ありふれランブル!   作:ゲーマーN

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結構、修正を入れたので再投稿です。


第1章 第5幕

 日景たちの迷宮攻略は続く。暗闇の階層から更に五十階層は降りている。迷宮の探索は困難を極めた。この迷宮は、今までに調査したどの迷宮よりも広大かつ複雑な構造をしている。階段を見つけるだけでも一苦労だ。更に、魔物との戦いも熾烈を極める。

 しかし、それでも驚異的な速度で進んできたのは間違いないだろう。そして、その間にも日景たちは理不尽としか言い様がない凶悪な魔物と幾度となく死闘を演じてきた。

 

 例えば、全体が薄い毒霧で覆われた階層では、毒の痰を吐き出す二メートル級の虹色カエルや、麻痺の鱗粉を撒き散らす巨大蛾と戦った。常に結界を展開して毒霧の侵入を防がなければ、ただ探索しているだけで命を落としていたはずだ。

 尚、魔物素材は魔石共々に回収しており、技術部門が研究開発に勤しんでいる。その産物は、今後の日景たちの冒険に大きな影響を与えていくことだろう。

 

 また、密林のような階層に出たこともあった。非常に蒸し暑く、鬱蒼とした木々が生い茂るその階層は、今までで最も不快な環境だった。この階層の魔物は巨大なムカデと樹の魔物だ。

 密林を歩いていると、突然、巨大なムカデが樹の上から降ってきた時は、流石の日景たちも鳥肌が立ったものだ。それほどまでに気持ち悪い魔物だった。しかも、どこぞの宇宙ロボットのように体の節ごとに分離してきたのだから、悪夢以外の何物でもない。

 

 対して、後者の魔物はRPGで言うところのトレントに酷似していた。木の根を地中に潜らせ突いてきたり、枝を鞭のようにしならせ攻撃してきたりと、王道的な戦い方をしてきた。

 尤も、このトレントの最大の特徴はそんな些細な攻撃ではない。窮地に陥ると、この魔物は樹冠を振り、そこから赤い果実を投げつけてきた。これには全く攻撃力がなく、真品倶君内蔵の転送術式で陰陽寮に転送、解析したところ食用可能と判明した。早速、試しに食べてみたのだが……

 

「~~~~~~~~ンまあーいっ!」

 

 甘く瑞々しいその赤い果実は、まさにほっぺたが落ちそうな美味しさだった。リンゴのような見た目とは裏腹に、スイカのような味わいで、一口食べただけで元気が漲るほどの美味だった。

 この階層が不快な環境であることなど頭から消し飛んだ。むしろ、迷宮攻略すら一時的に頭から消し飛んだ。日景たちの目は完全に狩人のそれとなり、トレントを狩り尽くす勢いで周回した。ようやく満足して迷宮攻略を再開した時には、既にその階層に生息する魔物は全滅していた。

 

 どうやら、件の果実には魅了効果が含まれていたらしい。本来は、天敵がこの果実に夢中になっている間に逃げるための囮として使われる代物だったのだろう。しかし、人間の獣性(食欲)は数個程度で満足するようなものではない。魅了が解ける前に、トレントが絶滅するという結末に至った。

 数年後、この記録映像を閲覧したある人物は、「そうそう、人◯悪ってこういうことなの」と感想を溢したとかなんとか。

 

 そんなこんなで迷宮を突き進み、気が付けば五十階層。未だに終わりが見える気配はない。

 因みに、現在の日景と那岐のステータスは以下の通りである。

 

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藤原日景 17歳 男 レベル:49

天職:陰陽師

筋力:177

体力:177

耐性:472

敏捷:236

魔力:1180

魔耐:885

技能:魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇]・陰陽術[+発動速度上昇][+効果上昇][+イメージ補強力上昇][+消費魔力減少][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・限界突破[+戦鬼]・加護[+伊邪那美][+天照大神][+月夜見尊][+素戔嗚尊][+久久能智神][+宇迦之御魂神]・言語理解

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南雲那岐 17歳 女 レベル:49

天職:伊邪那岐

筋力:118

体力:118

耐性:590

敏捷:177

魔力:5900

魔耐:590

技能:伊邪那岐[+限界突破][+覇潰][+戦鬼]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収][+身体強化]・陰陽術[+発動速度上昇][+効果上昇][+イメージ補強力上昇][+消費魔力減少][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・高速魔力回復[+瞑想]・加護[+伊邪那美]・言語理解

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 日景たちは、この五十階層で作った拠点にて少しの足踏みをしていた。というのも、下層への階段は既に発見しているのだが、この五十階層には見るからに異様な部屋があった。

 そこは、何とも不気味な空間だった。脇道の突き当たりにある開けた空間には高さ三メートルほどの装飾された荘厳な両開きの扉があり、その扉の両隣には一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座している。

 

 この先には、万全を期した状態で臨んだ方が賢明だろう。そう判断した日景たちは、可能な限りの備えをしてから挑むことにした。ようやく、巡ってきた変化だ。調べないわけにはいかない。

 扉の部屋を訪れた日景たちは油断なく歩みを進める。特に何事もなく扉の前にまで辿り着いた。傍で見れば、一層見事な装飾が施されているのがよくわかる。そして、その中央には二つの窪みのある魔法陣が存在することに気が付いた。

 

「……? 見たことのない魔法陣だ。それなりに座学はしたつもりだが……那岐はどうだ?」

 

「ううん。こんな魔法陣は見たことがないよ」

 

 日景と那岐は、この世界の魔法技術を陰陽術の型に嵌めるために座学に力を入れていた。勿論、全ての学習を終えたわけではないが、それでも、魔法陣の式を全く読み取れないのはおかしい。

 

「逸失魔法の類なのだろうか?」

 

「もしかしたら、神代の魔法なのかも……」

 

 あれこれと推測しながら扉を調べるが特に何が分かるわけでもなく、迷宮の罠を警戒してフェアスコープで扉の周りを確認してみたが、扉の魔法陣以外に何も仕掛けがないことが確認できただけだった。どうやら、今の二人程度の知識では解読できるようなものではないらしい。

 

「仕方ない。ここは、強行突破するしかないだろう」

 

「了解っス!! じゃあ、ぶっ壊して……」

 

「その必要はありません。わたしが能力を使って岩盤を操りますので、任せてください」

 

 念の為に、扉を押したり引いたり上げたりしたがびくともしない。なので、日景たちは力業で扉を突破することにした。リッカは両手を扉に触れさせると能力を行使する。

 しかし、その途端、

 

 バチィイ!

 

「っ!?」

 

「リッカちゃん!? 傷を早く見せて!」

 

 扉から赤い放電が走り、リッカを弾き飛ばした。彼女の両手からは煙が噴き上がり、赤黒く焼け爛れている。慌てて那岐が駆け寄り、すぐさま治癒の術を行使して手当をする。

 

 オォォオオオオオオ!!

 

 その直後に異変が起きた。突然、野太い雄叫びが部屋全体に響き渡ったのだ。その雄叫びは部屋全体に反響し、発生源が何処なのか全く分からない。扉から距離を取った日景たちは周囲を見渡すが何も見つからない。

 日景たちが警戒を強めていると、遂に変化が訪れた。声の主がその正体を現したのだ。

 

「ゲームで似たようなシーンを見たことがあるなぁ……」

 

「……確かに」

 

 などと口にする一行の前で、扉の両側に彫られていた二体の一つ目巨人が周囲の壁をバラバラと砕きつつ、目を覚ます。何時の間にか、壁と同化していた灰色の肌は暗緑色に変色している。

 一つ目巨人の容貌は典型的なファンタジー常連のサイクロプスだ。何処から取り出したのか、四メートルはありそうな大剣を持っている。未だに埋まっている半身を強引に抜き出し、無粋な侵入者を排除しようと日景たちの方に視線を向けた。

 

「あはっ♪」

 

「やぁー!」

 

 その直後、問答無用で放たれた朱色の業火が右のサイクロプスの頭部を蒸発させ、同時に左のサイクロプスの首が宙を舞う。頭部を失った胴体は音を立てて床に倒れ伏した。

 巨体が倒れた衝撃が部屋全体を震わせ、土煙が舞い上がる。あまりにも酷い死に様だった。

 

「ふぅ。これで討伐終わりっと! 後はこの扉を開ける方法を見つけるだけっスね!」

 

 前世の頃から数多くの修羅場を経験してきた日景たちからすれば当然の行動だろうが、あまりにも……あまりにもサイクロプスたちが憐れだった。おそらく、この扉を守るガーディアンとして封印されていたのだろう。こんな奈落の底の更に底にまで訪れる者など皆無に等しいはずだ。

 ようやく訪れた役目を果たす時。満を持しての登場だったのに敵と見えることもなく命を失うことになった。これを憐れと言わずして何と言えばいいのか。

 

「うーん……この窪みが鍵だとは思うけど……」

 

「……魔石、か?」

 

 ふと日景は、サイクロプスの死骸に視線を向ける。窪みは二つ、サイクロプスも二体と数の上では同じだ。もしや、この二体の魔石が……と考えた日景は、体内から魔石を取り出した。水洗いした二つの拳大の魔石を扉まで持っていき、そのまま窪みに合わせてみる。

 

「正解だったようですね……」

 

 すると、魔石から赤黒い魔力光が迸り、魔法陣に魔力が注ぎ込まれていく。そして、パキャンという何かが割れるような音とともに、光の奔流は収まった。部屋全体に魔力が行き渡ったのだろうか、部屋中が久しく見ていないほどの光に満たされる。

 

「……行こう」

 

 扉の奥は第二階層のように一筋の光も差し込まない完全な闇だった。日景が扉を押し開けると、扉の隙間から光が部屋に漏れ出し、暗闇に閉ざされていた部屋の全容を照らし出した。

 部屋の中は、聖教教会の大神殿で見た大理石のような石材で出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥に向けて二列に並んでいる。そして、部屋の中央には巨大な立方体が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。

 

 その立方体を注視していた日景たちは、何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えていることに気が付いた。

 経験則上、扉に細工をしたところで怨霊怪異の類は当然のように扉を閉めてくる。よって、小細工をせずに堂々と部屋の中に踏み入った日景たちに、部屋の中にいたそれは反応を示す。

 

「……だれ?」

 

 掠れた、弱々しい女の子の声だ。日景たちが慌てて部屋の中央を凝視すると、先程の「生えている何か」の正体に気が付いた。それは、女の子だった。首から下と両腕を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪がホラー映画の女幽霊のように顔の一部を覆い隠している。そして、その隙間からは血のように赤い瞳が覗いている。年の頃は十二、三歳ほどだろう。随分とやつれているが、非常に整った、美少女と言っても差し支えない容姿をしていた。

 

「女の子……?」

 

「え……え? これって……まるで……」

 

「……あの時みたいっスね」

 

 日景と那岐、アスカの三人はその女の子を見て、『旅の始まり』の記憶を想起した。水晶の中で眠っていた少女との出会いの思い出を。

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