気ままに行くリク(偽)の旅路   作:仙儒

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5話

 なんか忘れ去られたような田舎の神社の近くで久々に見かけるハートレスを倒してマニーとお金を回収してたら鼻をすするような音が聞こえた気がして社務所の裏手に回り込んだら中学生くらいの子がジャージ姿で体育座りで膝に顔を埋めてすすり泣いてた。

 

 夕日の差し込む黄昏時のこと。

 

 ハートレスはこれに引き寄せあられたのかな? と思いながらこれどう声かけようと思いながら眺めていたら見逃していたのかハートレス一体がその子に襲い掛かろうとしたのでダークファイガで攻撃。

 その際、足元にあったらしい枯れ枝を踏んだらしく乾いた音が響き「ふぇ?」と腑のけた声をあげてこちらに振り返る。

 

 自分以外の存在がいることが分かったからかジャージの袖で目元をぬぐうと「どうしたんですか?」と声をかけてきた。

 

 赤い目元と鼻声だが泣き続けられるよりはずっといいと思い

 

「それだけとりつくろえるなら慰めは必要なさそうだな」

 

 そう、言いながら彼女の隣に座るようにして闇の回廊で俺共々鳥居の上に移動する。

 

 何が起きたのか目を白黒させた後、慌てだして落っこちかけたのはご愛敬だ。

 

 本当は鳥居の上に登るのは罰当たりなのだがそこは目を瞑って頂こう。

 

 毎度おなじみのシーソルトアイスを彼女に渡して夕陽を見ながらそれを口にする。

 

 特に何かを聞き出そうとは思わない。沈黙だけが続き、言葉に困った結果アクセルの台詞をそのまま口にする事に。

 

「なあ、なんで夕日が赤いか知ってるか? 光には幾つか色があって赤が一番遠くまで届くからなんだって」

 

 記憶したか? と言いながら頭を指でトントンとつつく。

 話したくないことを無理やり聞き出そうとするから話がこじれて悩んでるやつが意固地になる。

 だから本人が話したくなったらその時に周りが聞いてやればいいのだ。

 

 アイスを口にしながらとことん関係ない話をする。

 

 世界の秘密を教えよう―――。

 

 そう中二病を刺激するような話し方でこの世界以外の世界の話をする。

 意外とこれらの話は信じる信じないを別として子供受けがいい。

 最初こそ一方的な話になりはしたが、最後のほうは彼女から合いの手や質問、なんですかそれって言う突っ込みなど。

 夕日が完全に沈み込むと流石に解散したほうがいいだろうと抱きかかえて鳥居から下ろし、見送る。

 

 久々にアルダンのところに顔を出そうかとも思ったけど、普通に考えて事前連絡なしで行くほど気軽な家ではないことを思い出す。

 それに、世界間での時間の流れが違うため俺が久しぶりでも相手にとってそんなに時間がたってない可能性は十分にある。その逆も然りだが。

 

 身分証なくても泊まれる宿無いかな? 今の見た目キンハ2のリクだとまだまだ若いから身分証求められるだろうし。まぁ、3になってもまだまだ若いんだけどさ、リクたち。

 

 

 

 で、結局グミシップに寝泊まりしている。

 

 あれから毎日かあの神社で彼女……ライトハローと会っている。

 

 何回目かの会合にて彼女から打ち明けられた重責。

 

 なんでも彼女の母親もその母親もとても優秀な人物だったんだそうだ。

 そんな中、自分は平凡だからプレッシャーが半端ないのだという。

 えぇ、俺が中学くらいの時なんかそんなの考えたことなくて頭空っぽのまま友達と一緒にバカやってたよ。そのほうが楽しいじゃん。

 

 と、考えられない不器用さと生真面目さと青臭さがごちゃ混ぜになったちょっとはき違えた責任感。

 

 ある程度の自責の念は必要だが、彼女はそれが過ぎて背負う必要のないものまで背負って自分を追い込んでしまっている。

 

 んー。どう指摘しあものか。

 

 考えて考えて……まぁいいかと指摘するのをやめた。普通に考えればわかることだが、それを今の跳ねっ返りが強い時期に正しいことを指摘したとて、それが正解だったと自覚するのは社会に出てからだ。

 それに、正論は人をイラつかせることはあるが、人を救うことは無いという名言が残っているくらいなのだ。長年の付き合いのある気の置けない間柄なら兎も角、出会ってから数日の俺が態々指摘することではないだろう。

 

 そんなことで、俺はマンハッタンカフェにしたのと同じ時間が解決するさの精神で行くことにする。ゲーセン行こうぜゲーセン。

 意外と前世で遊ぶことが無かったので行ってみようと思った次第である。

 なんでも頑張れば50円で4時間以上粘れるらしい。銀ちゃんの中の人が言ってたアルよ。

 

 前世ではそこまでゲームスキルなかったのでどこまでできるかの確認から。

 

 後、なんとなくゲーセンって不良のたまり場ってイメージがある。実際は全然そんなことないのだがそのイメージはどこから付いたものなんだろうか?

 

 

 

 んで、ライトハローがあまり来なくなったときに聞いたらそろそろ大事なレースがあるとのこと。

 

 ならばちょいと冷やかしに行きますかと見に行ってレース場の屋根の上でセンターで歌って踊るライトハローを見つけてアイス食べながら眺めた。

 

 センターをレースで決めるとかなかなかにかっとんだ発想を持ってんだな。

 

 今までありそうでなかった新しいアイドルの在り方を不思議に思いながらもセンターで涙声で歌って踊るライトハローを眺めながら今日もシーソルトアイスを口にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 母も、その母もGⅠを勝ち取った。所謂エリートの血筋だった。だから、自分も何れ何らかのGⅠを取れるだろうと高をくくっていた。

 周りもそうはやし立てていたから無意識に鼻が高くなっていたのだろう。

 

 でも、現実は違った。

 

 私には母たちのような才能なんてなくて。

 知名度も高かったから自分自身に対する落胆も、世間からの落胆もそれはそれは凄まじいものだった。

 

 期待されてたから名家と言われる家の結果を残してるトレーナーからも多くの声がかかったけれど、私に才能がないとわかるとあれだけ来ていたスカウトの声は嘘のように無くなった。

 

 私にとっての1つ目と2つ目の挫折。乾いた笑いしか出なかった。

 

 それでも、私の面倒を見たいと新人の女性のトレーナーがスカウトしてくれたのはとても幸運だった。

 

 中央トレセンに限らず、トレセン学園ではトレーナーに見向きもされずにレースに参加する資格すら用意されずに去るウマ娘のほうが圧倒的多数だから。

 

 2つの挫折と世間の冷たい評価に震える私を献身的にサポートしてくれるトレーナーさんにはとても感謝している。

 

 だからこそ、レースで結果を出せない自分が憎かった。

 こんな私にいやな顔一つせず支えてくれるトレーナーに申し訳なかった。

 

 校内でこの気持ちを吐き出す場所がない。

 

 ただただ、この場所から離れたくてさまよい続けて流れ着いたこの神社。

 

 誰もいないただただ静かな境内で膝を抱えると、今まで抱えてきた感情があふれ出す。

 

 しばらくしてパキッと言う乾いた音が境内に響く。

 

 涙を拭って顔を上げる。

 

 何とか取り繕うと明るい声を出そうとすると「それだけ取り繕えれば慰めはいらなさそうだな」と爽やかな笑顔がよく映える美少年がたたずんでいた。

 

 瞬間、視界が暗転したと思ったら鳥居の上に座っていて、驚いて落っこちそうになる体を支えられる。

 

 異性との急な接触にどきまぎしてる私をよそに夕日を見ながら渡される棒アイス。

 

 とりあえず口にするとアイスの甘さの後に、舌に残る確かなしょっぱさ。

 

 このしょっぱさが何だか涙の味にも似ていたような気がしてジャージの袖でもう一度顔を拭う。

 

 隣から「やっぱ、このアイスしょっぱいな」と呟きが聞こえてきた。てっきり泣いていた私に気を使って言ってくれた言葉だと思っていたのだが次の日以降もしっかりとしょっぱかった。

 

 少しの沈黙を挟み、声を発した彼の言葉は

 

「なあ、なんで夕日が赤いか知ってるか? 光には幾つか色があって赤が一番遠くまで届くからなんだって」

 

 そう言って「記憶したか?」と頭を人差し指でトントンと2回叩いきながらこちらに顔を傾ける。

 

 それに私は思わずに「何ですか、それ」と吹き出してしまった。

 

 小等教育で習うようなことを決め顔で得意げに話す彼にすっかり毒牙を抜かれてしまったのだ。

 

「世界の秘密を教えよう」

 

 吹き出した私を見て彼は色々な世界の話をしてくれる。

 

 動物だけが暮らす弱肉強食の世界の優しい動物たち。

 

 神様とヒーローが暮らすドタバタした世界。

 

 玩具たちが意志を持って動く友情と絆の世界。

 

 海賊たちが支配する危険な海でロマンを追い求める世界。

 

 心の研究をする賢者が住むハイテクとローテクが混じり合う世界。

 

 人々を怖がらせるモンスターが一生懸命人間を笑顔にしようと四苦八苦する世界。

 

 ハロウィンのお化けがサンタクロースに憧れて悪さをする子供の相手をしつつサンタの手伝いをする世界。

 

 科学の推移を集めて作られた武器を手に強大な敵や災害から人々を守るヒーローが暮らす世界。

 

 他にもいろいろ話してくれた。

 

 どれも作り話、物語を聞いてる感覚としては面白かった。

 

 それから何回かこの神社で会う度に鳥居の上にいつの間にかいるので、もしかしたら全部が全部全くの噓じゃないんじゃないかと思うもののそれを指摘し、追求する勇気は私には持てなかった。

 

 それ以外にもゲームセンターやカラオケなどのちょっと不良っぽいところへも連れまわされる。

 

 気がつけば負の考えが巡る時間が減ったような気がした。

 

 

 ―――そして、運命のGⅠ。

 

 短距離高松宮記念。私のスタミナの無さで勝てる可能性があり、勝とうが負けようがこれを最後にしようと決めたレース。

 

 無我夢中だった。

 

 レースの駆け引きなどしてる余裕など入り込む余地などなかった。

 

 ゴール板を超えてすぐに倒れこむ私。

 

 立っていることができないほどの疲労感。

 

 何とか視線だけを動かして掲示板の順位表を見るが写真判定中とだけ表示されて順位が表示されない。

 

 あれだけ歓声で五月蠅かったレース場が静まり返り、誰もが固唾をのんで掲示板に注目する。

 

 GⅠと言えど花形である中距離・長距離ではないので幾分か寂しさを抱かせるがそれでもGⅠと言う格式は伊達じゃなく、静けさとは無縁のはずのレース場にピリピリとした緊張感を孕んだ静寂が支配する。

 

 何とか息を整え上半身を起こすことができるようになった時、レース場が一斉に沸く。

 

 アナウンサーが興奮気味に一位の選手の名を叫ぶ。

 

 叫ばれた名はライトハロー。……私の名前だ。

 

 掲示板に表示される一着の所にライトハローと表示され、関係者席に居た筈のトレーナーが私に抱き着いた衝撃でやっと実感が現実に追いついた。

 

 圧倒的才能や力を持った者の力強い勝利ではなかった。差され差し返すの泥沼のレース。

 

 だからこそだれが勝つかわからないレースに誰もが手に汗をにじませ自分の押しの子の名を必死に口にし、熱狂した。

 最後の最後まではらはらしっぱなしで、予測のつけようがないレースは圧倒的な才能を持つ子が当然のように勝つような才能のある者に花を持たせるだけだったレースの中で人々が求めていた番狂わせの血肉沸き立つレースそのものだった。

 

 誰もが思い浮かべる印象に残っているレース5選の中に必ず入るレースにライトハローの名と高松宮記念が人々の記憶に刻まれ、GⅠを一つ取っただけだが世代を超えて愛されることになったのと、花形の中長距離に比べて人気のなかった短距離にブームが来た火付け人にもなったのを少し先の未来で私は知ることとなる。

 

 半分夢見心地であれだけ夢に見たセンターでのライブ。

 

 本当に自分でいいのかと立ちすくむ私の背を押す自分よりも嬉し涙でぐちゃぐちゃなトレーナーがそれでも笑顔を浮かべて押し出す。

 

 ステージ裏からステージ上に上がり、そのあまりのまぶしさにまた立ちすくみそうになるが自分の頬を軽くたたいて活を入れる。

 

 

 インタビューなどが終わり、数日して例の神社にいるであろう彼に勝利を伝えるために目的地に向かうけどいくら探せど神社など見つからなくて。

 おかしいと思って近場にたまたまいたおばあさんに聞いてみる。

 

 確かに神社は存在したがずいぶん昔に遷宮されたとのこと。

 

「もしかしたらマシロ様にみそめられたのかね~」

 

「マシロ様…ですか?」

 

 それから教えてもらった土地神様のマシロ様。

 

 心優しい神様で、心の正しい者が悩み苦しんでいると目の前に現れ助けてくれて、いつの間にか去っているのだという。

 

「もう何十年も人前に現れないからヒトを見限ってしまったのかと思っていたけど、ちゃんと見守っていてくださったんだね~」と言いながら去っていくおばあさんに狐につままれた気分になりながらトレセン学園のトレーナー室に向かうとトレーナーさんから私宛に荷物が届いてるわよと言われて大き目の段ボールを開けると中には立派なモニュメントを模した凝った作りの4つの水晶の付いた綺麗なトロフィー。

 

 手紙も添えてあり、開けて読んでみる。

 

『これを送ることはもしかしたら君にとって迷惑かもしれないけど、善意とは基本他人に押し付けるものだとゴドルフィンバルブ達が言っていたのでそれに倣うことにするよ。

 

 かつて、仲間に美しいものに触れてきなさいと旅を促された。

 

 ―――そうだ。私は本当に美しいものを見た。

 

 刃を交えずとも倒せる悪はあり、相手を貶し貶めなかったからこそ辿り着けた答えがあった

 

 おめでとう、心優しい少女。欲にまみれた獣は君の誇りによって倒された』

 

 そう締めくくられていた。

 

 何て書いてあるのかとトレーナーさんに問われたので手紙をトレーナーさんに渡すとトレーナーさんは眉をひそめて「なにこれ。暗号?」とつぶやく。

 そうして改めて手紙を読んで見ると確かに読めるのだが、綴られている字は見たこともない文字だった。

 

 ああ、本当に私は神様と会っていたんだなとそれまでの不思議な日々を思い出す。

 

 

 

 

 

 あれから十年。

 

 私も社会に出て大きなプロジェクトを任される地位を手に入れて新しい企画が始動し始めようとしていた。

 

 スポットライトを当てられなかった子たちにも輝く機会とチャンスを。

 

 グランドライブのコンセプトを書き連ねた企画書の資料をまとめる。

 

 レースにこそ才能はなかったものの、ご縁があってついたこの仕事にたいする才能は持ち合わせていたらしい。

 

 私の担当をしてくれたトレーナーさんはGⅠウマ娘を輩出するベテラントレーナーとして中央トレセン学園でチームを率いている。ちょくちょく大きな雑誌にインタビュー記事がでかでかと乗っているのを見かける。

 因みに、トレーナーさんとは今でも付き合いがあり今でも時々飲みに行ったりする。

 

 仕事は充実していて楽しいが、行き遅れなのを気にしていて「どこかにいい男落ちてないかなー」とお決まりの台詞を叫びつつ管を巻いていた。

 まぁ、トレーナー業は儲かるが結婚相手としては男女共に不人気の職業なのは業界内では有名な話だ。

 それは私にも言えることなのだけれど。

 母親からの良い人はいないのかとせっつかれて話を濁す日々。

 私も気づけばため息をついていた。

 

 でも、せめてこの企画を成功させてからにしようと資料を上司に提出して休憩に入る。

 

 マシロ様のことは今でも鮮明に思い出せる。

 

 マシロ様のやっていたことを今度は私が思い悩んでいる人々にやっていこう。

 

 それがマシロ様への恩返しになるのではないだろうかと思ったのと、どうやら悩んでいる人たちの力になるのは私の性に合っているらしい。

 

 休憩から戻ると私のデスクの上に紙皿が置かれていて、その上には懐かしいアイスが。

 

 同僚に聞いてみたら「そういえばいつの間に。誰が置いたんだろう?」と首をかしげていた。

 

 アイスを一口かじる。

 

「……よーし。頑張るぞー!」

 

 そう言葉を発して新しい書類に手を伸ばす。

 

 アイスはとても甘くて、少ししょっぱいあの時の味だった。




トワイライトタウンでロクサスが最初に手に入れた優勝トロフィー。

ソラはサイファーから渡されたトワイライトタウンで一番強い者の証。
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