手を焼かされたが、それを含めてトレーナーの務めだろう。

 

 その甲斐あって強い絆をつむげたと思う。未だに彼女は彼女の中の何かに贖罪を続けているようだが、出会った時に比べればだいぶマシになったと思う。―――張り詰めた糸のような危うさはあるが。

 

 そんな中、不思議な……それとも恐怖体験? とも言い切れない。けれど間違いなくオカルトと言われるだろう事がちょくちょく起こるというか、会いに来るというか、何というか。

 

 担当のアドマイヤベガと瓜二つの少女とよく合うのだ。

 最初はアドマイヤベガだと思っていた。

 だが、彼女の張り詰めた糸を思わせる危うさは全く感じさせず、見たものの毒気を抜くというか、緊張感がなくなるようなユルフワな雰囲気を醸し出しているのだ。目元もよく見るとキリっとしたアドマイヤベガと比べるとたれ目なのがその印象を加速させる。

 服装もアドマイヤベガが落ち着いた感じの暗い色の服装を好むのに対し、彼女は対照的な明るめの服装だ。

 何時も棒タイプのアイスを食べているアドマイヤベガと同じ容姿の少女。これ、ドッペルゲンガーって言うんだっけ? ドッペルゲンガーにしては型落ちと言うか何というか。因みに彼女に姉妹がいないのは彼女のご両親から聞いているのでドッペルゲンガーと言う結論に落ち着いた。

 

「アヤベさんのトレーナーさん!」

 

 声のした方を向くとアドマイヤベガと同室のカレンチャンがこちらに走ってきていた。俺の担当のアドマイヤベガを連れて。

 

 視線をアドマイヤベガの推定ドッペルゲンガーが居た方に戻すと少女はいなくなっていた。

 またか、と思う。よほど慌てて消えたのか足元には彼女が途中まで食べて居たアイスが地面に落ちていた。

 

 推定ドッペルゲンガーの彼女は別に何かオカルト特有の悪さをすることはない。問いかければ答えてはくれる。ただ、彼女は自身のことを全く話さない。会ってる間もずーっと俺のことを観察しているのは流石に居心地は悪いが。その視線に負の感情は欠片も無いので指摘もしずらい。

 そのくせ、俺が核心的なことを問いかけようとすると彼女が食べてるのと同じアイスを口に突っ込まれてごまかされる。

 

 そして、運命の菊花賞へ。

 

 とても……とても白熱したレースだった。今夜は眠れそうにない、二重の意味で。手に汗握るレースの結果と、強くふさぎ込み、自身を徹底的に責めだす愛バをどうなだめたものか、と。

 

 アヤベの自頭が良い分、下手なことを言うと状況を悪化させる恐れがある。

 

 そう思い覚悟を決めて近付くと思っていたよりも落ち込んで自身を責める素振りは見せなかった。何処か夢心地というか、言葉にしづらいがそんな感じ。

 

 次の日、彼女宛に手紙が届いていた。アドマイヤベガはG1ウマ娘なのでファンレターが届くのは珍しいことではない。

 しかし、差出人の名前の無いそれの中身は意味の分からない記号のような文様のようなものがつづられているだけだった。

 

 それを見たアドマイヤベガは大きく目を見開いた後、「数日休みをもらっていいかしら?」と問いかけてきた。

 

「レース疲れを癒す為に休暇を入れる予定だったから全然問題はないけど、急にどうしたんだ?」

 

「ええ、行かなければならない場所があるの。ごめんなさい」

 

 そう言ったアドマイヤベガの雰囲気は決して良いものではなかったので気になって問い詰めた。

 

「なぁ、手紙にはなんて書いてあったんだ?」

 

 と。

 最初は「あなたには関係ないことよ」とはぐらかされてしまったが粘り強く聞き続けたら、

 

「三つの王冠の試練経た今、あの場所で君の知るべき答えが待っている、って書かれてるわ」と答えて、それ以降は話してくれなかった。

 

 あの雰囲気は放っておいてはいけない気がする。そう思ってアドマイヤベガには悪いが彼女の親に連絡を入れて理由を話して何か知らないかを聞いてみた。

 彼女の母親が心当たりがあるからこの後に時間を下さいと言ってきたので指定された場所へと移動する。

 

 指定された場所にはアドマイヤベガの母親のベラさんとその旦那さんと思われる男性が先に到着していた。店の中に入り、個室に案内されて中に入り一通り形式的な挨拶を済ませると長い沈黙が支配した。

 

 気まずい沈黙の中、ベラさんが重い口を開く。

 

「あの子には……本当は妹がいたんです」

 

 そう言って話される内容はとても重いものだった。双子の妹の死産。そのこの名前をアドマイヤベガにくっつけていたことを告げてからの彼女の性格の豹変。

 

 一言で言えば、アドマイヤベガはサバイバーズキルトと言う病気だった。

 

 ―――サバイバーズキルト。

 

 直訳すると戦争の子供たち。戦争、災害、虐待。その他様々な極限状態において、自分だけが生き残ってしまったことに対する強い罪悪感を抱く精神的強迫観念の総称。

 発症者の殆どは、強い強迫観念に突き動かされるのだという。この病気の厄介なところは基本的に他人を徹底して優先する傾向にあり、他人の役に立っているために誰もその人物が今すぐ治療が必要な患者であるということがわからないことなのだ。

 患者たちは生きているのは、死んでしまった者たちに対する強い贖罪の念から。その死んでしまった人たちのために、その分自分が役に立たねばならないという強迫観念によるフットワークの軽さもこの病気の厄介さの一つ。

 

 そして、一番やってはいけないのは、その贖罪行動を急にやめさせること。患者は構ってちゃんと違い、人の役に立てない自身が生きている価値がないとあっさりと自ら命を絶ってしまうことだ。そこにはためらいなどが一切ない。患者の行動理念は助からなかった人の為に、ただで死ぬことは許されないという義務感によって生きている。だからこそ、理由の取り上げはできないのだ。

 

「私が……私が小さかったあの子にあのことを言わなければ、こんなことには……」

 

 そう言って泣き崩れるベラさんを旦那さんがそっと寄り添って抱きしめる。

 

 わたしが、わたしがと攻め続けるベラさんにそんなことはない。何れは言わなければならないことだった。となだめている夫婦に居心地の悪さを感じつつ、落ち着くのを待つ間に自分の中で彼女の謝罪の真意を知った。

 

「すいません。みっともない所をお見せして」

 

「いえ、こちらからもお聞きしたいことがありまして……」

 

 そう切り出した。

 

「……という事がありまして、何か心当たりは?」

 

「―――心当たりはあります。恐らくあの場所」

 

 そう言って教えてくれた場所は数年前UFOが落ち、当時結構な騒ぎになった場所の近くだ。

 

 

 

 後はアドマイヤベガがいつそこに移動し始めるかだが、これに関してはカレンチャンの協力を仰ぐしかない。

 それから2日後にアドマイヤベガが動いた。

 

 彼女の両親に連絡を入れて彼女の後を追う。駅で彼女の両親と合流してアドマイヤベガについて行く。尾行のプロではないが、全然気が付く気配がない。それだけ彼女が他のことに思考をさけるほど余裕が無いのだろう。

 

 電車から降りて彼女の両親が言ってた場所に辿り着く。

 

 その先には黒いコートの人物が。

 

 くるっと振り返り、黒コートのフードを外すし露わになったその顔は―――。

 

 

 何時も俺に会いに来るアドマイヤベガのドッペルゲンガー。隣にいる彼女の両親の方からヒュッと言う空気を飲み込む音が聞こえた。

 反射的に彼女を守ろうと飛び出そうとした時、後ろから手を掴まれてたたらを踏む。

 後ろを振り向くとこれまた黒いコートの人物が手を掴んでいた。振りほどこうにも相手の力が強すぎて振りほどけない。

 

「大丈夫だ。二人きりにしてやれ」

 

 そう言われて視線を戻すと黒コートのアドマイヤベガのドッペルゲンガーはアドマイヤベガを抱きしめて彼女の頭を撫でつつ話をしている。

 そうしたらアドマイヤベガが幼子のように大声で泣き始めた。

 

 ……確かに今行くのは無粋か。

 

 風のそよぐ音に乗り響く鳴き声が、もの悲しさを助長しているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 心臓の音がうるさい。

 変な汗が流れる。頭には私によく似た少女が恨み言を言って責め立てる。

 ええ、わかっているわ。

 あなたは私を恨んでいるものね。

 

 目的の場所が近づく程に心は熱を失っていく。

 

 何度も自身に言い聞かせる。都合のいい答えなんて用意されていない。

 

 それでも―――

 

 歩み続ける足は不思議と止まることはなかった。

 

 

 

 辿り着いたあの人との初めての出会いの場。

 

 そこにはこちらに背を向ける黒いコートの人物が静かに佇んでいる。

 

 私の足音に気が付いたのか、コートの人物はこちらに振り返り、目深にかぶっていたフードを手であげる。

 その下から現れた顔に大きく目を見開き息を飲む。無意識に2,3歩下がってしまう。

 

 わかっていた筈なのに、いざ前にすると足が竦む。今すぐに背を向けて逃げ出したい衝動に駆られる。

 

 それでも目の前の光景から目をそらせなくて。

 

 ゆっくりと伸びてくる細い指が私の片頬に触れそうになった時、一瞬震えてしまう。

 

 彼女の指がビクッと、少し離れたが壊れ物を扱うように、優しく包み込むように。でも、存在を確かめるように確りと。

 添えられた手はひんやりしているけれど、確かな熱がそこにはあった。

 

 私は恐る恐る頬に添えられた手に触れる。

 

 目の前の人物はとても優しく穏やかな顔でこちらを見つめている。

 

「ごめんね」

 

 意味が―――わからなかった。

 いや、言葉の意味はわかる。それが目の前の人物から謝罪される意味がわからない。

 

「ち、ちが。わ、私が、私こそあなたをっ」

 

 うまく言葉を発せられない。それでも一生懸命に彼女への謝罪をしなければならない。

 それを口にしようとして、触れられてる頬に優しい圧迫感を感じて言葉を紡ぐことをためらってしまう。

 

 目の前の彼女はゆっくりと顔を左右に振る。

 

 次の瞬間、目の前の彼女は私を強く抱きしめてくる。

 

「お姉ちゃんは悪いことをしてない。私を殺してない。私から奪ってない。全てはお姉ちゃんが見てた夢だったのです。でもね、覚めない夢はないんだよ。だから―――悲しい夢はここまでなのです」

 

 小さい子に言い聞かせるように、優しい声が心に染み込む。凍えていた心にとても小さいけれど、確かな熱が灯った感覚がする。

 

「だから」

 

 ―――私のふりしてお姉ちゃんをいじめてるお前は消えろ。

 

「え?」

 

 そんな小さな声が聞えた後。彼女の体が淡く光って、私の中から何かが弾き出されたような感覚が襲う。

 体の力が抜けて彼女にもたれかかってしまう形になったけど、優しく抱き留めてくれている。

 

「ありがとうね。私の為に頑張ってくれて。お姉ちゃんのこれまでのこと。悲しかったけど嬉しかった。とても大事なもの。キラキラ輝く私の宝物。だからその悲しい運命は私が貰っていくね」

 

 私はこの子から命を奪ったから、この命はこの子のために使わなくちゃいけなくて。

 恨まれていて、憎まれていて当然で、それで、それで。

 

 

 ―――それで。

 

 

 ―――それだけど。

 

 これは、許されるはずのないこの罪を……許されたと思っていいんだろうか? 

 

「これからの運命は、自分の為に使うのです。鍵が導く心のままに」

 

 違う、私の罪は許されない。そう罪悪感で沈んでいく心が持ち上げられていく。確かな熱を持つ手に救い上げられていく。

 何時も私を攻めてきた雑音は不思議なことに聞こえなかった。

 

「よく頑張りました。流石は私の自慢のお姉ちゃんなのです」

 

 涙を。声を抑えることは出来なかった。溜めにためこんだ淀みは、堰が切れて一気に流れ出す。

 それを黙って抱きしめながら頭を優しくなで続けてくれる。

 十余年分の淀みが一気に吐き出される。

 

 その勢いはだれにも止められない。

 

 

 ―――アドマイヤベガの止まっていた時間がようやくうごきはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 声が枯れるまで泣き続けたアドマイヤベガの目元は赤く腫れ、涙の跡がしっかりと顔についている。

 

「もういいのか? しばらく残っても構わないが」

 

「はい。お姉ちゃんにはいつでも会えますから。それに、私はマスター探しとついでに心の探求を続けようと思ってます。ダーレーアラビアン様はどうします?」

 

 サラッと3女神のうちの1柱の名前が出てきて周りのみんなが固まる。

 

 俺の腕を離したそのてでコートのフードを外すと―――3女神像の1柱であるダーレーアラビアン様の顔が。

 とっさに跪こうと体が勝手に動きかけたが「ああ、楽にしてくれ。式典でもないのにやらなくていい。肩が張る」と言って3女神像で持っているのと同じ大きな鍵を肩にかけてる。

 

「お姉ちゃん。ここから先はお姉ちゃんだけの探求を始めるんだ。……大丈夫だよ。この空が繋ぐ幾つもの世界で、辿り着く場所は同じだって信じてるから。―――スカラ・アド・カエルムで待ってるね」

 

 そう言って、星形のアクセサリーをアドマイヤベガに渡したアドマイヤベガにそっくりな彼女はゆっくりとした足取りでこちらまで来た。

 

「あんなめんどくさい性格だけど、見捨てないであげて下さい、トレーナーさん。お父さんお母さん。こうして面と向かって会うのは初めてかな?」

 

「「べガ……なんだな(なのね)。本当にベガなんだな(なのね)!」」

 

「うん、今すぐには無理だけどちゃんと生きてるから……。また会いに来るから。―――行ってきます!」

 

 そう言って夫婦に抱き着いて、それでもすぐに離れて。

 星が柄に書かれている大きな鍵を掲げる。

 鍵から眩い光が溢れる。

 

 

 ―――みんな、元気でね。

 

 

 目を開いていられないほどの極光が視界を白に染めていく。

 

 光に目が慣れてから周りを見渡すと黒コートの二人は姿を消していた。

 

 ちらりと視線を愛バに向けると、今まで見たことがない、憑き物がとれたような晴れやかで穏やかな顔をしていた。

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