side おかゆ
「全く、ころさんってばどこいっちゃったんだろう」
品川の町をとぼとぼと一人歩く猫又おかゆはため息をつきつつキョロキョロと周りを見る。
お(物凄い呪力は感じるのに、ころさんは気配すら分からない。何か大変なことに巻き込まれてないといいけど…。)
「他人の心配してる場合じゃないみたいだね…。」
おかゆは目の前に現れた少女を見て肩を回す。
「じゃあ初めよっか?」
手招きをするおかゆに対し少女は飛びかかる。
side ぺこら
品川区に入ってすぐに紫咲シオンと出会う。
「奇遇ですねシオン先輩!話がしたいんでちょっと下に降りてきて貰えますか?」
「ごめーん!ぺこらぁ!歩きたくないからさ、そっちが上がって来てくれる?」
ペ(遠距離戦はできなくないけど…上空にいるんじゃあこっちが不利ぺこ…)
シ(そんな罠見え見えの状態で降りる訳ないでしょ!このまま上を取って相手の攻撃と同時に叩く。)
箒に乗って見下ろすシオンに対しぺこらは丸い兎の式神を大量に召喚する。
「行けっ!野うさぎ達!」
「うおっ!」
兎の波を避けると、その中から飛び出したぺこらが手に野うさぎを持ち構える。
「ラビットショット!」
兎田ぺこらの術式「野兎操術」は呪力で召喚した丸い兎型の式神「野うさぎ」を使う術。「ラビットショット」は野うさぎの持つ呪力を推進力として特攻させる技。「黒鳥操術」の「バードストライク」とは違い命を掛けた縛りがないため一撃の威力は低いが「十種影法術」の「脱兎」のごとく無数に召喚できるのでその圧倒的な物量の弾幕で相手を捻り潰す。
ぺこらの手から放たれた野うさぎを躱すと足場になっている野うさぎが次々に特攻を仕掛ける。
シ(すっげぇ物量…避けるの無理だな)
急上昇して弾幕の全体を確認すると、魔法陣を展開する。
「魔詛弾(パロットーラ)」
紫咲シオンの術式「紫呪混魔導術(メイジ・オブ・ヴァイオレット)」はシオンの使う魔法の一部に呪力を足すことで呪術師にも通用するように変化させたものである。「魔詛弾」は呪力の弾丸を魔力で放つ射撃術で使用する呪力が少なく連射に向いている。
光弾を連射し、ぺこらの弾幕を相殺したシオンはぺこらの正面に移動する。
「もう終わり?」
「うっせぇ!そっちこそぺこちゃんの本気喰らってバテんなよ!」
偶然にも同じような攻撃方法を持った術師が相対した時、その戦闘は必然的に正面からの撃ち合いとなる。
呪力総量、術式の練度は互角。弾幕戦により生み出された一時的な硬直状態は双方の切り札で破られる。
「術式解放『兎急攻進(モッシュレース)』」
「『多重連奏魔詛弾(ウンエントリヒ・パロットーラ)』」
攻撃のために作られた技と式神操術の応用技ではその攻撃力に差が生まれる。バルカン的な扱いの「魔詛弾」だがそれでも「ラビットショット」より僅かに攻撃力が高い。1発ずつの撃ち合いでは分からない程度の差でも千を超える弾幕の撃ち合いでは明らかな差となって現れる。
シ(このまま押し切れる!)
シオンが勝ちを確信した瞬間、二人の居る周辺の景色が変わる。
シ(はっ?)
ペ(これ領域?)
二人の間に現れた呪霊はその掌に印が刻まれている。
特級呪霊:『八意思兼命』天気を司る神。扱いとしては特級呪霊である。領域内で降り続ける天気は呪力を纏いその全ては必中となる。
sideあやめ
「はっ!」
あやめが目を覚ますと横にいたあくあが安心したように顔を歪める。
「良かったぁ…二人とも目を覚まして…。」
「二人?」
あやめが周りを見回すとスマホゲーをしているフブキと目が合う。
「おはこんきーつね!」
「お、おは余」
「あやめちゃんの目も覚めたし私は行くね?」
「どっか行くのか?」
「シオンが明日から品川に入るって言ってたからその手伝いにね」
「私もちょっとしたら行くよ」
「ふーん」
あやめが相槌を打つとあくあは手を振って部屋から出て行った。