気ままに行くリク(偽)の旅路   作:仙儒

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4話

 気が向くままにいろいろな世界へ赴く。

 

 何か何時だか訪れた木組みの街で珈琲飲みに行ったらマスターのお孫さんが魔法で助けてと泣きついてきて驚いて理由を聞いてみたら母親が病気なのだという。

 怪我とかじゃないから多分ケアル系統の魔法では治せないと思ったのでエリクサー渡してそれ飲ませて駄目なら諦めてと告げた。

 

 後日、ダンディーな声のイケおじ(タカヒロと言うらしい)から礼を言われて例のカフェでおごられた。

 どうやら銀髪の幼女の父親らしい。

 話を聞く限り病気は無事に治ったらしい。良かった良かった。

 

 んで、これだけでは礼が返しきれないと言われたので俺が訪ねてきたときに色々とこの世界の情報をくれといっといた。情報と言っても経済や産業のようなスパイ的な情報はもらってもしょうもないので、噂話とか変なものを見たとかそういったものを。

 「そんなものでいいのかい?」と聞かれたが、そんなのがいいのだ。

 基本、ハートレスやノーバディ退治が使命なんで。

 

 そんで戻ったらお友達がどうたらこうたら言っていたウマ娘の少女に出会う。

 

 と、言うか何故かその子の部屋に出た。

 

 何やら周りが見えないものが見えるのと言うその視点の広さゆえに理解しあえず孤立してしまい、引きこもってしまったらしい。

 ええ……、幼女で引きこもりとかこの先大丈夫かね?

 

 とは言え、幼少期の人格形成期に否定され続けるのはいい環境とは言えない。だが、親たちもその視点が持てないからどちらも苦しい状況。どちらが正しいとか間違っているとかいう話ではないからな。

 こういう時はそのことに触れずに逸らして楽しめる共通の趣味なんかを持てれば何とかなる。

 

 問題の解決にはならないけど。時間が解決することもあるし、大丈夫だってホントホント。

 

 そんな訳で幼女と話してみたらなんとこの幼女、珈琲が好きなのだという。

 

 まぁ、流石にブラックはまだ飲めないらしいが。

 

 それならとモンストロポリスの扉を一つぬすn…借りてきて幼女の部屋に取り付けて闇の回廊で木組みの街に繋げた。

 

 早速、ラビットハウス(この間知った)に向かいダンディーだけど背後から弟子に刺されそうな声してるマスターに珈琲頼む。

 因みに幼女は珈琲の銘柄まで指定していた。どうでもいいけど、木組みの街に来た瞬間に頭の上の耳と尻尾が消えた。秩序の魔法を使った覚えはないんだけど便利だからいいかと深く考えるのは辞めておこう。

 

 後、幼女同士何か通じるものがあったのかチノ(こちらもこの間知った)と仲良くなってた。

 

 どちらも自分から活発的に行動するタイプではなさそうなので波長が合うのかもしれん。

 

 マスター側も嬉しそうにしてる。

 

 ―――所で気になったんだけど、この店にいる跳ねる毛玉に人の心が入っていること指摘していいですかね? え? ダメ? ああ、そう。

 

 ああ、そうだ。

 

 何かこの間赴いた世界で金銀財宝貰ったんだけど、ぶっちゃけ文字通り宝の持ち腐れって言うか。近代まで文明レベルが進んでる世界に繋がることが多いから売って資金に変えようとしても身分証明とか必要になるから売れないんだよね。

 だからさ、この世界の金に換えてくんない? 手数料取ってもいいからさ。って話をしたら一瞬眉間に皴寄ったけどオーケー貰えた。

 んじゃ、その金はこの幼女のこの店での飲食の代金として先払いでよろしく。

 

 ウマ娘のいないこの世界じゃわからんかもしれんが、ウマ娘ってどんなに小食な子でも大食いの成人男性の3倍は食うんだわ。

 一応秩序の魔法で見た目だけは普通の人と変わんないけど中身が変わったわけではないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小さな世界で閉じこもる。

 

 私の見ている世界は周りの人には理解できないものだった。

 

 何度も言葉足らずなりに一生懸命に周りに説明したつもりでいた。それでも両親でさえ理解者足りえなかった。

 

 悲しかった。分かり合えないことが。

 悲しかった。否定されることが。

 怖かった。理解されないことが。

 

 そうやって私は私の世界を閉じた。

 

 どうでもいい、だって理解されないんだから。

 どうでもいい、だって否定されるのだから。

 どうでもいい、だって普通ではないと弾き出されるのだから。

 

 私にはみんなには見えないお友達と、この閉じた部屋があればそれで満足だった。

 

 お友達との楽しいお喋り。

 

 閉じこもってこそいるものの()()()()には事欠かない。中には意地悪をする子もいるし、頭痛や吐き気に見舞われることもあるけど、それらを気味の悪いものとは一切感じなかった。

 

 

 そんな中、私を無理やりに連れ出した人がいた。

 

 有無を言わさずに、手を引かれて。私の部屋に勝手に扉を取り付けた彼は、カーテンを敷いて薄暗い私の部屋から扉を開けて。

 開け放たれた扉からはまぶしくて目を開けられないくらいの強烈な光が差し込み、思わず顔を手で覆ってしまう程だった。

 

 漸くといった感じで目を開けると薄暗い闇の世界。遠くから聞こえてくる波の音。

 

 普通の人ならば薄気味悪さを感じるのかもしれないが、私は心地よささえ感じていた。

 

 ゆっくりと手を引かれて歩いて行く。

 

 途中、薄暗さで足元が見えずに転びかけてからは彼に肩車をされて移動している。心なしか付いて来たお友達も機嫌がよさそうな雰囲気を醸し出している。

 

 そして、辿り着いたのは沖にとてつもなく巨大なモニュメントが仄暗い海中から延びている。朽ち果てたとも、忘れ去られたともとれる砂浜。

 幼いながらにノスタルジックな気持ちにさせる、とても心が落ち着く静かな浜辺。

 

 お友達は否定するかもしれないが、強い生命力にあふれた部屋の外よりも穏やかな静寂と優しい暗闇の支配するこの世界はずっと私に合っていた。

 

 特にお互いに喋ることなく、ただ、吹き付ける潮風と響く波の音。

 

 不意におろされて、適当な岩の上に座らされる。

 

「ほら」

 

 そう言って棒状のアイスを渡される。

 

 そのアイスはとても甘くて、でもしょっぱい不思議なアイスだった。

 

「波の音は、どこの世界でも変わらないな」

 

 彼の独り言に返事はしなかったけれど、確かに同じだなとは思う。

 

「ここは……どこ、なんでしょう?」

 

 不意に疑問に思ったことを口にする。

 

「光と闇の狭間さ。あの海の先にお前が住んでいた光の世界と闇の深淵へと繋がる場所が此処」

 

 それだけ口にして再び沈黙が始まる。

 

 銀色に輝く月が美しい。

 

 身も心も溶けてなくなってしまいそうなほどの心地よさを感じていると不意に彼の手が私の頭に乗せられる。それと同時に何かが弾かれるような感覚がして現実に戻される。

 不思議なことに体が軽く、妙にすっきりしたような口語化しずらいこの感覚に戸惑う。

 

「さぁ、行こう。なにも世界は一つじゃない。お前が思うよりもずっと世界は広いんだ」

 

 そう言って海の方へと連れていかれると、また目を開けてられないほどの光に目をつむる。目を閉じているにもかかわらず感じる強い光の中片手を優しく引かれる。

 

 体を持ち上げられる感覚に目を開ける。

 

 暗転する視界の中ではっきりと見える中でそれが彼の髪の毛であることに気が付く。

 

 さらさらとして触り心地が良い。

 

 肩車をされていることに気が付いてそれをお友達にからかわれる。

 

「……からかわないで、ください」

 

「ん? 何にも言ってないけど?」

 

「いえ、こちらの話です」

 

 どうせ言ってもわからないだろうと話を誤魔化す。

 

「……からかわれでもしたのか? ()()()()()()()()()()()()

 

 ―――ヒュッ。

 

 息を飲む。

 

 今……なんと言った?

 

「見えているのですか? ()()()

 

「やっぱりいたんだな。ずっと付いて来てたみたいだから気になってたんだ。それと、すまないが姿が見えているわけではないんだ。だけど、確かにそこに心を感じる。心を感じるってことはそこにいるってことだろ?」

 

 見えているわけではないのは残念ではあったけど、彼は私とは違う形で()()()の存在を認識しているらしい。

 

 まったく同じではないものの、認識しあえる……わかりあえる存在に胸が熱くなる。

 

 自らが閉じたあの世界(私の部屋)で静かに、眠るように朽ちていた心に初めてドロドロに溶かされた鉄を心に注がれたような灼熱。

 

 ―――これは。

 

 この熱は何なのだろうか?

 

 それは体の隅々にまで伝播し、明確な力となる。

 

 

 この時マンハッタンカフェは初めて心に情熱という名の火が付き、そこから湧いて出てくる活力に戸惑っていた。

 なぜならば、彼女は心を止めてもういいやとふさぎこんでしまったから。

 

 だから、やる気に満ちる自分というのは、もしかしたら本当に初めてなのかもしれない。これだけ活力に満ち満ちてる自分自身のことは。

 

 

 そんな考えてる間も彼は私を肩車した状態で移動する。

 

 その先に、一軒のカフェに辿り着く。「ラビットハウス」と英語で書かれている店をくぐると、好きな珈琲の香りが強くなる。

 雰囲気も悪くはない。落ち着いたいい店だ。

 

「注文頼む、いつもので。お前は?」

 

「私は……キリマンジャロ……ミルクでお願いします」

 

 一瞬、店長と思われるマスターの「ほー」と言う感心したような小さな声が聞えた。

 

 落ち着いた雰囲気のあるこの店は静かで心地よい。

 

「……お前の部屋とこの世界を繋いでおく。ほら、話してみたらどうだ?」

 

 そう言った彼の視線の先を見てみると銀髪の私と同じくらいの少女がこちらを見ている。

 

 そっと背中を押されて少女のほうへと送り出される。

 

 同い年くらいの子と話したことがないので何を話せばいいかわからない。目の前の子もちらちらとこちらを見はするものの話しかけてくる気配がない。

 

 悩みに悩んだ末彼女が抱えてる毛玉にお爺さんの霊がついてるのを純粋に疑問に思い、そのことを問いかけた。目の前の女の子に問いかけたつもりはないのだが、そのことに少女が強く反応した。

 結果から言うと女の子は幽霊が見えているわけではなかったが、毛玉(ティッピーと言うらしい)の体を使って彼女達とコミュニケーションをとっているらしい。

 

 そう言うケースもあるんだなと少し驚いた。

 

 そういうこともあってか、私の話を信じてかつ、理解しようとしてくれる同世代の子というのは初めてだった。

 話が弾む。とは言っても私も彼女も話すことが得意なわけではないので言葉数こそ少ないけれど、初めの気まずさは薄れた気がした。

 

「そういえば、まだ名前を知りませんでした。私は香風智乃と言います。あなたは?」

 

「……私はマンハッタンカフェと言います」

 

「マンハッタンカフェさん、ですか。変わったお名前ですね。…はっ、もしかして私とても失礼なことを言ってしまったでしょうか」

 

 そんなにおかしな名前だろうか? と思ったが、確かにウマ娘でない子の名前からはかけ離れてるかもしれない。

 私としては香風智乃と言うのもカプチーノみたいで大概だと思うのだけれど。彼女の実家がこのカフェなわけだし。

 

 そんな訳で、初めて私を気味悪がらない()()()以外の人間のお友達が出来た。

 

 

 季節は巡る。あれから十余年。

 

 

 あれ以降、ちょくちょくとラビットハウスには赴いている。

 

 私は縁あって女優となり女優業の傍ら、時折ラビットハウスのヘルプをしている。因みに女優業は天才子役としてそこそこ知名度はあり、最近は専らアクションものによく呼ばれている。

 人間とは現金なもので、知名度が上がってからはあんなに私を気味悪がっていた人々は手のひらを返したようにすり寄ってきた。

 

 少々呆れつつのらりくらりと躱す毎日。

 

 強引に私と外の世界を繋げた彼は何回か会いに来てはくれたけど、それ以来現れることは無かった。それと一緒に居なくなった()()()

 その代わりに手に入れた大きな鍵とアメコミのヒーローのような強靭な肉体。霊感も年月を重ねて無くすなんてことはなく、この間もトレセン学園のコースの一つに取り憑いた悪霊にご退場いただいたばかりだ。

 浄化しようとする時、必ず手にこの大きな鍵が現れるから除霊道具なのだろうと納得している。

 

 兎にも角にも、あの世界では目立ってしまいプラーベートな時間が確保できないため、この世界のように落ち着ける場所が少ないのだ。

 

 また、あの優しい暗闇が支配する心地良い世界に()()()を探しに行こうかと考えている時に来客を告げるベルが鳴る。

 

「いらっしゃいませ」

 

 そう返事をしながら入口を見ると黒いコートの人物が二人入ってきた。

 

 怪しいと思い少しでもおかしな行動をしたら取り押さえようと身構えたら、最初に入ってきた人がコートのフードを外す。そこから出てきた顔は―――。

 

「久しぶり。元気にしてたかな? カフェ」

 

 私と同じ顔で。

 

()()()……なんですか?」

 

 彼女の雰囲気があまりにも懐かしかったので、考えるよりも先に口に出ていた問いかけ。

 

「うん、今はサンデーサイレンスって名乗ってる」

 

 全く同じ顔の()()()が活発そうな笑顔を浮かべながら返事をしてくる。

 

 何処か愉快そうにニマニマと笑みを浮かべて「さみしかった? ねぇさみしかった?」と聞いてくる彼女に今まで結構ガチで探し回っていたカフェはなんだかなーという感想を胸に抱いた。ちょっと、否。だいぶ損をした気分だ。

 

「おや、お客さんかな? 随分とユニークな方たちのようだけど」

 

 そう言ってこのカフェのマスターのタカヒロさんが出て来る。

 

 口調こそ穏やかなものの、ごく自然な立ち振る舞いでさりげなく私を守れる位置に陣取る。

 

 ()()()改めサンデーサイレンスさんの後ろにいた黒いコートの人物が動いて手でフードを外す。

 

 キリっとした釣り目に左目の大きな切り傷。頭には軍帽と思われるものをかぶってるその人物は―――。

 

「バイアリーターク、様!」

 

「……知り合いかい?」

 

 確認するように視線だけをこちらに向けるタカヒロさん。

 

「あ、はい。知り合いというか。一方的に知っているだけというか」

 

 私の曖昧な返事に反応に困っているタカヒロさん。

 

「すまない店主。別に危害を加えたりとか盗人のようなことはしないさ。……リク一門の名に懸けて」

 

「彼の……知り合いかい」

 

「はい、ますt…リク様の門弟です。あのお方は立場もあるお方なので」

 

 そういいながら軽く頭を下げる様は中々堂に入っていて規律、礼儀作法に重きを置くバイアリーターク様らしいと思う。

 

「そうか……彼の。わかった。彼につながる人だというのなら無下にはできないさ、お好きな席へどうぞ。彼のおごりです」

 

 バイアリーターク様は「すまない、そうさせてもらおう」と言ってカウンター席に座る。

 必然、私とタカヒロさんとも近くになる。

 

「所で、マスターリク様のことを知っているようだが、あの方はよくここへ?」

 

 そう問いかけてくる。そういえば数回あっただけで後は今に至るまでリクさんには会っていない。

 

「いえ、最後に来たのが10年近くまえになりますかね。それからは彼ではなく彼女が」

 

 そう言ってタカヒロさんが視線で私を指した。

 タカヒロさんに問いかけたバイアリーターク様の顔が寂しそうな縋りつくような期待感を孕んだ子供のような表情を浮かべたように見えて、その期待に答えられない事に申し訳なさと罪悪感を抱いた。

 だから私は首を左右に振り、

 

「もうしわけございません」

 

 そう謝罪した。

 

「謝らなくったっていいさ、悪いのはお前ではない。元々放浪癖のある方だった。助けが、救いが必要な者の前に唐突に表れ、問題が解決すると何時の間にかいなくなっているんだ。……だが、姿すら見せなかったマスターが姿を現すようになっている。ああ、小さいが、確かな一歩だ」

 

 出されたお冷を一気に煽り。

 

「しかしまぁ、こうも私達の預かり知らぬところで妹弟子が増え続けるのもどのようなものか、と。マスターにはマスターなりの考えがおありなのはわかるのだがな」

 

 そう言って空になったグラスをカウンターに置く。

 

「ああ、所で店主。この店ではこれが使えるか?」

 

 そう言って財布を差し出すバイアリーターク様。

 

 受け取ったそれをタカヒロさんが確認する。

 

「大丈夫です、使えますよ」

 

「そうか、それは良かった。使えないのであればこっちでどうにかしなければならなかったからな」

 

 そう言ってどこから取り出したのかわからないスーツケースをカウンターに置かく。その中には金の延べ棒がぎっしり詰まっていた。

 

 それには目の前のタカヒロさんの顔も引き攣った笑みを浮かべている。

 

 そういえばリクさんが初めてここに訪れた時、それこそ金銀財宝をタカヒロさんに渡したと言うのを思い出す。因みにそれは私のここでの珈琲や食事代に充てられている。

 この世界、私のいる世界と違って食料品がとても高いのだ。量も少ないし。

 

「……一応言っておくが店主よ。これらは後ろめたいものではないぞ? 詳しくは言わんが私も規律と秩序を司る立場だ。そこは安心してほしい」

 

 そう言うと少し意味ありげな視線をタカヒロさんに向けた。タカヒロさんは苦笑いを浮かべながら肩をすくませる。

 

「マンハッタンカフェ。この後時間に都合がつくか? 手短に……とはいかないがサンデーサイレンスとの募る話もあるだろう。時に店主よ、お前にも子供がいないか? もしいるなら大きな”鍵”を持っていたりしないか? もしそうならば私に教えて欲しい。大事なことなんだ」

 

 そう言って片手を前に出すと私とは形が違うが大きな鍵が出現した。

 形は人によってまちまちだと言う。

 

 話せば長い話になるから後日、時間を作ってくれと言って、タカヒロさんが話しながら作って出した軽食をお友達……サンデーサイレンスさんも軽食を口にする。

 

 食べ終わると財布をタカヒロさんに渡して料金を取るように言うが、タカヒロさんが首を振り「彼のおごりということで」と言う。

 どうやら最初に彼のおごりだと言うことは本当だったらしい。

 

「そうか、ならば次は私が払わねばな。私にも立場や見栄というものがある。妹弟子を連れていればなおさらだ」

 

 そう言うと金の延べ棒が入っているスーツケースをごとりと支払いカウンターに置くと「マンハッタンカフェの都合のいい日を貸し切りにしたい、いいな? 店主」と言うとこちらが返事をする前にサンデーサイレンスを連れて出て行ってしまった。

 「まいったな」とタカヒロさんがまた肩をすくめる。

 

 

 後日、トレセン学園の私の部屋の机の上に差出人不明の手紙が置いてあった。

 

 開けると達筆な文字でいつなら大丈夫かをこの手紙に記入しろと書かれていたので予定を確認してスケジュールの空いた日を書き込む。

 書き終わったら手紙が淡く輝き消える。どういった仕組みだろうかと一瞬考えたが、そもそも相手は女神様なんだからこのくらいは簡単にできるのだろうと自分で納得した。

 

 

 

 自宅に帰り自分の部屋に入り部屋に設置された異界へと繋がる扉を開けて、暗闇の世界へと足を踏み入れる。心地良い薄暗い世界に癒しを求めて波打ち際を歩く。

 もう少しで約束の時間だ。

 そう思っていると声を掛けられる。

 

「こんな世界に闇を払う力を持つ衣服を身にまとってないなら来るな」

 

 そう言ってくる闇夜に溶け込んだ黒いコートの人物。この声はこの間聞いた覚えがある。

 

「バイアリーターク様」

 

 手を掴まれる。

 バイアリーターク様が鍵を出して虚空に向けると鍵の先から光が伸び現れた鍵穴のような物に光が吸い込まれ鍵が開く音が響き光が溢れて視界が光で埋め尽くされる。

 

 目を開くと何時もの木組みの町だ。

 

 「行くぞ」と声をかけられてラビットハウスに向かう。

 

 何時の間にかバイアリーターク様は質素な大人の女性と印象を与えさせる服装に変わっている。

 

「すまない店主。待たせた」

 

 そういいながら店に入る。

 店内では既にチノさんにタカヒロさん、タカヒロさんの奥さんとお爺さんのティッピーとサンデーサイレンスさんが待機していた。

 

「そろったな。そちらが店主のご息女か」

 

 そう言ってチノさんに問いかけるバイアリーターク様。

 

「そ、そうです!」

 

 あわあわと落ち着かない様子で返事をするチノさん。

 

「そう力まないでいい。肩の力を抜いてくれ」

 

 それを言ってから鍵のことを問いかけるバイアリーターク様。結論から言うとチノさんはどうやら鍵を持っていないらしい。あくまで今現在で、と言う注釈がつくが。

 それからその大きな鍵……キーブレードのことを教えてくれた。

 

 世界はここ以外にもたくさんあるが、世界には見えない壁が存在していて基本的には移動できないこと。

 

 キーブレードは心に強く関係していること。

 

 基本的に世界を移動するものは他の世界の物を持ち込んだり持ち出したりと言う秩序を乱す行為はNGなこと。

 

 そして、心が闇にとらわれるとどうなってしまうのか。ハートレスとノーバディと言う存在について。

 途中タカヒロさんが「だから彼は噂話を欲したのか」と小さくつぶやいていたのが聞えた。

 

 途中別世界の存在を証明するために私達にかけられた秩序の魔法?(私は使った覚えはないのだけれど)を解いてウマ娘であることをばらした。

 「それで服のお尻の上のところに穴が開いていたのね」と納得の声を漏らすタカヒロさんの奥さん。実のところ何度か不思議がられて聞かれたのだが、説明できずに濁していたのだ。

 

 話がひと段落したところでバイアリーターク様は用意されていた水に口をつける。

 

 逐一質問やなんかを挟んだり、世界観の違いを説明するために話がそれたりしたので大分時間が過ぎていたらしく、来たときは明るかったのに外から差し込む日は傾いていた。

 

「サンデーサイレンスは暫く自由にして構わない。マンハッタンカフェと友好を温めるといい。ベガもそうらしいからな。チノと言ったか、キーブレードを手にしたときにマンハッタンカフェにそのことを言え。その時こそ力の使い方を教えよう」

 

 そう言うとバイアリーターク様はいつの間にか黒いコートを着込み、それと同じものを私に押し付けてくる。

 

「あの世界に行くのならそれは必ず身に着けろ。闇を払う力がある」

 

 そう言うとバイアリーターク様の背後が歪みバイアリーターク様はそこに入って行って消えてしまう。

 

 チノさんはキラキラした目をして「私も魔法を使えるでしょうか!」と珍しく積極的になっていて、それをタカヒロさんが複雑そうな顔で見守っている。

 

「みんな~、ごはんよー!」

 

 店の奥からそんな声が届く。

 

 そういえば途中からチノさんのお母さんがいなかったが、そういうことだったのか。

 

「カフェちゃんと、……ええとサンデーちゃん、だっけ? 一緒に食べてかない?」

 

「あの、ご一緒してもいいのでしょうか? その、量が……」

 

 遠慮はもちろんする前提で問いかける。お友達ことサンデーさんは「本当! やったねカフェ」と無邪気にはしゃいでいる。

 貴方はもう少し遠慮と言うものを。

 

 そう思いながらもチノさんが「皆さんで一緒にご飯は楽しいですよ」とチノさんにしては珍しく乗り気だ。

 

 その後、出かけていたのか戻ってきたココアさんが「カフェちゃんが2人いるよ!」と騒がしくなったりとにぎやかに時間が過ぎた。




マンハッタンカフェのビジュアルはキンハでは間違いなく闇陣営なんだよね。黄金の瞳だし。
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