電子廻戦   作:メイマロン

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目黒区編⑥

「『天憧晩球』」

「シン・陰流簡易領域!」

瞬間、みこが地面に叩きつけられる。

「がっ!?」

 

すいせいの領域「天憧晩球」は彼女の術式「観星醒御」の術式対象を領域内のあらゆるものに広げ必中とする。みこの簡易領域によりみこは領域の必中効果を打ち消している。しかし今、すいせいの領域の必中効果は「みこ本体」に対してではなく「みこの立っている地面」に発動しているため簡易領域によって打ち消すことはできない。

 

つまり領域に入った時点でさくらみこは、

「詰みだよ」

 

みこが祓串を投げるのを槍斧で弾くと、槍斧を左手に持ち替えて右の拳を振り下ろす。

「七等星『隕衝』!」

爆発の光が止み、みこの居た場所には祓串が落ちていた。

「は?」

瞬間、すいせいの背後からみこの呪力を感じ、振り返るとそこには地面に御札を貼るみこの姿があった。

「しまっ_」

すいせいの領域が割れみこの手を合わせる音が響く。

「詰みだにぇ」

神止札により領域を破られ、みこの天穿の圧縮が最大値に達する。このタイミングで「観星醒御」使用可能時間が切れる。

「『天穿』!」

す(まさか、みこちに「コレ」を使うとはね。)

放たれた呪力はすいせいに触れそのまま通り過ぎる。

「…え?」

すいせいは静かにみこに近付き両手でみこの頭に触れる。

「それじゃ、お疲れ。」

その瞬間みこの意識が飛ぶ。

 

はずだった。

 

星街すいせいの名曲の一つ「GHOST」を術式に落とし込んだ擬似術式「遊体離脱(ゴースト)」。その能力は自身と触れたものの霊体化であり、触れた相手を即座に霊体化させることで抵抗を許さず制圧する現在の彼女の擬似術式内でトップの呪力消費消費量を誇る星街すいせいの切り札である。

だが、楽曲のイメージを具現化する「混醒湊術」にも制約はある。それは「イメージの相互理解」。術式の効果を発動させるためにはその能力のイメージが術師本人だけでなく相手にも共通して理解されている必要がある。

 

すいせいの意図しないイレギュラー。

 

さっきの星間メーザーはさくらみこの知識には存在しなかったが、その見た目からのレーザーとしてのイメージが発生したため効果を発動した。その事が彼女の理解を遅らせた。

 

術式の使用経験の少なさ故のトラブル。

すいせいがそれを理解するよりも速くみこの行動は始まっていた。

頭に触れられ何も起きなかったみこは突き飛ばすのではなく逆に抱き寄せ背中から出した呪力ですいせいを自分ごと覆う。そのタイミングですいせいの思考が追いつく。

「閃光背(ヘイロー)」

「チッ!」

すいせいの舌打ちと同時に二人を包む呪力が爆ぜる。

爆発後、反転術式ですぐ回復したみこはすいせいを探す。

み(みこ渾身の自爆とはいえあの星街だしまだ多分生きてるはず!油断は禁物にぇ)

みこの心を読んだかの様に現れたすいせいは肩の塵を払うと笑う。

「自爆までするとは、流石にみこちをナメてたよ。」

み(ダメージがほぼ無い!すいちゃんも反転術式が使えるの?)

す(こっちの呪力はもうカツカツだしなぁ、そろっと決着つけないとほんとにやばい!)

「一か八か…。」

 

すいせいが手印を結んだ瞬間、みこの呪力がすいせいの頭を貫いた。

「これで完全勝利だにぇ!」

倒れたすいせいを見下ろし笑うみこ。が、その頭の端にふと違和感が生まれる。

み(いやいや、あっけ無さすぎじゃない?)

一度目を閉じて考え、目を開くと視界をすいせいの槍斧が埋めた。

「にぇ?」

気の抜けた声を出すみこをすいせいは天翔斧の呪力放出で加速したフルスイングで殴り倒した。

 

擬似術式「幻定概念(テンプレート)」相手の思った通りに物事が進むがそこで起こった全ての事象は現実世界に一切の影響も及ぼさない。すいせいの擬似術式で現在唯一の幻覚系術式である。自分の理想を持たない人間はいないためイメージの共有をする必要も無いが術式発動のトリガーとして手印か呪詞が必要となる。

 

倒れたみこに反転術式をかけたすいせいは深くため息をつき、息を整えるとみこの頭を撫でて微笑む

「いいよ、みこちのこと守ってあげる。」

 

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