「退学です」
ティーパーティー襲撃から翌日、ナギサちゃんから呼び出しをくらい、そう告げられた。
周りには私がぶっ飛ばした(ミカちゃんやツルギちゃんの流れ弾も当たってた)役員達が、なんだか痛そうな格好で私を睨みつけている。
今、私がいる場所はティーパーティー本部ではなく聴聞会なども行われる場所だ。
ティーパーティー本部は私が壊しちゃって(みんな好き放題攻撃してた)今は修理中らしく、ここに呼ばれたのだ。
「私はね? 退学にする事ないんじゃないかなーってナギちゃんに言ったんだけど、引退した先輩達がね〜……」
「ミカさん、余計なことは喋らないでください」
あー……3年の先輩達か。
全くと言っていいほど交流してなかったし、私が好き勝手してることをよく思ってなかったみたいだし、さもあらん。
いくらトリニティが事務的な手続きだとかを優先するとしても、襲撃は重かったようだ。
レッドウィンターなら2週間トイレ掃除で済むらしいけど、あそこは魔境すぎるか。
そしてセイアちゃんとサンクトゥス分派の人たちは知らんぷりをしている。
擁護されると困るし、セイアちゃんの態度は今朝の打ち合わせ通りだ。
「ウルトさん。再三の確認になりますが、今回の騒動はあくまでもウルトさんの
「うん、誰にも相談してなかったし。スマホの通信履歴なんかも見せたでしょ?」
お昼に思いついて、そのままハナコちゃんとの昼食もすっぽかしてティーパーティー襲撃したからね。
誰にも相談してなかったのは本当だ。
「ええ、確認しました。おおよそ兆候と呼べるものも存在しないことは。しかし、それでもこの騒動を起こすのに、何の理由もないとは考えられないのです。
貴女が問題児であることはトリニティ生にとって周知の事実ですが、単独でティーパーティーを襲撃するほどだとは思えません」
「暇だったから。ってだけじゃダメ?」
「あっ、昨日私が言った理由だ! ほらほら! やっぱりそうなんじゃない?」
ミカちゃんがけらけらと笑い、ナギサちゃんに嗜められる。
いつもの光景って感じだ。
「こほん。理由を述べないというのであれば、退学という処分に変わりはありません。それで構わないのですか? ……セイアさん」
「……」
セイアちゃんの萌え袖からシマエナガくんが飛び去った。
私の立場は図書委員会に所属した今でも変わらず、セイアちゃんの盾であり、セイアちゃんの次のサンクトゥス分派のリーダーだ。
セイアちゃんに問われるのは当然ではあるが、迷惑をかけるつもりはない。
退学処分になるだろう、ということは既に話し合っており、私が退学するということでサンクトゥス分派の人たちとは話がついている。
「ああ、ウルトの独断だよ。愚かな行動、私たちに相談せずに行った自業自得。それらに振り回されるのにもうんざりしていたところだ」
「…………」
退学で構わない、なんてセイアちゃんに言った時は怒られたけど。納得してもらえた。
退学したところで私の行動が変わらないっていうのがわかってるんだろう。
もしもトリニティを出禁になったとして、忍び込めば問題ないし、何とでもなってしまうのだ。
「……セイアちゃんはさ、それでいいの? 一緒に居れなくなっちゃうんだよ?」
「そうだとして、ミカ、君に関係があるのかい?」
「何その言い方、セイアちゃん酷くない!? 私はセイアちゃんのこと心配して……!」
セイアちゃんがトゲトゲしてる。ハリネズミセイアちゃんだ。
「待って待って、元はといえば私が
「「「そう
「……いや、うん。いいや、ともかく! 私が退学。それで解決でしょ?」
バカな事したのは事実なんだけど、ハモられるとちょっと傷つく。
「……その結論で問題ない。というのであればこれ以上の質疑応答は不要ですね。後は校舎の修繕費などですが……」
「あー……どのくらい? 50億以内ならパッと出せるけど。」
発言と同時に、ティーパーティー役員達の目が変わる。打算や策謀に塗れた醜い目だ。
お金に関してはそれ以上となると、現金では保有してない。それか会社負担にしないと出せないのでちょっとだけ手続きがいる。
美術品なんかはたいして壊してないし、古書館とか大聖堂じゃないんだから金で解決できないものを壊したりはしてないだろう。
「わーお☆ほんとお金持ちなんだね!」
「まあね。」
「わかりました。後ほど請求書や、退学に関する手続き書は送らせて頂きます」
「退学手続き……? ああ、なるほど。
ティーパーティーの権力と、襲撃に関する罪状で退学にするのかと思ってたけど、そういう事。
まあ、別に構いはしないけど、これならティーパーティーとしての権力を濫用せず、内々の問題で片付けられると。
めんどくさっ
「……何か異論でも?」
「ないよ。」
踵を翻し、その場から立ち去る。
退学するとなると、ハナコちゃんとかウイちゃんに挨拶しに行かなきゃね。
「……なんていうかさぁ、ナギちゃんって陰険だよね」
「いんけっ……!?」
ウイちゃんと、ハナコちゃんは古書館にいた。
古書館の本を読み切ってしまった今、ウイちゃんに会いに来る以外に古書館へ行く用事がなくなってしまったから来るのは久々だ。
2人はいつものウイちゃんの作業場にいた。
「古関先輩も、昨日の騒動に巻き込まれたんでしたよね。大丈夫でしたか?」
「だ、大丈夫なわけないじゃないですか。こ、古書館の外が騒がしいから、外に出たら訳もわからないままに吹き飛ばされて……」
「あらあら♡……噂をすれば、渦中のご本人が登場ですよ」
「やっほ。」
声をかけると、ウイちゃんはげんなりとした顔で、ハナコちゃんは楽しそうな顔でこちらを振り返った。
何を話そうか、小粋なトークで場を和ませてから退学について切り出す?
……いや、でもハナコちゃんは気づいてるだろうな。
さっさと言っちゃおうか。
「トリニティ退学することになったから、挨拶にね。」
「……」
「……へっ? た、退学?」
「昨日の騒動の原因は私だから。責任を取る形で、ってとこかな。まあ退学したところで何が変わるってわけでもないから、お別れなんかじゃないけどね。」
ハナコちゃんが口を開こうとしては、止まる。
今の私はハナコちゃんにとって一番の友達であろうことはわかっている。色々と言いたいこともあるだろうから、少し待とうか。
「た、退学って、そんな、簡単に……そもそも退学には幾つかの手順が……」
「自主退学、ってことになるから。手順は飛ばせてるよ。」
「じ、自主ですか。じゃ、じゃあ他に何か方法が」
「……
さすがはハナコちゃん、ティーパーティー襲撃だけでそこまで辿り着くか。
ウイちゃんに聞かれている今、ここでそうだと言うことはできないけど。
ハナコちゃんの推理を聞いてみたい。
「何でそう思ったの?」
「普段からウルトさんは突拍子もない行動をしますが、今回のこの件は少々、常軌を逸しています。いつも通り
「合ってるかもね、それで何でセイアちゃんが出てくるのかな?」
「ウルトさんは、セイアちゃんのことをとても大事に思っています。そして、セイアちゃんには予知という特別な力がありますから……きっと、ウルトさんがティーパーティーを襲撃することで未来が変えられるかもしれない。と思える何かをみたのではないでしょうか」
全部あってる。そこまで複雑じゃないとはいえ、襲撃ってだけでセイアちゃんの予知に繋げるのは流石だ。
パチパチと拍手をしながら椅子に座る。
「なるほど。でもね、やったのは私で、セイアちゃんはこの騒動に何の関わりもないよ。」
「……はい、そうですね。犯人はウルトさんで、被害者はティーパーティー」
「うん。」
「……状況は、何となくですが理解しました。し、しかしですね! なんて事をしてくれたんですか!! あ、あなたが所属している委員会だからって、私は昨日何時間も正義実現委員会に問い詰められたんですよ!?」
「あ、ごめん。」
セイアちゃんのことばっか気にしてたけど、図書委員会にも負担がかかってた。
昨日、ティエちゃんは家にいなかったし、もしかしてティエちゃんにも負担かかってる?
私の妹だから何か事情知ってるんじゃないかーって。
「でもさっき尋問されたけど、図書委員会について何も聞かれなかったから大丈夫だよ。」
「な何が大丈夫なんですか、全く……」
「今度、ミラクル5000*1の冬限定版、ウイちゃんの好きな苦めのやつ持ってくるから、許して。」
「……し、仕方がないですね。6つなら許してあげます」
ウイちゃん結構食うよね。
私が来てからウイちゃんのウエストが2cmも増えてるから結構気にしてるんだけど、元が痩せてたし、まだ良いかな?
もうちょっと太ったら外に連れ出して運動させる名目にもなりそうだし。
「ハナコちゃんは大丈夫だった?」
「少々事情を聞かれましたが……あ、いえ♡私も何時間も拘束されてました♡」
「うん?」
「私は口を割らなかったのですが、正義実現委員会の方が上の口を割らないなら、と何度も♡何度も♡い〜っぱい責め立てられちゃって♡」
ハナコちゃんのエンジンがかかった。
最初は何言ってるんだこの人。みたいな目で見ていたウイちゃんの耳が、意味に気づいたのか真っ赤に染まる。
「な、な、な何を言ってるんですか!? いえ、一体何の話……」
「あまりの激しさに私も喘ぎ声を抑えきれず……」
「喘ぎ!? い、いったい正義実現委員会で何をして……」
「最後には私も……イッちゃいました……♡」
「い、イッちゃ……」
顔真っ赤にしてるウイちゃんを見ながら飲むコーヒーはうめえなあ!!
「あら♡こ・ぜ・き・せ・ん・ぱ・い? 一体
ハナコちゃんがウイちゃんにグイグイと距離を詰め、真っ赤になった耳元で囁く。
……ハナコちゃんからの目配せ。
よしきた。
ウイちゃんの逃げ場をなくすように立ち上がる。
「うんうん。至って
「ひぇ、ひゅえっ!? 」
「ねえ、ほら♡私たちにも、じっ♡くりと♡教えて、くれませんか? ねえ?」
「ひぃやぁあああ!? 」
ウイちゃんがこれまでに出したことのないような力を振り絞り、奇声をあげて私たちから逃げていってしまった。
逃げていくときにあの長い髪でビンタくらったのだが。これは私への罰だな。
「あら♡……逃げちゃいましたね、古関先輩」
「ウイちゃんって耳年増だし、結構なスケベさんだからね。私が運営してるDLSity*2でも、ウイちゃん結構な数買ってるし。」
「そうなんですか? あ、いえ、つまり私の
「ハナコちゃんは、見た目とか雰囲気に反して純情というか、ドスケベだけどイチャイチャしてるのす」
「わぁああああ!!!!? 」
「わぶっ。」
顔を真っ赤にしたハナコちゃんに口を押さえられてしまった。
性癖公開はかなり効くな。ナギサちゃんに次詰められた日には、ナギサちゃんの性癖公開して抵抗してやろうか。
しかし、顔真っ赤のハナコちゃんエッチすぎでは。
普段とのギャップのせいで凄まじい破壊力だ。
「そ、それって、他の誰にも……!」
口を閉じられている為、ハナコちゃんの手をペチペチと叩き、外してもらう。
よく見ると手まで真っ赤だ。めっちゃ恥ずかしがってるじゃん。
「ぷはっ、顧客情報だし、他の誰にも漏らしてないよ。」
「……いえ、先ほど古関先輩のものが……」
「ハナコちゃん相手なら別に良いかなあって。」
ハナコちゃんが口を滑らせるとは思わないし、滑らせてもその分析力とかで上手い具合に勘違いしてくれそうだし。
「……今でもシスターフッドの方にお声をかけて頂きますが、私も一緒に懺悔したくなっちゃいますね……」
「あっ、サクラコちゃんとか他のシスターフッドの子の性癖聞きたい?」
「……ちょ、ちょっとだけ♡」
ちょっとだけは最後までイッちゃうフラグ。
他の子たちの性癖をネタにした、かなり最低な猥談は日が暮れるまで続いた。
その過程でハナコちゃんの性癖も開拓してしまったかもしれないが、知らないことを知ることは良いことだからね!!
ウイちゃんはその間、古書館に帰ってくることはなかった。
そして自宅。
退学手続きの書類を記入中に、未来の私であるクラウンが現れ、隣で銃の手入れをし出した。
『……』
てっきりこいつも私になんか聞いてくると思ったんだけど、喋らないな。
じっと黙り、私も書類を書き続ける。
……最後に、判子を押してこれで終了だ。
『……私が、トリニティを退学したのはセイアちゃんが襲撃を受けたときだよ。』
「ふぅん?」
つまりこの事件がなかったとして、私は結局のところトリニティを退学するのか。
そしてこいつの制服を見るに……
「トリニティを退学した後は連邦生徒会に入ったの?」
『そうだね。』
なるほど、こいつがトリニティの制服ではなく、連邦生徒会の制服を着ている理由がわかった。
『この話をウルトが聞いたとして、未来で連邦生徒会長のことを頼ろうとすることはないんだろうね。』
「……? 今の所は連邦生徒会のれの字も頭に思い浮かんでなかったね。」
クラウンに出会った当初は厄ネタすぎて連邦生徒会長に相談することも考えていたが、
こいつが連邦生徒会の制服着てるし、頻繁に連邦生徒会に行くものだから基本的に思考から除外していた。
これを聞いたってことはクラウンの今と私の未来が完全に繋がらなくなったということだ。
それなら多少のネタバレを聞いてもいいだろう。
「何で連邦生徒会に?」
『セイアちゃんが襲撃を受けるのは知ってるよね。
襲撃に来たアリウスをどこの誰が扇動し、トリニティの監視の目を潜り抜けさせたのか当時の私にはわからなかったんだ。
セイアちゃんは知っていたんだろうし、アズサちゃんから聞くこともできたけど、セイアちゃんから口止めされてた。』
つまり真犯人は私の知り合いで、多分仲が良かった人物ということかな?
それならセイアちゃんが伝えたがらない理由もわかるが。
『真犯人がわからなかった私は、絶対に犯人から除外される人に助けを求めることにした。
それが連邦生徒会長。エデン条約の発案者。
もし連邦生徒会長がエデン条約の廃案や調印停止を求めていたなら、キヴォトス全域における絶対的な権力で簡単に止めることができるから。』
「連邦生徒会長がセイアちゃんの予知能力を狙って襲撃したとは考えなかったの?」
『……今のウルトは連邦生徒会長と関わりはないけど、私は会社の都合で色々と関わることがあって。
あの人は行動力はあるし、それが空回りしちゃうことはあったけどいつも生徒のことを思って行動している人だった。
……先生と同じで。』
つまり私はクラウンのせいで連邦生徒会長とのコネが消されてるのか、酷い話だ。
結構連邦生徒会長に憧れあったし、どんな人なんだろうって気にはなってたから直接会えないのが残念極まる。
後ついでに先生に関するネタバレくらったわ。こいつ先生に関することになると湿度高くなるんだよ。私ながらキモい。
『そんな彼女がセイアちゃんのことを狙って、なんて考えたことなかったね。
まあ、それで彼女に私たちは助けを求めた。
トリニティではセイアちゃんが死んだことにして、私は守れなかった失意のままにトリニティを去った。ということにしてね。
ここまでが私が連邦生徒会に入ったあらすじだよ。この後は聞く?』
「いや、いいよ。必要だと思った時に聞かせて。」
『……なら知っておいて欲しいことだけ言っておこうかな。
このまま進んだとしても、セイアちゃんが襲撃される未来は変わらないと思う。
そして
何でだ? めっちゃ気になる。というか知っておいた方がいいことだろう。これは。
「何で? まずクラウンはアリウスを救うべきだと思ってるの?」
『アリウスはアズサちゃんの家族だからね。そしてアリウスの目的はエデン条約の締結阻止。
エデン条約に関する作戦が失敗したから、
「……!?」
『私はそんな未来にしないようにここに来たんだよ。』