気ままに行くリク(偽)の旅路   作:仙儒

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6話

 寒さの厳しい時期になった。

 

 吹雪いてます。

 

 寒みー。

 

 現在居眠り運転に巻き込まれて跳ね飛ばされて病院送りに候。まぁ、リクの体だから受け身もちゃんととれたしエリクサーやケアルガ系統の回復魔法もあるので大丈夫だったんだが普通に病院に担ぎ込まれた。

 

 CTとか一応とったが、何事もなくでも様子見で数日入院とのこと。

 

 俺、保険入ってないんだけど入院費どうすっかなーと考えていたら次の日にアルダンの父親が吹っ飛んできた。

 いや、ホンマにすんません。実はもう抜け出そうと画策してました。

 

 アルダンの父親からは金のことは気にしなくていい、前に助けてくれた恩返しとのこと。今回はそれにあやかることにした。

 ……したはいいんだが、最初に運び込まれた病院からヘリで大きな病院の個室にまで移していただかなくもいいんですよ(小声。下手なホテルよりも上質な一人用の個室に押し込まれたのでそれとなく言うとメジロ家品位が疑われると言われた。名家も大変なんだな。

 

 その後、アルダンの父親ことメジロ家以外にも上流階級と思われる人物が何人も訪ねてきた。

 中には美人な人連れてきてよろしければどうです? なんて言ってくる始末。病室がお見合い会場に早変わりだ。

 

 えぇ、俺リクだから顔は間違いなくいいし、爺さんになってもイケジジになるのは約束されてるけれども、この情報社会において出生不明の文字通りどこの馬の骨ともわからない奴に身内紹介するかね? しかも皆支配者階級の人物なんだよね。自己紹介の時に我が家を良しなに的なことを言ってたし。サクラとかアグネスとかナリタとかシンボリとかサトノとか、他にも近衛とかなんとかの宮とか明らかにやばたにえんな家の人たちも訪ねてきたよ。ええ、護衛が後ろに何人もいるような人たちです。後、やたらとキーブレード見せてくれって言ってくるんだよね、皆。実はこの地球ってキーブレードマスターが納めてた時代があったんかね? 魔剣から派生したキーブレードだから見てくれはあんまよろしくないんだよな、ウェイトゥザドーンって。中二病には刺さると思うけどさ、このデザイン。

 

 で、相手さん方全員紳士的なもんだからこっちも粗相がないかと気疲れするよね。連日来るし嫌になっちゃうよ。

 

 しかも、仲の悪いらしい家同士がばったり合った日なんかどちらも笑顔で上品な言葉を使いながら相手を貶す高度な嫌味合戦始まったりするからな。

 家同士のしがらみでギクシャクすんのはわかるけど連れてきた子供巻き込むなよ。マジで。子供の方が申し訳なさそうな顔してこっち見てくんだよね。

 ああ、ルドルフにシリウスそんな顔すんな。悪いのはお前らの爺さんであってお前らのせいじゃないから。まぁ、この二人もなんか確執みたいのありそうなんだけど。主にルドルフにシリウスが突っかかる感じだが。その突っかかり方もルドルフ思ってのことらしいのをルドルフは幼いながらに感じてるゆえの受け流しみたいだけど。

 

 んで、保護者たちの言葉の応酬が本格的になり始めたので二人と居合わせたダイイチルビーを連れて屋上に出る。

 

 活発でやんちゃで少し生意気なルドルフに暇つぶしで他の世界の話をしたらそれを見てみたいとお願いされてアラジンの世界から魔法の絨毯を盗n、借りてきた。

 

 絨毯広げてその上に座らせる。どちらかと言うと大人しめのシリウスが飛ぶわけないよーと言うのを聞き流して俺も上に座りると、絨毯がふわりと浮かび上がる。

 

 そのままそこそこの速度で飛び出した絨毯の上は目を輝かせおおっと感激してるルドルフと、ひぃぃーー落ちる落ちるぅ~と泣きそうになりながら俺に涙目で抱き着いてくるシリウス。一言も発さず絨毯の上で正座し蒼い顔をして俺のジャケットを震える腕で摘まんでいるダイイチルビー。

 

 屋上に戻ったころにはルドルフ以外は全員グロッキーになっていた。

 

 因みにサクラ家のバクシンオーにチヨノオーはすごいのですね、はいサクラバクシンオーです。はいチヨチヨしました、とそれそれ個性的な返答が返って来る。

 

 サトノ家のお子さんはジンクスがどうのこうの言ってた。

 

 全員でシーソルトアイス食べて近況報告会が始まる。一斉にしゃべりだすから何言ってんだかわからないけど楽しそうでなにより。

 

 今回はタキオンがいなかったので安心して飲み食いできたなと肩をすくませる。

 

 取り合えずその後はルクソードのマジックと賭け事をして遊んで時間をつぶす。

 

 シンボリ家となんとかの宮の人たちが帰ってから入れ替わるように入ってきたアルダンの父親に宝石を現金にしたいんだけど紹介してくれない? って言ったらこれまた直ぐに宝石商の人物が訪ねてきた。

 相変わらず早いね。

 そんでバッグに入っていた金銀財宝を出していくと宝石商の人顔めちゃくちゃ引き攣っていた。

 

 「全部本物でございます。すいませんが買い取る額を持っておりませんので小切手でよろしいでしょうか。」と言われて0がいっぱい書かれた小切手渡されて困っていたらメジロ家から通帳とカードを渡された。

 これをお使いくださいとのことだが、流石にここまでやってもらう理由がない。

 通帳の中には保険証も入っていた。名前がメジロ リクになってるのに突っ込んだらダメすかね? 0もたくさんあってなんかこわいんだけど。

 

 取り合えずそれらを受け取ってたら取り出したアタッシュケースを盛大にひっくり返した人物がいた。

 

「こら、ドトウ。おとなしくしてなさいと言っただろう!」「ごめんなさいです~」

 

「どうもすいません、後できつく言っておきますので。」

 

 そうやってぐるぐるお目目で泣きながらこっちに頭を下げる小さいウマ娘の子と宝石商の人。

 

「いえ、大丈夫です。それよりも今後ともよろしくお願いいたします」

 

 そう言って頭を下げつつ、ドトウと言われた子にりんごジュースを渡す。

 

「ふぇ、いいんですか~?」

 

 それに「ああ」と頷くと「ありがとうです~」と言いながらジュースを飲み始めるのをみて。

 

「本当にすいません」

 

 再度宝石商の人が頭を下げる。

 

「いえいえ、こちらから無理を言ってお越しいただいたので。それにあの位の子には退屈でしょうから」

 

 退屈でいたずらしたというより、どじって転んだように見えたけど……もしかしてドジっ子なのか? なんか苦労しそうだな。

 

 しかし、小切手とか現物初めて見たぞ。そう言えば俺の居た地球の時間軸よりも昔なのかね。西暦何年なんだろう?

 

 小切手の件もアルダンの父親がやってくれるとのこと。至れり尽くせりだけど、だからこそ怖えな。え、何。俺に何を求めてるの? って言うか何をさせられるの?

 逃げ出した方がいいよな。

 

 病室に居ても訪ねてくる人が途切れないので病室を離れて散策してると幸薄そうな人が死にそうな顔しながら赤ん坊を抱いていたのが何故か気になって様子を見ていたらぶっ倒れそうになって慌てて助けて急いでエリクサー飲ませて大声で助けを呼ぶ。幸いなことに病院内だから直ぐに看護師さん来てくれたので助かった。

 後日、幾分か血色の良くなった倒れた人物が赤ん坊を抱えて金髪の姉さんに付き添われてやって来た。

 倒れた時のお礼だと菓子折りを差し出してきたのでお茶を入れてティータイムとしゃれこんだ。

 

 一応赤ちゃん大丈夫だったかと聞いたらおかげさまでと返ってきた。

 

 因みに赤ちゃんの名前はスペシャルウィークと言うらしい。

 

 ちょっとしたお茶会が終わりを迎え相手は会釈をして出ていくのを見送りつつ、今日は珍しくお客さんが訪ねてこないなと俺も病室を後にする。

 

 この後、これまた幸薄そうな少女と出会った。なんか幸薄そうな人物に縁があるな。何とかミラクルと名乗ったその幼女を100エイカーの森に連れ込んでプー達と星空を眺めながら焚火を囲んでのおしゃべりは幼女がはしゃぎ疲れて眠るまで続いた。

 彼女にもおしゃべりの途中で差し出した飲み物の中にエリクサーを盛っといた。

 

 後日、100エイカーの森にてモバイルポータルで撮った写真をその子の病室に届けて病院を後にした。

 

 一応、お詫びとお礼の品をメジロ家が用意した病室に置いて来たし、病院のナースステーションにお世話になりましたの心付けと言うものもちゃんと渡した。

 ただの様子見の入院が気が付けば結構な日数になり、未だに病院側からうんともすんとも無いし、最初こそ検査をしていたが、検査すらしなくなって久しい。

 いつ臓器抜かれるかわからんし。

 

 善は急げ、あばよーとっつぁーん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やってしまった。

 

 事を急ぎすぎた。

 

 この一言に尽きる。

 

 完全にこちらを警戒されている。

 

 彼のお方を繋ぎとめる口実と繋がりが欲しかったが故の行動であったが完全に裏目に出たとため息を漏らす。現にこちらが紹介した宝石商には何度か顔を出していると報告が上がっている。

 

 流石に幼いメジロ家の子女に肉体関係を持たせるわけにも行かず、他の家が唾をつけようと年頃の子女を途切れることなく紹介しているのが余計にメジロ家を焦らせたのも大きい。

 

 もう一度深い深いため息をつく。メジロ家だけで独占できてたアドバンテージをどこで嗅ぎつけたのか他の家も一枚かませろと嚙んでくる。しかもその中にはこの国のトップを張るやんごとなき家やその側近まで居る始末。

 流石にそういった家から爵位を貰って傅いている以上そちらを立てないわけにはいかない。しかも、爵位が上がったのだ。昇爵の裏に透ける抜け駆けするなよと明確な釘を刺された現状に頭痛がする。

 

 アルダンとラモーヌが一応渡りを付けているとは言え、所詮口約束であるしお相手方も否定的な答えを出している。

 接した限り義理堅く適当な人物ではないのがわかっている。だからこそ娘であるアルダンかラモーヌどうだ? と言えたのだが、逆を言えばYESと彼のお方が明確に口にしない限り明確な行動は一切ないのだ。

 

 そこに限れば英雄色を好むの屑で適当な人物である方が割り切れるし御しやすいのでどちらにも好都合なのだが。

 要はメジロ家に彼のお方との強い繋がりがありその血を引く者ができればメジロ家の地位は不動のものになるし、何よりも強い正当性が手に入る。そうすればウマ娘が存在し、文明を維持できる状況である限り国がなくなろうがメジロ家が没落することは無くなる。

 

 それが理想なんだが……。現実はそう上手く行かないものだ。

 

 キーブレードが血脈により継がれるものなのか、そうではないのかはわからない。

 

 後者であれば繋がりのあるアルダンがせめて、キーブレードを使えるようになってくれればまた違った道も開かれるのだが。

 

 今回のことについて、メジロ家内でも分家筋である自分の存在感や発言権は強まったが、家内で事を構えるつもりも毛頭ない。

 

 メジロ家は後継者を身内の中から家長が指名して次期当主となるのでそこに大きく頭を悩ませる必要が低いのは不幸中の幸いか。お家衝動とか笑い話にもならない。

 流石に末端も末端の一族の顔合わせにも呼ばれない分家筋が返り咲くために余計なことをしないように見張りの目を厳しくする必要はあるが、それは彼のお方の信頼を取り戻してからだ。

 

 ……取り合えず、宝石商をもっと贔屓し親密な関係を築いておく以外の手の打ちようが無いことにまた深いため息をつくのだった。

 

 

 因みに件の宝石商に訪れる品位の欠片も無い名家の人物には例外なく宝石商の娘に熱いお茶をぶっかけられると言う噂話が実しやかにささやかれるようになった。

 宝石商の娘さん曰く「すいません、悪気はなかったんです~。ごめんなさいです~、わざとではないんです~。救いは、救いは無いんですかー!」とお盆を抱え涙を流し目をぐるぐるにしながら言ってるとか、いないとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気高くあれ。

 

 そういわれて育てられた私。

 

 望むものは高レベルで全て与えられた。

 

 そんな親が唯一私に与えた使命はリク様の伴侶として尽くすこと。

 

 そのことに特に何かを思うことは無かった。

 

 今は……何とも言えない状況だ。

 

 中央のトレセン学園に入って少しだけ世界が広がり、完ぺきではないけれど私の思う完ぺきに近づく努力を惜しみなくしてくれるトレーナー様。

 

 わかっている。幼いころ少し接しただけの私ですら思考の外の神の世界の事情があることは。

 

 だけれども。

 

 同じ苦楽を分かちあえる、常に努力し支えてくれる人物と偉大で名誉もあるがろくに会うことすら叶わぬお方。どちらに好感を持つかを。

 

 されど、この気持ちを抑えることはできない。

 

 抑えきれない浮かれた気持ちと、幾ら相手に思うところがあれどリク様を蔑ろにし裏切っているようなことをしている後ろめたさと罪悪感。

 

 普段あれだけ無神経に絡んでくるダイタクヘリオスさんが気を使って話しかけて来なくなった位には私も私自身を御せていない。なんと未熟なことか。

 

 名家の令嬢として政略結婚など当然のことであり、それこそ険悪感のある相手に嫁ぐことなんてありふれたことだ。流石にリク様をその例えに当てはめるのはいささか無礼が過ぎるが。

 

「頭ハツカネズミになってないか?」

 

「!!」

 

 急に話しかけられて声の下方向を向くと、ずいぶんと薄れてしまった時の記憶よりも髪の毛が短くなり幾分か大人びた印象を受けるリク様のお姿が。

 

 そのまま私の前に差し出される棒アイス。

 

「……予定に入ってないものを頂くわけにはいきません」

 

 そう口にすると私の口の中に押し込まれた。流石に一度口を付けたものを捨てるわけにもいかずいつぶりになるかわからない庶民らしい、けれども市井のどこにも存在しないとても甘くて少ししょっぱい不思議なアイスを齧る。

 

「気持ち……特に好意や感謝はちゃんと言葉にしたほうがいい。察してくれと言うのは甘えだ。人はなまじ知能があるから些細なことを誤解し、それが噓となり、相手を区別し分かり合えなくなる」

 

 アイスを食べながら口にする何処か指摘する物言いに少し頭にくる。

 

「流石に10年以上会いに来ないお方が口にするのは如何なものかと」

 

 少し棘を含んだ言葉に彼は苦笑いを浮かべて私と向かい合う。

 

 リク様から延びる腕に少し驚いて身構える私のお凸に軽い衝撃が。

 

 驚いていると

 

「ルビーから離れろ!」

 

 そう言ってトレーナー様が間に入り込む。リク様は常人離れした動きで距離をとる。

 

「お嬢、大丈夫? トレっち呼んできたからもう安心して!」

 

「あの! 何か勘違いされているようですが私は大丈夫です」

 

 ダイタクヘリオスさんもトレーナー様もこちらの話を一切聞く気がない。

 

「ここは関係者以外立ち入り禁止だ。今警備員に来てもらってる、おとなしくしてもらうぞ」

 

「お前がルビーのトレーナーか?」

 

「ああ、そうだ」

 

 「そうか」と告げるとどこからか紙が出てきて空中で止まり、どこかから出てきた羽が紙の上を走り抜ける。

 

「あの三人がちゃんと仕事をしているようでなによりだ。特にダーレーアラビアンは適当なところがあるからな。いや、まぁゴドルフィンバルブも抜けてるところがあるから何とも言えんが」

 

 3女神様の名前が出てきたあたりで空気が変わる。

 

 いつの間にか右手にキーブレードとやらを持つリク様。紙が独りでに折りたたまれ、封をされて私の目の前まで飛んでくる。

 

「ルビーの父親に渡してくれ。お前たちの道行きを信じよう」

 

 そう言うと右手に持つキーブレードを掲げ、そこから眩い光があふれて目を開いていられなくなる。

 

「またな、ルビー」

 

 そう最後に聞こえた気がした。

 

 目を開けるとそこにリク様の姿は無く、ダイタクヘリオスさんから「マジ、やばたにえん」と呟きが聞こえた。流石のダイタクヘリオスさんも彼のお方のことはしっかりと知っていたらしい。トレーナー様はさっきまでの勇ましさは嘘のように「え、え?」と狼狽えている。

 

 

 

 後日、報告の為にお父様に時間をとってもらい手紙を渡した。

 

 お父様は手紙の内容を読めずに私に読めるかを聞いて来たので内容を声に出して読んでみると「キーブレードマスターの名においてダイイチルビーとトレーナーの仲を認める」と認められていた。

 

 リク様直々にそう明言されてしまってはその仲を認めないわけにはいかない。とお父様は残念そうにため息をつき、「そのトレーナーとどうなんだ?」と聞かれて私の思いの丈を語った。

 確かにリク様に嫁ぐことに対する政治的メリットは多大なものだが、リク様に出会わなかったならと仮定して私をここまで導けた優秀なトレーナー様を一族に迎え入れることにメリットはあれど大きなデメリットはない。

 ただ、政治的意味合いでリク様が圧倒的すぎるだけなのだ。

 

 私も「申し訳ございません」と言葉にこそしたが内心では歓喜していた。

 

 トレーナー様と式を挙げる1年半前の出来事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分と騒がしいな」

 

「ええ、なんでも変質者が出たとか、何とか?」

 

「事実だとしたら警備の見直しなどの検討もせねばならないか」

 

「その辺も含めて風紀委員にも共有しなければなりません」

 

「ああ、全く忙しい限りだよ」

 

 そう言って合流したエアグルーヴと苦笑いをしあう。

 

「なんか外が賑やかだけど何かあったのか? ルドルフ」

 

 !

 

 誰もいないと思ってエアグルーヴと一緒に生徒会室に入ったと同時に声をかけられた事に驚き、生徒会長の椅子に座る懐かしい人物にさらに驚く。

 

「きさm、会長?」

 

 エアグルーヴが威嚇しつつ問い詰めようとしたのを私が手で制する。

 

「あのやんちゃなお前が生徒会長か……俺も年を取るわけだ」

 

「そう言う貴方の外見は変わらないように見えますが。……何時までも幼いわけにはいきませんから」

 

 苦笑いしながら話を濁す。昔の話をされて気恥ずかしさに背を押されたのもある。

 

「ところでなぜここに? 貴方にとっては自分の庭なのかもしれませんが一応ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ。こちらの事情にも理解を」

 

 そういう私の言葉に驚いたような顔される。私だって成長しているんだぞ。

 

 ちょっとイラッとして棘を含んでしまったが「どうどう」と苦笑いされながら言われる。

 

「ルビーとお前とシリウスに用があったんだが、お前がいるならシリウスにはお前が伝えてくれ」

 

「……外の騒がしさの原因はやはりあなたでしたか」

 

 「そうなのか? そうなのかも」との呟きが返ってきて頭が痛くなってきた。そう言えばこういう人だった。いや、この場合は一柱と言うべきか?

 

 ゴホンと咳払いすると空気が一気に重くなる。

 

「ルドルフ……お前を我が楔から開放する。これからは自由に過ごすと良い」

 

「……」

 

「復唱せよ」

 

「……これからは自由に過ごします」

 

 相手は深く頷くと封を取り出し、「シンボリの爺様に渡してくれ」と言って私に投げて渡してくる。

 

 私は飛んできたそれを掴んで頷く。

 

「ルビーにも言ったが、トレーナー君と仲良くな」

 

 そう言う彼の後ろから眩い夕日の光で一瞬目が眩む。

 

 もう一度生徒会長の椅子を見るとそこには誰も座っていなかった。

 

 デスクの上に紙皿とその上には懐かしのアイスが。

 

 そのアイスを手で持ち、口にする。

 

 探したが、終ぞ見つけることができなかった甘くてしょっぱい不思議なアイス。

 

「参ったな、全て見透かされていたわけか。……シリウスには何と伝えたものか」

 

 今日は一段と夕日が綺麗に見える。

 

「あの、会長?」

 

「ああ、すまないエアグルーヴ。すっかり蚊帳の外にしてしまったな」

 

 「あの男は? 会長と親しい間柄のようですが」と遠慮がちに聞いてくる。

 

「ああ、ずいぶん古いね。幼いころシリウス含め面倒を見てもらったことがあるんだよ」

 

 それに、と言葉を続ける。

 

「広義では私達と切っても切れないお方なんだが」

 

 そういうと「は、はぁ」と返事が返ってくる。

 

 爺様にも話を通さなければならない。私は背中を押される形となったが、性格こそアウトロー気取りになってしまったがシリウスは私と違い今も一途だ。

 シリウスにはまた恨み言を吐かれそうだと肩をすくめるのだった。

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