ラスボスが増えてるブルーアーカイブ   作:シフィ

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AC6やってました……
両手に火炎放射器持って温泉開発部(メグ)の機体作って遊んでました。

アイビスシリーズが全然倒せなくて火炎放射器縛りは諦めましたが。


万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)襲撃! その1

 

 襲撃予定日、当日。作戦開始まで後1時間。

 

 そろそろ私も動かなくちゃならないのだが……イロハちゃんに拘束されている。

 

 

「……ポテチがなくなりました。ちょっと手を伸ばして、そこのわさび味の袋を開けてください」

「……いや、良いんだけどさ。私は動いちゃダメ?」

 

 

 棚のポテチに手を伸ばし、袋を開けてテーブルに置く。

 

 ソファーに座っている私の膝の上にイロハちゃんが頭を乗せている。

 いわゆる膝枕だ。

 赤い癖毛が私の太ももを擽り、ポテチの粉がニーソックスの上に落ちる。

 

 ……別に良いんだよ?良いんだけどさ、人に膝枕させてポテチ食って、人の膝で挟ませたコーラ飲むって……凄まじい寛ぎ方だ。

 

 ティエちゃんやセイアちゃんに膝枕した時でもスマホ弄るくらいで後は大人しく寝てたのに、肝の据わり方というか遠慮の無さがなんともイロハちゃんらしいというか。

 

 そんな感じでイロハちゃんはポテチを食べながら本を読んでいる。

 

 猫が膝の上に乗っているような心地だ。全く動けない。

 この私をこうも完封するとは……イロハちゃんを舐めていた。

 

 

「ダメに決まってるじゃないですか。今のベストポジションを崩すつもりですか? 

 後輩なんですから我慢してください」

 

「そっかあ……後輩って辛いね。」

「当然です」

 

 

 当然なのだろうか。

 というかイロハちゃんと同級生で万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)に入った日数が違うだけで同い年だが。

 

 こんな事態になったのは、イロハちゃんが苦労してそうだったのでちょくちょくお世話していたのが原因だろう。

 

 ゲヘナに入った当初、私のことを警戒していたイロハちゃんだったが、あのウイちゃんを黙らせ、セイアちゃんの介護をしているこの私のお世話力を前に1日も持たずに陥落した。

 

 ……ちょっと仕事手伝おうとしたら全部投げられてびっくりしたが。

 

 その後は便利な後輩扱いを受けている。

 良いんだけどさ。今はちょっと困るっていうか。

 

 

「この後用事あるから、動いちゃダメ?」

「サボればいいじゃないですか」

 

 

 ポテチを食べながら雑に切り捨てられる。

 

 むかついたのでわさび味のポテチを3枚ほど同時に掴み、食べる。

 

 鼻にツンとくるこの味がたまらない。

 私は上品なのでポテチを食べても粉の一つも落とさなければ、指も汚さない。

 

 が、私の膝の上で寛ぎまくっている駄目猫みたいな女の子は油で汚れた人差し指と親指をピンと伸ばし、小指で本のページを捲っている。

 横になりながら食べてるせいで口元も汚れちゃってるし……

 

 腕を伸ばしてテーブルからウェットティッシュを1枚取る。

 

 それに気づいたのか口を拭けと言わんばかりにこちらを向く。

 

 まぁったく、手のかかる子だねえ。

 世話焼きのおばちゃんのように口元を拭い、油で汚れた指もササっと拭く。

 それを当然のことのように受け止め、また膝の上で読書に勤しむ。

 

 動けないせいで何もできないし、イロハちゃんの世話を焼いたり、頭を撫でるくらいしかやる事がない。

 耳かきもしちゃったし。

 

 ……そこそこ楽しいな?

 いや、ダメだ。このままお世話してたらゲヘナから退学するチャンスを失う。

 

 美食研究会と食べ歩きしたり、ゲヘナ一帯の温泉ツアーしてるのが楽しすぎて悪くないな、とか感じちゃってるし、トリニティでの立場を考えると非常にまずい。

 トリニティの裏切り者、なんて評価が着いちゃうとセイアちゃんに迷惑がかかる。

 

 

「サボるわけにはいかないんだよね。私が企画したことだし、色々と準備しちゃってるし。」

「いったい何をするつもりで? まさか万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)を襲撃するなんて言わないでしょうね」

「あはは〜。」

 

 

 昨日の時点でイロハちゃんに襲撃の件がバレてるっぽいんだけど、止められる気配がない。

 マコトちゃんに告げ口したわけでも、風紀委員会に言ったわけでもなさそうだし、イロハちゃんが何をどうしたいのかはよくわからない。

 

 

「ま、止めるつもりもありませんけど」

「……なんで? わかってるなら止めた方が良くない?」

 

「だって、めんどくさいじゃないですか。

 誰かに告げ口して、その後は? 対策? 妨害? ……また私の仕事が増えるじゃないですか、めんどくさい……」

 

 

 めんどくさいって2回も言った。

 どんなにめんどくさがってるんだ。

 

 イロハちゃんが膝の上で寝返りをうち、仰向けになる。

 

 本越しに目があって、ため息を吐かれた。

 この私の顔を見てため息を吐くとは良い度胸だ。

 

 鼻を摘もうと手を伸ばすと、ベチッと叩かれた。

 仕方がないのでほっぺたをぷにぷにして気を紛らわす。

 

 

「そういう事なので、どうぞご自由に。

 マコト次期議長や他の万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の議員に一泡吹かせてやってくださいな」

 

「私が言うのもなんだけど、それで良いの……?」

 

「たまには痛い目を見た方が良いんですよ。

 この前だって風紀委員の給食にデスソース*1を混ぜろ、とか実にくだらないことを命令してきましたし……」

 

「は? デスソース?」

 

 

 万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)許せねえ。

 

 フウカちゃんがあれほど苦労して作った給食にデスソースを混ぜるだと? しかも悪戯目的で。

 

 

「イロハちゃん、入れたの?」

「いえ、無視しました」

「ナイスサボり。」

 

 

 イロハちゃんの頭を撫でる。

 このサボり癖に感謝する時が来るとは思っていなかった。

 

 世話焼くの楽しくなってきたせいで、少し離れ難いんだけど、やるべきことはやらねばならない。

 膝で挟んでいるイロハちゃんのコーラをテーブルに置く。

 

 

「じゃ、私は行くから。イロハちゃんは怪我しないようにね。」

「待ってください。私のこの休憩スペースを崩す気ですか」

「もしかして私、休憩スペースの一部に組み込まれてる?」

「何か異論が?」

 

 

 片手でスカートを掴まれた。……立てねえ。

 どかせば良いだけなんだけど、ゴロゴロしているイロハちゃんをどかすのは気が引けるし、何とか折り合いをつけたい。

 

 完璧に読書の体勢に入っており、紙の捲る音が万魔殿の仮眠室に響く。

 ……ちなみに本のタイトルは、【生意気な後輩を黙らせる100の方法】だ。

 舐めてんのか。

 

 チラリと見えたページには物を貢がせて立場をわからせましょう、何てのが書いてあり、付箋が貼られていた。

 

 一瞬視線が合い、何事もなかったかのように次のページへと指を進めた。

 

 遠回しなアピールぅ?可愛いねえ、おじちゃんはお金だけはたっぷりあるからね。私のお小遣いはクラウンが来る前と比べて100倍以上になっている。

 

 明らかに媚び売ってくるのは鬱陶しいし好きじゃないんだけど、これはアリだ。

 

 降りかかるであろう迷惑料の前払いも兼ねてここはプレゼントといこう。

 

 前に買い出しについていった時にクッション見てたし、あれ買おうか。

 私、っていうかクラウンのせいでキヴォトスの経済がぶっ壊れて電子機器とか銃の値段が10分の1になったけど、普通の家具はそこまで安くなってないし、イロハちゃんが見てたのって2万以上してたし、その場で手が出せなかったっぽいんだよね。

 

 未曾有の好景気*2でどの学校もお金に困ってるとは思えないけど、労働者に還元されるには半年程度ではあまりに短い。

 うちの会社なら違うけど、学校じゃ部活の予算決議で割り振りが決まってるだろうし、来年度になってからだろう。

 

 

「今度、Hogiboとモモフレのコラボ商品プレゼントするから。ね?」

「ウェーブキャット*3のニョロニョロクッションで」

「はいはい、わかった。」

 

 

 やっとイロハちゃんが膝の上から退いてくれた。

 脱ぎ散らかした靴下を履き直している。

 

 プレゼントで言うこと聞いてもらうのすごく負けた気分になるんだけど、今は時間がない。

 というか、集合時間を過ぎている。

 

 リビルドした元ゴミ芸術リボルバーをホルスターに突っ込む。

 

 昨日のうちにまともに撃てないゴミリボルバーを改造し、普通に撃てるリボルバーにしたのだ。

 シリンダー、バレル、トリガーを交換したので別物になってしまった。

 

 イロハちゃんはあちこちを見渡し、いつもの軍帽を探している様子だったので、ソファーのとなりに放り投げていた軍帽を拾い、被せる。

 

 

「うん、これでいつものカッコいいイロハちゃんだ。私は襲撃の準備があるし、またね。」

「ええ、また」

 

 

 このまま行けば1時間もしないうちに敵として再会するんだよね……

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「あっ、ウルトちゃんだ! やっほ〜!」

「やほー。」

 

 

 赤い髪のデカいわんこみたいな子、メグちゃんと、部長のカスミちゃんが400人近い温泉開発部の部員たちと一緒に待っていた。

 

 ゲヘナの主要道路近くにある倉庫に私たちは集まっている。

 ブルドーザーから戦車、ドリルや工具で武装した生徒、ロケットランチャーや迫撃砲を担いだ生徒、火炎放射器を担いだ生徒など様々なものが一堂に会している。

 

 私が贈った戦車もあるね。

 車内に紅茶専用の湯沸かし器のついている最新型だ。

 

 エンジンの音。様々な重機の排気ガスの匂い。

 換気はしているけど、それでもガソリン臭がするし、今の季節が冬じゃなかったらかなり暑そうだ。

 

 

「来たか。スポンサー殿。集合時間よりずいぶんと遅い到着だな?」

「ちょっと足止めをくらっちゃってね。にしても多い。もしかして部員全員集めたの?」

 

「動かせる分は、だがな。前々から目をつけていた源泉があってね、しかしゲヘナ学園の目と鼻の先。

 しかも主要道路の真下であったが故に今まで手を出すことができずにいた。

 ならば、()()()()()()()()()()()()()()だろう?」

 

「え、掘った後どうするの? 温泉作っても壊されそうだけど。」

「掘ってから考えればいい」

 

 

 至極当然な事のように言葉を返された。

 

 やっぱすごいわ、温泉開発部。

 後先考えない無謀さっていうのは、強さにもなる。

 

 無敵の人ってやつだね。

 

「それにこの大きさならば掘ってさえしまえば埋め立てることは困難になるはずだ。

 埋めたとしても、繋がった道はそう易々と断つことはできまい。道路を作り直したとしても液状化で元の形には戻せんだろうな」

 

「そんなに大きいんだ。」

 

「我々が掘り当てた温泉の中でも1、2を争う規模になるからな!

 スポンサー殿の申し出は渡りに船だったというわけさ」

 

 

 でっか。

 温泉開発部の掘り当てた温泉の中で1、2を争うって相当な大きさだ。

 

 そのままゲヘナ学園に湯が引けそうなくらいに大きいんじゃなかろうか。

 はっきり言ってこんなところの道路なんかより明らかに経済効果が大きい。

 近くに私の作った巨大ショッピングモールがあるとはいえ、そんなもの作り直せば済む話だし。

 

 (風呂狂い)なら金を払ってでも掘ってもらう。

 こんなこと無料でしてくれるとかゲヘナが羨ましくなってきた。

 

 

「……その温泉さ、私も入っていい?」

 

「ふふ、ハーッハッハッハッハ!

 無論、当然だとも!スポンサー殿を招かずして、いったい、どこの誰を招くというのか!

 湯の辞儀は水になるというだろう?君が遠慮する必要はないとも。

 ゲヘナの風紀委員どもを蹴散らし、この開発を成功させ、スポンサー殿を一番風呂に招こうじゃないか!」

 

「「「おー!」」」

 

 

 カスミちゃんの声と共に、周囲にいた部員から鬨の声が上がる。

 

 すげー士気だ。

 基本的に温泉開発部の子……というか、ゲヘナの子ってまとまりがないけど、カスミちゃんだとか特定の目標を掲げているリーダーに集まる傾向があるように感じる。

 

 キヴォトス征服とか、突飛なことを言っちゃってるマコトちゃんにも手足となって動いてる生徒がいるみたいだし、美食研究会も、それに便利屋のアルちゃんもその類いだろう。

 

 やりたいことがはっきりしているのはとても良いことだ。

 

 ……そういえば、ハナコちゃんのやりたいことは見つかったのだろうか。

 私がトリニティを離れてから既に1週間近くは会っていない。

 

 以前に誘った、私の会社で刷ってる雑誌*4のモデルは続けてるみたいだけど、やりたいから、というよりお小遣い稼ぎが目的になってそうだし。

 

 

 ま、会ってない友達のためにもゲヘナを襲撃して元気な姿を見せなくちゃね。

 

 

「確認になるが、今から30分後。14時に作戦開始で問題ないな」

「うん。ちょうどお昼ご飯も終わる時間帯だしね。」

 

 

 発言と同時にメグちゃんのお腹がグーっと鳴る。

 

 

「そういえば私、お昼ご飯食べてないや。どーしよ部長!」

「ふむ? 確かおにぎりを幾つか買っておいたはずだ。そちらの袋に入っていないか?」

 

 

 メグちゃんがてくてくと歩き、机の上に置いてあった大きなビニール袋をひっくり返す。

 

 中からはお手拭きと、んまい棒のチーズ味しか出てこなかった。

 しょんぼりとした顔で振り返る。

 

 お腹を空かせている生徒をこの私が見逃すはずがない。

 

 懐からスマホを取り出し、ウルトイーツのアプリを開く。

 

 

「私が何か出前頼もうか? 時間もないしファストフードになると思うけど。」

「ほんと!? じゃあ私はお月見バーガー!」

「メグちゃん以外にも他の子達もいらない?」

 

「えっ、いいの? じゃ、じゃあダブチ2つ!」

「チキンエッグのセット! 飲み物はコーラ!」

「普通のハンバーガー、3つ」

「テリヤキバーガー!」

 

「ほいほい。」

 

 

 私は同時に100人に話しかけられても聞き分けれるスーパーイヤーの使い手なので、言われたメニューを全て登録していく。

 

 人数も多いし、お昼時だったのもあってかなりの子達が頼んできた。

 

 腹が減っては戦はできぬともいうし、食べることはいいことだ。

 

 注文の山を捌いていたが、これは1店舗じゃ間に合わないな。

 複数の注文に分け、発注。

 

 もうすぐ配達ドローンが大量にやってくるだろう。

 

 

「すまないな、スポンサー殿。私はバニラシェイクと、チョコレートパイを頼む」

「りょ。ま、福利厚生の一環だと思ってよ。料金とかは気にしないでね。」

 

 

 温泉開発部の面々はワイワイガヤガヤと思い思いに過ごしている。

 いつもは土汚れが目立つ部員たちだが、作戦前なのでほとんどが綺麗なままだ。

 

 

「我々はいつも通り温泉開発を行う。君もまた、自分のやりたい事をやりたまえ」

「うん、頑張ってね。」

 

 

 配達ドローンがやってくる音を聞き、外へ出ていく生徒たちと共に私もゲヘナ学園へ戻った。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 トリニティ襲撃時と同じようにゲヘナの放送室に向かう。

 

 ハルナちゃんたち美食研究会は、放送室から外に出るまでの道のりで待機中。

 便利屋68の2人、アルちゃんとムツキちゃんは確実に風紀委員会とぶつかるであろう、万魔殿前の広場近くの第三校舎で待機中だ。

 

 

 放送で襲撃予告をする都合上、温泉開発部の行動がバレた直後くらいでこちらは作戦を開始する。

 

 風紀委員会の通信設備にバックドア仕込もうとしたけど、ハッキングとかこれまで全然してこなかったから普通に失敗した。

 そういうのはミレニアムの子に依頼してたし、最近はクラウンが好き勝手やりまくってるのを眺めてるだけだったから……

 

 まあ、兎も角、あの大群で動いてるんだから既に温泉開発部が何かしようとしているのはバレてそうだけど、陽動だし問題はない。

 対応をするなら風紀委員の大半を割くか、ヒナちゃんかイオリちゃんが出向くしか方法はないだろう。

 

 そして万魔殿襲撃側の私+美食研究会+便利屋68の少数精鋭を相手取るなら、どちらかががこっちに来るしかない。

 

 一番つまらないのは全軍で私か、温泉開発部を潰しに行かれる事。多分ないけど。

 どのくらい待つのがちょうどいいかな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 特に邪魔されることもなく、放送室に着いた。

 お昼時を過ぎているので、放送部員の姿はない。

 

 放送機材で遊ぶ生徒がいるため、風紀委員会の子が見張りをしているがたった2人。

 

 こんなもの私にとっては何の障害にもなり得ない。

 

 放送室の見張りをしている2人の風紀委員ちゃんにつかつかと足音を立て、王が凱旋するように歩み寄る。

 

「……ん?あれ、冠ウルトじゃない?」

「……マジだ、生で初めて見た……でも万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)入ったんでしょ?萎える……」

 

「ドーモ、風紀委員ちゃん、冠ウルトです。」

「エッ、アッ、ドーモ、冠ウルトサン、初め」

 

「イヤーッ!」

 

「「グワー!?」」

 

 

 アイサツ中に卑劣なアンブッシュを顎に叩き込み、壁に激突。

 脳が揺さぶられ、崩れ落ち、ヘイローが消えて意識がなくなったことを確認する。

 綺麗に決まった。1時間は寝てるだろう。

 

 アイサツ中のアンブッシュだが、不良を相手取る風紀委員であれば常在戦場の心持ちは実際不可欠。

 拳の1発で倒されてしまった自身の不覚を呪ってほしい。

 ミカちゃんだったら余裕で耐えて殴り返してきてる。

 

 障害を排除し、悠々と放送室に入る。

 

 なかなか良い椅子があるじゃないか。腰を掛け、紅茶でも飲んで連絡を待とう。

 

 

 ……来た。

 

 

《こちら、温泉開発部。今から道路の解体を始める。スポンサー殿、首尾よくこなせよ》

《こちらウルト。温泉開発部の行動5分後に、放送を開始するね。美食研究会と便利屋68は戦闘準備して。》

《こちら美食研究会。了解いたしましたわ》

《…………ら、便…………8、了……》

 

 

 アルちゃんの声がほんの少しだけ聞こえた。

 

 ……この声の聞こえ方は骨伝導モードでちゃんとイヤホンつけてないな?

 渡した時の設定のままなら大丈夫なはずなんだけど、気になって触っちゃったかな。

 

 操作時の音声か、スマホ見たら今の状態がわかるんだけど……

 

 ムツキちゃんが隣で聞いてるだろうし、指摘しなくて良いか。

 

 

《あははっ♫アルちゃん全然聞こえな〜い。こっちは大丈夫だよ〜》

《こちらウルト。了解、作戦開始後は万魔殿(ばんまでん(建物))を監視して。校舎内に風紀委員会が布陣してきたら無理しなくて良いから。》

《りょーかい、ほ〜ら、アルちゃん、そんなことで顔真っ青にしてないで、行くよ?》

 

 

 真っ青って、そんなに気にしなくて良いのに。

 しょうもない事を深く捉えちゃうのも初心者にありがちな事だけど。

 

 

《あー……大丈夫そう?》

《くふふっ♪ こっちは大丈夫だよ〜》

《そう? ……じゃ、以上で終わり、各自、あんまり無理はしないようにね。》

 

 

 通信を切る。

 

 放送の音量や、放送範囲などを調節し、紅茶を飲みながら時間を潰す。

 イロハちゃんに私のお菓子全部取られたから紅茶と一緒に食べるものがなくて口が寂しい。

 

 放送室には食べ物なさそうだし……

 待ってる間暇だし、宣戦布告の後に流すBGMでも探そうかな。

 

 棚を物色して待機しておく。

 

 

 ……良さげなの見つけた。時間も5分は経ってる。

 

 マイクをオンにする。

 

 学校を襲撃するのも2回目なので慣れたものだ。

 

 

 

万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)所属、冠ウルトが午後2時……ちょっと過ぎをお知らせいたします。

 只今より。

 ()()()()()()()()()による。

 万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)への襲撃を実施いたします。

 ぶっ飛ばされたくなければ、デスソースを口に含んで土下座するか、

 給食部の部費をもっと上げて、フウカちゃんの負担を減らして、週休3日にしなさい。

 以上、冠ウルトによるクーデター予告でした。」

 

 

 棚から探し当てたLet's Go! と言いたくなりそうなCDをプレーヤーに突っ込み、放送室から出る。

 でっででってれーと愉快なBGMを聴きながら廊下に出る。

 

 クロノススクールのティーパーティー襲撃に関するインタビューを午後2時半に組んでおいたので、

 近くにクロノスの子がいるだろうし、これでティーパーティー襲撃と状況は同じ。

 

 さあ、ショータイムといこうか。

 

 

 

 

 

*1
デスソース 超絶辛いソース。基本的にスコヴィル値1万以上のものを指す。 端的に言えばタバスコの超強化版、ハルナのEXスキル時のセリフ スコヴィル値1000万級の激辛は触れるだけで危険、もはや毒物である。

*2
未曾有の好景気 ウルト経済とも呼ばれる。クラウンの影響で電力、ガスがほぼ無償となり、IT事業においてはカイザーグループ、ミレニアムサイエンススクールの2強であった状況にウルトユートピア社が参入し、カイザーグループを完全に叩き潰し、撤退せざるをえない状況にまで追い込んだ。ミレニアムとは業務提携を結んでいるため、酷い目にあったのはカイザーとその他もろもろの中小企業だけである。また、失業者は全員ウルトユートピア社に取り込まれている

*3
ウェーブキャット 名前の通り、波打った胴体の長い猫。寝ている分には可愛いが、立ち上がるとキモいと一部の人から酷評されている。

*4
ウルトが作った出版会社で出している雑誌。流行りを産むという目的で時折スク水だとか、バニーだとか、変なコーデが紹介され、流行りだと勘違いした生徒が学校に水着登校する姿が見られる。……そういう姿を見て、ウルトが面白がるためにこの雑誌は刷られている






万魔殿襲撃が終わるまで、毎日投稿します。合計10話です。
トリニティ生なのにゲヘナで生活している話数の方が多い。

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