ラスボスが増えてるブルーアーカイブ   作:シフィ

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万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)襲撃! その3

 

 Side.空崎ヒナ(万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)前)

 

 

 

「ええい! 何をしてる! 撃て、撃てぇ!」

 

 

 広場で1列に並んだ戦車から次々と砲弾が放たれる。

 

 校舎が崩れる音。爆破音。

 硝煙で煙る広場。

 

 徹夜で重い頭に響く……出てくる前にコーヒーを飲んでおけばよかった。

 

 

「撃つのは構いませんけど……このままじゃ、あの校舎なくなりますよ?」

 

「構うものか! く、くそ。ウルトめ、この私が目を掛けてやったというのにクーデターだと? 

 あいつさえいればキヴォトスを手中に収めることも可能だというのに……」

 

「ゲヘナに入るって言ってた時から裏切る気満々でしたよ、彼女」

「な、何ぃ!?」

 

 

 万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)が騒動を起こして、私たち(風紀委員会)が駆り出される。

 

 今回の一件もよくある騒動の一つ……ではあるけど、規模が違う。

 温泉開発部側は半ば捨てているとはいえ二正面作戦で高品質な装備で武装した集団に、ゲヘナでもトップクラスの問題児たち。

 

 こちらも万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)と力を合わせて対応できれば手が空くのだけど、連携が取れない以上、こちらが合わせるしかない。

 

 

「はぁ、めんどくさい……」

「全くです。あのタヌキ共は自分で尻も拭けないのでしょうか! こんな事で委員長の手を煩わせるなんて!」

「愚痴るのは結構だけれど、もう少し小さな声にして頂戴。聞かれると面倒よ」

「……はい、申し訳ありません」

 

 

 身内のクーデターなんて、万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)だけで対処してほしいものだけど、風紀委員会の立場上見て見ぬ振りをするわけにはいかない。

 

 

「アコ、状況は?」

 

「はい、状況を整理しますね。

 冠ウルト、美食研究会を擁する……給食部部費向上連合は第三校舎内をトラックにて走行中。

 外部からの狙撃は射線が通らず困難です。

 また、第三校舎内で待機させていた風紀委員は何者か(便利屋68)によって行動不能にされています。

 万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の戦車隊による砲撃は命中せず、校舎の崩落を進めているだけに過ぎません」

 

 

 今の給食部の部長のために行動しているようなことを放送で言っていた。

 一度会ったことはあるけど、あの生徒にこの集団をまとめ上げる度量も力もあるとは思えない。

 それに温泉開発部も関わっている以上、実質的なリーダーは冠ウルトで間違いない。

 

 冠ウルトのこれまでの行動をプロファイリングしたけど、食に関する物事を蔑ろにすると過激な行動を取りやすい事がわかっている。

 美食研究会と同類だけれど、財力の違いから騒動がとても大きくなりやすい。

 

 1年前に大手食品メーカーのニャオフードを冠ウルトと美食研究会が物理的に倒産させた事件があった。

 表だった問題は起こしてなかったはず。何らかの逆鱗に触れたのだろうけど、その辺りは考えるだけ無意味ね。

 

 しかし……美食研究会といい、冠ウルトといい、妙な生徒に好かれる子。

 

 

「次に、03-01区域の温泉開発部の破壊活動ですが、戦況はあまり芳しくありません。

 こちらの被害は少ないのですが、破壊活動の妨害は行えているとは言い難く、道路と周囲の建物の被害が甚大です。

 私たちの武装では温泉開発部の爆撃機を撃墜することが難しく、攻め手に欠けている状態です」

 

「……そう、早めにこちらを切り上げたほうが良さそうね」

 

 

 砲弾が撃ち込まれ、穴だらけになった第三校舎を眺める。

 瓦礫と土埃で何も見えないけれど、既にかなりの距離を進んでいるはず。

 

 放送の内容を信じるのなら、万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の重鎮を狙ってくるはず。今の議長は半年以上見てないし、狙うならマコト。

 ……もうしばらく休憩ね。

 

 

 

 


 

 Side.陸八魔アル(砲撃を受けている第三校舎 3階)

 

 

 

「わーお! すっごい花火だね!」

「私たちのいる校舎に撃ち込まれてるんだから、洒落になってないわよ!?」

 

 

 窓ガラスが吹き飛び、ガラス片が廊下を彩る。

 砲撃によってあちこちに穴が開き、斜めに傾いた廊下を2人で走る。

 

 不意打ちで倒した風紀委員がズルズルと廊下を滑っていき、外に投げ出された。

 

 ……ここ、3階だけれど、大丈夫かしら。

 

 

「ねー、この後はどうするの? このままじゃ私たちも生き埋めだよ?」

「と、とにかく走るわよ! 生き埋めは嫌!」

 

 

 建物で生き埋めになるのはありがちな退場方法だけど、実際に埋まるのは嫌!

 

 瓦礫や転がる薬莢に足を滑らせないように揺れる校舎を進む。

 

 視界の端で何かが映った。

 あれって……!

 

 

「ムツキ、そっちは!」

「えっ? 何?」

 

 

 一際大きな衝撃が身体を貫く。

 廊下を転がりながら吹き飛んだ。

 

 

「くぅ……!」

 

 

 壁に張り付き、亀裂に指を引っ掛けて何とか踏み止まる。

 

 高いお金を払ってウルトモールで買ったコートに傷がつくじゃないの!

 

 崩落し始めた廊下で辺りを見渡す。

 煙でよく見えないけれど……

 

 

「大丈夫っ!?」

「あたた……直撃しなかったしこっちは平気だよ〜!」

「…………ほっ」

 

 

 よかった。元気そうね。

 

 息をついたのも束の間、限界を迎えた校舎がゆっくりと崩れだした。

 

 こ、こんな場所にいたらほんとに生き埋めになっちゃう!

 飛び降りるのは無謀だし、崩れてない方向に走るしかない。

 

 

「立って! 行くわよ!」

 

 

 尻餅をついているムツキの手を引いて走り出す。

 今の砲弾はただ運が悪かっただけみたいで、さっきの1発以外に飛んではこないけど崩落は止まらない。

 

 

「お〜っ、何だかカッコいいよアルちゃん!」

「そ、そう? ってそんなこと言ってる場合じゃないわよ!」

 

 

 にやにやと笑うムツキを見遣り、言い返していると躓いた。

 

 

「うえっ!?」

「くふふっ♪だいじょぶ? 急がないと〜」

 

 

 さっきまで手を引いていたのに、もうあんなところまで……

 身軽な方だとは思ってたけど、すごいわね。

 

 

「うーん……とうっ!」

 

 

 先を走っていたムツキが3階から下に落ちた。

 

 

「ムツキっ!?」

 

 

 追いかけるようにして飛び込む。

 

 剥き出しになった鉄骨、割れたガラス。

 砲撃を集中して受けている1階部分に近いせいもあって、3階より足場が悪い。

 

 服を瓦礫に引っ掛けないようにしつつ、ムツキに駆け寄る。

 

 

「ちょっと、大丈夫!?」

 

「あははっ♪ アルちゃん心配しすぎ〜、飛び降りただけだよ? 

 あのまま3階走ってちゃどこで降りれるか分からなかったし。ほら、早く行こっ」

 

「そ、そう? 無事ならいいけど……」

 

 

 瓦礫の間をすり抜け、どんどんと先に進む。

 

 追って駆け出そうとして、黄色い何かを踏んづけて滑った。

 

 

「ちょぉっ!?」

「うん? ……ぷっ、くくっ、ふふふっ……!」

 

 

 痛たた……思いっきり頭をぶつけちゃったわ。

 

 何を踏んだのかしら、ポスター? 

 

 足元を見てみると、()()()()()が落ちていた。

 

 

「あははははっ! ば、バナナの皮っ、バナナ踏んじゃうなんて、アルちゃんアウトローより芸人の方が……ぷっ、あははっ!」

「わ、笑わないでよ!? すごく滑るのよ、これ!?」

 

 

 真っ黄色で、まだ新鮮なバナナの皮を摘み上げる。

 

 な、なんでバナナの皮が? 

 よく見ると、()()()とマジックペンで書かれている。

 

 ……食べ物に名前書いてる??? 

 

 

「ぷっ、くふふ……、ほ、ほら。アルちゃん。そんな大事そうにバナナの皮、っふ。持ってないで早く行かないと」

「……そうね。こんなところで脱落なんて、一流のアウトローの第一歩としてあってはならないことよ」

 

「……バナナの皮で脱落?」

「そ、それは忘れて頂戴!」

 

 

 バナナの皮を投げ捨て、走り出す。

 ……ちょっとだけ、足元に注意しながら。

 

 

 

 

 

 

 

《こちら、ウルト。便利屋の2人は今どこ?》

 

 

 はっ!? か、冠ウルトさんからの連絡! 

 

 砲撃をほとんど受けていない方にまで退避したことだし、落ち着いて応答ができる。

 

 息を整え、イヤホンのボタンを押す。

 

 落ち着きなさい、アル。ここが一番大事なところよ。

 正しく、簡潔に。カッコよく受け答えをして、最初の失態を挽回するのよ! 

 

 

《こちら便利屋68、第三校舎の1階。位置は東棟の半ば。校舎の崩落が酷いから、現在移動中よ》

《んーと、そこなら東棟の駐輪場にバイクと対戦車砲を置いてあるから、それを使って()()()()()()()()?》

 

 

 せ、戦車? あの数の戦車、それも万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)相手に……

 やれるのかしら、私たちに……

 

 

「ほ〜らっ、アルちゃん、何迷ってるの? 一流のアウトローになるんでしょ?」

「……そうね。私たちは便利屋68。受けた依頼は何でもこなす、凄腕のアウトローよ!」

 

 

《……任せて頂戴!》

《ん、任せた。攻撃はできる限り東側からやって。そっちが攻撃したと同時に私たちは敵陣に潜り込むから。》

 

 

 ……通信が切れた。

 

 

「くふふっ、と〜っても重要な任務を受けちゃったね?」

「ええ、失敗するわけには行かないわ」

「……ところでさ、私、バイク乗った事ないんだけど、アルちゃんはあるの?」

「……あっ」

 

 

 で、でもアウトローとしてカッコいいバイクの一つくらいは乗りこなさないと。

 

 大きなバイクに乗って、あの風紀委員会と万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)を相手に大立ち回りを演じる私たち……。

 

 とんでもなくカッコいいじゃないの!! 

 やるしかないわね。

 

 

「原付なら乗ったことあるわ、大丈夫よ!」

「えぇー? すっごく心配……」

 

 

 

 

 


 

 

 

 Side.冠ウルト(第三校舎 1階 給食部トラック 車上)

 

 

 

 隠れ蓑にする予定だった通路は事前に補強を済ませておいたため、

 凄まじい爆撃の嵐の中でも崩落せず、耐えることができた。

 

 戦車の砲弾が近くに着弾するたびにフウカちゃんが騒いでいたので、私が抱っこしている。

 抱っこするのに邪魔だった拘束用の紐は外してある。

 

 この私のそば程、安全な場所はない。

 

 

「ふふっ、まるで赤ちゃんですわね」

もごご〜! (息が、あの、息ができな!)

「よしよし。」

 

 

 色々と頑張ってきたフウカちゃんを撫でておく。

 

 

「このまま校舎を突っ切って、西口から外に出るんでしたよね?」

 

 

 アカリちゃんからの確認に頷く。

 便利屋の2人に東から攻めてもらって、裏を取る。定石通りだけど、万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の砲撃で多分位置がバレてないから効果的な一手になる。

 

 あとは便利屋の攻撃と同時に隕石でも落として撹乱すれば上々だろう。

 

 万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の戦車については生徒の神秘が戦車にも影響するから隕石だけじゃ落とせないだろうし、突っ込んでぶっ飛ばすか、

 同士討ちが発生する至近距離に入るのが手っ取り早い。

 

 

「うん、待ち伏せもありそうだけど直進で。他の出入り口にも煙幕を焚くし、突破はできるはず。」

「わかりました〜」

 

 

 大きめの瓦礫を踏んづけ、トラックが跳ねる。

 

 フウカちゃんを落とさないように注意しつつ、

 缶詰を両手いっぱいに持って、がっついているイズミちゃんが飛んでいかないように押さえる。

 

 うーん、サスペンションが弱い。

 4輪駆動の装甲車とかも給食部の駐車場に置いておいたはずなんだけど、なぜトラックなのか。

 

 

「便利屋の子たちの準備もあるし、あまり急がなくていいよ。イズミちゃんが吹っ飛んじゃう」

「へ? 私?」

 

 

 喋りながらプルタブ式の缶詰を開けている。

 いっぱい食べるねえ……

 

 何でも美味しそうに食べるから見てて小気味良い。

 

 

「悠長にしていると校舎に突入してくるのでは?」

「そこら辺は臨機応変にだね。便利屋の行動次第って感じ。ダメそうなら切り札使うけど、逃走用だしちょっと避けたいかな。」

 

「……その、便利屋の方たちは信頼できるのですか? 

 聞いたこともない方々ですし、トランシーバーでのやり取りを聞いていてもあまり……」

 

「いや、結構すごいよ。あの子達。

 この校舎で待ち伏せしてたはずの風紀委員の掃除を頼んでたんだけど、しっかり働いてるみたいだし。

 期待通りの仕事はしてくれてる。」

 

 

 頼んだ仕事はきっちりこなす辺り、ポイント高め。

 たった2人だし、初仕事みたいだから風紀委員にやられててもおかしくないと思ってたけど、意外とやる。

 

 掘り出し物ってやつだ。今後も何かあれば仕事を頼もうかと思うくらいには。

 

 

 

 

 






イブキ、ジュンコ、ハルカとかの1年生も出したいんですけど、原作開始前なんですよね。

あと書いてて思ったのが、なんでウルトをトリニティ出身にしたんだろうって……ゲヘナと相性良すぎる。
イブキにめっちゃ懐かれてマコトちゃんに嫉妬されてくれ。
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