Side.陸八魔アル(万魔殿前の広場 トラック 車上)
「ちょっと特攻してくる。先に万魔殿入って掃除しといて。」
「わわっ、揺れるぅ!?」
ウルトさんが飛び上がった弾みでトラックが揺れる。
高く、高く跳び上がって、煙幕の先へ消えていった。
あのウルトさんに抱きしめられた衝撃で呆けていたけれど、……これ、どういう状況?
ここはトラックの荷台で、大爆発で吹き飛んだ後ウルトさんに助けてもらって……
周りを見るとムツキ、美食研究会の面々が勢揃いしている。
つまり、合流したってことよね?
「あら……行ってしまわれましたわね。
美食研究会の会長、
食に関して何か気に入らないことがあれば、爆破等のテロ行為も辞さない、とびきりのアウトロー。
何度か屋台や、スーパーを爆破してるのを見たことがある。
……それもウルトさんの系列の店舗を。
ウルトさんと美食研究会に関するインタビュー記事を読んだところ、
「美食研究会がテロ行為に走るのは、彼女たちの要求する水準に当社のサービスが及ばなかった結果。
美食研究会に認められることは飲食を提供する者にとって一流、またはそれに値する価値を示せたという証左になる。」
という記事を読んだことがあるわ。
そんな度量によって、美食研究会も、温泉開発部もウルトさんに従って動いているんでしょうけど、やっぱり流石よね……*1
跳び去ってしまったウルトさんを置いて、弾痕と傷跡の目立つ黄色のトラックは万魔殿の大きな入り口に進んでいく。
……美食研究会も、温泉開発部も自分のやりたいことをやって、認められて、ここにいる。
私の示せる価値。私のやりたいこと。
……決めた。
「私はウルトさんを追うわ」
「えっ?」
「……便利屋さん?」
車上のみんなと目が合う。
「雇い主を一人で行かせるのは便利屋68の
それに、あの美食研究会なら中の掃除くらい簡単でしょう?」
便利屋としての初めての仕事、初めての経験。
少し前まで、ムツキと一緒に便利屋68のエンブレムを考えたり、映画を観てこんなアウトローに私もなるんだって夢想していた時とは全然違う。
元々ウルトさんに依頼された内容は陽動だけど、それだけで終わりたくない。
逃げるだけじゃなくて、風紀委員会相手でも戦えるんだってことをカヨコにも証明しなくちゃ。
心配しなくてもいいくらいに強くなって、私が想った通り、望んだ通りのカッコいいアウトローになるの!
「……くふふっ、いいよ。行こっか!」
「……なるほど、
便利屋さん、お二人のお名前をお聞きしても?」
トラックの荷台で立ち上がり、ワインレッド・アドマイアーの弾倉を交換しながら振り返る。
「
「
そういえば役職を考えてなかったわね。
カヨコ……は入ってくれるかわからないけど、もし入ってくれるなら役職はどうしようかしら。
「ふふっ、
行きなさい、
……アカリさん、イズミさん?」
「ふえっ、何なに?」
「私も運転してばっかりで飽きてきましたし……フウカさん、後はお願いしますね⭐️」
「えっ、私? あっ、ちょっとアカリ!? 急にハンドル握らされても!?」
トラックの運転手が切り替わり、ガタンと車体が揺れる。
フウカ、給食部の部長よね。
名前は聞いたことなかったけれど、
あの人畜無害そうな風貌は世を忍ぶ仮の姿に違いないわ。
ただ部費を上げるためだけに、ウルトさんを使って
とんでもないアウトローだわ!
あの百合園セイア*2と並ぶ裏社会のボスの可能性だってあるわ、今後の便利屋の活動のためにもしっかり好印象を与えないと!
「安心して頂戴、私たち便利屋68が無事にウルトさんを連れ帰って、
「だ、だから私はそんな事望んでな」
「行くわよ! ムツキ!」
「いいよ〜、派手にぶっ潰しちゃおっか! 」
トラックの荷台から飛び降りる。
ウルトさんはあっちの方に跳んでいったわよね。
待ってなさい、カッコいいところいっぱい見せるんだから!
「さて、皆さん」
給食部のボロボロになったトラックが砕けたアスファルトの段差で跳ねる。
「おっと……あら? フウカさん、そんなに震えて一体どうしたのですか?」
「だから……」
「だから!」
「私は
フウカが叫び、トラックが急加速。
完璧なドライビングで風紀委員を避け、瓦礫を避け、戦車を踏み台にして跳ぶ。
「……フウカさんって、私より運転上手だったんですね?」
「ふふふっ、流石ですわ。それでこそ、
「ハルナ! アカリ! イズミ! 後でお説教!」
「……あら」
「えっ、私もぉ!?」
Side.冠ウルト(万魔殿前の広場
「スロー、スロー……クイック、クイック、スロー……うーん。マコトちゃん踊るのへったくそだね? トリニティ……いや、上流階級ならダンスくらい踊れないと侮られるよ?」
「き、キサマが振り回しているだけだろう!? 人の事を弾除けに、ぎゃっ!?」
「あぶなっ。」
盾で防ぐ。頭部に数発良いのが入った。
マコトちゃんってばこんなに攻撃受けてるのにとても元気だ。
お陰でジタバタと暴れ回るから動きにくいし、片手が塞がってるせいでリロードもしづらい。
縛れれば楽なんだけど、そんな時間もなければ、縛る道具も持ってきていない。
フウカちゃんを縛ってたロープ持ってくればよかったよ。
「レッスン中の先生の言うことには、はいか分かりました、で返事。舞台は戦場だって言うし、オーディエンスも行儀の良い人ばかりじゃないからね。」
四方八方から飛んでくる銃弾をステップで避け、マコトちゃんの関節を極め、荒っぽい振り付けで踊り、マナーのなってない観客に銃弾をお返しする。
トリニティでも足を踏んだだの、踏んでないだので銃撃戦になることはあったが、こんなにドラマティックな会場は初めてだ。
初等部のお遊戯会の方がマシな騒音だ。
あの頃の私は殴っては投げ飛ばし、と少々暴力的だったが今は違う。
丁寧に、優雅に、楽しげに。
ミュージカル映画のように、銃弾の雨に唄うように、虎丸の砲塔の上でくるくると廻る。
今だってクロノススクールの子が撮っているのだ。
ナギサちゃんばっかりバズってずるい*3ので私の動画も再生数伸ばしたい。
私の初配信とかも再生数すごいけど、あれは時間経過による累積的なものだ。
一番伸びてるのミカちゃん+ツルギちゃんとの殴り合いって品がないし、ウルトクラウン社の社長として暴力的なイメージだけでなく、上品で親しみやすいイメージも作っておかねば。
とはいえ、踊ってばかりじゃ今のこの状況は変わらない。
他の戦車の照準はしっかり私にあってるし、マコトちゃんを手放すか、戦車から降りれば多分蜂の巣になるだろう。
……なんか一部の戦車は未だに第三校舎撃ってるけど。
「ぐっ!? おい離せ! あだっ!? ま、待て、撃つな!? 痛だだだ!?」
「……邪魔しないで」
「き、キサマにはこれが本意に見えるのか!? 片手で掴まれているだけなのになぜ抜け出せな……ぎょえっ!だ、だから撃つなと言って……!」
紫色に輝く銃弾を
くるりとターンしながら空薬莢をシリンダーから落とし、上に投げた弾をシリンダーに叩き込むようにして装填。
周辺に星を降らせ、雑魚を散らし、戦車の陰に隠れているヒナちゃんに目掛けて6連射。
動き回られるせいで、1発は当たったように見えたけど、それ以外は戦車の装甲を削るか、隕石や爆破でひび割れたアスファルトに傷跡を刻むだけで命中しなかった。
やっぱキツいわ。
銃撃つんじゃなくて、戦車掴んで振り回せばヒナちゃんに、周りの風紀委員、
虎丸には
この戦車壊したら嫌われそうだし。
戦車から降りてヒナちゃんにインファイトを仕掛けて殴り合うという案もあるけど、
他戦車に撃たれるだろうし
……多少の隙があれば虎丸以外の戦車の近くに行って武器にすることもできるんだけど。
「ヒナ! キサマ、ちゃんと狙っているのか!? 私にばかり当てるんじゃない!」
「随分と元気そうね。そんなところで踊ってないで、逃げてくれると助かるのだけど」
「あだっ! やめろ!? 撃つな!? ……何だこれ、全く外れる気が。ぐえっ!?」
マコトちゃんが頑丈すぎる。
何発も盾にしてるのにピンピンしてる。
普通の生徒ならヘイローに影響が出そうなほどの攻撃を受けているのに、身体を触っている感じだと全然余裕そうだ。
傷が残らないように弾が当たる場所は満遍なく散らしているけど、私がやってることといえばそのくらいだし、さすがは
最初の方はマコトちゃんに当てないように撃っていたオーディエンスも、だんだんと狙いが適当になって、連射するようになってきた。
とても困る。
ヒナちゃんの紫色の弾に比べれば全然痛くないし私が受ける分にはノーダメージなんだけど、マコトちゃんの被弾が嵩むのは困る。
ほぼ耐久無限とはいえマコトちゃんは対ヒナちゃんの決戦兵器なのだ。有象無象に使う余裕はない。
誘導した箇所に撃ってくれるなら避けやすいんだけど、乱射されると弾を目で見て避けたり弾いたりしなくちゃいけなくて辛い。
最初に比べて風紀委員の子の数も増えてきたし……
私とマコトちゃんのダンスは立ち見席でもそう安いものじゃない。
会場のキャパが埋まらないのは悲しいことだけど、マナーのなってない客は勘弁だ。
肉盾にしているマコトちゃんを庇うという意味不明な行動をしつつ、バンバン撃って迷惑客を潰す。
……にしてもリボルバーの装填が面倒だ。100発くらい弾を入れたい。
6発撃ってはリロードというループにも飽きてきたのでマコトちゃんの腰元でぶら下がってるWA2000*4を掴み、痛めの弾を撃ってくる風紀委員ちゃんを狙撃する。
「ぎゃっ!?」
「うぐっ!」
狙った通り、2人落とした。
良い銃だね、コレ。流石は次期議長の銃といったところか。
予備弾倉もあるし、この銃借りておこう。
それで神秘の乗らないどころかマイナス補正はいってそうな隕石はともかく、銃ならダメージ入るよね。
ヒナちゃんには全然効いてなさそうだけど。
「わ、私の銃を使うな!? く、くそ、手が解けん……イロハ! 何とかしろ!」
「嫌ですよ、私じゃウルトに勝てませんし」
「ぐぐぐ……」
イロハちゃんは俯いて……あれ? もしかして手元で本読んでない?
たまに近くで流れ弾が跳ねてるのにものすごい落ち着きっぷりだ。
ヒナちゃんは色んなところから顔を出しては私とマコトちゃんのことを撃ってくる。
すぐに撃ち返しても当たらないし、こちらの消耗が進むばかり。
せっかくマコトちゃん捕まえてるから、このまま拉致りたい。
でも、隕石だけじゃ振り払えない気がするし、逃げてるところをヒナちゃんに撃たれると防ぎきれるか自信がない。
マコトちゃんが元気いっぱいなせいで走りにくいんだよね。
「あなたが手を抜いている理由は知らないけど、そろそろ
「……は?
そもそも演者を舞台から降ろすなら代役を用意しなよ。そんなところで隠れて観客気分のままじゃ私には届かないよ。」
ヒナちゃんの声が響いた箇所に連射。
うーん、当たらん。
マコトちゃんのコートの内側をまさぐり弾倉を掴んで、リロード。
足場が揺れるし、
あと切れる手札といえば、退却用の高速輸送機くらいだが、これは万魔殿脱出時に残さないと美食研究会の子たちや便利屋68の逃げる手段がなくなる。
無理やりにでも万魔殿まで走って逃げるか?
「……いいわ、乗ってあげる。トリニティのお嬢様には、荒いダンスになりそうだけど!」
声と共にヒナちゃんが陰から現れる。
勝負を決めにきた。
ヒナちゃんの銃が終幕を告げる。
紫のカーテンが引かれ、演者たちを現実に引き戻す。
避けようがないほどの弾幕。
私が手を抜いてた〜とか言ってたけど、ヒナちゃんも手抜いてたんじゃん。
「ほーら、マコトちゃん、クライマックスだよ! 気張って!」
「ちょ、ウルト、キサマふざけっ、避けっ」
初めての共同作業だ。
私達の絆パワーのこもった弾丸は、無慈悲にも紫の弾幕に撃ち落とされ、その勢いのまま
「ギャアアアアアアア!? 」
むぅ、神秘で負けてる上に、銃弾の威力でも負けてるから容易く弾かれる。
マコトちゃんが身を張って防いでくれている間にリロードするが、ヒナちゃんの弾幕が止まない。
この耐久値無限の
防ぎきれなかった弾丸が虎丸の装甲を削り取る。
イロハちゃんの姿は見えない。多分
周りの風紀委員会の子がバシバシと私に銃弾をぶち当ててくるが、弾幕のせいで避けようにも動けない。
地味に鬱陶しい。
気合いを入れ、隕石を降らせて妨害するが、私の立ち位置が変わらないせいで飛んでくる弾の総量に変化がない。
ヒナちゃんに至っては直撃させても吹き飛ぶだけで弾の嵐は止む気配がない。
そこら辺のスケバンならこの隕石で倒せるんだけど、流石風紀委員といったところか。
このまま幕引きじゃ消化不良だ。逃げるにしても一矢報いたい。
何か対処する方法はないかと周りを見渡すと、
……うん?
《こちら、便利屋。万魔殿の戦車を鹵獲したわ。
支援するから「いっくよー!」えっ、ムツキ!? まだ喋っ!?》
一台の戦車から放たれた榴弾が、無防備なヒナちゃんに寸分違わず直撃する。
爆炎、奏で続けられていた銃声がやみ、弾幕が閉じる。
爆音が鳴り止まぬうちにマコトちゃんを片手で掴み、虎丸から飛び降りる。
ヒナちゃんのそばにある戦車に一息で近づき、砲塔を握り、持ち上げた。
「舞台は終わり! ここからカーテンコール! チェキは一枚5000円ね!」
自重と戦車の重みでアスファルトを砕いて足が沈む。
沈み込んだ足を軸足にして180度回転。
握った戦車が風の音を響かせ、硝煙を切り裂く。
ボーリングのピンのように風紀委員たちが吹き飛び、近くにあった戦車や瓦礫を巻き込んで打ち上げられる。
ストライク。いや、スペアかな?
ヒナちゃんに手番が回る前に潰す。
「おりゃー!」
「っ!?」
砲塔を柄に、巨大な棍棒と化した戦車を回転の勢いを保ったまま大上段に振り上げ、音を越え、空気の層を割りながら叩きつける!
轟音と、地震が起きたかのような衝撃。
叩きつけた衝撃で戦車のパーツがあちこちにひしゃげて散らばり、履帯が外れ、ホイールがゴロゴロと荒れ地を転がる。
ついでにメテオで蓋……をするとヒナちゃんはともかく、戦車の中に乗ってた子がヤバそうだ。
やめとこ。
私の握力で赤熱化している砲塔を手放して、ヒナちゃんを撃ってくれた便利屋ちゃんたちが乗っているであろう戦車に駆け寄る。
煤で薄汚れたアルちゃんが口をぱかーんと開き、金色の目をキラキラさせながら
「ナイスタイミング。グランドフィナーレには丁度いい祝砲だったよ。」
「(何あれ、ヤバーい!!
あんなのまるで、漫画に出てくる超クールなヴィランよ!!
ウルトさんの戦う姿は動画でよく観ていたけれど、こ、これが現実の迫力。
あの凄まじい力はもちろんだけど、瞬きすら許さないような行動の速度と、容赦の無さが尋常じゃないわ!)」
……返事がない。ただのアルちゃんのようだ。
サクッと離脱したいので早めに復活してほしい。
「(ちぇ、チェキ撮ってもらえるのよね、頼もうかしら?
でも5000円……お財布の中にはもうポイントカードとクーポン券しか残ってないわ……)」
「すっごい音と揺れだったけど、何が起きたの? ……アルちゃん? ……ねえってば!」
「ひゃ、えっ!?」
戦車の中から揺さぶられ、アルちゃんの顔が普通の顔に戻る。
「大丈夫?」
「……あっ、そうだったわ。……助太刀に来たのだけれど、不要だったかしら?」
「ううん、助かった。」
「はっ、な、何だキサマら! ウルトの仲間か!?」
私のダンスとヒナちゃんからの弾幕に耐えきれず、意識を飛ばしていたマコトちゃんが復活した。
元気そうだけど、暴れられると怪我が悪化しかねない。
基本、私のせいだとはいえ、マコトちゃんを傷つけたいわけじゃない。
動けないように重心を押さえ、関節を極め、身動きができないようにして脇に抱える。
「はいはい、怪我人は大人しくしようね。」
「ぐっ……チッ、気に食わんがどうしようもないな。
しかし……キキッ、これで勝ったと思うなよ? 例えこのマコト様を下したとしても、
ゲヘナを滅ぼすのはそう簡単ではないからな!」
「……? 何言ってんの?」
ゲヘナを滅ぼすって何。
滅ぼしたら温泉減るし、勿体無いじゃんね。
妄想逞しいマコトちゃんの事なので、とりあえず置いておこう。
マコトちゃんのコートから弾倉を全部取り出し、私のポケットに突っ込んで装備を整理しながらアルちゃんに向き直る。
「美食研は? 一緒じゃないの?」
「万魔殿の制圧に向かったわ。あの4人なら大丈夫でしょう?」
アルちゃんの胸元からムツキちゃんが顔を出す。
あの榴弾ってムツキちゃんが撃ったんだよね。狙いも完璧でこれ以上ないタイミングで本当に助かった。
便利屋の介入がなかったら、マコトちゃんを万魔殿にぶん投げて、後を追うようにして逃げるという格好のつかない姿を世間に晒すところだった。
「んしょっと。んーと、覇王ちゃんに……万魔殿の人? 作戦成功な感じ?」
「大体そんな感じ。ま、そういうことなら万魔殿に退避しよっか。」
戦車で叩き潰したとはいえ、ヒナちゃんくらい強い子があの程度で倒れるわけがない。
勝負を決めるなら大人数での集中砲火か、複数のミサイルなんかで攻撃しないと無理。
マコトちゃんも腕力で押さえつけてるから何もできてないだけで、こっち側なんだろう。
そしてここから万魔殿の距離を考えると私の足ならともかく、アルちゃんとムツキちゃんの足じゃすぐに追いつかれてしまうだろう。
私が抱えて走ってもいいけど、3人はちょっと動きづらい。マコトちゃんが暴れるだろうし……
「ムツキちゃん、戦車の運転は?」
「撃ち方は教科書に載ってたから撃てたけど〜、それ以外知らない♪ まず戦車の運転って2年の授業でしょ?」
「ゲヘナだと2年で必修なの? トリニティだと選択科目だったけど。」
「一応ぜーんぶ必修だけど、興味のある科目以外みんなサボっちゃうから……結果的に選択科目?」
そういえばゲヘナって授業への出席率1割以上なら進級できたっけ。
それでも留年する生徒が30%もいるのはつくづくやべー学校だ。
BDをスマホで流してれば良いだけなのに、なぜ留年するのか。
ゲヘナ学園という名前を変えてゲヘナ動物園にした方がいいと思う。
ミカちゃん的に言うなら角付きのサル山だ。
そんなところでわざわざお山の大将してるマコトちゃんは物好きだと思うし、私だったらやりたくない。
「私も戦車の運転はした事ないんだよね。ヘリとか航空機なら運転できるんだけど。」
「……わかったわ、ここは私達に任せて先に行ってちょうだい!」
「えっ、アルちゃん本気? 不意をつけたから勝ててたけど、正面からあの数はさすがのムツキちゃんでもちょーっと無理かな〜って」
何だかよく聞くセリフを言い出した。
このセリフのあとで合流してくる場合もあるけど、これは無理だ。
私の場合、マコトちゃんを盾にしてたからか、イロハちゃんが乗ってる戦車の上にいたからかは知らないが他の戦車からの砲撃がなかったから敵地のど真ん中でも耐えれていた。
その枷が外れて全部隊で攻撃されたなら、
ヒナちゃん以外の攻撃でほとんどダメージを受けない私はならまだしも、普通の生徒じゃ10秒も保たない。
「うっ、でもそれ以外に方法なんて……」
「私にいい考えがある。マコトちゃんの事お願いね。」
「へっ?」
マコトちゃんを放り投げて、戦車を掴んで、3人が落ちないように地面と平行になるようにして持ち上げる。
「んしょ、戦車の中に入るか、ちゃんと掴まってて。」
万魔殿の会議室は……あそこかな。
ゆっくりと重心を落として、左腕で車体を支え、右腕でがっちりと戦車を握る。
やり投げ、及び砲丸投げの世界記録保持者の力を舐めてはいけない。
ここで戦車投げでも世界記録を樹立してやろう。
「ふーん? 中に入ってても危なそうだけど、外よりは安全かな〜?」
「お、おい! 私を置いていくな!? 人質は丁重に扱え!」
「うわっ、押さないでよ! ここ入り口狭いのよ!?」
真っ直ぐ、一直線に、回転させないように。
距離的に速度はそれほど必要じゃない。
あまり勢いをつけると着弾時の衝撃で3人が怪我しちゃうし、戦車の重量を考えると万魔殿への被害が大きくなってしまう。
「そいっ!」
緩やかに始動し、弾けるように射出。
投げると同時に私も戦車の上に乗る。
超有名な格闘漫画で見たことのあるアレだ。
土埃で煙っぽい場所から離れて久々に爽やかな風を浴びる。
車上を見ると戦車のハッチからマコトちゃんの下半身が大根のように生えていた。
面白っ、イロハちゃんに見せたいけどスマホの電源落としちゃったなあ……
クロノスの子が撮ってくれてるかな?
もしもイロハがウルトのこと攻撃してたら終わってますね。
ウルトはイロハに籠絡されてますが、イロハもウルトに籠絡されてます。
あと、またのんき▽先生の色ハ欲、色ハ毒は実質公式なので読め。先生がえっちなことしてるのに違和感がなさすぎる。
ミヤコもいいぞ……